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ベンチャー企業が融資を活用する際のポイント

日本情報マート

2018.07.31

 ここ数年、ベンチャー企業に関するイベントが増えてきたように感じます。また、公的なベンチャー支援施策も拡充されています。今後、後継者不足などを背景に廃業が増えると考えられる中で、ベンチャー企業は“経済発展のために欠かせない重要な存在”として、再認識されてきているのでしょう。

 多くのベンチャー企業は、販路拡大、研究開発、人材確保、資金繰りなど、様々な課題に悩んでいます。とりわけ、資金繰りについては、事業存続のカギを握ることから、多くのベンチャー企業にとって最重要課題といっても過言ではないでしょう。

 ベンチャー企業の多くは、ベンチャーキャピタルなどからの出資を受けることを念頭に置いています。しかし、出資が実現するまでには、資金提供者との交渉などで時間がかかるのが一般的です。スピーディに資金調達するためには、金融機関の融資が有効な選択肢の一つです。今回は、ベンチャー企業が金融機関の融資を活用するためのポイントや留意点を紹介します。

1 本稿におけるベンチャー企業の定義

 まず、本稿におけるベンチャー企業を定義しておきましょう。「ベンチャー企業の創出・成長に関する研究会最終報告書 ~ベンチャー企業の創出・成長で日本経済のイノベーションを~(2008年4月)」(ベンチャー企業の創出・成長に関する研究会)では、ベンチャー企業を「新しい技術、新しいビジネスモデルを中核とする新規事業により、急速な成長を目指す新興企業」と記載しています。

 最近では、AIやIoTなど斬新な技術を駆使したベンチャー企業が話題になっていますが、従来型の業種でも新たなビジネスモデルを実現している企業もあります。例えば飲食店でも、食材や料理方法、サービス、マーケティングなどでイノベーションを起こして多店舗展開を図るとすれば、それはベンチャー企業と呼べるでしょう。

 本稿では、業種にかかわらず、新技術や新しいビジネスモデルを構築して、大きな成長やIPOを目指す企業をベンチャー企業と捉えて解説します。

2 「死の谷」(valley of death)を乗り越えるために

 ベンチャー企業の成長段階を語る際に、「魔の川(開発段階に進めるか?)」「死の谷(事業化できるか?)」「ダーウィンの海(競争に打ち勝てるか?)」といった表現が使われることがあります。もともとは、製造業における「基礎研究→製品開発→事業化→収益化(市場地位確立)」といった各段階で越えなければならない壁を指します。

 最近は、起業して軌道に乗るまでの、資金繰りが厳しい状況を「死の谷」と表現するケースが増えています。ベンチャー企業は、起業後しばらくは製品開発や体制整備など“態勢を整える”必要があり、この間、手持ち資金が急速に減少することがあるのです。かといって収益化を急ぎすぎると、競争力ある製品・サービスがリリースできず、事業化に失敗する懸念があります。

 「死の谷」を乗り越えるために必要なのは十分な資金です。タイミングよくベンチャーキャピタルなどから潤沢な資金提供があればよいのですが、多くのベンチャー企業は期待通りの資金調達ができずに苦労しています。

 また、「死の谷」の訪れは1回とは限りません。一般的に、ベンチャー企業は「死の谷」を乗り越えたら、その後は右肩上がりに成長していくというイメージがあるかもしれませんが、実際には「山あり谷あり」です。例えば、製品・サービスについてA・B・Cの3種類をリリースするとすれば、最初の「死の谷」を乗り越えてAによる収益化が実現しても(これだけでも成功ですが)、B・Cを開発するための資金が必要となる、あるいはトラブルが発生するなどで、再び「死の谷」に直面することになるのです。

3 公的制度をうまく活用しよう

 ベンチャー企業が「死の谷」を乗り越えるために、出資(エクイティファイナンス)だけではなく、融資(デットファイナンス)もうまく活用したいものです。こうすることで、資金の枯渇を防げる可能性が高くなります。

 ただし、赤字が続いている企業にプロパー融資(信用保証なしの融資)を実行する金融機関は少ないのが実情です。そこで、創業間もないベンチャー企業が活用しやすいのは、信用保証協会の保証付き融資と日本政策金融公庫の融資です。

1)信用保証協会の保証付き融資

 信用保証協会とは、企業が民間金融機関から融資を受ける際に、保証人になってくれる公的な機関で、都道府県ごとに設置されています(一部市の保証協会もあります)。創業後成長途上で赤字の企業でも、将来性を考慮して返済力を判定するので、保証を受けられる可能性があります。この保証協会の保証を受けることで、ベンチャー企業も銀行からの融資を活用できるようになります。

2)日本政策金融公庫の融資

 日本政策金融公庫は政策金融機関で、創業融資に注力しています。ベンチャー企業向けの制度として特徴的なのは、「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」です。これは、5年1カ月以上15年以内の返済期間中、毎月支払うのは利息のみで元本は期限到来時に一括返済するというユニークな制度です。借入でありながらも、資本的な役割を果たす効果があります。

 信用保証協会と日本政策金融公庫をうまく活用して事業を軌道に乗せていけば、民間の金融機関からプロパー融資を受けられる可能性が高まってくるでしょう。また、公的な制度を利用することで信用力が高まり、民間金融機関の融資を引き出す「呼び水効果」も期待されます。

4 積極的な情報発信による客観的評価が重要

 筆者がクライアントの支援をしていて感じるのは、最近、信用保証協会や日本政策金融公庫、民間金融機関が、いずれもベンチャー企業に対して前向きな審査判断をしていることです。信用保証協会、日本政策金融公庫、民間金融機関が協調して融資を実行してくれるケースも増えています。

 あるIT系のベンチャー企業は、創業して4年目になりますが、技術開発に長期間を要したので未だに赤字です。自己資本もマイナス、つまり債務超過の状態です。それでも、日本政策金融公庫から1,500万円、民間金融機関から保証協会の保証付きで500万円の融資を受けることに成功しているので驚きです。

 同社が融資を受けられているのは、同社の成長性などが高く評価されているからですが、そのきっかけは、起業家本人の積極的な情報発信です。複数のピッチイベントなどに出場し、大企業にもアプローチした結果、大企業との取引の約束を取り付けました。これが、このベンチャー企業の評価向上に寄与し、融資につながったのです。

 自社や製品・サービスについてうまく情報発信すれば、メディアに取り上げられるなどして、知名度を高めることができます。また、ベンチャーを支援する立場の人たちとも積極的に会って、起業家本人や経営陣の“人となり”を知ってもらうことによっても、多くのチャンスが生まれます。

 金融機関に対して、「うちの製品・サービスはこんなに成長見込みがある」と自己主張するだけで信用を勝ち取るのは難しいものですが、「他者が高く評価している」という客観的な事実があれば話は別です。もちろん、ピッチコンテストで上位に入賞したとしても、すぐに融資に結び付くわけではありませんが、金融機関などから注目してもらえる可能性は高まります。

(注)読者の皆様へ:このリポートの記載内容は、あくまでも執筆者個人の見解であり、りそな銀行の見解を代表しているものではないことにご留意ください。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年7月31日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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執筆:上野光夫
株式会社MMコンサルティング 代表取締役・中小企業診断士
1962年鹿児島市生まれ。九州大学を卒業後、日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)に26年間勤務し、主に中小企業への融資審査の業務に携わる。3万社以上の中小企業への融資を担当した。融資総額は約2,000億円。
2011年4月にコンサルタントとして独立。起業支援、資金調達サポートを行うほか、研修、講演、執筆など幅広く活動している。
リクルート社『アントレ』などメディア登場実績多数。
著書に
 『起業は1冊のノートから始めなさい』(ダイヤモンド社)
 『「儲かる社長」と「ダメ社長」の習慣』(明日香出版社)
 『事業計画書は1枚にまとめなさい』(ダイヤモンド社)
などがある。

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