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資金調達の基礎知識/スタートアップのための法務(2)

日本情報マート

2018.08.10

 こんにちは、弁護士の川西拓人と申します。シリーズ「スタートアップのための法務」の第2回は、資金調達を扱います。

 創業間もない段階では、プロトタイプとなる商品の開発、広告宣伝、オフィスの賃貸借、パソコン・什器等の準備、役員報酬や従業員給与など、さまざまな資金需要が生じます。これらの全てを創業者が自己資金で賄うこともありますが、とりわけビジネスが軌道に乗ってくれば必要な資金も多額になり、外部からの資金調達が必要となります。

 スムーズに資金調達を成功させるためには、資金調達の方法とそのメリット・デメリットを知っておくことが欠かせません。

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こちらはスタートアップのための法務シリーズの記事です。
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1 「負債」と「資本」とは

 資金調達には大きく分けると、次の2つがあります。

  • 負債(Debt・デット)として調達する方法
  • 資本(Equity・エクイティ)として調達する方法

 1の負債として調達する方法としては、借入れや社債などが考えられます。起業間もない段階では、知人からの借入れや金融機関からの借入れがよく用いられる方法です。

 2の資本として調達する方法としては、株式や新株予約権の発行などが考えられます。

 1と2の方法の最大の違いは、法律上、返済義務を負うか否かにあります。

 負債として調達する場合、あらかじめ決められた期限に元本を弁済するとともに、利息を支払う必要があります。そのため、計画通りの利益が出ていなくても、負債の弁済を行わなければなりません。事業が想定通りに進んでいない場合には返済の負担が重くなる一方で、想定外に多くの利益が生じた場合でも、返済額はあらかじめ定められた範囲となります。

 他方、資本として調達する場合、決められた期限に弁済を行う義務はありません。ただし、株式の割り当てを行えば、割当先は会社の株主となります。株主総会において議決権を持つ他、配当請求権や残余財産分配請求権などの、会社から生ずる経済的利益に関する権利を持ち、会社経営に参加することとなります。

2 負債として調達する場合の留意点

 負債として調達する場合、借入先と弁済期や利息について明確に合意し、書面にしておくことが重要です。

 借入れの期限を定めていない場合、民法第412条第3項では「債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う」と規定しており、貸主の一方的な請求によって期限が到来することとなります。借主側が「利息を払っていれば、元本はいつ返してもよい」と考えていると、認識にズレが生じる可能性があります。

 利息の定めがない場合も注意が必要です。民法上、借入れに際して利息の合意がなければ、利息の支払義務はないのが原則ではあるものの、貸主が会社(商法上の商人)である場合などには、民法に優先して商法が適用されるため、利息の合意がなくとも年6%の商事法定利率が適用されることとなります。

 また、負債として調達する際、代表者や役員の連帯保証や、不動産や債権等の物的担保の提供を求められることがあります。連帯保証をした場合、経営が軌道に乗らなかったとき、保証人は事業で生じた負債を個人で負担しなければならず、経済的に窮地に陥ります。借入れの個人保証を求められた場合、その必要性や保証人の範囲を慎重に検討して対応します。

 なお、金融機関には、金融庁の監督指針において、経営者以外の第三者については個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立が求められています。また、経営者保証についても、一定の要件を満たす企業に対しては、「経営者保証に関するガイドライン」に沿って、保証に依存しない融資を促進することが求められており、金融機関との協議により、同ガイドラインに基づく対応が取られることもあります。

3 資本として調達する場合の留意点

 資本として調達する場合、特に株式発行については、発行株式数や割当先を慎重に検討することが必要です。株式発行時は同じ志を持っていた株主同士が、その後に仲たがいしてしまうことは、残念ですがよく生じることです。このようなときに、経営者が会社の意思決定に必要な株式数を確保できていないと、その後の経営に支障を来します。

 株主総会における普通決議事項(役員報酬の決定、剰余金配当、役員選任等)には、株主総会の出席株主の議決権の過半数が必要で、特別決議事項(株式発行時の募集事項の決定、定款変更、合併・会社分割等の組織再編等)には、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。極端な例で言えば、株主が2人、各50%ずつの株を保有している場合、株主総会での決議要件が満たされず、デッドロック状態に陥ってしまうことがあります。

 また、創業間もない段階では、ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達も選択肢となります。VCは、第三者の資金をファンド形式で集め、企業に資本の形で出資し、株式公開やM&Aによって売却益を得ることを目的としています。

 VCから投資を受ける際、通常は詳細な投資契約が提示されます。投資契約の中で、VCからの取締役派遣や、新株発行等の重要事項についての承認などが定められることがあり、投資契約の十分な精査が必要となります。

4 その他の資金調達の方法

 創業間もないスタートアップやベンチャー企業に対しては、官公庁や地方自治体、中小企業振興公社などによる補助金や助成金が支給されることがあります。補助金・助成金は、制度内容にもよりますが、返済義務や株式発行の必要もなく、資金調達の有効な方法となることがあります。

 また、補助金・助成金以外にも政府系金融機関等では低利の融資制度が設けられていることがあり、これらの利用も考えられます。

 この他、近時では、クラウドファンディングも新たな資金調達の方法として注目されています。クラウドファンディングとは、インターネット上でクラウドファンディングサービスを提供するプラットフォーム会社を通じ、自社のサービスや理念をPRし、広く一般から資金の支援を募る方法です。資金調達のみならず自社サービスをPRする効果もあり、うまく活用できれば有効な方法となります。

5 まとめ

 今回はさまざまな資金調達の方法や、各方法のメリット・デメリットを見てきました。ご紹介したさまざまな方法を組み合わせることで、リスクと資金効率のバランスのとれた資金調達が可能となれば、と考えています。最後までお読みいただき、ありがとうございました!

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年8月1日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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執筆: のぞみ総合法律事務所 弁護士 川西拓人
平成14年京都大学法学部卒業。平成15年弁護士登録。平成20年から22年まで金融庁検査局に出向、金融証券検査官・専門検査官として金融機関の検査業務に携わる。平成27年よりのぞみ総合法律事務所。
銀行、証券、保険、フィンテック等の金融法務に主として取り組む他、保険持株会社、少額短期保険事業者の社外役員を務めており、ベンチャー企業の支援実績も多い。

著書等
「判例から考えるグループ会社の役員責任」(中央経済社、2017年6月)
「金融機関のための不祥事件対策実務必携」(金融財政事情研究会、2017年2月)
「金融機関の法務対策5000講」(内部通報制度(Ⅰ巻第4章第18節)担当)(金融財政事情研究会、2018年2月)
「金融法務教室」(農林中金アカデミーホームページ上にて連載中)
「実務必携 金融検査事例集の解説」(金融財政事情研究会、2012年11月)
「日常業務のコンプライアンス~金融検査事例集からの示唆~」(全国地方銀行協会、2016年10月)等多数

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