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契約書のチェック。基本構成から「解除条項」「損害賠償条項」まで

日本情報マート

2019.07.09

 契約書は一度締結してしまうと、たとえ考えていたことと違う内容が定められていても守らなければいけません。もちろん、相手方と協議して変更を求めることはできますが、時間や手間がかかります。また、相手方の同意が得られず、内容を変更できないこともあります。そのため、契約書の内容は、締結前に慎重に検討することがとても大事です。

 特に契約実務に慣れていない人は、「相手方の契約実務に詳しい人が作成したのだから、間違いはないだろう」「ひな型にあるのだから、必要な条項なのだろう」などと思い、確認を怠ることがあります。

 しかし、分からない点を、分からないままにして契約書を交わすと、後々、大きなトラブルになることもあります。そのため、契約書は、次のような視点からチェックする必要があります。

  • 交渉で決めたことが正しく、かつ過不足なく盛り込まれているか
  • トラブル防止などに必要となる条項が適切に盛り込まれているか
  • 法的に認められない条項や条項間の矛盾はないか

1 契約書の構成に沿った基本的なチェックポイント

1)タイトル

 タイトルは、契約書を読む人が勘違いしないように、内容がおおよそイメージできるものになっているかをチェックします。

 なお、タイトルによって契約書の法的効力が変わることはありません

2)前文

 前文には、契約当事者や契約の目的などが定められています。これだけで契約当事者などが確定するわけではありませんが、正しく定められているかをチェックします。

3)主要条項

 主要条項は契約ごとに異なりますが、権利・義務の内容が適切かをチェックするのが基本です。

 契約書で用語の定義がされている場合、その内容が明確であることも大切です。定義が曖昧だと、契約当事者間で解釈に違いが生じてトラブルになることがあります。また、裁判になったときは、用語の解釈が争点とされることもあるので慎重にチェックします。

4)一般条項

 一般条項とは、契約内容にかかわらず、共通して定められることの多い条項です。チェックポイントはこの記事の後半と第5回で詳しく紹介します。

5)後文

 後文では、「上記合意成立の証しとして、本契約書を2通作成し、甲乙おのおの署名押印の上、甲乙各1通を保有する」というように、作成通数、署名押印を要する旨などが定められることが一般的です。

 上記のような後文があるにもかかわらず、記名押印しかないような場合は(署名がない場合は)、契約が成立していないと推定されるため、後文にどのような定めがなされているかをチェックします。

6)契約書作成日

 契約書作成日は大切です。契約書に特別の定めがある場合以外は、原則として契約書作成日が契約成立日(締結日)と推定され、契約の効力が発生する日となります。また、契約書作成日はトラブルが生じたときに、いつの時点の合意内容であるかを示す重要な証拠となるため、誤りがないかをチェックします。

2 契約書の形式面に関するチェックポイント

1)個別の条項に関するチェックポイント

 契約当事者の権利・義務を明確にするために、条項は、「誰が」「誰に」「何を」「いつ」「どこで」「何の目的で」「どのように」「いくらで」が明確になっているかをチェックします。

 また、通常、条項内では契約当事者は「甲」「乙」とされますが、これが逆になっていないか、日付や金額などの数字に間違いがないか、その他、誤字脱字がないかといったこともチェックします。契約書では、「ちょっとしたケアレスミス」がトラブルの原因になることもあるので注意しましょう。

2)契約書全体のチェックポイント

 条項間の矛盾や内容に重複がないかをチェックします。また、同じことを指しているにもかかわらず、「商品」「商品等」「商品など」といった、表記の揺れがないかについてもチェックします。

 これまで紹介してきた構成や形式的なチェックポイントだけでなく、解除条項、損害賠償条項といった契約内容にかかわらず、共通して定められることが多い条項についてもチェックが必要です。以降の章と第5回では、一般条項を定める際のチェックポイントについて紹介します。

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3 解除条項を定める際のポイント

1)法定解除と約定解除

 解除とは、一方の契約当事者の意思表示によって、契約を遡及的に解消することをいいます。契約書に解除条項がなくても、民法上は、一方の契約当事者に債務不履行があった場合、契約を解除できることが定められています。これを「法定解除」と呼びます。

 ただし、実務上は、この他にも契約を解除しなければならない事由が想定されるため、その旨を契約書に定めておく必要があります。これを「約定解除」と呼びます。

 法定解除に該当せず、かつ、契約書に約定解除事由として定めていない事由に基づいて、一方的に契約解除を行うことはできませんので、契約解除を主張して自身で行うべき契約上の義務を履行しないといった強硬策を講じると、債務不履行に基づいて損害賠償請求をされる恐れがあるなど問題になります。そのため、約定解除として必要な事由を漏れなく、契約書に盛り込むことが大切です。

2)約定解除の事由

 問題が起きたときに「契約を解除したいけれど、解除できない」ということがないように、想定される解除事由を盛り込んでおきましょう。一般的な解除事由としては、契約違反、差押え・仮処分・強制執行、破産・民事再生・会社更生の各手続きの開始申し立て、支払停止・不渡処分、営業停止処分などがあります。

 他にも必要な事由があるときは、契約書に定めます。例えば、業務委託契約では、相手方の責により委託業務が期日までに履行される見込みがないときを解除事由とすることがあります。

3)無催告解除

 通常、解除事由が発生した場合、相手方に催告をして契約に従って対応してもらうように促します。それでも対応してもらえないときに契約を解除します。

 無催告解除とは、こうしたプロセスを経ないで、解除事由が発生したら、相手方に解除の意思表示をした上で、すぐに契約を解除できるようにする条項です。スピーディーに契約を解除することができるため、解除事由が発生したときに自社への影響が大きい重要なことについては、無催告解除としたほうがよいでしょう。

 ただし、わずかでも解除事由に該当してしまうと、相手方からすぐに契約を解除されるリスクがあるため、内容は慎重に検討する必要があります。

4)解除後の措置

 契約を解除するときは“けんか別れ”のようになっていて、とても話し合いができる状況ではないことも少なくありません。そのため、解除後の措置は「協議して決める」というような話し合いを前提とせず、できる限り手続きなどを具体的に定めておきましょう。

 なお、次の記事では、契約解除などの流れとトラブル時の対応をまとめているので、参考にしてください。

 また、契約解除(法定解除)の要件について、2020年4月より施行される改正民法では現行民法と異なる定めが設けられることとなりました。詳細については、次の記事が参考になります。

4 損害賠償条項を定める際のポイント

1)損害賠償条項の意義

 民法上は、契約書に損害賠償条項がなくても、債務不履行によって損害が発生したときは、損害を受けた契約当事者に損害賠償請求権が発生します。とはいえ、損害発生時の交渉などをスムーズに進めるために、損害賠償条項を契約書に定めるのが一般的です。

 この際、損害賠償の範囲や損害賠償額を妥当なものにすることが大切です。損害賠償は「払う側はできるだけ少なく、もらう側はできるだけ多く」と考えるため、契約当事者間のパワーバランスが表れやすくなります。ただし、会社が許容できる負担には限りがあります。優位な立場にあるほうは相手方に配慮し、劣位な立場にあるほうは自社が許容できる内容になるようにすることが大切です。

2)損害賠償の範囲

 損害賠償の範囲は、損害額に影響する非常に重要なポイントです。例えば、契約当事者が受けた直接的な損害のみとするのか、あるいはそれに関連して第三者が受けた間接的・付随的な損害も含むのかによって、損害額は大きく違ってきます。

 このあたりは、実際に損害が発生したときに契約当事者間で争いになりやすいところなので、明確にしておきましょう。契約当事者間で合意できるのであれば、「直接的な損害のみとする」といったように、契約書で損害賠償の範囲を決めておくとよいでしょう。

3)損害賠償額の予定

 損害額の算定は争いになりやすい点ですが、契約当事者が合意すれば、契約書にあらかじめ具体的な損害賠償額を定めておくことができます(損害賠償額の予定)。こうすると、損害額を立証する必要がなくなります。

 また、契約書で定めた事項をしっかりと履行してもらうようにするために、あえて高めの金額を設定したり、逆に相手方の財務体質を考慮して、低めの金額を設定したりすることもできます。

 ただし、実際の損害額が契約書に定めた金額よりも多い(少ない)ときでも、原則、損害賠償額はあらかじめ定めた金額になります。また、あまりにも高額な金額を設定すると、公序良俗に反するとして、その全部または一部が無効とされてしまうこともあります。そのため、金額をいくらに設定するのかという点は慎重に検討する必要があります。

4)損害賠償額の上限

 損害賠償額が、会社が負担できないほど高額になってしまうリスクを避けるためには、「損害賠償の額は、第○条に定める年間業務委託料の○倍を上限とする」といったように、あらかじめ損害賠償額の上限を定めるのも一案です。システム開発に関する業務委託契約など、債務不履行等によって生じる損害がどの程度となるかの見込みが立ちにくい契約については、上限額を定めておくことが必要でしょう。

5)残存条項との整合性

 契約書の中には、「本契約の義務は、本契約終了後も○年間は引き続き効力を有する」といったように、契約終了後も効力が存続する条項が定められていることがあります。これを「残存条項」と呼びます。

 例えば、契約終了後であっても秘密情報の漏洩は経営に大きな影響があるため、秘密保持義務に関する条項は残存条項とすることが多いのですが、残存条項に反したときにも損害賠償を請求できるように、損害賠償条項も併せて残存条項の扱いにしておく必要があります。

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以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年7月9日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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執筆:日本情報マート
監修:竹村総合法律事務所 弁護士 松下翔

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