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現役社労士が教える「上手な社会保険労務士の使い方」

日本情報マート

2018.11.19

 社会保険労務士は、一般的に「社労士」の名称で知られている国家資格(社会保険労務士法に基づく)で、約4万人が登録しています。

 社労士は労務関連のスペシャリストです。例えば、就業規則など社内規程の作成や、厚生労働省管轄の助成金に関する相談先となります。また、昨今はいわゆる「働き方改革」の関連の相談も増えてきているようです。頼れる社労士の見極め方や依頼のポイントは何か、現役社労士に聞いてみました。

1 社労士の業務を4つに整理

1)法定書類の作成等

 いわゆる「1号・2号業務」と呼ばれるものです。雇用保険や健康保険などを定める、労働・社会保険法令に基づく申請書類・帳簿書類の作成・提出業務を行います。これらの書類について行政官庁等の調査が入る場合は、事業主の代理で主張や陳述も行います。

 資格の取得や喪失(資格の得喪)や、昇給など給料の変化による保険料の算定は意外と面倒な作業であり、起業したての経営者の負担になります。これらの業務を社労士に依頼すれば、経営者の事務負担は軽減されます。

2)コンサルティング(3号業務)

 いわゆる「3号業務」と呼ばれるものです。労務全般に関するコンサルティング業務です。例えば、賃金制度の構築やそれに連動した人事考課制度の企画・立案、各種助成金の申請代行などを行います。「『働き方改革』の一環でリモートワークを導入したいのだけど、労務管理のどこに注意すればよい?」などの相談に乗ってくれます。

3)紛争解決手続代理業務

 社労士には、「社会保険労務士」と「特定社会保険労務士」がいます。紛争解決手続代理業務を行うことができるのは、別途研修を受け国家試験に合格した「特定社会保険労務士」です。

 昨今は、企業と個別の社員が争う個別労働関係紛争が増えています。その内容も変化してきており、かつては「解雇」関連が多かったのに対し、最近は残業代の未払いや、ハラスメント関連が増えています(セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティーハラスメントなど)。

 企業と社員との間で争いが生じた場合、特定社会保険労務士は企業か社員の代理人として相手と交渉し、「裁判外紛争解決手続(ADR)」によってその解決を図ります。

4)給料計算等

 社労士は給料計算業務なども行います。給料計算は前述の保険料の算定に加え、税金の計算等、意外と手間がかかるものなので、社労士にこれを委託する企業が少なくありません。

 給料計算をする際、付随して年次有給休暇の付与および消化の状況を管理することもあります。時間単位の年次有給休暇を導入している企業は管理が煩雑になりますし、2019年4月からは10日以上の年次有給休暇が付与される社員について、5日については基準日から1年以内に企業が時季を指定して必ず取得させなければならなくなります。これに付随する制度設計なども、 社労士に相談することができます。

2 企業から社労士に寄せられる相談・依頼ベスト5

1)日々の労働に関する相談

 最も多いのは、自社の就業規則で定めている労働時間、賃金、退職・解雇、欠勤・休職などが労働基準法などの法令に違反していないか、新たな法令改正に対応したものになっているかの確認や相談です。

2)問題の未然防止、解決

 上記の確認や相談の結果、既に問題が生じていたり、問題になりそうだったりすることが分かった場合、具体的な対応をアドバイスします。例えば、就業規則の変更例の提示などが該当します。

3)社内規程の作成・変更依頼

 就業規則などの各種社内規程の変更です。最近は、リモートワークなどこれまでとは大きく異なる働き方を推進する企業が増えていて、市販されている規程ひな形では対応できない部分が多くなっています。今後この分野に関する相談はますます増えそうです。

4)行政官庁の立ち入り調査に関する相談

 労働基準監督署や労働局、年金事務所による調査・臨検などへの対応です。事前に相談された場合は対策を検討し、その場に立ち会うこともあります。また、臨検などの結果、指導・是正を求められた場合、その対応をアドバイスします。

5)助成金に関する相談・依頼

 主に厚生労働省が管轄する助成金の申請をサポートします。助成金を受給するためには、就業規則や賃金台帳など少なからぬ書類や資料を準備しなければなりません。抜け漏れなく効率的に申請ができるようにサポートします。

3 社労士に相談・依頼する際の5つのポイント

1)自社の方針を明確にする

 まずは、自社の方針を明確にすることが大切です。例えば、「残業代の未払い」に関してトラブルになりそうな場合、自社として新たに支払うのか、既に支払っている分で十分だと捉えているのかなど、基本的な考えを決めます。もちろん、社労士との面談で方針が変わっていくことはありますが、この方針が明確になっていないと、社労士も対策を講じることが難しくなります。

2)関連書類を準備する

 社労士に依頼する際は、必ず関連する書類を準備しておきます。残業代の未払いについての相談であれば、勤怠管理や賃金台帳、残業申請書などが必要となります。場合によっては、比較するために、対象となっている社員の同僚などの資料が必要となることもあります。労務関連の資料の調製は後回しにされがちですが、日々整備しておくことが大切です。

3)雇用の責任者が同席する

 小さな企業の場合、経営者が人事担当者ということも珍しくありません。しかし、他に人事担当者がいたり、対象となっている社員の上司がいたりする場合は社労士との面談に同席させるのがよいでしょう。経営者が把握していない現場の細かなやり取りによって、企業の方針を変えざるを得ないこともあるからです。

4)時間に余裕を持って相談する

 時間に余裕を持って相談することが大切です。そうしないと、準備の時間を十分に取ることができないからです。残業代の未払いとは別ですが、例えば、契約期間に定めのある社員を雇止めにする場合、状況によって30日以上前に予告しなければならないケースがありますが、直前の相談では間に合わないことがあります。

5)当初の方針を見直す

 企業(経営者)と社員の見解が一致せず、トラブルになりそうなケースでは、感情的にならずに、冷静に判断するよう徹します。当初、未払い残業代は発生していないとの立場でも、社労士の調査によって実は未払い残業代が発生していたというケースもあります。こうした場合は、法令に基づき、柔軟に方針を見直すことが大切です。

4 気になる相談料。社労士に相談・依頼するといくらかかる?

1)比較してみる

 かつては都道府県社会保険労務士会が報酬規定を定めていましたが、今は各社労士が個別に報酬を決めているため、一概に金額を示すのは難しくなっています。ここでは、一応の目安を紹介しますが、実際は、事前にその社労士事務所のホームページで確認したり、電話で尋ねたりするようにしましょう。

 この他、社労士などの士業を紹介しているウェブサービスもあります。こうしたサービスでは、複数の社労士の得意分野や料金などを比較することができます。

2)顧問料

 多くの社労士は、顧問契約を交わし、包括的に業務を受諾しています。顧問料は、社員数と依頼内容によって異なります。例えば、中小企業が相談業務だけの顧問契約を交わす場合の顧問料は月数万円、労働・社会保険法令に基づく書類の作成・提出業務を含めた場合は月10万円以内が目安になるでしょう。

3)スポット料金

 顧問契約を交わさず、相談や依頼の都度、料金が発生するものです。対面で相談をする場合、30分5000円前後としている社労士が多いようです。この他、1案件ずつ金額を設定している社労士もいます。

5 信頼できる社労士を選ぶ3つのポイント

1)経験が豊富な社労士

 労務に関するトラブルでは人と人との感情がぶつかるため、法令上の解釈を示すだけでは当事者の納得を得られないことがあります。この点、経験が豊富な社労士であれば、当事者の感情にも配慮した対応ができるため、トラブルの解決がスムーズになることがあります。

 また最近は、働き方改革の実施を検討する際に、ビジネス経験が豊富な年配の社労士に相談が集まるケースもあるようです。ビジネス経験が豊富な社労士であれば、企業がやりたいことと法令とのバランスを取ってくれます。

2)得手不得手を心得ている社労士

 社労士が行う業務は幅広く、各社労士には得手不得手の分野があります。「年金」などといった専門分野に特化している社労士がいるのはこのためですので、依頼する際は、事前に依頼分野が得意か否かを確認してみるとよいでしょう。良い社労士は、依頼された業務が自分の得意分野でなければ、その分野を得意とする別の社労士を紹介してくれます。

3)聞こえの良いことを言う社労士は要注意

 「簡単に残業代を減らすことができます」といった金銭的なメリットを強調してくる社労士がいるようです。一般的には、残業代を削減するのは簡単ではなく、強引に進めれば、そのしわ寄せが社員に及ぶこともあります。金銭的なメリットは自社にとって魅力的ですが、一方で社員を軽視するような社労士には注意が必要です。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年11月19日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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執筆:日本情報マート
監修:シンシア総合労務事務所 特定社会保険労務士 白石和之

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