企業の成長を応援する情報メディア りそなCollaborare

Copyright (c) Resona Bank, Limited All Rights Reserved.

事業のルールを守る

請負契約(可分な給付を可能とする規定の制定、瑕疵担保責任から契約不適合責任への規定の見直し)~民法改正と契約書の見直し(10)

日本情報マート

2019.04.08

 こんにちは、弁護士の小林敬正と申します。シリーズ「民法改正と契約書の見直し」の第10回は、請負契約を取り上げます。その中でも特に可分な給付を可能とする規定の制定、瑕疵担保責任から契約不適合責任への規定の見直しを中心に扱います。なお、ソフトウェア開発委託契約書や建設請負契約書など、具体的な契約書内容の見直しについては、第11回で扱います。

1 仕事が完成しなかった場合の報酬に関する規定の明文化

1)現行民法における規律

 特定の業務を行うことを依頼してその業務遂行に対して報酬が支払われる委任契約とは異なり、請負契約は請負人が仕事の完成を注文者に対して約束し、その仕事の完成に対して報酬が支払われる性質の契約です。

 そのため、現行民法の条文上では、原則として仕事が完成し目的物を引き渡した段階で報酬が支払われることとなっており、請負契約が仕事の完成前に解除等により終了した場合に、既に完成した一部に対する報酬を請求できるか否かは、明らかとなっていませんでした。

 この点、公平の見地から、判例(大判昭和7年4月30日、最判昭和56年2月17日)では、仕事の完成前に請負契約が解除された事案において、契約内容が可分であって、既に履行された部分によって注文者が利益を得ている場合には、既に履行された部分についての報酬請求権を認めていました。

2)改正民法での変更点

 改正民法では、上記の判例の内容が明文化されました。具体的には、次の1.または2.の場合に請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなし、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができることとなりました。

  • 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき
  • 請負が仕事の完成前に解除されたとき

 1.の「注文者の責めに帰することができない事由」とは、請負人と注文者の双方に帰責事由がない場合と、請負人に帰責事由がある場合を含みます。また、「仕事を完成することができなくなった」とは、仕事の完成が不能となった場合を意味します。

 また、2.の「完成前に解除されたとき」には、注文者が請負人の債務不履行を理由に解除した場合だけでなく、注文者と請負人が合意により解除した場合を含みます。

 改正民法下で、1.および2.の場合の報酬請求の可否および根拠条文等をまとめると、次の通りとなります。

報酬請求の可否および根拠条文等を示した画像です

メールマガジンの登録ページです

2 仕事の目的物が契約に適合しない場合の請負人の担保責任

1)概要

 現行民法では、請負契約の特性に注目し、仕事の目的物に瑕疵があった場合の請負人の担保責任について、売買の担保責任と異なる規定を設けていました。しかし、社会状況の変化を踏まえ、両者を異なるものとする理由が乏しくなったことから、改正民法では、売買の担保責任に関する規定を準用するとともに、請負独自の規定や重複する規定を削除し、売買と統一的な内容としています。

 また、担保責任の制限に関する規定を、一部変更しています。なお、担保責任が瑕疵担保責任から契約不適合責任へと変更された背景等については、本シリーズ第7回「売買契約(瑕疵担保責任から契約不適合責任へ)」をご参照ください。

2)請負独自の規定の削除と売買契約に関する規定の準用

1.瑕疵修補請求に関する規定の削除

 現行民法では、請負契約の仕事の目的物に瑕疵があるときは、瑕疵が重要でなくかつ修補に過分な費用を要する場合を除き、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができるとされています。

 また、瑕疵が重要な場合は、その修補に過分な費用が必要であっても、請負人が修補義務を負うとされていました。

 しかし、改正民法では、売買契約に関して、引き渡された目的物が、種類、品質または数量について契約の目的に適合しない場合、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引き渡しまたは不足分の引き渡しによる履行の追完を請求できるとされており(改正民法第562条第1項)、この規定が請負契約にも準用されることとなりました(同第559条)。そのため、瑕疵修補請求に関する規定は削除されました。

2.損害賠償請求に関する規定の削除

 現行民法では、仕事の目的物に瑕疵があった場合について、注文者は、請負人に対し、瑕疵の修補に代えて、またはその修補とともに、損害賠償の請求をすることができるとされていました。

 しかし、改正民法では、請負人が行った仕事の内容が契約の内容に適合しない場合を請負人の債務不履行ととらえ、債務不履行の一般的規定を適用することとし、内容が重複することから、瑕疵修補に代えてまたは瑕疵修補とともに行う損害賠償に関する請負独自の規定を削除しました。

 なお、注文者が、催告をすることなく直ちに瑕疵修補に代わる損害賠償請求をできる点は、改正後も変更はありません。

3.解除に関する規定の削除

 現行民法では、仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができない場合、注文者は、請負契約を解除することができるとされています。これは、一般の債務不履行を理由とする解除の際に必要とされる債務者の帰責性を不要とする点で、請負契約特有の規定でした。

 しかし、改正民法では、一般の債務不履行解除について、債務者の帰責性が不要とされました(詳細は、本シリーズ第3回「契約の解除・危険負担~民法改正と契約書の見直し(3)」をご参照ください)。その結果、上記のような請負契約特有の規定は不要となりました。

 また、現行民法では、建築に多くの労力を要する「建物その他の土地の工作物」については、解除することの社会的経済的損失の大きさや、請負人の負担の重さを考慮し、瑕疵があったとしても請負契約を解除できないとされていました。

 しかし、判例(最判平成14年9月24日)では、条文の通り解除はできないとしながら、建物建替費用相当額の損害賠償請求を認めており、実質的に考えて建物等の場合に解除を制限する合理的理由はないとされていました。

 そこで、改正民法では、「建物その他の土地の工作物」に関する特則部分も、解除に関する規定とともに削除されています。

3)請負独自の規定の削除と売買契約に関する規定の準用

1.請負人の担保責任の制限に関する規定

 現行民法では、「仕事の目的物の瑕疵が注文者の供した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じたとき」は、請負人がその指示または指図が不適当であることを知りながら告げなかった場合を除いて、担保責任を負わないとされていました。

 改正民法でも、書き方に変更はあるものの、条文の趣旨は維持されています。

2.担保責任の期間制限に関する規定の変更

 現行民法では、担保責任を追及できる期間について、原則、「仕事の目的物を引き渡したときから1年以内」とし、建物その他の土地の工作物についてのみ、材質に応じて5年または10年に延長していました。

 しかし、注文者が瑕疵の存在を知らない場合にも引き渡しから1年を経過すると担保責任が追及できないのは、注文者にとって不利益が大きすぎるといわれていました。

 そこで、改正民法では、注文者の負担を軽減するために、注文者が目的物の種類または品質が契約の内容に適合しないことを知ったときから1年以内にその旨を請負人に通知することで、注文者は、その不適合を理由として、請負人の担保責任を追及できることとなりました。

 ただし、請負人が不適合を知っていた場合または重過失により知らなかった場合については、期間制限はありません。また、土地の工作物に関する特則も削除されています。

4)実務上の相違点

 改正による実務上の主な相違点は次の通りです。

  • 瑕疵から契約不適合へ
  • 修補に過分な費用を要する場合は瑕疵が重要でも修補請求不可に
  • 注文者による報酬減額請求が可能に
  • 建物その他の土地の工作物の請負についても解除可能に
  • 瑕疵担保責任追及可能期間が契約不適合を知ったときから1年に

あわせて読む
民法改正と契約書の見直し

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年4月8日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】 inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト http://www.jim.jp/company/をご覧ください)

執筆:のぞみ総合法律事務所 弁護士 小林敬正
東京大学法学部卒業・同法科大学院修了。2012年弁護士登録(第二東京弁護士会)。契約、訴訟、金融、独占禁止法、コンプライアンス、不正調査など企業法務を幅広く手掛けるほか、エンターテイメント法務やインターネットに関する案件にも関わっている。著書(共著)に『グループ会社の役員責任』(中央経済社、2017年)

RECOMMENDATION

オススメの記事