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「経費」「費用」「損金」の違いと、経費で落とすための基準

日本情報マート

2019.08.26

 「この支払いは経費で落ちる?」

 この言葉には2つの意味があるのをご存じでしょうか?

 従業員は、「経費精算をすれば、会社からお金が戻ってくる」という感覚で、この言葉を使うことがあります。一方、経営者の感覚はこれとは違い、「1円でも多く事業のために使う資金を増やしたい」から、「この支払いは経費で落ちる?」と経理担当に尋ねます。

 なぜ、支払いが経費で落ちることが、事業のために使える資金を増やすことになるのでしょうか。このからくりを知るには、まず「会計」の違いとその仕組みを理解する必要があります。

1 多くの中小企業の会計は税務会計が基準

 実は、会社で使われる会計は1つではありません。どの法律・基準を使って計算するかによって、次の3つに分類され、それぞれ作成される書類などが異なります。

  • 財務会計:貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など
  • 税務会計:法人税申告書、添付書類(貸借対照表、損益計算書など)など
  • 管理会計:予実管理表、損益分岐点売上高など、会社ごとに作成する書類は異なる

 これら3つの会計は、目的、対象とする相手、書類の作成時期などが異なります。3つの会計の目的や関係(イメージ図)は次の通りです。

3つの会計の目的や関係(イメージ図)を示した画像です

 多くの中小企業は、上場会社のように財務諸表を広く外部に公表する義務がありません。一方で納税の義務はあるため、作成される財務諸表は財務会計(会社法や企業会計原則など)ではなく、税務会計(法人税法など)に基づいて作成されることが一般的です。なお、管理会計は社内の意思決定のために行うものなので、そのものが任意であり、税額計算にも直接的な影響はありません。そのため、以降では、管理会計の説明は省略します。

2 「経費」か「費用」か「損金」か? それぞれの意味を解説

 では、それぞれの会計の利益(税務会計では所得)の計算の仕組みを見てみましょう。なお、税額計算に関する詳細な解説については、「税金対策の入り口 損金の考え方」を参照ください。

財務会計と税務会計の違いを示した画像です

 財務会計上の「利益」「収益」「費用」は、税務会計上では「所得」「益金」「損金」とそれぞれ言い換えられます。多くの項目はほぼ同じですが、一部取り扱いが異なる項目があります。そのため、税務計算は、財務会計上の収益・費用に一定の調整を加えて、益金・損金とし、所得を計算します。

 ここで、ふと疑問に感じた人もいると思います。いずれの計算式にも、「経費」が出てきません。実は、経費は、一般的に財務会計上の費用の一部を指す会計用語として使われています(個人を除く。個人の場合は所得税法上の用語として使われる)。

 経費と費用と損金の関係をイメージ図で表すと、次のようになります。

経費と費用と損金の関係をイメージ図を示した画像です

 つまり、経費が増えると費用は大きくなり、費用のうち、損金処理されるものであれば、税務会計上の損金も大きくなります。その結果、税務会計上の所得が小さくなるのです。

 税金(法人税)は、税務会計上の所得に税率を乗じて計算されます。そのため、所得が小さければ小さいほど、税額は減少します。これが、経費が増えれば、税負担が減るからくりになります。

 ここで押さえておくべきことは、経費が増えれば、「必ず」税負担の減少につながるわけではないということです。前述した通り、損金は、費用のうち、税務計算上の損金処理されるものに限られているからです。

 以降で、費用のうち、損金処理できるかどうかの判断に迷いやすい代表的な項目を紹介します。

3 損金処理できるかどうかの判断に迷いやすい代表的な項目

1)福利厚生費

 福利厚生費は、社内のコミュニケーションの円滑化や従業員のモチベーション向上のために行われるイベント開催費や物品購入費などをいいます。税務上は、基本的には損金処理することができます。

 ただし、支出の目的が曖昧だったり、金額が一般的に見て高額すぎたりした場合などには、福利厚生費とは認められず、損金処理できないことがあるので注意が必要です。

 福利厚生費に関するより詳細な解説については、「福利厚生費に関する税務上の留意点」を参照ください。

2)交際費

 交際費は、取引先などの社外の人との飲食費や、贈り物をした場合の物品購入代などをいいます。税務計算上は、原則、損金処理することはできません。

 ただし、飲食費については、参加者1人当たりの代金が5000円以下であれば、交際費ではなく、会議費などとして、損金処理することができます。

 また、資本金が1億円以下である中小企業の場合、社外の人との飲食費の50%までの金額(飲食費の金額を問わない。社内飲食費は除く)、もしくは飲食費に限らず年間800万円までの交際費のどちらか一方を選択し、損金処理することができる特例があります。

 交際費に関するより詳細な解説については、「どのような交際費・会議費なら損金として認められやすいのか?」を参照ください。

3)備品などの購入費

 備品などの購入費は、金額の大小や、どのくらいの期間使い続けられるものかなどによって、損金処理方法が異なります。

 まず、使用可能期間が1年未満、または取得価額が10万円未満のものであれば、消耗品費として、全額をその物品を使い始めた日に損金処理することができます。

 また、一定規模以下(資本金の額などが1億円以下など)の会社の場合、取得価額30万円未満であるものであれば、少額減価償却資産として、その物品を使い始めた日に損金処理することができます。ただし、1年間で総額300万円までが限度になります。

 消耗品や固定資産に関するより詳細な解説については、「損金の計算で重要な『減価償却』の基礎知識」を参照ください。

4)減価償却

 減価償却とは、上記3)の消耗品費や少額減価償却資産に該当せず、資産計上される備品など(以下「固定資産」)の損金処理方法です。会社の成長・発展のためには設備投資が欠かせません。時には、数千万・数億円といった金額に及ぶこともあります。

 このように金額の大きい固定資産については、使用の実態に合わせて、少しずつ損金処理することがルールとなっています。

 固定資産の減価償却は、種類・仕様・用途などさまざまな要素ごとに細かく減価償却方法や償却期間(耐用年数)が規定されており、その規定に沿って計算しなければなりません。

 減価償却は、財務会計上認められても、税務会計上では認められていない方法などがあり、税務会計上の限度額を超えて減価償却費を計上していることもあり得ます。もちろん、限度額を超えた部分については損金処理することはできません。そのため、規定にのっとった適正な減価償却方法と償却期間の選定が重要になります。

4 「経費・費用」と「損金」と経営者の気持ち

 いかがでしょうか。普段何気なく使っている「経費・費用」「損金」という言葉には、明確な違いがあります。「この支払いは経費で落ちる?」と言うときには、その経費が経営にどのような影響を及ぼすのかを考えてみることが大事です。

 単に会社から経費分のお金が戻ってくるという視点ではなく、それが損金処理されれば税務会計上の所得が減り、税負担の減少につながり、事業に回せる資金を増やしているという視点で日々の支払いを考えてみましょう。

 ただし、税負担を減らすという点だけに重きを置くことは危険です。なぜなら、損金処理し、税負担が減少するとはいえ、その支払い分の資金が会社からキャッシュアウトしていることには変わりありません。支払った分は会社に戻ってくるわけではないのです。

 事業に必要な費用は使わなければなりませんが、何が必要で、何が不要なのかを判断するのは経営者に他なりません。しかもその基準は、会社の経営ステージによって変わります。経営者の計数感覚が試されるところです。

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以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年8月26日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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執筆:日本情報マート
監修:税理士法人AKJパートナーズ 税理士 丸山栄治

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