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【弁護士監修】知的財産権の侵害。御社は加害者にも被害者にもなる

日本情報マート

2019.12.24

 日ごろからスタートアップ支援をされているのぞみ総合法律事務所の3名の弁護士に、創業間もない時期に抱えがちな法務トラブルと、それを避けるための方法や対応についてお話しいただいた内容をまとめたシリーズです。

 第5回のテーマは、知的財産権の侵害です。

りそなCollaborare事務局(以下「事務局」)

スタートアップにとって、知的財産権も重要なテーマではないかと思います。

結城弁護士

知的財産権の侵害も、創業期の間もないころに起こりがちなトラブルです。自社のウェブサイトや営業資料を作成する際、他者の権利、特に知的財産権を侵害してしまうことが少なくありません。スタートアップの方々、特にネット系のビジネスに身を置く方々はITやウェブがとても身近にあり、ウェブ上にある写真や音楽などのデータを使うことに慣れています。

そういう感覚で、ビジネスの現場でも、法務ではない担当者が、ウェブ上の情報を使って自社のウェブサイトや営業資料などをつくってしまうことがあります。悪気はないのですが、結果として他者の著作権を侵害したり、あるいは著名人の画像などを勝手に使ってパブリシティ権を侵害してしまったりということで、トラブルになることがあります。

一方、ビジネスがある程度軌道に乗ってくると、自社の知的財産が他者に侵害されないように、しっかりと守ることも重要になってきます。しかし、この点についても、あまり意識されていないことが多いですね。例えば、「自社の知的財産を侵害されたときに、どのように相手に抗議して自社のブランドを守るのか」といったことを意識していない人も多いように感じます。

こうした対応について、早い段階で弁護士に相談してもらえれば有効なアクションも取りやすいのですが、特に問題意識を持たずに放置してしまうと、逆に他者に商標権を取られてしまうなどの事態が起きることがあります。スタートアップにとっては特に注意が必要です。

私が海外で働いていたとき、次のようなことがありました。スタートアップではないのですが、とある日本の著名な中堅企業が今後は海外展開に力を入れていこうということで、私が働いていた海外法律事務所に相談に来られました。その企業はそれまで日本国内では弁護士に相談したことがなく、「日本でビジネスをしているときは、特に弁護士は必要ありませんでした」と言われて、驚いた覚えがあります。本格的な海外展開ということで相談に来てくれたのでまだよかったのですが、既にその時点で色々海外で模倣をされてしまっていたので、もっと早く日本で弁護士に相談していただいていれば、色々とアドバイスが受けられたであろうに、という思いをしたことをよく覚えています。

清永弁護士

自社のウェブサイトをつくる場合、制作会社に依頼することも多いと思いますが、制作会社の中には、他者の著作権等を侵害しないように注意しながら制作にあたってくれる企業もあれば、そのような注意を怠り、クライアントから言われたままに動いて、他者の著作権等を侵害してしまう企業もあるようです。

結城弁護士

そういう意味では、フリー素材の使用にも注意が必要です。著作権フリーだと思っていたら、使用の条件が定められていることがあるからです。例えば、「使用する際には権利者への連絡が必要で、権利者が許諾すれば無償で使わせてあげます」というような条件です。

その条件を見落としていて、自由に使っていいと思っていたら、「著作権侵害だ」というクレームが来たというケースがありました。たとえフリーで使えるとしても、どのような条件があるのかという点は確認が必要ですね。

事務局

著作権侵害の場合、損害額というのはどれくらいになるものなのでしょうか? ケースバイケースではあると思うのですが、何か参考になる事例があれば是非、教えてください。

結城弁護士

例えば、私が過去に担当した案件ですと、権利者に無断でウェブサイトに写真を掲載して、トラブルになったケースがあります。権利者は海外の方です。その権利者側の弁護士事務所から、突然、写真の使用料、損害賠償の請求が、相談者のところに送られてきました。金額的には写真1枚の無断使用で、50万円程度を請求されました。これはあくまで一例で、普段、権利者がどれくらいの金額でライセンスしているかなどが勘案されて金額は変わります。もし訴訟になれば、さらに金額は増えます。

清永弁護士

ウェブサイト上で著作権がどういった形で侵害されているか、その侵害態様・状況の如何によって、莫大な金額を請求されることもあり得ます。知的財産権に関するトラブルは、そういう意味で怖いですよね。

市毛弁護士

ユーザーインターフェース、画面のデザインがそっくりだというようなケースも、極めて狭い範囲ではありますが、創作性が認められるものであれば著作権侵害になる恐れがあります。こうした場合、著作権法上の損害額推定規定を使って、権利者から「売上の何%の損害賠償を求める」という形で損害賠償請求されるということもあります。

事務局

例えば、ユーザーインターフェースをまねているとして訴えられた場合ですが、「自社としてはまねていない。参考にした部分はあるが、あくまで自分たちが考えたアイデアだ」というような主張は通るのでしょうか。

市毛弁護士

アイデアそれ自体は著作権法上の保護の対象となりません。著作権が保護しているのは創作性がある表現です。あるアイデアについて、誰が表現してもひとつの表現にしかならない場合には、そもそもその表現は創作性がないと判断されてしまいますので著作権法上の保護の対象となりません。まねたかどうか、つまり「依拠性」の有無については、次のステップの判断になります。つまり、対象が創作性がある著作物だという前提であれば、次にそれを複製等したかどうかの判断の一要素として、もとの著作物に依拠したかどうかが問題になります。

著作物性や依拠性に関する判断は判例の集積がありますが、裁判官によって判断が分かれることも多く難しい問題もあります。

事務局

なるほど、簡単には判断できないのですね。実際に裁判になるケースは多いのでしょうか?

市毛弁護士

例えば、大手の上場企業など広く名前が知られている企業では、「侵害している」と訴えられること自体がブランドや体面を損ねることがあります。そのため、万が一裁判になっても、費用をかけて防御してくるし、事前に、十分な費用をかけ準備をして、理論武装していることが想定されます。「侵害だ」としてこれにチャレンジするためには、相応の根拠と理論武装が必要になります。

他方、スタートアップの場合は、大企業に比べて、裁判で戦う体力が弱い傾向にありますので、裁判に持ち込まれることを回避するため、クレームをつけてきた相手から請求された金額をやむなく払わざるを得ない、というようなケースもあると思います。

事務局

お話しいただいたような侵害に関する損害賠償の請求は、頻繁に起こっているのですか?

結城弁護士

感覚的には、昔よりは増えている気はします。

清永弁護士

先ほどのユーザーインターフェースの話ですが、創作性があり著作物と認められるケースを前提にお話ししますと、全く知らずに独自につくった場合は、もちろん、「たまたま似ていた、偶然の一致だ、相手のユーザーインターフェースなんて見ていない」といった主張を行い、「依拠性」を争うことが考えられます。

しかし、例えば、相手のユーザーインターフェースが業界ないしは世の中で非常に有名だったりすると、裁判官も「見ていないはずはない」といった判断をすると思います。ですので、たとえ本当に相手のユーザーインターフェースを見たことがなかったとしても、ケースによっては、「見ていないし、依拠していない」という主張が苦しいこともありますね。

一旦、「侵害している」というクレームがついてしまうと、最終的には勝てたとしても、それまでの対応に時間も費用も掛かってしまいますし、負けてしまうと損害賠償金の負担等も生じ得ます。ですから、やはりそうしたトラブルはなるべく避けて通ったほうが、結果的に無駄な時間とお金は使わずに、本来の仕事に時間とお金を掛けられると思います。

事務局

スタートアップの場合、組織が若く、会社としての経験や知見が少ないからこそ、今回お話しいただいたような、「人・お金・契約」などに関するさまざまなトラブルが起こってしまう恐れがありますよね。

そこで、スタートアップであっても法令遵守、社内体制の整備などをしっかり進めていくのが理想ですが、やはりどうしても現実的に難しい場合もあると思います。そうしたときには、弁護士など専門家に相談する、シリーズ第3回「危ない取引先の見分け方」でお聞きした、日弁連(日本弁護士連合会)および各地の弁護士会の「ひまわりほっとダイヤル」の無料相談などを活用するといったように、外部の力を上手に使っていくことが大切なのだと感じました。

●ひまわりほっとダイヤル
https://www.nichibenren.or.jp/ja/sme/index.html

貴重なお話をありがとうございました!

りそコラでは、このシリーズのほかにも、スタートアップ×法務の記事を数多く掲載しています。少しでも皆さんのビジネスのお役に立てば幸いです。

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以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年12月24日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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執筆:日本情報マート
監修:のぞみ総合法律事務所 弁護士 市毛由美子、清永敬文、結城大輔

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