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他社の事業に出資する3つの理由と留意点

日本情報マート

2020.01.17

 こんにちは、弁護士の松下翔と申します。

 前回の「【M&A】完全子会社、連結子会社、持分法適用会社のメリット」では、会社の事業を加速度的に成長させるための方法として、M&Aをご紹介しました。しかし、方法はそれに限らず、「出資」という方法もあります。M&Aを行うのではなく、他社に出資をするにすぎない場合は、出資先の会社の事業を自社事業として取り込むことまでは考えておらず、シナジー効果によって自社事業の拡大を目指す、出資によって配当や株式の値上がり益を期待している場合が多いといえます。

 他社の事業への出資を通じて会社を加速度的に成長させていく場合を念頭に、グループ体制構築の基礎知識を説明します。

1 他社の事業に出資する3つの理由

1)成長が見込める事業に出資

 第1の理由は、成長が見込める事業に出資をし、経済的に支援をすることによって、将来の株式の値上がりによるキャピタルゲインや配当を期待する場合です。この場合、自社の事業とのシナジーを考えるというよりは、純粋に出資した会社が上場やM&Aによるエグジットを通じて、評価額が高くなったタイミングで株式を売却してリターンを得ることが目的ということになります。

2)シナジー効果を期待する出資

 第2の理由は、自社で考えている新規事業への参入の第一歩や、既存事業とのシナジーを期待して出資をする場合です。事業を全て自前で拡大していくことはコストと時間がかかり、またリスクも高いことから、自社事業との関連性の中で興味がある会社への出資を通じて、事業シナジーを得ることが目的になります。

3)連携強化のための出資

 第3の理由は、友好的関係や会社間の結束力の強化を目的に相互に出資し、株式を保有する場合(株式持ち合い)が挙げられます。現在はこのような目的で他社へ出資する場合は減ってきており、重要性は低いものになっているため、本稿での説明は割愛します。

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2 グループ会社化を検討する際の視点

 他社の事業に出資をする場合のグループ会社化については、どのように考えればよいでしょうか。

 まず、大きな視点として、事業への出資はM&Aとは似て非なるものであるということです。

 すなわち、M&Aの場合は、基本的には相手企業の経営権を自社が譲り受け、会社の支配権を獲得し、事業を自ら行うことが念頭に置かれます。一方、事業出資は、会社の支配権を獲得して自ら事業を行っていくことは考えておらず、出資先の現経営陣が引き続き経営のかじを取っていくことが念頭に置かれています(出資した会社は、何らかの形で経営に関与するにとどまります)。

 そのため、事業出資の場合は、出資先の会社について、出資者自らが事業を主導することを念頭に置く完全子会社や連結子会社(「やさしく知りたい! 組織内再編でグループ体制をどう変える?」を参照)にするのではなく、持分法適用会社(持分法が適用される会社)として相応に経営へ関与していくかどうかを検討するにとどまることが通常です。

 以下で、事業出資の目的ごとに持分法適用会社とするべきか否かという視点で説明します。

1)将来の株式の値上がりによるキャピタルゲインや配当を期待する場合

 事業とのシナジーを考えることなく、純粋にキャピタルゲインや配当を期待する場合、関心事は事業の成長性・将来性となります。そのため、財政状態に大きな影響を与えるような新規事業を始めたりはしません。同様に、既存事業を譲渡するなどの事情がない限りは、出資者が出資先の会社の経営に関与することはあまりありません。

 また、支配力を得るための株式取得には、相当の投資コストが生じる場合が多いですが、純粋にキャピタルゲインや配当を期待するにすぎない場合は、そこまでのコストは想定しておらず、比較的低コストで一定の影響力だけを持つにとどまることが通常です。

 そのため、将来的に自社事業の一つにしていきたいといった事情がない限りは、持分法が適用される会社にして、自社のグループ会社とするようなことはあまりありません。

2)自社で考えている新規事業への参入の第一歩や、既存事業とのシナジーを期待して出資をする場合

 上記1)と異なり、自社の事業とのシナジーを期待します。すなわち、通常、出資先の会社が行っている事業が、自社の新規事業としてリスクを取って開始できるものであるか否かの判断や、既存事業とのシナジーを実際に発揮できる可能性があるか否かの判断が難しい場合に、出資先の会社の事業に出資をすることによって、低リスクで興味のある事業に関与していくことができます。

 また、自社で検討している事業拡大の方向性が単に既存事業の焼き直しにすぎず、新たなイノベーションを生み出すものではないような場合にも出資が行われます。つまり、既存事業に対してイノベーションを起こすべく、出資先の会社の経営を現経営陣に一任しながら事業に関与することで、自社事業と良い形でコラボレーションをしたり、新たな取引関係を構築し、既存事業を拡大したり(例:取引先・調達先ルートの拡大)できる場合もあります。

 この場合、シナジーを期待する自社事業の重要性(主力事業であるかどうか等)や、どの程度深く既存事業と結び付けていくのか(会社の重要なノウハウを開示しながら事業を行うのか等)、将来的にどういう形で新規事業を行っていくことを想定しているのか等によって、出資先への関与度合い(議決権やその他の方法による支配の程度)は変わってきます。

 そして、相応に経営に関与し、それに応じた責任を持つような場合(一つの基準として議決権を持株比率ベースで20%以上保有する場合)には、持分法適用会社としてグループ会社化し、損益を連結決算に反映させることになります。一方、それほど経営に深く関与しない場合には、あくまで第三者の出資先会社として、グループ会社化しないということになるでしょう。

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。関連する以下のタイトルも併せてお読みいただくと、より理解が深まると思いますので、よろしければお読みください。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年1月17日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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執筆:竹村総合法律事務所 弁護士 松下翔

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