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第三の金融、クラウドファンディングを活用してコロナ危機を乗り切ろう

日本情報マート

2020.06.25

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言を経験したことによって私たちの日常は一変しました。営業自粛や事業縮小の影響が大きく、今後の事業の先行きに不安を感じる中小企業の経営者の皆さんも多いことでしょう。

 1990年代末の金融危機や10年ほど前のリーマンショックを上回ると言われる経済危機が現実味を帯びる中で、政府や都道府県は事業者向けの経済対策を取りまとめています。助成金、無担保・無利子の融資制度、税金等の減税や納税猶予等が打ち出されています。これらの公的支援の制度を活用するのはもちろんですが、インターネットを活用した新しい資金確保の方法として、クラウドファンディングをご紹介します。

1 新型コロナウイルス禍の中で広がるクラウドファンディング

1)普及のきっかけは2011年の東日本大震災

 クラウドファンディングは、インターネットを通じて資金を集めたい事業者とお金の出し手をつなぐサービスです。2000年代以降のインターネットの普及に伴い、金融機関を介さずに資金の出し手と資金の受け手をオンラインで結びつけるサービスとして登場したのが始まりですが、日本では2011年の東日本大震災が大きなきっかけでした。被災地を応援したい人たちが、例えば被災した日本酒の酒蔵、三陸海岸の水産加工会社などの応援のためにクラウドファンディングを利用したのです。資金の出し手は、お金の見返りとして、支援先の商品(お酒、お米、水産食品など)を受け取ることで、金銭的リターンとは異なる喜び(社会的リターンとも言います)を得ました。

 その後、多くのクラウドファンディングサイトが立ち上がり、例えば、アニメや音楽や映画などのコンテンツに強みを持つサイト、ユニークなガジェットを多く取り揃えたサイト、NPO法人などの社会的意義の高い取り組みを応援するサイト、地域に特化したサイトなどが生まれてきました。

2)コロナ禍をきっかけに広がるクラウドファンディング

 そして今年のコロナ禍によって、クラウドファンディングの活用は急速に拡大しています。ある大手クラウドファンディングサイトが発表した最近の利用状況によると、2020年3月に同サイトで集められたお金の総額が10億円を超え、さらに同年4月にはその倍以上の22億円にまで伸びたとのことです。2011年6月のサービス開始から取り扱い総額が100億円になるまでに7年8カ月を要したのに対して、それからわずか1年2カ月で200億円に到達したとのことですから、成長がいかに加速しているかが分かります。そして、その拡大の背景が、新型コロナウイルス感染症に関連した事業者への支援だったり、在宅時間が長引くことによる巣篭もり系の商品に対する需要の高まりだったりするのです。

2 そもそもクラウドファンディングって一体なに?

1)お金の使い道を明示して、インターネットで広くお金を募る仕組みです

 クラウドファンディングとは、群衆を意味する「クラウド」と資金集めを意味する「ファンディング」の合成語です。ですから、そのまま日本語にすると、「大勢の人たちからお金を集めること」ということになります。もう少し正確に言うと、「インターネットを通じて、不特定多数の個人から小口のお金を集める仕組み」ということになります。

 アメリカでは10億円以上を集めたクラウドファンディングの事例もあります。例えば、キックスターターというサイトで募集されたスマートウォッチ「ペブル」の開発プロジェクトでは、6万6673人から12億円を超える資金が集まりました。新しいスマートウォッチの製品企画に共感した大勢の個人が、この商品の予約購入という形で資金を出し、ペブル社は集めた資金を原資に商品を開発・製造して購入者(資金を出してくれた人たち)の手元に商品を届けたのです。

Kickstarter.comの画像です
(出所:Kickstarter.com)

 なお、インターネットがない時代からクラウドファンディングの概念は存在していました。例えば、あの「自由の女神」もクラウドファンディングで建設されました。アメリカ合衆国の独立100周年を記念して、フランスより贈呈された「自由の女神」。しかし、女神像を載せる台座の建築資金が足りなくなり、実業家のジョセフ・ピューリッツァーが自ら経営する新聞「ニューヨーク・ワールド」で広く一般市民に台座建設費用を寄付するように呼びかけたところ、100万人以上の人々から約6カ月で10万ドル近い寄付が集まったというのです。金額こそペブルよりも小さいですが、これこそまさに、群衆の小さな力を集めて大きなことを実現したクラウドファンディングの好例と言えるでしょう。

2)クラウドファンディングの種類

 クラウドファンディングには大きく分けて、投資型クラウドファンディングと非投資型クラウドファンディングがあります。

 投資型クラウドファンディングは、調達するお金の性質が借り入れであったり(融資型)、株式による出資だったりします(株式型)。借り入れの場合は返済の義務がありますし、株式であれば出資者に配当などで報いることが求められます。

 一方、非投資型クラウドファンディングは、上記のペブルのようにモノ作りの会社が予約販売をしたり、飲食店が新規出店資金を用立てるために食事券や飲食券を販売したりします(報酬型)。あるいは、ニューヨーク「自由の女神像」の台座や沖縄の首里城の再建資金を集めるように、なんの見返りもない(しかし応援する喜びがある)寄付型もあります。

 以下の図で、それぞれのモデルの特徴をまとめました。それぞれ資金の出し手には動機があり、資金の受け手は、その動機や期待に応える必要があります。

クラウドファンディングの種類を説明した画像です
(出所:筆者作成)

3)他の資金調達方法との違い – クラウドファンディングは夢を実現するサポーター

 では次に、資金調達手段としてのクラウドファンディングに注目してみましょう。中小企業の経営者にとって、資金調達は営業と並んで最重要課題です。売り上げが増えても仕入れ資金がないと商品を仕入れられませんし、従業員や家賃を払うためにも資金は必要です。そこで資金調達方法として真っ先に思い浮かぶのは金融機関からの借り入れではないでしょうか。あるいは、取引先やベンチャーキャピタル(VC)などからの出資という資金調達もあるかもしれません。

 つまり、これまで資金調達方法の選択肢は、金融機関からの借り入れか、VCや取引先や親族・友人からの出資しかありませんでした。しかし、これからは3つ目の選択肢としてクラウドファンディングも検討できるようになりました。つまり、金融機関でもなく、特定の第三者に資金提供(借り入れや出資)を相談するのではなく、インターネットを通じて自社が実現したいことをアピールし、不特定多数の人たちに少額ずつの資金の提供をお願いするという方法です。特に非投資型クラウドファンディングだと、資金の出し手に対して金銭的なリターン(融資の利息や出資金に対する配当)を支払う必要はありません。ただし、資金の出し手から集めたお金は、当然募集した目的に使って、期待通りに商品やサービスを後日提供することが必要になります。

 例えば、飲食店が新しいお店を出店するための費用の一部として1000万円をクラウドファンディングで集める場合、例えば2万円分のお食事券を事前に販売して、500人が支援してくれたら目標額は達成です。さらに多くの人が支援してくれたら目標額の何倍もの金額が集まることだってあり得るのです。実際に50万円の目標額に対して10倍のお金が集まった事例も過去にはあります。もちろんクラウドファンディングで資金集めに成功したら、約束した期限までに約束の場所でお店を開き、支援してくれた人たちが来店したら、その人たちに食事を提供することが必要です。支援してくれた人たちは単なる新規出店のスポンサーだけではなく、そのお店のお客様であり、あなたに代わってお店の宣伝もしてくれる応援者でもあるのです。

 このようにクラウドファンディングは、「実現したい夢やいつか挑戦したい新規事業はあるけれどもお金がない」という悩みを抱えている人に対して、その夢の実現を手助けする新しいインターネットの仕組みです。その点が、通常の資金調達手段との大きな違いなのです。

 もう一点重要な点は手数料です。クラウドファンディングにはサービスを提供する会社に対して手数料を支払う必要があります。提供会社ごとに異なりますが、集めた金額の10%から20%が相場です。したがって、1000万円集めた場合、100〜200万円を手数料で支払う必要がありますので、ご注意ください。

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3 どのようなプロジェクトが成功しているのでしょうか?

1)ドラえもんの四次元ポケットのように「あったら良いな」を提案してみる

 それではいくつかの具体的な成功事例を紹介しましょう。

一流職人の技が詰まった、現代人のための多機能クッション「KYO-SOKU」
https://sankei.en-jine.com/projects/itoshowshopping-niwa

 こちらは名古屋市の布団屋さんが始めたプロジェクトです。枕になったり、パソコン台になったり、座布団になったりする多機能クッションの提案です。長く自宅待機を余儀なくされている人たちにぴったりの商品として人気を博しています。20万円の目標に対して2020年6月17日現在105万円が集まり、達成率はなんと525%です。

 このプロジェクトには成功する要因がたくさん隠れています。実際のサンプル品を画像で紹介して商品の魅力に実感が持てること、プロジェクト起案者の人物をしっかりと紹介して安心感を与えていること、生産プロセスをしっかりと説明していて必ず作ってくれるという信頼感を醸成していること、また動画も使って丁寧な説明になっていることなどです。

 このようにクラウドファンディングは金融機関の力を借りるのではなく、自分の力で支援者にアピールすることが重要です。インターネットに自分のプロフィールや実現したい夢を語ることで、全国(あるいは世界中)の新しい潜在顧客とつながることができます。

2)応援や地域性など共感するテーマが決め手

北海道ふるさと寄附金「今こそエールを北の医療へ!」~皆様の想いをカタチに変えて、地域医療を守ります~
https://www.furusato-tax.jp/gcf/823

 こちらはいわゆる「ふるさと納税」で、ガバメント・クラウドファンディングとも言われているものです。コロナによって苦境にある北海道の医療従事者への支援ということで北海道が実施したクラウドファンディングです。目標額5000万円に対して1億円以上が集まり、2020年5月時点で6000人以上の支援者のなんと94%が北海道民からの支援だったということです(なお、6月17日現在の支援者数は7159人)。

 こちらはあくまでもモノや金銭の見返りを求めない形のプロジェクトですが、自分にとって関わりが深いものであれば、これだけの大きなお金を集めることができるのもクラウドファンディングの魅力です。つまり、共感者とつながることがクラウドファンディングの成功の一つの鍵なのです。

 地理的制約のないインターネット上でのやりとりであっても、地域性は共感を生み出す重要な要素となります。クラウドファンディングの成功事例を調べたオランダの学術調査によると、クラウドファンディングで資金を出した人とプロジェクト実施者との距離を調べてみると、地理的に近い人が真っ先に資金を出していたことが分かっています。クラウドファンディングに挑戦する場合、自分の身近な人からソーシャルメディア等でアピールすることは、プロジェクト成功のためにも必須と言われています。

4 すべての人が力を合わせてこの難局を乗り切ろう

 クラウドファンディング業界に10年以上関わってきた私にとっても、最近クラウドファンディングの普及を実感することが増えています。コロナで外出自粛をする前ですが、カフェやオフィスで、「クラウドファンディングを使って……」という議論が周囲のテーブルから聞こえる場面も増え、クラウドファンディングが普及してきたなと嬉しい気持ちになります。

 そして今、コロナ禍によって全国のさまざまな業種の人たちが深刻な影響を被っている中で、彼らを支援するクラウドファンディングが次々と立ち上がっています。これはコロナ禍による一時的な流行ではなく、不可逆なニューノーマルへの流れであり、クラウドファンディングが「第三の金融」として完全に認知されたものだと私は確信しています。

 やりたい事業や夢をクラウドファンディングで実現する時代がやってきたのです。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年6月25日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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執筆:大前和徳
フィンテック・エンスージアスト/MBA講師
おおまえ・かずのり/北海道拓殖銀行を経て、2001年よりネット専業銀行立ち上げなどネット金融に携わる。2009年多国籍チームからなる金融ベンチャーにて国内初のP2Pレンディング事業を統括。2013年クラウドファンディング専業証券会社にて投資型クラウドファンディングサービスを創業。現在はフィンテック・サービスの開発、金融業と非金融業の連携支援、新規事業開発支援、国内外企業または事業への投資やコンサルティングなどを行っている。エレベート株式会社代表取締役、マサチューセッツ大学Lowell校ビジネススクール講師(“Global Enterprise and Competition”担当)。著書に『クラウドファンディングではじめる1万円投資』(総合法令出版)がある。ランカスター大学(UK)経営学修士、北海道大学経済学部卒

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