レバレッジは英語の“Lever”を語源とする言葉で、「梃(てこ)」を意味します。ビジネスでは「レバレッジ効果」などといいますが、これは自分自身の小さな力=小さな自己資本で、大きなビジネスを行うことを指します。

レバレッジを効かせる一般的な方法は、金融機関借入や社債発行です。つまり、他人資本を梃にして自己資本の何倍もの資金を動かすことで、大きなビジネスを実現することが可能となります。

“温めていた”有望なビジネスがあるにもかかわらず、十分な自己資本が手元にないために空想だけで終わらせてしまう……。経営者には耐えられないことかもしれません。そうならないための考え方に、レバレッジ効果があるわけです。ROEの解説を中心に、レバレッジについて紹介します。


財務・会計の基本が分かる

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1 ROEを高めるための方策

ROE(Return On Equity:自己資本利益率)が重要な指標であることは、皆の知るところです。ROEとは、企業が株主から信託された自己資本を使用し、どれだけ効率よく利益を稼いだかを示す指標であり、「当期純利益÷自己資本」で求めます。

投資家がROEを重要視するのは、稼ぐ力と利益還元の両方の要素が、この指標に盛り込まれているからです。ROEが市中金利を下回っている企業への投資は、投資家にとっては魅力的ではありません。また、金融機関も企業の信用度を測る指標としてROEを確認しています。

ROEを高めるためには分子である当期純利益を増やすか、分母である自己資本を減らすことになります。ROEの算式は次のように分解できます。これを見ると、ROEは売上高利益率、総資産回転率、財務レバレッジを掛け合わせたものであることが分かります。

ROEの計算方法とROEを上げるための方法を示した画像です

売上高利益率は、売上高に対してどれだけの利益を上げたかを示す指標です。総資産回転率は、一定期間中に売上によって総資産がどれだけ入れ替わったかを示す指標です。そして、財務レバレッジは、負債を活用して自己資本の何倍の資産を事業に投下しているかを示す指標です。

これらを組み合わせることで、ROEを高めることが可能となりますが、次章では、特に財務レバレッジに注目して考えていきましょう。

2 レバレッジを効かせる

レバレッジとは、金融機関借入などを梃にして、自己資本以上のビジネスを行うことでした。数値に置き換えて、具体的な事例を見ていきます。

A社、B社、C社の3社で共通しているのは、総資産が1000百万円、営業利益が100百万円、法人税等の税率が30%であることです。

一方、調達状況は異なります。A社の借入金は0円で、総資産の全額を自己資本で調達しています。B社の借入金は300百万円で、残額の700百万円を自己資本で調達しています。C社の借入金は500百万円で、残額の500百万円を自己資本で調達しています。B社とC社の借入金利は、ともに2%です。

A社、B社、C社のROEの違いは次の通りです。

A社、B社、C社のROEなどを比較した画像です

借入金が多いC社のROEが最も高くなっています。この表だけで判断すれば、レバレッジを効かせたC社が、自己資本を効率的に利用したといえます。

しかし、営業利益が減少するような局面になると、負債の利用によりROEを減少させてしまうことになります。ここでは、極端な例として営業利益が100百万円から10百万円に減少したケース(借入利率2%(負債コスト)よりROA(収益力)が低いケース)を見てみましょう。

A社、B社、C社のROEなどを比較した画像です

先ほどとは反対に、借入金が多いC社のROEが最も低くなっています。借入金による自己資本の減少割合より、利益の減少割合のほうが大きくなったためです。

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3 レバレッジとの相性

次に、どのような業界がレバレッジを効かせているのかを確認しましょう。次の表は業界別の負債比率を表しています。負債比率が大きいほど、負債の利用が多く、レバレッジを効かせたビジネスをしているといえます。

主な業界別の負債比率を比較した画像です

宿泊業、飲食サービス業では負債比率が特に高いことが分かります。宿泊業、飲食サービス業にはホテルなどを運営する企業が含まれています。ホテルという建物(有形固定資産)を保有するには多額の資金が必要となるため、自己資本だけで賄うことは難しく、金融機関借入などの負債を活用することになります。

逆に情報通信業は負債比率が低いことが分かります。情報通信業には通信業などのインフラ設備の投資が必要な企業も含まれていますが、インターネット関連やシステム開発関連企業は、人材が全てであり、大規模な投資は必要ない企業が多いと考えられます。

4 負債との付き合い方

負債を利用することでレバレッジを効かせ、より大きなビジネスを展開することができるのは大変魅力的です。しかし、「無借金経営のメリットとデメリット」でも紹介しているように、過度な負債利用は倒産リスクを高めます。また、資金繰りが厳しいからといったネガティブな理由による借入は、レバレッジ効果に直接つながるものではありません。

自社のビジネス内容や景気・金利などの外部環境を考慮し、積極的に投資を実行すべきか否か、またその投資の原資は自己資本で賄うのか、金融機関借入などによってレバレッジを効かせるのかを十分に検討する必要があります。


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執筆:グローウィン・パートナーズ株式会社
「プロの経営参謀」としてクライアントを成長(Growth)と成功(win)に導くために、(1)上場企業のクライアントを中心に、設立以来400件以上のM&Aサポート実績を誇るフィナンシャル・アドバイザリー事業、(2)「会計ナレッジ」「経理プロセスノウハウ」「経営分析力」に「ITソリューション」を掛け合わせた業務プロセスコンサルティングを提供するAccounting Tech® Solution事業、(3)ベンチャーキャピタル事業の3つの事業を展開している。
大手コンサルファーム出身者、上場企業の財務経理経験者、大手監査法人出身の公認会計士を中心としたプロフェッショナル集団であり、多くの実績とノウハウに基づきクライアントの経営課題に挑んでいる。

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