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固定資産の評価損を損金に算入できるケースとは?

日本情報マート

2019.04.10

 企業にはさまざまな資産があります。例えば、販売目的の棚卸資産、商品を製造するための機械装置、オフィス家具やパソコンなどの器具備品などです。これらの資産(棚卸資産を除く)は、通常1年以上の長期間にわたって使用し続けるものです。また、棚卸資産についても、売れ残った場合は在庫として、長期間保有し続けることがあります。

 固定資産や棚卸資産を長期間使用または保有し続けることで生じる価値の減少は、財務上と税務上で取り扱いが異なり、また、さまざまな判断が必要になります。

 この記事では、中小企業の取引にも見られる棚卸資産・固定資産(ソフトウエアを含む)について、評価損の税務上のルールを紹介していきます。

1 評価損に関する財務と税務の違い

 固定資産を長期間使用し続けたり、保有し続けたりした場合には、使用や時間経過による劣化はもちろん、新製品の発売や社会の流行など外部環境の変化などにより、その価値は購入時に比べて減少していきます。財務上は、これらの価値の減少を財務諸表上に反映しなければならないため、「評価損」を計上します。

 一方、税務上は、原則として評価損は損金(税務上の費用)に算入できませんが、例外もあります。それは、特定の事情により資産の価値が減少した場合です。

 評価損を損金に算入すれば、所得(税務上の利益)が小さくなるため、評価損が出そうな資産があれば、損金に算入したいと思うのが経営者です。しかし、「もう売れそうにないから」「使えそうにないから」など、自分の感覚で判断して評価損を計上することはできないのです。評価損を損金に算入するかどうかの判断は難しく、税務調査でも重点的に調べられる項目の一つでもあるので注意しましょう。

2 棚卸資産に関する評価損

1)評価損の税務上のルール

 棚卸資産に係る評価損は、税務上、次のいずれかの事実が生じたことにより価値が減少した場合に限り、損金に算入できます。

評価損の損金算入が認められる事由(棚卸資産)を示した画像です

 このように損金に算入できる特定の事実が決められているとはいえ、「著しく損傷したこと」や「著しく陳腐化したこと」という曖昧な表現であるため、実際に評価損ができる事由なのかどうかの判断が難しくなります。

 なお、著しい陳腐化とは、資産そのものに欠陥が生じたわけではないものの、経済的な環境の変化に伴ってその価値が著しく減少し、今後回復しないと認められる状態にあることをいいます。

 例えば、流行性に左右される季節商品で、今後、通常の価額では販売することができないことがこれまでの実績などから明らかである場合や、形式・性能・品質等が著しく異なる新製品が発表されたことにより、その商品につき今後、通常の方法により販売することができないようになった場合などがあります。

2)棚卸資産に係る評価損の留意点

1.過去の実績などを正確に記録する

 流行や季節感が売り上げを大きく左右する商品(アパレル商品など)が売れ残ってしまった場合、「経済的な環境変化により著しく陳腐化したこと」が損金に算入するための前提条件です。具体的には、季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが過去の実績などから明らかでなければなりません。

 例えば、バーゲンセールで割引販売しても売れ残ってしまったなど、通常の価額では販売できない実績があるなど、客観的に説明できる事象が必要です。ただ売れ残ったというだけでは評価損の損金算入が認められない可能性が高いため、過去の実績などを正確に記録しておきましょう。

2.値下げ金額ではなく、値下げの理由で判断する

 在庫処分のため、当初の販売価額から大幅に値下げして販売することもあると思いますが、評価損が損金に算入できるかどうかのポイントは、値下げ金額が大きい小さいではなく、値下げの理由が何かです。

 値下げの理由が、物価変動、過剰生産、建値の変更などの場合には、評価損は損金に算入できません。例えば、他社との競合を理由として値下げするなど、社内の経営戦略の下に行った値下げなどが該当します。

 ただし、季節商品や、モデルチェンジが定期的に行われる製品(パソコン・電化製品など)に対して大幅に値下げを行った場合、一定条件の下、評価損の損金算入が認められています。例えば、電化製品などは数年、短いものであれば半年ほどで新製品が登場します。これらの製品は、新製品の販売前に、見切り販売をすることがあります。見切り販売が習慣化しているものについては、過去事例や他社事例など、慣例となっていることが証明できる事例を説明できるようにしておきましょう。

3.必ず損金経理の処理をする(評価損として会計処理を行う)

 棚卸資産の評価損を損金に算入するには、損金経理をしていることが要件になっています。損金経理とは、費用・損失として会計処理をすることをいいます。つまり、評価損は損失として財務諸表上に計上しなければなりません。

 この要件が問題となるのは、経営者や現場担当者が陳腐化などにより売れないと判断して、期末の在庫にカウントしないで売上原価を計算した場合です。この場合、会計上では、本来、評価損として売上原価とは別に処理しなければならない項目を、売上原価に含めて処理されることになります。

 売上原価は、あくまで販売に対応した商品などの原価です。価値の減少を表す評価損を含めて処理してはいけません。利益(所得)に与える影響は同じであっても、会計上の処理を正確に行うようにしましょう。

3 固定資産に関する評価損

1)評価損の税務上のルール

 固定資産に係る評価損は、税務上、次のいずれかの事実が生じたことにより価値が減少した場合に限り、損金に算入できます。なお、固定資産には、機械装置や器具備品のような有形固定資産だけでなく、ソフトウエアのような無形固定資産も含みます。

評価損の損金算入が認められる事由(固定資産)を示した画像です

 固定資産も、棚卸資産と同様、「著しい損傷」や「著しい変化」という曖昧な表現で規定されているため、実務上での判断が難しくなります。

 なお、「所在場所が著しく変化したこと」とは、地盤沈下や土壌汚染などが生じたことで地価が下落した場合などをいい、リーマンショックのような経済環境の悪化による地価変動などは含まれません。

 また、会社側が意図的に評価損の計上や、その金額を調整することを防ぐ目的で、次のような事情に基づく評価損は損金に算入できません

  • 過度の使用又は修理の不十分等により当該固定資産が著しく損耗していること
  • 当該固定資産について償却を行わなかったため償却不足額が生じていること
  • 当該固定資産の取得価額がその取得の時における事情等により同種の資産の価額に比して高いこと
  • 機械及び装置が製造方法の急速な進歩等により旧式化していること

2)固定資産に係る評価損の留意点

1.写真など価値が低下したことを客観的に証明できる資料を保存する

 固定資産の評価損については、その固定資産の状態や使用状況などにより、評価損を損金に算入できるかどうかを判断することになります。税務調査などで、評価損の正当性を証明するためには、評価損を計上した時点の状況を正確に、かつ客観的に説明できなければいけません。固定資産がどのような状態にあるのか、写真や詳細な稼働記録など、価値が低下したことを客観的に証明できる資料を保存しておくことが大切になります。

2.経済的な環境変化などを理由に評価損を計上しない

 新型の電化製品が発売された場合など、既存の製造用機械装置の価値が著しく低下した場合(陳腐化)においても、その機械装置に係る評価損は損金に算入できません。

 棚卸資産の場合と異なり、固定資産は減価償却により毎期費用計上されることになっています。そのため、価値の低下は減価償却の範囲内で行うことになっています。

 固定資産の価値が著しく低下した場合(陳腐化)には、評価損としてではなく、耐用年数の短縮(税務署の承認が必要)により、その事業年度に損金算入できる減価償却費の額を増やす方法があります。

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以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年4月10日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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執筆:日本情報マート
監修:税理士法人コレド会計 税理士 石田和也

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