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「知的財産(権)に関する条項」「期限の利益喪失条項」「反社会的勢力排除条項」のチェックポイント

日本情報マート

2019.07.23

 「多くの契約書で一般条項は定められているものだから、あまり気にしなくてもよいだろう」と考えて、確認を怠ると、“思わぬ落とし穴”があるかもしれません。分からない点は、相手方に確認しながら、自社にとって不利な内容とならないように、また大きなトラブルにつながることがないように定める必要があります。

 第4回に引き続き、この記事では、多くの契約書に共通する一般条項に関するチェックポイントを紹介します。

1 知的財産(権)に関する条項を定める際のポイント

1)重要性を増す知財条項

 知的財産(権)に関する条項(知財条項)とは、請負契約の成果物に含まれる知的財産の取り扱いや、ライセンス契約における相手方の知的財産(権)の利用ルールなどを取り決めるものです。

 いわゆる知的財産には、発明や商標などのように所定の手続きを経て初めて知的財産権(知的財産の創作者の財産を保護する権利)として保護されるものと、著作権のように特に手続きを経ずとも、著作物が創作した時点で自動的に知的財産権として保護されるものがあります。

 請負契約の発注側やライセンス契約のライセンサーは、契約を締結する前に、既存および将来生み出される可能性がある知的財産を含めて関係する知的財産(権)を明確にし、それを守るための措置を講じる必要があります。この点を明らかにしておかないと、「知的財産(権)がどちらに帰属するのか」「知的財産(権)をどのように利用するのか」について、契約当事者間でトラブルになることがあります。

2)知的財産(権)の帰属

 非常に重要なことは、知的財産(権)の帰属を明らかにすることです。知的財産(権)は物体とは異なり、財産的な価値を持つ情報であることから、権利が誰に帰属するかが不明確である、権利者以外の人が簡単に知的財産を利用できる、といった特徴があります。

 成果物が物体である請負契約などでは、「納品と同時に所有権も相手方に移る」ことだけを定めるケースがあります。物体の所有権という意味ではこれで問題ありませんが、そこに知的財産(権)が含まれる場合、その帰属についても明確に定めなければなりません。

 例えば、ウェブサイトの構築のように成果物に知的財産(権)が含まれる契約においては、サーバーなどの所有者とデータなどの権利者が異なる場合があるので、知的財産(権)の帰属をより明確に定める必要があります。

 また、お互いが知的財産(権)を自社で保有したいと考えた場合、双方の話し合いによって帰属する知的財産(権)の範囲を定めます。時として、一つの成果物の中に知的財産(権)が複雑に入り組んでいるケースでは、一概に分けるのは難しいことがあります。この場合は、「知的財産(権)の取り扱いは双方の協議で決めるものとする」といったように定めることになります。

3)知的財産(権)の利用

 例えば、共同研究の場合、そこから得られた知見を別の研究に生かしたり、別のビジネスパートナーと提携したりして、ビジネスチャンスを広げたいと思うものです。請負契約から生まれた成果物を改変して、別の相手に販売するというケースも考えられます。

 一方、相手方(当初の共同研究者・ビジネスパートナー)としては、できるだけ利用を制限して、自社のビジネスの障害になる可能性は排除しておきたいと考えるため、利害の不一致からトラブルになることがあります。

 このようなケースでは、共同研究の成果などに関する知的財産(権)の利用範囲を制限することも定める必要があります。よくある内容としては、同業他社との共同利用を制限する、一定期間を置いてから利用を認める、利用にあたって事前承認を必要とするといった定めを置くことがあります。

2 期限の利益喪失条項を定める際のポイント

 金銭消費貸借契約では、借主は借りたお金を定められた期限までに返済すればよいことになります。このように、「債務の履行を期限までしなくてよい」という債務者(金銭消費貸借契約では借主)の利益を「期限の利益」といいます。

 これに対して、期限の利益喪失条項とは、一定の事由が生じたときに、期限の利益を喪失させて、あらかじめ定められていた期限の到来を待たずして、即時に一括して債務の履行を請求できるようにするものです。民法では、「債務者が破産手続開始の決定を受けたとき」「債務者が担保を滅失させ、損傷させ、または減少させたとき」「債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき」の3つを期限の利益喪失事由としています。

 実務上は、民法の3つの事由以外にも期限の利益喪失条項を定めるのが通常です。多く見られるのは、契約違反(例:弁済期限を遅滞した場合等)、差押え・仮処分・強制執行、破産・民事再生・会社更生の各手続きの開始申し立て、支払停止・不渡処分、営業停止処分などといった事由です。また、定め方として、相手方からの通知によって期限の利益が喪失するものと、相手方からの通知がなくても期限の利益を喪失するものがあります。

 いずれにしても、期限の利益は契約当事者間の信頼によって成り立つものなのです。契約当事者間の状況に応じて、期限の利益喪失条項の内容を検討することがポイントです。

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3 反社会的勢力排除条項を定める際のポイント

 反社会的勢力排除条項(反社条項)とは、契約当事者が暴力団などの反社会的勢力ではないことの表明や、反社会的勢力であることが判明した場合の契約解除に関する規定などを定めたものです。

 暴力団排除条例が各都道府県で施行され、会社においてもコンプライアンスが重視されている中、現在は契約書に反社会的勢力排除条項を盛り込むことが一般的です。

 反社会的勢力排除条項では、こちらが反社会的勢力でないことを表明するのはもちろん、相手方が反社会的勢力ではないことを確認しなければなりません。そのために、相手方の表明を受ける他、相手方に関する新聞記事や雑誌記事などの検索を行います。こうした確認は、契約当事者(代理人を含む)に対して行うのが基本ですが、グループ会社などについても確認できれば理想的です。

 また、反社会的勢力の範囲については、例えば「暴力団員、暴力団や暴力団員と密接な関係にある者、総会屋、社会運動等標榜ゴロなど」といったように定め、反社会的勢力全てが対象になっているかを確認します。

 ここまでは反社会的勢力との契約を未然に防ぐ予防措置ですが、反社会的勢力排除条項には、相手方が本条項に違反していることが判明した場合に、無催告解除をするための解除条項も定めることが重要なポイントとなります。

 なお、反社会的勢力排除条項については、業界団体がモデル条項例を公開していることがあるので参考にするとよいでしょう。

4 専属的合意管轄裁判所を定める際のポイント

 第4回で紹介した解除条項や損害賠償などの一般条項については、トラブルになりやすいからと慎重にチェックする人が多いと思います。一方、「まさか、裁判になることなんてないから大丈夫」と軽視されがちなチェックポイントとして、専属的合意管轄裁判所に関する条項があります。専属的合意管轄裁判所とは、契約に関するトラブルで裁判になることを想定し、あらかじめ「どこで裁判をするか?」を決めたものです。

 専属的合意管轄裁判所を定めていない場合は、法定管轄に従います。つまり、裁判を提起する裁判所が法律で決められているということです。基本的には被告の住所地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所となりますが、財産上の訴えの場合は義務履行地、手形または小切手による金銭の支払いの請求を目的とする訴えの場合は手形または小切手の支払地、不法行為に関する訴えのあった場合は、不法行為があった地の地方裁判所または簡易裁判所となります。

 例えば、北海道札幌市に本社を置くA社と、沖縄県那覇市に本社を置くB社が契約を締結したとしましょう。その契約では専属的合意管轄裁判所は定めていませんでした。そのような状況で、B社が契約義務を履行せず裁判になりました。この場合、契約の義務履行地がB社の本社の所在地であれば、A社は義務を履行してもらえない被害者であるにもかかわらず、那覇地方裁判所または那覇簡易裁判所まで行かなければなりません。これは一つの例ですが、専属的合意管轄裁判所は自社に近い場所のほうが有利だといえるでしょう。

 この他、専属的合意管轄裁判所を決めておくことで、裁判への対応がスピーディーになりますし、先の例であれば、自社から離れた場所で裁判が起こされることがなくなるなどのメリットもあります。

 なお、地方裁判所と簡易裁判所の違いは訴額により決まります。原則として、訴額が140万円を超える請求なら地方裁判所、訴額が140万円以下の請求なら簡易裁判所が管轄権を有します。

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以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年7月23日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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執筆:日本情報マート
監修:竹村総合法律事務所 弁護士 松下翔

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