
”シェアリングエコノミー”で稼いだ所得。税金のルールはどうなる?
2020.03.30
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企業の成長過程では、さまざまな設備投資が必要になります。取引が大きくなると製造機械や装置の刷新・増設、人材が増えるとオフィスの拡大、さらにオフィス機能を充実化させるための備品調達などです。
設備投資に要した支出は、損金(税務上の費用)として、法人税の負担を軽減させることができます。ただし、金額や取引の性質によって損金に算入できるタイミングは、大きく2つに分けられます。
1つは、使い始めた年に消耗品費などとして全額を損金に算入するケースです。もう1つは、使い始めたときには一旦固定資産に計上し、使用可能期間を見積もり、その期間内で減価償却費として少しずつ損金に算入するケースです。
いずれのケースに該当するかの判断は、税務上のさまざまなルールによって決まりますが、処理にミスが生じやすい科目であり注意が必要です。また、修理・改良を行った場合や、売却などをした場合も取り扱いに注意が必要です。
この記事では、固定資産のうち有形固定資産を対象とした損金算入に関する基本的なルールを紹介していきます。
取得した固定資産のうち、「使用可能期間が1年未満」または「取得価額が10万円未満」のいずれかに該当するものは、少額減価償却資産といいます。少額減価償却資産の取得価額は、事業のために使い始めた年の損金に算入することができます。なお、取得価額の全額を損金経理(費用として処理)することが要件となります。
つまり、固定資産として計上するのではなく、消耗品費などの費用と同様に処理できます。そのため、数年間にわたり減価償却を行う必要がありません。
青色申告を行う中小企業者等(資本金の額などが1億円以下で一定の法人)の場合は、「取得価額が30万円未満」である固定資産を少額減価償却資産として処理し、事業のために使い始めた年に、その全額を損金に算入することができます。これにより、その事業年度の課税所得を減らすことができるのがメリットです。少額減価償却資産の特例の限度は、1事業年度で総額300万円までとなります。
少額減価償却資産に該当しない固定資産は、減価償却が必要になります。減価償却とは、取得価額を耐用年数にわたって適正に配分(減価償却費として計上)することをいい、減価償却により正しく期間損益計算を行うことが会計上の目的です。ただし、土地のように使用や時間の経過で価値が減少しないと考えられているものは、減価償却を行いません。
経営者から見ると、減価償却費はキャッシュアウトを伴わない費用であり、タックスプランニングを含めた損益計算において無視できない制度です。前述した中業企業等の少額減価償却資産の特例を使うことなどによって、その事業年度の法人税の支払いを抑えることができるからです。
では、減価償却はいつから、どれくらいの期間行うのでしょうか。まず、減価償却は事業のために使い始めた日から計算するため、基本的には取得時に減価償却方法や耐用年数を判断しなければなりません。この耐用年数が減価償却の期間であり、税務上の耐用年数は法令により定められています。固定資産の種類・仕様・用途などさまざまな要素ごとに細かく規定されており、それぞれの固定資産の特徴を踏まえて決定します。実務上は、国税庁の「耐用年数表」で確認し、対応する耐用年数を決定することになります。
主な減価償却方法としては定額法、定率法、生産高比例法があります。なお、生産高比例法は、対象資産が限定されているため、説明を省略します。
定額法とは固定資産の耐用年数にわたって、毎期、均等額を減価償却費として計上する方法です。一方、定率法とは固定資産の耐用年数にわたって、毎期、前期末の未償却残高(取得価額-減価償却累計額)に一定の割合を乗じて計算した金額を、減価償却費として計上する方法です。
固定資産の種類ごとに適用できる減価償却方法が決められています。新たに取得した建物・建物附属設備(電気・ガス設備やエレベーターなど建物に附属している設備)・構築物(緑化施設や庭園などの土地の上に定着している工作物など)については、定額法で減価償却を行います。その他の固定資産(生産高比例法の適用が認められているものを除く)は、定額法または定率法のいずれかを選択して減価償却を行います。税務署への届け出をしなければ定率法が法定償却方法となります。
定額法と定率法の主な違いは、固定資産の減価償却費を、耐用年数にわたって均等に計上するか、耐用年数の初期には多く、後になるにつれて少なく計上するかという点です。なお、耐用年数を通して見た場合、減価償却費の合計額はいずれも同額になります。
ここで、期首に車両(500万円、耐用年数5年)を取得した場合の定額法と定率法の減価償却費の推移を見てみましょう。
一括償却資産とは、取得価額が20万円未満の減価償却資産をいい、3年間の均等償却をすることができます。
つまり、機械装置や工具器具備品などの個々の耐用年数を把握し、固定資産として計上するのではなく、一括償却資産として計上し、3年間の均等償却を行います。そのため、通常の減価償却を行う必要はありません。また、通常の減価償却の計算の基礎となる耐用年数は3年を超えるものが多いことから、一括償却資産は、短期間で損金に算入することができます。
以上、固定資産を取得した場合の取り扱いをまとめると、次の通りになります。
長年使用した固定資産が故障してしまった場合は、修理・改良(以下「修理等」)が必要です。ここで問題となるのが、その修理等のための支出の取り扱いです。
この場合、支出した金額を修繕費などとして損金に算入するか、または新たな固定資産の取得とみなし、一旦固定資産として計上する支出なのか判断しなければなりません。なお、固定資産として計上しなければならない修繕費を、税務上「資本的支出」と呼びます。
つまり、固定資産の修理等のうち、「通常の維持管理または原状回復のための支出」は修繕費、「固定資産の価値や耐久性を高めたと認められる支出」は資本的支出として処理します。例えば、資本的支出に該当するのは、次のようなものがあります。
ただし、上記の事例だけでは判断のつかない修理等が多く、次の修繕費と資本的支出の判定フローチャートを参考にしながら、実際の修理等ごとに検討する必要があります。
長年使用したことによる老朽化や、新モデルの開発によって陳腐化したことにより、固定資産を廃棄・売却したときには、その時点における固定資産の帳簿価額と売却価額の差額を、固定資産廃棄(売却)損益として損金(または益金)に算入します。この辺りは簿記の話となりますが、要するに売却価額が帳簿価額を下回れば損金、上回れば益金となります。なお、廃棄・売却の際に、運送費や廃棄手数料などの付随費用が生じたときは、その金額は固定資産廃棄(売却)損益に含めて処理します。
上記の取り扱いが基本ですが、一括償却資産として3年間の均等償却をしているものを、償却期間中に廃棄または売却した場合は異なる取り扱いをします。一括償却資産に係る固定資産廃棄(売却)損に相当する額は、損金に算入することができないため、廃棄または売却した年においても、引き続き3年均等償却を行うことになります。実務上は、一度、固定資産廃棄(売却)損を計上し、税務申告書上で調整をするという、少々面倒な手続きを取ります。
また、実際に廃棄せずに保有している固定資産であっても、次の場合には固定資産廃棄損として損金に算入することができます。
以上
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