
2023 中小企業の株主総会「株主総会にまつわるQ&A」
2023.05.24
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典型契約とは、民法その他の法律に規定されている契約のことです。民法では13種類の典型契約が規定されており、「有名契約」とも呼ばれます。これらの中には、売買契約や賃貸借契約といったなじみの深い契約から、寄託契約や終身定期金契約といったあまり聞いたことがない契約まで、さまざまなものがあります。
2020年4月1日に改正された民法(債権法)で、典型契約も一部改正され、ビジネスや生活への影響があります。そこで、今回の民法改正で典型契約がどのように変更されたのか、実務においてどのような影響があるのかについて解説していきます。
まず、民法が改正された背景を簡単にご紹介します。日本の民法典のうち財産法については、1896年(明治29年)に制定されて以降、120年以上の間、全般的な見直しがなされずにいました。その間、さまざまな裁判例によって形成された多くのルールが生まれました。中には、民法の条文をそのまま解釈するには無理があるものも出てきたため、民法が分かりにくい法律になってしまいました。
このような状況を踏まえて、これまでに蓄積された裁判例や社会通念に照らし、国民一般に分かりやすいものにするという基本理念のもと、2020年4月1日より民法は改正されました。典型契約の規定も例外ではなく、大きく内容が変わった部分も多数存在します。
では、典型契約の内容と今回の民法改正のポイントを確認していきましょう。
1)贈与
贈与とは契約当事者の一方が無償で財産を相手方に与える契約です。今回の民法改正において、実質的な変更はなく、実務への影響はほとんどないといえるでしょう。少し細かい内容になりますが、改正のポイントは次の通りです。
2)売買
契約当事者の一方が有償で財産権を相手方に移転する契約です。今回の民法改正において、さまざまな変更点がありました。実務に影響するような内容も多々含まれていますので、一度整理しておくことをお勧めします。改正のポイントは次の通りです。
契約不適合責任が認められるためには、契約内容に関する当事者の合意の存在が重視されると考えられています。そこで、契約書の冒頭において契約締結に至った背景を記載することや、「契約の目的」という条項を設けて当該契約がどのような経緯で締結されたのかを明確にしておきましょう。
売買契約については次の記事も参考になります。
3)交換
契約当事者がお互いに金銭以外の財産権を移転する契約で、いわゆる「物々交換」が該当します。交換契約についての改正はなく、実務上、当該契約の当事者となることもほぼないといえるでしょう。
4)消費貸借
契約当事者の一方が相手方から何かを借り、それを消費した上で、別の同等のもので返す契約です。お金の貸し借りが典型的な例になります。今回の民法改正において、幾つか変更点がありました。実務上の影響はそれほど大きくはありませんが、内容を理解しておく必要があるでしょう。改正のポイントは次の通りです。
そこで、民法改正においては、諾成的消費貸借契約を認めるに至りました。なお、軽率な消費貸借契約の締結を防ぐためにかかる諾成的消費貸借契約の成立のためには、書面で締結する必要があると規定されています。
消費貸借契約については次の記事も参考になります。
5)使用貸借
契約当事者の一方が相手方から無償で何かを借り、それを使用した後に相手方に返す契約です。友人同士の自動車や洋服の貸し借りなどが該当します。今回の民法改正において、使用貸借契約についても、消費貸借契約と同様、当事者間の合意のみで契約が成立する諾成契約に変更となりました。その他、幾つか押さえておくべき変更点があります。改正ポイントは次の通りです。
6)賃貸借
契約当事者の一方が相手方に賃料を支払って何かを借りる契約です。賃貸マンションやレンタカーなどが該当します。今回の民法改正において、賃貸借契約についてはさまざまな変更点がありました。実務に影響するような内容も多々含まれていますので、一度整理したほうがよいでしょう。改正のポイントは次の通りです。
賃貸借契約については次の記事も参考になります。
7)雇用
契約当事者の一方が働き、相手方がその労働に対して報酬を支払う契約です。報酬を支払うほうが雇用主となり、指揮命令権を持ちます。今回の民法改正においては、幾つか押さえておきたいポイントがあります。改正のポイントは次の通りです。
8)請負
契約当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払う契約です。今回の民法改正においては、次のポイントを押さえておけばよいでしょう。
請負契約については次の記事も参考になります。
9)委任
契約当事者の一方が相手方に法律行為をすることを委託し、相手方がこれを承諾する契約です。弁護士への依頼などが該当します。今回の民法改正において、幾つか変更点がありますが、実務上の影響はそれほど大きくないため、参考程度に押さえておけばよいでしょう。改正ポイントは次の通りです。
委任契約については次の記事も参考になります。
10)寄託
契約当事者の一方が相手方のために物を保管する契約です。倉庫業などが該当します。今回の民法改正において、要物契約から諾成契約に変更されました。その他、特段重要な改正ポイントはないでしょう。
11)組合
複数の契約当事者が出資をして共同の事業を営む契約です。共同出資で組合をつくり、何らかの事業を行うケースが該当します。今回の民法改正において、組合の加入、代理、脱退に関する規定など、これまでの一般的理解を明文化する形の規定変更があった程度で、特段重要な改正ポイントはないでしょう。
12)終身定期金
契約当事者の一方が、自分、相手方または第三者が死亡するまで、定期的に金銭を相手方または第三者に与える契約です。今回、改正事項はありません。
13)和解
契約当事者がお互いに譲歩をして、その争いを解決する契約です。今回、改正事項はありません。
私たちになじみが深い典型契約といえる売買契約、消費貸借契約、賃貸借契約などを中心に、さまざまな改正ポイントがありました。
例えば、2020年4月1日の民法改正前は売買契約書において当然のように規定されていた瑕疵担保責任は、「契約不適合責任」と改められました。契約書の記載内容についても、見直すことをお勧めします。また、契約不適合かどうかの判断のために必要ですので、これまであまり重要視されなかった「契約の目的」が、契約書において重要な意味を持つことになります。
また、金銭消費貸借契約書においては、民法改正前は貸付金を渡したことを前提とする要物契約として記載していました。これについても、貸し借りの合意だけで契約成立となるので、契約書の記載は変わってきます。
賃貸借契約書においては、契約終了時の原状回復義務について明確にその範囲を記載しておかないと、例えば、鍵の取り換えや電気焼けなどの修繕についての費用を賃貸人が全て負うことになってくるため、契約書の記載に留意する必要があります。
このように、今回の民法改正によって契約書の記載の見直しが必要になってくる典型契約があるため、これを機に契約書を見直し、必要に応じて弁護士などの専門家に相談し、新しい契約書のひな型を作成するなどしておくことをお勧めします。
以上
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年11月11日時点のものであり、将来変更される可能性があります。
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