
借入金がないことは本当に良いことか?/起業3年目までにマスターし...
2020.12.28
Copyright (c) Resona Bank, Limited All Rights Reserved.
創業して間もないなどの理由から、もうけ(利益)が出ていない時期にはあまり気にならない税金の話ですが、事業が軌道に乗り、もうけが出てくると、経営者は会社の税金について真剣に考えなければなりません。
会社の税金(法人税)は、益金から損金を差し引いた所得に対して課されます(詳細は後述)。そのため、税金対策を検討する際は、所得をどうやって少なくするか、つまり損金の取り扱いが重要な意味を持つようになるのです。
とはいえ、損金についてざっくりとしたイメージはあるものの、具体的に費用との違いは何なのか、正確に答えられないという人が少なくありません。経営者なら、会社の税務会計の大きなテーマである損金に関する正しい知識を持っていなければなりません。
会社の税金は、収益から費用を引いた利益に対して課されると考えられがちです。しかし、前述した通り、税金は所得に対して課されます。この利益と所得の違いを知ることが、費用と損金の違いを理解するための重要なポイントになります。
利益とは、財務会計(いわゆる簿記に用いられる会計)の考え方に基づいて計算された会社のもうけをいい、次の計算式で求められます。
一方、所得とは、税務会計(税金の算出に用いられる会計)の考え方に基づいて算出された会社のもうけをいい、次の計算式で求められます。
税務会計上では、収益は益金に、費用は損金に言い換えられます。多くの項目は一致していますが、それぞれ根拠となる法令の違いから、一部取り扱いが異なる項目があります。そのため、「税務調整」によって、財務会計上の収益・費用に一定の調整を加えることで、税務会計上の益金・損金とし、所得を計算します。つまり、税務調整とは、税金計算の基となる金額を求めることです。
税務調整には次の4種類があります。
実務上、税金計算は利益に税務調整を加減算して算出した所得に税率を乗じて計算されます。税金計算の流れをまとめると次のようになります。
税金計算の仕組みが分かると、税金対策の考え方が見えてきます。基本的な税金対策の考え方は次の通りです。
(基本的な税金対策の考え方)
利益を増やすことは会社経営の基本ですが、税金対策を考える上では所得(利益)を減らすという逆の考え方が必要になります。つまり、損金が重要になってくるわけです。なお、所得を減らすために、益金を減らすという考え方もできますが、税務上、益金を減らす対策(売上の計上基準を変更するなど)は一般的には行われません。
それでは、次章において損金とはどのようなものかについて確認していきましょう。
損金は次の3つに分類されます。税法上で取り扱いが定められている項目以外は、財務上の費用と同じ取り扱いになります。
売上原価とは、その事業年度の売上(収益)に対応する売上原価、完成工事原価その他の原価をいいます。損金とされるのは、その事業年度に計上された売上と、直接対応しているものでなければなりません。この考え方は財務会計上も税務会計上も同じです。
なお、「売上原価=仕入高」とはなりません。仕入高は、商品の仕入れ時は費用として計上されますが、事業年度末に棚卸しを行い、その事業年度の売上に対応する部分(売上原価)と在庫となる部分(資産)に区分されます。よって、事業年度末の在庫に係る仕入高は、費用(財務会計上)にも損金(税務会計上)にもなりません。
販売費及び一般管理費その他の費用(以下「販管費等」)とは、償却費以外の費用で、その事業年度末までに債務が確定しているものをいいます。具体的には、次の3つの要件を満たしている費用となります。
例えば、3月末決算の会社において、3月分の給料(毎月末締め翌月20日支給)を未払計上した場合について、損金に算入できるかどうか(3要件を満たすかどうか)を考えてみます。
会社は、3月の労働の対価として給料を従業員に支払わなければなりません(債務が成立)。もちろん従業員は3月に労働というサービスを会社に提供しています(支払いの原因となる事実が発生)。そして、給料の支給額は毎月厳密に計算されています(金額の合理的な算定)。
このように損金となる販管費等の多くは、上記の3要件を満たしています。ただし、税法で取り扱いが別途定められている項目(役員給与、寄附金、交際費など)については、これらの要件を満たしているかどうかではなく、それぞれの定めに従わなければなりません(本稿では詳細な取り扱いについては省略)。
これらの中には、福利厚生費や会議費として計上できると思っていても、税務上の取り扱いでは給与や交際費としなければならないなど、判断に迷う項目が多くあります。
損失には棚卸資産の評価損や、災害等により生じた損失、金銭債権などの貸倒損失などがあり、それらの事実が生じた事業年度において損金に算入されます。そのため、損失に基づく事実の発生の有無やその発生時期の判断が重要になります。税法上では、損金に算入できる主な損失については、個別に通達が設けられています。
損金になるかならないかにより、納税額は変わり、会社のキャッシュフローに影響を及ぼします。また、損金を気にするということは、所得が出ている(利益が出ている)ということです。経営者は、今後の会社の成長のため、人材や設備投資などを増やすのか、はたまた将来何かあったときに備えてためておくのかなど、所得(利益)をどのように分配していくかを考えなければなりません。そのための第一歩として、経営者は、正しい知識を持って税金対策に取り組んでいかなければなりません。
また、実際に税金対策に取り組む際には、資金繰りや会社の資産状況などの幅広い視点も必要になるため、税理士などの専門家と相談して進めるようにしましょう。
以上
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年9月27日時点のものであり、将来変更される可能性があります。
※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。
【電子メールでのお問い合わせ先】 inquiry01@jim.jp
(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト http://www.jim.jp/company/をご覧ください)
ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。
RECOMMENDATION
借入金がないことは本当に良いことか?/起業3年目までにマスターし...
2020.12.28
M&A時の「のれん」と「負ののれん」について分かりやす...
2020.01.06
銀行の「融資審査」で準備しておきたいこと
2018.03.05
分かりやすい資金繰り表の作り方-ポイントとメリットを解説
2020.10.30
どちらに任せるべき? 税理士と社会保険労務士の業務の違い
2018.10.29