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【2019年8月改訂】債務不履行に基づく損害賠償請求~民法改正と契約書の見直し(2)

日本情報マート

2019.08.02

 こんにちは、弁護士の松林智紀と申します。シリーズ第2回は、債務不履行に基づく損害賠償請求を中心に扱います。

1 債務不履行に基づく損害賠償とは?

 「債務不履行に基づく損害賠償」とは、何らかの契約(売買契約や賃貸借契約など)があり、この契約に基づく約束(債務)を履行しなかった場合に生じる損害賠償です。契約責任や契約不履行と呼ぶこともあります。

 これに対して、特に契約などがない関係において、違法性のある行為自体によって生じるのが「不法行為に基づく損害賠償」です。

 債務不履行には履行遅滞(履行が可能であるのに履行期を徒過した場合)、履行不能(契約時は履行可能であったが、その後に履行が不可能になった場合)、不完全履行(履行はあったものの、給付が不完全な場合)の3類型があります。

 債務不履行に基づく損害賠償については、民法第415条において定められています。

 なお、債務不履行に係る帰責事由(債務者の責めに帰すべき事由)が債務者にないことの立証責任は、債務者が負います。

2 実質的な改正内容:法定利率(改正民法第404条)

 債務不履行に関連する実質的な改正点としては、法定利率の変更があります。

 法定利率は、利息を支払うことは合意しているけれど利率を決めていない場合や、金銭債務について事前に遅延損害金の額を合意していない場合の遅延損害金の算定等に用いられるもので、現在は年5%の固定金利とされていますが、低金利時代において高過ぎるとの意見が多くありました。

 改正により、年5%の固定金利の法定利率は廃止され、改正民法施行当初の法定利率は年3%となり、さらに、3年を1期として変動するように定められました。具体的には日本銀行が公表する「貸出約定平均金利」(銀行や信用金庫が金融機関以外に融資した際の金利を平均したものです)の過去5年分の平均値を基準として、1%以上の増減が発生した場合には、法定利率もそれに応じて1%単位で増減する仕組みが導入されます。

 「変動」とはいっても、初めて遅滞の責任を負った時点(遅延損害金の場合)、または初めて利息が発生した時点(利息債権の場合)の法定利率が、その(元本)債権の消滅まで適用されるのであり、住宅ローンの「変動金利」のように、債権が発生した後に、その債権に適用される法定利率が変動することはありませんので注意が必要です。

 また、商事法定利率(年6%)は廃止され、民法の法定利率に統合されます。

 なお、改正民法の施行日前に利息が生じた場合における、その利息を生ずべき債権に係る法定利率は、従前の法定利率(年5%)によることになります。

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3 その他の改正

1)債務者の帰責事由

 上記1で説明をした債務者の帰責事由(債務者の責めに帰すべき事由)の有無について、改正民法では「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」判断されることとされました(改正民法第415条第1項)が、従来の通説的見解や実務に変更を迫るものではないでしょう。

2)特別損害の予見可能性

 損害賠償の範囲(改正民法第416条)の特別損害(通常生ずべき損害ではなく特別の事情によって生じた損害)については、「予見し、又は予見することができた」が「予見すべきであった」と改められました。当事者が現実に予見することが可能であったか否かではなく、債務者が予見すべきであったか否かという、規範的な評価を問題とすることとされました。実務上の影響はあまりないと考えられます。

3)過失相殺

 過失相殺(改正民法第418条)に関しては、「債務の不履行に関して債権者に過失があったとき」が「債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったとき」と改められました。これは、従来の判例で認められている損害軽減義務的な要素を明確化したものですので、これも実務上の影響はあまりないと考えられます。

4)中間利息の控除

 また、将来において取得すべき利益(例:交通事故で死亡した者に係る逸失利益)についての損害賠償の額を定める場合、その利益を取得すべきときまでの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により控除することが明記されました(改正民法第417条の2、中間利息の控除)。

 これ自体は判例法理の明確化にとどまりますが、上記2の通り法定利率が変更されたことにより、損害賠償額から控除されるべき中間利息の額が減少することになりますので、損害賠償の額が上昇することに注意が必要です(法務省民事局の説明資料では、22歳男性サラリーマンが事故で死亡した場合、現行法では逸失利益の額が約5760万円だったものが、改正民法では約7950万円となるという例が挙げられています)。

4 規定の見直し

 今回取り上げた改正との関係では、あらかじめ合意していないと金銭債権の遅延損害金が年3%(改正当初)になってしまい、現行の年5%ないし年6%(商事法定利息)と比較すると、相当金額が低くなることに注意が必要です。これでは、金銭債務の履行を確保するためのインセンティブとして不十分である場合も多いことから、事前に法定利息を超える遅延損害金の額(率)を合意しておくことが考えられます。例えば、契約書に次のような規定を設ける方法があります。

【法定利息を上回る遅延損害金を合意する場合】

本契約に基づく金銭債務の支払を遅延したときは、遅延した当事者は遅延額に対して年14.6%の割合による遅延損害金を付して支払うものとする。

あわせて読む
民法改正と契約書の見直し

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年8月2日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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執筆:のぞみ総合法律事務所 弁護士 松林智紀
1996年東京大学法学部卒業。1998年東京大学大学院法学政治学研究科専修コース修了。2000年弁護士登録(52期)。2002年~2004年日本銀行業務局勤務。2017年のぞみ総合法律事務所オブカウンセル、2018年のぞみ総合法律事務所パートナー。
会社法、労働法、IT・ソフトウエア関連法務等を中心とした企業法務、コンプライアンス部門の支援、不祥事対応、危機管理等を主に取り扱う。

役職
株式会社エス・エム・エス社外取締役(監査等委員長)
株式会社かんぽ生命保険査定審査会委員
公益財団法人東京医科大学がん研究事業団監事

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