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対象範囲が拡大されたiDeCo+(イデコプラス)、メリットや注意点を解説!

日本情報マート

2020.11.16

 iDeCo+(イデコプラス)は、スタートアップ企業や中小企業でも、比較的軽い負担で従業員の退職後(老後)に備えた資産形成を支援できる制度です。2020年10月から、実施可能な従業員数の要件が、「100人以下」から「300人以下」に拡大されました。これにより、企業規模の拡大により従業員数が100人を超える可能性がある企業も、iDeCo+を導入できるようになります。
 注目されるiDeCo+について、制度の概要と、今回の対象範囲拡大が導入企業にどのような影響を及ぼすのかについて解説していきます。その上で、実際に導入する際の手順や導入時の注意点も分かりやすく紹介しています。

1 スタートアップ企業や中小企業でも取り組みやすいiDeCo+

1)なぜ退職金制度を導入するのか?

 福利厚生や退職金の充実は、従業員に生活面の豊かさを大切にする経営者のメッセージを伝え、欲しい人材を獲得し定着させるための有効な施策の1つです。
 従業員に安心感をもって働いてもらうことで、長期的にはパフォーマンスや生産性の向上につながることも期待できます。しかし、多くのスタートアップ企業や中小企業では、そこまでの充実を図る余力がないのが実情かもしれません。
 特に退職金(退職給付)に関しては、退職時あるいは退職後にまとまったお金を支給することになるため、長期的な視点から制度設計や資金準備の計画を立てることが求められます。
 また、一度、退職金制度を設けると、企業には規定通り退職金を支払う責任が生じ、相応の理由と適正な手続きがなければ支給額を勝手に減らすことはできません。そのため、長期的な経営の見直しが不確かな中では、新たに退職金制度を導入することには慎重にならざるを得ないでしょう。

 そうしたスタートアップ企業や中小企業においても、比較的軽い負担で従業員の退職後(老後)に備えた資産形成を支援できる仕組みがiDeCo+です。正式には中小事業主掛金納付制度といいます。

2)iDeCo+の概要とメリット

 まず、iDeCo(イデコ)とは個人型確定拠出年金の愛称です。
 個人が、iDeCoを取り扱っている金融機関で専用口座を開設し、原則として毎月一定額の掛金を積み立てていきます。会社員の場合、拠出できる掛金は最大で月額2万3000円です。
 そして、その金融機関が用意した運用商品の中から自分で商品を選び、積み立てた資金を運用していきます。
 老後資金準備を目的とした制度であるため、例外的なケースを除いて60歳になるまで積み立てたお金を引き出すことはできませんが、その代わりに、各年に積み立てた掛金をその年の所得から控除できるなどの税制上のメリットを受けることができます。
 経営者が老後資金を蓄える手段としても有効なiDeCoについては、次の記事で分かりやすく解説しています。

 そして、iDeCo+はその名の通り、従業員が自ら加入して積み立てるiDeCoの掛金に、企業が一定額をプラス(上乗せ)する仕組みです。掛金を一定額補助することで、老後資金の積み立てに主体的に取り組む従業員を支援することができます。
 退職金制度とは異なり、企業は負うべき責任は、あらかじめ定めた上乗せ掛金(事業主掛金)を、給与天引きした本人の掛金(加入者掛金)とともに納付することに限定されます。退職時にまとまったお金を支給したり、運用で損が出たからといって穴埋めしたりする必要はありません

 事業主掛金は月額1000円から設定可能で、無理のない範囲から始めることができます。加入者掛金と事業主掛金は合計で月額5000円以上2万3000円までの範囲で拠出が可能です。

(出所:iDeCo公式サイト)

 事業主掛金は法人税の損金に算入することができ、個人にとっても給与所得の収入金額には含まれません。
 また、社会保険料の算定基礎となる標準報酬にも含まれないため、iDeCo+の実施により、企業および従業員の社会保険料負担が増えることはありません

 税金や社会保険料に関しては、企業年金の掛金と同様の取り扱いとなっています。

 同じような制度に企業型確定拠出年金(企業型DC)があります。企業型DCは企業が主体となって実施する企業年金制度の1つであり、掛金は企業が支払います。iDeCo+とは逆に、従業員が本人の選択により自分の給与から掛金を上乗せできる仕組みもあります。

 また、従業員の口座に積み立てる掛金とは別に、運営管理や資産管理に関する業務委託手数料を負担することになります。iDeCo+では、企業の手数料負担は発生しません。

 ちなみに、企業型DCでは、企業の責任は単にあらかじめ定めた掛金を毎月支払うことにとどまらず、委託先の金融機関を運用商品のラインアップ等の観点から適切に評価・選定したり、従業員が積み立てられた掛金を適切に運用できるように継続的な教育を行ったりすることが求められます。
 企業型DCでは、iDeCo+よりもより多くの掛金を拠出することができますが(最大で月額5万5000円)、企業が負うべき責任もより大きいものとなります。

2  iDeCo+の対象範囲が「従業員300人以下」に拡大。どんな影響が?

 iDeCo+は、企業型DCなどの企業年金を実施することが困難な中小企業を対象として2018年5月からスタートした新しい制度であり、2020年9月までに2009社が導入しています(iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況 (2020年9月時点))

 当初は、企業年金を実施していない従業員数100人以下の企業で実施可能となっていましたが、法改正により2020年10月からは従業員数の要件が「300人以下」に拡大されました。

 事業の拡大などにより従業員数が増加して要件を満たさなくなるとiDeCo+を続けることができなくなるため、従来は、100人以下の企業であっても近い将来100人を超える可能性がある場合はiDeCo+の導入をためらうケースもあったものと考えられます。しかし、要件が「300人以下」に拡大されたことにより、今後成長が見込まれる企業でも導入しやすくなりました。

 一方で、従業員数が多くなることで、iDeCo+にかかる事務負担も大きくなる点には注意が必要です。
 iDeCo+は、本人がiDeCoに加入していること(すなわち自ら掛金を拠出すること)が前提です。iDeCo+の資格を満たす従業員から加入の申出があれば、その都度、iDeCo実施機関である国民年金基金連合会に登録の届出を行う必要があります(iDeCo+の資格については後述)。
 また、一度加入した従業員から掛金の停止や退職の申出があったときには、上乗せする事業主掛金もなくなるため再度届出が必要となります。
 その他、給与天引きの事務や、従業員から掛金(本人拠出分)の変更の申出があった場合の対応など、iDeCo+の実施にあたっては様々な運営のための事務手続きも必要です。

 国民年金基金連合会への各種届出にあたって、いくつかの様式についてはExcel版が用意されていますが、最終的に書面を印刷して郵送しなければなりません。行政手続きのデジタル化が叫ばれている中で、iDeCo+についてもオンライン手続きによる業務の効率化が期待されるところです。

 また、従業員数が100人を大きく超える規模にまで拡大してきたら、本格的な退職金(退職給付)制度の整備を検討してもよいでしょう。iDeCo+を実施していた企業であれば、企業型DCへの移行は社内の理解を得やすく、比較的スムーズに実施できると考えられます。
 なお、iDeCo+は企業年金がない企業でのみ(企業年金の代わりに)実施可能な制度であるため、企業年金制度の1つである企業型DCを導入した時点でiDeCo+は終了となります。

 その場合、iDeCoに加入していた各従業員は、積み立てた資産をいったん現金化して新たに設けられる企業型DCの口座に移すか、引き続きiDeCoの口座で運用を続けるかを選択することができます。

3 iDeCo+の導入手順と注意点

 iDeCo+を導入する際には、

  • 従業員のうちiDeCo+の対象とする範囲をどうするか
  • 上乗せ掛金をいくらにするか

の2点を各企業で定めることとなります(最終的には労使合意が必要です)。

 1.については、iDeCoに加入できる厚生年金被保険者の全員を対象とすることもできますし、別途資格を定めて対象範囲を限定することもできます。ただし資格を定めるに当たっては、就業規則等で定められた職種、または一定の勤続年数により定めることとされており、それ以外の方法(例えば「部長以上」など役職による方法)は認められていません。
 2.についても、対象者全員を同じ上乗せ掛金額とすることもできますし、資格ごとに掛金額を設定することも可能です。ただしこの場合の資格は、拠出対象者の一定の資格(職種、勤続年数)の他、労働協約または就業規則その他これらに準ずるものにおける給与および退職金等の労働条件が異なるなど、合理的な理由がある場合において区分する資格に限ります。

 また、正規雇用の従業員のみをiDeCo+の対象にしたり、正規雇用と非正規雇用で上乗せ掛金に差を設けたりする場合には、「同一労働同一賃金」の観点から、その違いが職務の内容等に照らして不合理でないことが求められます。
 なお、既にご説明した通り、会社員のiDeCo掛金は、iDeCo+による企業の上乗せ分を含めて月額2万3000円が限度となっています。加入者本人が拠出する掛金は少なくとも1000円以上とする必要があるため、上乗せ掛金の限度は2万2000円となります。
 また繰り返しになりますが、そもそも本人がiDeCoに加入していなければiDeCo+による掛金の上乗せはできません。

 その他、導入にあたっては社内規定の整備や従業員への説明、従業員代表者の同意等の手続きを経たうえで、必要書類をそろえて国民年金基金連合会に提出する必要があります。

 公式サイトに掲載されている説明資料を確認し、不明点は国民年金基金連合会コールセンターに問い合わせるなどしながら手続きを進めます。制度に精通している専門家や、iDeCoを取り扱っている金融機関のサポートを受けるのもよいでしょう。

 ただし、iDeCoに加入するかどうか、また、どの金融機関に口座を開設するかは本人が決めるべきことであり、企業側が強制することはできない点には注意が必要です。

 iDeCo+について詳しくはこちら

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年11月16日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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執筆:向井洋平(むかいようへい)
2020年7月、株式会社IICパートナーズからの分社化によりクミタテル株式会社を設立し、代表取締役に就任。雇用とキャリアの出口戦略であるイグジット・マネジメントの推進を掲げ、退職金制度や高年齢者雇用に関する数多くのコンサルティングを手掛ける。
年金数理人・日本アクチュアリー正会員
1級DCプランナー
著書『確定拠出年金の基本と金融機関の対応』『金融機関のための改正確定拠出年金Q&A』(いずれも経済法令研究会)

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