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【再監修】福利厚生費に関する税務上の留意点

日本情報マート

2021.12.01

 従業員のモチベーション向上や、コミュニケーションの円滑化などの理由で支出されることが多い福利厚生費。この支出には、「働きやすい会社にしたい!」という経営者の思いや、従業員への感謝の気持ちが込められています。
 税金を計算する上でも、福利厚生費は全額損金として取り扱われます。つまり、利益を減少させる要因になるということであり、税金対策としても効果的です。ただし、経営者が福利厚生の目的で支出したつもりでも、全てが損金に算入できるわけではありません。
 例えば、従業員の昼食代を負担した場合、会社の飲み会で2次会や3次会に行った場合などはどうなのでしょうか。迷いやすい福利厚生費の判断基準や、シーン別の留意点を確認していきましょう。

1 損金に算入できる福利厚生費とは?

 福利厚生費について、税務上の明確な定義があるわけではありません。一般的に、税務計算上の福利厚生費として損金に算入するためには、次の要件を全て満たさなければなりません。

(損金に算入できる福利厚生費の要件)

  • 会社の全従業員(役員を含む。以下「従業員等」)を対象とするものであること
  • 支出する金額がおおむね一律で費用が社会通念上(常識的に)高額ではなく、通常要する費用として一般的な範囲内であること
  • 現金支給ではないこと

 明確な金額の決まりがあるわけではなく、「社会通念上」や「通常要する費用として一般的な範囲内」という曖昧な判断基準があるものの、上記の全ての要件を満たさないものは、福利厚生費として損金に算入することはできません
 なお、福利厚生費とされない場合、支出の背景や用途などをもとに他の費用として取り扱われます。例えば、社内の特定の人だけに弁当を支給した場合や、豪華過ぎる忘年会などは、税務上の交際費で処理しなければなりません。交際費は損金に算入できる金額に限度があるため、費用として処理した場合でも、一部が損金に算入できないことがあります。
 また、忘年会費などを直接、従業員等へ現金支給している場合は、給与の一部支給として給与に該当し、給与課税(源泉所得税)の対象となります。損金と給与課税の関係については、「【再監修】社員へのプレゼントは給与課税されるのか?」を参照ください。

 以降で具体的なケースを見ていきましょう。

2 新年会、忘年会など会社の飲み会費用を会社が負担するケース

1)会社の飲み会費用に関する税務上の取り扱い

 新年会、忘年会、歓迎会、送別会など、会社ではさまざまな目的で飲み会が開かれます。いずれも社内の親睦を目的としたイベントですが、その費用を損金に算入するためには、前述した「損金に算入できる福利厚生費の要件」を全て満たす必要があります
 そのため、特定の従業員等を対象とした懇親会や、残業で会社に残っている従業員等を連れて飲みに行った場合(全員が残業している場合を除く)などは、社内の飲み代とはいえ、福利厚生費ではなく、交際費として処理することになります。

2)1次会、2次会、3次会が実施された場合

 飲み会を開催した場合、流れで2次会、3次会と続くこともあるでしょう。この場合、福利厚生費として損金に算入できるかどうかの判断基準は、前述した「損金に算入できる福利厚生費の要件」に加えて、お店の業態など、そのときの状況が会社のイベントとして常識的であるかがポイントとなります。とはいえ、3次会まで行くと、福利厚生費か交際費かという以前に、会社の経費として認められないケースが少なくありません。

3)参加人数が少ない場合

 一方、会社のイベントへの参加に消極的な従業員等もいます。飲み会の連絡は全員にしたものの、半数以下しか参加しないこともあると思います。このようなケースでも、その飲み会費用は福利厚生費として損金に算入することができるでしょう。
 その場合、重要なのは参加人数ではなく、全員に飲み会があることを通知しているかどうかという点になるからです。飲み会の開催について周知する場合には、口頭ではなくメールなど後で確認できる形で行うようにしましょう。

 次に同じ飲食でも、飲み会費用とは少し取り扱いが違うケースを紹介します。従業員等の昼食代(食事価額)などを会社が負担するケースです。昼食代などが損金に算入できるか否かについては、国税庁のタックスアンサーにおいて明確な要件が公表されています。

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3 従業員等の昼食代などを会社が負担するケース

1)食事代に関する基本的な税務上の取り扱い

 会社が社員食堂を運営する場合や、まとめて弁当を注文して従業員等の昼食代を負担する場合があります。従業員等のための支出とはいえ、全ての食費を無条件に福利厚生費として損金に算入することはできません
 これらの場合における税務上の判断については、食事代が従業員等に対する給与(食事という現物支給)と見なされるかどうかがポイントです。なお、給与と見なされた場合、その食事代は給与課税の対象となり、会社側は源泉所得税を徴収しなければなりません。
 会社が負担した食事代を福利厚生費として損金に算入するためには、次の要件を満たす必要があります。

(食事価額を損金に算入するための要件)

  • 従業員等が食事価額(以下「食事代」)の半分以上を負担していること
  • 次の算式により計算した金額が3500円(税抜き)未満であること 食事代-役員または従業員が負担している金額

(注)食事価額とは、例えば弁当支給の場合における仕出し弁当業者に支払う価額、社員食堂にて食事を提供している場合には、食事の材料費や調味料などの食事を作るために直接かかった費用の合計額になります。

 例えば、1カ月当たりの食事代が5000円で、従業員等が負担するのは1000円の場合、上記の要件の1つ目「1.従業員等が食事代の半分以上を負担していること」を満たしていません。この場合、食事代と従業員等の負担の差額(4000円=5000円-1000円)は給与として給与課税を行う必要があります。

2)休日出勤時や深夜残業時などに食事代を負担した場合

 従業員等が休日出勤したときや、残業により夜食を提供するケースもあるでしょう。こうしたケースにおける食事の提供については、原則、現物給与として給与課税を行う必要はありません。
 ただし、食事が豪華過ぎる場合などは、現物給与と見なされることがあります。そのため、社内規定等により食事を提供する際の価額(通常の飲食としての範囲内)などをあらかじめ定めておくなど、社内のルールとして従業員等に通知しましょう。

3)社員食堂にて、従業員等に対し無料で食事を提供した場合

 人材の確保やコミュニケーションの円滑化、健康経営の実践などのために、従業員等に社内食堂の食事を無料で提供している会社があります。従業員等の中には福利厚生として食事の提供を望む声も多いようです。
 このような場合でも、基本的には前述した「食事価額を損金に算入するための要件」を満たしていないときは、従業員等側において給与課税を行う必要があります。そのため、無料で食事提供とうたっている場合においても、実際には従業員等に給与課税され、源泉徴収が行われています。ただし、双方が望む福利厚生ということであれば、従業員等側での給与課税が生じたとしても、会社の経費(追加の給与)として検討する価値はあるかもしれません。

4 従業員等の冠婚葬祭時に慶弔金を支給した場合

1)慶弔金に関する基本的な税務上の取り扱い

 結婚祝い、出産祝い、香典、病気見舞いなど、従業員等の冠婚葬祭時には会社から慶弔金が支出される場合があります。これらの慶弔金は、福利厚生費として損金の額に算入することができます
 慶弔金の支払いについては、あらかじめ「慶弔見舞金規程」を定めておく必要があります。なお、支給に際しては従業員等の間で不公平があってはいけません。また、その支払額については、規程で定めた金額の範囲内で、役位別または勤続年数別、支給する親族の範囲別などにより、世間相場からかけ離れていない、一般的な金額で定める必要があります。

2)領収書等がない場合

 会社処理として注意すべきことは、慶弔金の支給に際して領収書等がない場合が多いと思われます。このような場合の経理処理としては、領収書等がなくとも支払いの事実が分かるようにメモ書きでも構いませんが、慶弔に関する案内状など、支給の事実が残るようなものと一緒に保存しておくとよいでしょう。

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以上

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執筆:税理士 石田和也

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