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【弁護士監修】軽んじてはいけない「NDA(秘密保持契約書)」

日本情報マート

2019.12.10

日ごろからスタートアップ支援をされているのぞみ総合法律事務所の3名の弁護士に、創業間もない時期に抱えがちな法務トラブルと、それを避けるための方法や対応についてお話しいただいた内容をまとめたシリーズです。

第4回のテーマは、NDA(秘密保持契約書)の注意点です。

市毛弁護士

スタートアップでは、NDA(秘密保持契約書)に関するトラブルも多いです。リスクがあるのは、秘密情報を開示する際、NDAを結んでいない、取り扱い注意という口約束だけで開示している、中には口約束すらなくて、信頼関係の中での開示だから大丈夫だと思い込んでいる場合もあります。また、仮にNDAを結んでいても内容が不十分であったり、曖昧であったりして、結局、守りたい情報をしっかりと守れないというケースが結構あります。

営業秘密は、不正競争防止法という法律により法的に保護されており、侵害があれば損害賠償や差止請求が認められ、その反射的効果として不正や使用や開示に対する抑止力が働きます。「営業秘密」は、1.事業活動に有用であること、2.非公知であること、3.秘密として管理されていること、という3要件を満たす必要があります。この要件が満たされないと法的には保護されません。NDAなしに秘密情報を開示するということは、3.の点で秘密として管理されていないことになるし、2.の公知になるリスクもある、つまり、法的保護を放棄するに等しい行為です。形式的にNDAを締結しても、どの情報がNDAの対象になるのかが曖昧なままだと、NDAの拘束力が及ばず、やはり秘密として管理されていないと評価されるリスクもあります。

また、特許出願をする場合でも、「新規性」が要件となりますので、出願前にNDAなしに開示すると、開示先から広く世間に知れ渡ることも考えられ、「新規性」を喪失して権利化することができなくなることもあります。

りそなCollaborare事務局(以下「事務局」)

NDAを結ぶと重い責任を伴います。秘密情報をやり取りするのであれば理解できますが、しばしばあるのが会社概要やウェブサイトに掲載されているレベルの情報、外部に明らかになっている情報をやり取りするだけなのにNDAを結ぶケースです。本当にNDAを結ぶ必要があるのかなと思ったりします。

また、NDAを結んでいたとしても、「NDAベースで」と言えばどのようなことでも話していいのか、と不安になるくらい情報を明らかにする経営者もいるように思います。NDAは、どの程度話が進んだ段階で結ぶのが適切なのでしょうか?

清永弁護士

当初から、会社概要やウェブサイトに掲載されているレベルの情報だけで話が終わる想定ならNDAは不要でしょう。ただ、どういった話の展開になるのかが読めないことは多いですし、そうした場合は念のためNDAを結んでおいたほうがよいこともあります。

また、少し話をしてみて、事業化できるか検討しようという段階になったら、恐らくは、会社概要やウェブサイトに掲載されているレベルの情報だけでは終わらず、秘密情報もやり取りされるでしょうから、NDAを結んでおいたほうがよいことが多いですね。もちろん、結果として不要だったということもあるでしょうが、事業化検討段階に入ったときは、できるだけ早くNDAを結ぶに越したことはないと思います。

市毛弁護士

NDAを結ぶリスクは、情報を開示される側、つまり受け取る側にあり、厳格な管理義務や用途制限を守らなければならない場合や、NDAの内容によっては開示者と競合するビジネスや競合取引先との取引が難しくなることもあります。この点は、よく契約内容を確認する必要があります。

結城弁護士

NDAでは、結ぶことそれ自体だけでなく、「結んだ後に何をやろうとしているのか」が大きな問題になります。単発で契約を結ぼうとしているのか、継続的な契約を結ぼうとしているのか。ジョイントベンチャーをやろうとしているのか、M&Aをしようとしているのかなど、状況によって、例えばNDAにおいて定める内容(秘密情報の定義や有効期間など)が異なってくる可能性もあるので、この辺りは弁護士に相談したほうがよいかもしれません。

また、先ほどのご質問にもありましたが、NDAを結べば、どのような情報でも渡してよいかというと、もちろんそんなことはありません。例えば、M&Aでいえば、自社が競合先から買収のオファーを受けたとします。自社としては、買収される前提で秘密情報を渡していたとしましょう。しかし、結局はM&Aの話が白紙になれば、競合先に自社の秘密情報が渡ってしまうという結果だけが残ることになります。相手の頭の中に渡してしまった情報は返ってこないわけです。

ですから、どこまで情報開示をするのかということを考えてNDAを結んだとしても、情報管理は引き続き重要であるという意識を持っておかなければなりません。

同様に、NDAを結んだ後、相手方はこちらが開示した情報を適切に管理しているか、そもそも自社の担当者は、NDAで秘密情報には「秘密」である旨の明示をするという定めになっている場合に、そのような表示をしているかなど、NDAに基づいた適切な運用がなされているかという点にも、注意を払う必要があります。

事務局

NDAの有効期間が永久的なものがありますが、これは負担が大きすぎるように思います。このような永久的な期間が定められている場合も、契約期間を守らなければいけないものなのでしょうか?

市毛弁護士

相手が従業員を含めた個人の場合と、企業の場合とで考え方が変わってくると思います。個人の場合、未来永劫(えいごう)の守秘義務が、憲法上の基本的人権である職業選択の自由や営業の自由を制約する可能性があります。そのため、守秘義務の対象となる秘密情報の範囲が広すぎたり契約期間が長すぎたりすると、公序良俗違反として効力が否定される可能性もあると思います。

一方、被開示者が企業の場合、上記の基本的人権を考慮する必要はないので、期限がない守秘義務契約も基本的には有効に存続します。ただ、不正競争防止法の趣旨に鑑みて、例外的に、当該情報が公知となった場合には、義務の遵守は意味をなさなくなるので、守秘義務が終了すると解釈できる余地もあると思います。

事務局

ありがとうございました。NDAは相手との関係が始まって早い段階で結ばれるため、余計に注意しなければならないことが分かりました。

最終回となる次回は、スタートアップが最も注意すべきともいえる知的財産権の侵害についてお伺いします。

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以上

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執筆:日本情報マート
監修:のぞみ総合法律事務所 弁護士 市毛由美子、清永敬文、結城大輔

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