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個人事業主が知っておきたい、税務から見た法人成りのタイミング

日本情報マート

2018.10.17

 「法人成り」とは、個人で行っている事業を法人化することです。一般的に、法人で事業を行ったほうが取引先や金融機関からの信用力が高まり、節税の幅も広がります。そのため、個人として事業をスタートしてから一定期間経過した段階で、法人成りを検討する経営者が多くいます。

 ただし、個人に対する税金(所得税)と法人に対する税金(法人税)の課税の仕組みが違うため、誤ったタイミングで法人成りをすると、「個人で事業を行っていたほうが、税負担が少なかった」ということにもなりかねません。

 以降では、所得税と法人税の違いを踏まえ、個人事業主が法人成りを検討する際の目安となるタイミングや、メリット・デメリットなどを紹介します。

1 法人成りを検討する目安となる利益・売上

 法人成りを行う際は、事業の状況などに応じて慎重に検討・判断しましょう。節税を目的として法人成りのタイミングを計る場合、下記の金額を1つの目安にするとよいでしょう。

1)利益の金額

 1つ目の目安は「利益の金額」です。個人事業主が得た利益については、所得税が課されます。この所得税は累進課税(利益が増えれば増えるほど、段階的に税率が上がっていく制度)であり、その税率は5%から45%までとなっています。

所得税の税率を示した画像です

 一方、法人が得た利益については法人税が課されます。法人税は税率が23.2%と一定であり、さらに中小企業については年間800万円までの利益については、税率が15%(2019年4月1日以後に開始する事業年度については19%)に軽減されます。

法人税の税率と軽減税率を示した画像です

 基本的に、利益が少ないときは個人で事業を行ったほうが有利になります。そして、利益が一定程度を超えてきたタイミングで法人成りすることにより、高い税率(所得税)での税負担を回避することができます。

 なお、利益に対しては所得税や法人税の他、住民税や事業税も課されるため、実際にはこれらの税金も加味してシミュレーションを行うことになりますが、一般的には利益が800万円程度になったところで法人成りの検討を行うケースが多いようです。

2)売上高

 2つ目の目安は「売上高」です。利益の金額は所得税や法人税に影響を与えるものでしたが、売上高は消費税に影響を与えます。

 個人事業主は、原則として暦年で2年前の売上高が1000万円以上の場合に消費税を申告納付する必要があり、1000万円未満であれば申告納付する必要はありません。法人の場合、前々事業年度の売上高で同様に判断しますが、設立1期目と2期目は「前々期」が存在しないため、原則として消費税の申告納付は不要となります。

 従って、2年前の売上高が1000万円未満である期間中は個人事業主を継続し、1000万円を超えるタイミングで法人成りすることにより、消費税の申告が不要となる期間をさらに2年間延ばすことができます。

 なお、消費税の納税義務の判断は上記以外にも特例等があるため、最終的にはそれらも加味して判断する必要がある点に留意しましょう。

2 法人成りの税務上のメリット

1)役員報酬や親族への従業員給与

 個人事業主の場合、収入から費用を差し引いた利益に対して所得税が課されます。事業を手伝っている親族に対して給与を支払っていても、その給与を個人事業主の利益から差し引くには一定の制限があります。もちろん、個人事業主は、自分で自分に給与を支払うことはできません。

 一方、法人においては、役員である自分自身に支払う役員報酬や、事業を手伝っている親族に支払う従業員給与については、原則として全額が費用とされ、利益から差し引くことができます。

 なお、役員報酬や親族への従業員給与に対しては所得税が源泉徴収されることになりますが、複数の親族等に給与を支払って利益を分散すれば、低率の所得税率が適用されることになり、結果として税金の圧縮が可能となります。さらに、その役員報酬や給与を受け取る従業員全員から、「給与所得控除」と呼ばれる一定額の控除額を給与の金額から差し引いた上で源泉徴収の計算が行われるため、その節税効果はさらに大きくなります。

2)退職金の支給

 個人事業主の場合、仮に事業を取りやめたとしても自分に退職金を支給することはできません。

 一方、法人においては、役員であるご自身が退任した場合に支給する退職金については、金額が適正であるかぎり、費用とすることができます。

3)社宅経費

 個人事業主が賃貸マンションに居住している場合、そのマンションの賃借料については、個人事業主の経費として利益から差し引くことはできません。

 一方、法人の場合、その賃貸マンションを法人名義として借りた上で社宅として使用するなど、一定の条件をクリアすることによって、その賃借料を法人の経費として計上することができます。

3 法人成りの税務上のデメリット

1)交際費(法人成りのデメリット)

 個人事業主の場合、事業に関連して支払う交際費は全て経費となりますが、法人の場合、年間800万円まで(中小企業の場合)しか経費として認められません。ただし、交際費を年間800万円も使用しない場合は、さほどのデメリットにはならないでしょう。

2)均等割(法人成りのデメリット)

 法人の場合、たとえ赤字であっても均等割と呼ばれる住民税を必ず納めなければなりません。個人事業主についても均等割を納めなければなりませんが、その金額が数千円であるのに対し、法人の場合は最低でも7万円ほどとなります。

4 登記費用、社会保険、確定申告などにも注意

 個人事業主で一定程度の売上や利益が得られると、法人成りを検討される方も多いと思いますが、法人を設立する場合には、登記費用や登録免許税その他の初期費用が必要となる点に留意しましょう。

 また、個人事業主の場合、従業員が5人未満であれば健康保険・厚生年金の加入義務はありませんが、法人の場合には原則として強制加入となるため、法人成り後は社会保険料の負担が増加することも念頭に置いておく必要があります。

 さらに、個人事業主も法人も「確定申告」が必要ですが、一般的には個人事業主(所得税)よりも法人(法人税)の確定申告のほうが難しくなっています。添付すべき書類も多くなるため、正確な確定申告を行うために税理士などの専門家に依頼するのが一般的です。

 最後に、法人成りを検討するにあたって節税という点だけに目が行き過ぎると、法人成りした後に「想像と違った」といった結果になる事例も数多くあります。従って、法人成りについては専門家も交えつつ事前に十分に検討することをお勧めします。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年10月17日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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執筆:日本情報マート
監修:税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之

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