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金融機関と上手に付き合うコツ(2021年1月時点)

日本情報マート

2021.01.05

 「経営者が押さえておくべき資金調達のノウハウ」では、創業後5年以内の時期は資金調達が大きな課題であることを紹介しました。しかし、経営の苦労が5年で終わるわけではなく、特に資金繰りの問題は経営する限り続きます。
 例えば、新型コロナウイルス感染症の影響で、世の中は一変しました。筆者の印象では、8割以上の中小企業が、業績悪化など大きな影響を受けています。日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス特別貸付」をはじめとして、さまざまな金融機関で新型コロナ関連の融資制度が設けられました。金融機関は、かつてないほど多くの融資申込案件に対応しています。
 多くの中小企業にとっては、先行きへの不安が根強くある今、資金調達先である金融機関との付き合い方がますます重要になっています。

1 金融機関も取引先の一つと考えよう

 経営者の中には、「金融機関はなかなかお金を貸してくれないのでは……」と思う方もいるでしょう。しかし、コロナ禍では、中小企業を対象とした新型コロナ関連の融資制度が多様化したことで、取引のなかった金融機関へのアプローチがしやすい環境になりました(コロナ時代の金融機関との付き合い方の留意点などは第5章で後述します)。

 ただし、どのような状況であっても、付き合い方の基本となる部分は変わりません。金融機関は「きちんと支払ってくれるかどうか」という観点で、企業の信用状況をチェックしています。
 自社に置き替えて考えてみましょう。初めて取引する相手が、高額商品を「掛け(代金は後払い)で売ってください」と言ってきたら、「この相手は信用して大丈夫なのか?」と不安に感じて、すぐに売ることはできません。
 また、長い付き合いの取引先であったとしても、売掛金の残高が膨らんでいたら、「このまま掛け売りを続けるのは危険かもしれない」と考えるのが普通です。

 金融機関は融資という商品を売っています。融資を申し込む企業は、融資、つまりお金という商品を、掛けで買おうとしているともいえます。そして、多くの場合は、数百万円以上の高額になります。商品を提供する金融機関が、「きちんと支払ってくれるかどうか」という観点で、企業の信用状況をチェックするのは自然でしょう。

 金融機関は、仕入先や外注先と同様に、取引先の一つと捉えるのが妥当です。できるだけ条件のいい資金を、適時に提供してもらうためには、信用を積み上げていくことが大切です。そのためには、お互いが信用できる関係を構築することが不可欠です。そうすれば、効果的な資金をタイムリーに提供してくれる存在になります。

2 どのような金融機関と付き合えばいいか

 では、中小企業はどのような金融機関と付き合うのがいいでしょうか。
 長年、中小企業の資金繰りを目の当たりにしてきた筆者は、日ごろから「2~3先の金融機関と付き合うのがいいですよ」とアドバイスしています。1先だけとの取引だと円滑に資金調達ができない場面が想定されるため、A銀行がNGでもB信用金庫が支援してくれるという体制を取っておくのが望ましいのです。

 ただし、「複数の金融機関と取引する」といっても、最初から融資取引をするわけではありません。まずは預金口座をつくるなど、接点をもつことから始めましょう。新規に開設した預金口座を、決済口座(お客様・取引先からの振込の受け皿など、事業資金の入出金用口座)の1つにすれば信用構築につながり、必要時の資金調達の可能性が出てきます。

3 金融機関のサービスを利用する

 「金融機関は敷居が高いイメージがある」という経営者が少なくありません。確かに、「お金を借りる立場」という意識が強いと、そう感じるでしょう。しかし、金融機関は中小企業向けにさまざまなサービスを提供しているので、むしろ「使い倒そう」というつもりで積極的にアプローチしたほうが有効です。

 融資だけではなく、各種ビジネス情報の提供、セミナー、コンサルティング、ビジネスマッチングなど、金融機関の中小企業向けサービスには利用価値の高いものが数多くあります。こうしたサービスをうまく活用すれば、情報収集や人脈構築などに役立てることができます。
 このあたりの取り組みは金融機関によって違うので、Webサイトなどでチェックしてみるとよいでしょう。また業務への取り組み姿勢については、定期的に発行しているディスクロージャー誌も公開されているので、読んでみるといいでしょう。

 繰り返しますが、金融機関も取引先の一つです。商売では、新しい取引先を開拓しようとしたら、事前に相手のことをよく調べます。金融機関についても同じです。少なくとも、公開されている情報を収集しておけば、営業の担当者と接するときに、話のネタにもなります。

4 支店長や営業担当者との接し方

 金融機関の窓口は融資や営業の担当者になります。場合によっては、支店長と話をすることもあります。経営者の中には緊張したり、「あまりこちらの手の内を明かさないほうがいいのではないか」などと身構えたりする人もいるでしょう。
 しかし、堅苦しくならず、ざっくばらんな姿勢で話すのがよいでしょう。世間話やプライベートな話題を交えながら、事業の状況やこれから取り組みたい内容などを説明し、資金の必要性があるならその旨を伝えていきます。

 金融機関の担当者は、数字の分析については詳しいですが、個別のビジネスについては経営者のほうが詳しくて当然です。そのため、ビジネスが斬新なものであればあるほど、事業内容はできるだけ分かりやすく説明することが大切です。

 金融機関の担当者は頻繁に転勤があり、気心が知れた頃に異動してしまうことがあります。これに備え、自社の経営内容や課題、事業計画などを書面で渡しておきましょう。そうすれば、新しい担当者でもある程度、事前にこちらの情報に目を通せるので、全くのゼロからのスタートということにはなりません。

5 コロナ時代における留意点

1)金融機関の選択肢が広がる

 中小企業にとっては、新型コロナ関連の融資制度が多様化したことで、取引のなかった金融機関にアプローチしやすくなりました。例えば、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、民間金融機関、信用保証協会など、融資の相談ができる先の選択肢が広がっています。
 新型コロナ関連の融資制度は多様なので、制度の詳細説明を読んでも「どれが自社に適しているのだろう?」と分からないこともあります。そんなときに、制度の理解度が高く親切にアドバイスしてくれる担当者がいると、最適な判断ができます。

 複数の金融機関へアプローチできる現在は「いい担当者」と出会えるチャンスでもあります。融資以外でも、貴重なアドバイスをしてくれる可能性もあるので、金融機関に対して、臆することなく、積極的にアプローチしましょう。

2)柔軟な審査判断にも限界がある

 筆者が、各金融機関の対応を見て感じるのは、従来の「常識的基準」にとらわれない審査判断をしているということです。
 例えば、飲食店などの「現金商売」に対しては、これまでは運転資金の融資は限定的でしたが、「当面の危機を乗り越えるための仕入資金や経費の補填」といった運転資金を融資するようになりました。
 既に1回、コロナ特別貸付を融資した企業に対して、2回目の融資を実行したケースもみられます。

 しかし、金融機関は、際限なく支援できるわけではありません。従来よりも柔軟な判断をする中でも、企業の経営状況を見て、「これくらいが限界です」という線を引かざるを得ないのです。その場面になると、しばらくは融資による資金調達は難しくなります。
 さらなる融資を実現するには、非常に難しい課題ですが、業績を向上させて金融機関への信用力を高めることが求められます。知恵を絞って、この難局を乗り越え、しぶとく生き残る企業になりましょう。

 次回は、資金調達のために大切になる事業計画書について解説します。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年1月5日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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執筆:上野光夫
株式会社MMコンサルティング 代表取締役・中小企業診断士
1962年鹿児島市生まれ。九州大学を卒業後、日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)に26年間勤務し、主に中小企業への融資審査の業務に携わる。3万社以上の中小企業への融資を担当した。融資総額は約2,000億円。
2011年4月にコンサルタントとして独立。起業支援、資金調達サポートを行うほか、研修、講演、執筆など幅広く活動している。
リクルート社『アントレ』などメディア登場実績多数。
著書に
 『起業は1冊のノートから始めなさい』(ダイヤモンド社)
 『「儲かる社長」と「ダメ社長」の習慣』(明日香出版社)
 『事業計画書は1枚にまとめなさい』(ダイヤモンド社)
などがある。

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