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「キャッシュ・フロー」と「資金繰り」の違いとは?/資金繰りの基本(3)

日本情報マート

2021.02.09

 新型コロナウイルス感染症の影響により、経営課題としての重要度がより高まっている資金繰り。すでに影響を受けている会社だけでなく、今はまだそれほど受けていない会社においても、不確実な未来に向けた対策は欠かせません。

 このシリーズでは、中小企業の経営者向けに、資金繰りの基本や資金繰りを行う上でのポイントを専門家が分かりやすく解説します。

1 勘違いされやすい「キャッシュ・フロー」と「資金繰り」

 「キャッシュ・フロー」と「資金繰り」。果たしてそれらの意味の違いをはっきりと区別できていますか? その意味の違いが曖昧になっていると、先々の経営判断を間違えてしまう危険性があります。そうならないために、「キャッシュ・フロー」と「資金繰り」の違いを明らかにしていきましょう。

2 「キャッシュ・フロー」の意味にだまされるな!

 まずは、キャッシュ・フローです。キャッシュとは「お金」のことですよね。そこは問題ないと思います。フローは「流れ」のことです。ですから、キャッシュ・フローとは「お金の流れ」を意味します。
 中小企業も「キャッシュ・フロー経営」をしていくことが大事ですが、実際にはどのようにして自社のキャッシュ・フロー(お金の流れ)を見ながら経営をしていけばいいのでしょうか?
 残念ながら、決算書を見てもキャッシュ・フロー(お金の流れ)は分かりません。決算書とは、貸借対照表と損益計算書のことです。貸借対照表は「資産と借金のバランス」を見るための表です。損益計算書は「儲け」を見るための表です。ですから、貸借対照表と損益計算書を見たところで、キャッシュ・フロー(お金の流れ)は誰にも分からないのです。そこで「キャッシュ・フロー計算書」という中小企業にはあまり馴染みのないものが登場してきます。

1)99%の人が勘違いしている「キャッシュ・フロー計算書」とは?

 「キャッシュ・フロー計算書」は「お金の流れが分かる表」ですよね。ところが実際は全く違います。「キャッシュ・フロー計算書」を見ても「お金の流れ」は分かりません。多くの人が「キャッシュ・フロー計算書」を見れば「お金の流れが分かる」と勘違いしています。

2)「キャッシュ・フロー計算書」の本当の姿とは?

 では、「キャッシュ・フロー計算書」の本当の姿とは何なのでしょうか? それは「お金の増減バランスを見るための表」です。では、お金の何と何の増減バランスを見るのでしょうか? その答えは、次の3つです。

  • 「本業」によるお金の増減
  • 「株・不動産の売買や貸付」によるお金の増減
  • 「借入や増資」によるお金の増減

 「キャッシュ・フロー計算書」とは、この3つの増減バランスを見るためのものなのです。
 専門用語に置き換えると、1.は「営業活動によるキャッシュ・フロー」、2.は「投資活動によるキャッシュ・フロー」、3.は「財務活動によるキャッシュ・フロー」といいます。次の表が一般的な「キャッシュ・フロー計算書」のひな型です。見るべきポイントは赤枠で囲った3カ所です。その3カ所の数字の増減バランスを見るのです。

キャッシュ・フロー計算書」のひな型の画像です

3)「キャッシュ・フロー計算書」の簡単な事例!

 「キャッシュ・フロー計算書」の本当の姿は、「お金の流れが分かる表」ではなく、「お金の増減バランスを見るための表」だということが分かりました。そして、「キャッシュ・フロー計算書」の一般的な「ひな型」も見ました。しかし、それでもまだイメージがはっきりと浮かんでこない方もいるかと思います。そこでイメージしやすいように、キャッシュ・フロー計算書の簡単な事例をご紹介したいと思います。

キャッシュ・フロー計算書の簡単な事例の画像です

 まずは、一番下にある「キャッシュの増加額」を見てください。A社もB社も会社全体のお金の増減だけを見れば11億円の増加です。A社もB社も全く同じですので、これだけ見ていてもA社とB社の違いが分かりません。そこで、それらの内訳として、お金の3つの増減バランスについても見ていきたいと思います。
 まずはA社から見ていきましょう。本業でのお金の増減を見ると2億円の赤字ということが分かります。ところが、株や不動産を売ったことによって5億円のお金が増えています。さらに借入をして8億円が増えています。その結果、会社全体で見ると11億円のお金が増えたということです。
 次に、B社を見てみましょう。本業で9億円の黒字です。株や不動産を売ったことによって増えたお金は1億円しかありません。そして借入でも1億円しか増えていません。その結果、会社全体で見ると11億円のお金が増えたということです。
 ここでちょっと考えてみてください。もしあなたが投資家であったなら、A社とB社のどちらの会社に投資をしたいと思いますか? 普通に考えれば本業に強いB社に投資しますよね。「キャッシュ・フロー計算書」は何を隠そう、この投資判断をするためのものなのです。

4)「キャッシュ・フロー計算書」は誰のもの?

 ここまでお読みになれば、気付かれたことでしょう。「キャッシュ・フロー計算書」は投資家向けの情報であり、経営者向けの情報ではないということです。
 特に勉強家の中小企業経営者にありがちなのですが、「うちもキャッシュ・フロー計算書を作ってキャッシュ・フロー経営をしないといけないと思っています」という考えです。このような方には筆者は常々こう言っています。「キャッシュ・フロー計算書は作らなくていいですよ。あれは投資家向けの情報であって経営者向けの情報ではないからです。上場会社は、法律により(投資家のために)作らないといけないことになっていますが、上場していない中小企業は作る義務はありません」と。

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3 「資金繰り」とはそもそもどういう意味なの?

 ここから話がガラッと変わります。ここまでの話では「キャッシュ・フロー計算書」は、先々の経営判断の材料にはならないということでした。それでは、どのようにすれば、お金の流れをつかむことができるのでしょうか? 何を材料にして先々の経営判断をしていけばいいのでしょうか? その答えが「資金繰り」です。

1)「資金繰り」=「どうやってお金を借りるのか?」ではない!

 中小企業経営者に「資金繰りはきちんとやっていますか?」と聞くと、「はい、やっています。金融機関には折り返しで融資できるように話はしています」という声をよく聞きます。「ということは資金繰り表をきちんと付けているのですね?」と聞くと、「え~、そういうのはあるにはあるけど……」と急に歯切れが悪くなることが多いのです。
 「資金繰り」は「どうやってお金を借りるのか?」という意味ではありません。「資金繰り」は「予測」することです。何を予測するのかというと、お金の流れを予測します。お金の流れとは、先々の日々のお金の「入り」と「出」と「残り」のことです。そのお金の流れを予測した結果、例えば、4カ月後の仕入代金が1000万円足りなくなりそうであれば、お金を借りることを検討します。つまり、資金繰りは、まず予測ありきなのです。資金繰り=予測といってもいいでしょう。予測あっての借入ということになります。

2)「資金繰り表」が大事といわれる理由とは?

 中小企業には、1年間の利益よりも1年間の返済額のほうが大きいケースがよく見られます。これは、会社全体のお金として見れば「入り」よりも「出」のほうが大きいことになります。つまり、利益が出ていて黒字であってもお金が減っていく体質なので、現金の残高が豊富にありません。そうすると、そのうち近い将来にお金が足りなくなってしまいます。ですから、「〇月〇日にいくらお金が足りなくなるのか?」をまずは知ることが大事になります。逆にお金があるときは、「〇月〇日にいくらお金が余っているのか?」を知ることも大事です。「〇月〇日にいくら足りなくなるのか?」「〇月〇日にいくらお金が余っているのか?」の2つのことが分かるもの、それが「資金繰り表」です。

3)これが「資金繰り表」の核心だ!

 「5日ごと」の資金繰り表や「月ベース」の資金繰り表をよく見かけますが、それだと「〇月〇日にいくらお金が足りなくなるのか?」「〇月〇日にいくらお金が余っているのか?」が分かりません。ですから、資金繰り表は「日ベース」の日繰り表にするのが基本といえます。
 次の表が、筆者がクライアント企業向けに作成し導入している資金繰り表です。参考にしてください。

資金繰り表の例を示した画像です

 簡単に説明します。エクセルで、1カ月分を1シートとし、12シート(1年分)を作成し、見込み(予測)の数字を1年先まで入力してしまいます。実際に動いた実績の数字については、見込み(予測)の数字を上書きして修正します。そのようにしていけば、「〇月〇日にいくらお金が足りなくなるのか?」、あるいは「〇月〇日にいくらお金が余っているのか?」ということが、誰が見ても一目瞭然になります。そのため支払い直前ギリギリではなく、何カ月も前に打つ手が明確になります。対策が立てやすく、気持ちに余裕を持って資金繰りができるようになります。白色は「入り」、黄色は「仕入」、緑色は「経費」、青色は「税金」、茶色は「返済」としています。ちなみに、この資金繰り表は「どんぶり大福帳®」と名付けました。
 なお、この「どんぶり大福帳®」は、こちらからダウンロードできます。

4)「資金繰り表」の応用編をご紹介!

 「日繰り表」は、前述の通りですが、さらに次の月ベースの「月繰り表」をエクセルのシートに追加すれば、1年先までのお金の流れ、すなわち「入り」「出」「残り」が一目で分かるようになります。一番下の行は、預金口座残高の予測「合計額」になります。つまり、「1年先の決算はだいたいこれくらいの「入り」「出」「残り」でフィニッシュできそうだな」ということをイメージしながら経営していけるということです。筆者はこれを「全体像シート」と呼んでいます。

全体像シートの画像です

 「日繰り表」の毎月の合計額が、この「全体像シート」に飛んでくるようにリンクを貼ります。この「全体像シート」を作るのはそれなりの工夫と根気が必要になってきますが、一度作ってしまえばとても便利です。色は日繰り表に合わせています。
 また、上の全体像シートの数字について、色ごとの合計額を集計すれば、以下の「■まとめ(借入の入金などを度外視した正味の事業の動き)」の表のようになります。骨格は決算書の損益計算書に似ていますが、これは損益ではなく実際のキャッシュベース(預金)の動きになります。

 さらに、「■指標」も自動計算されるように仕込んでおいて、かつ、同業他社の数字と簡単に比較できるようにしておけば、自社のどこに問題が潜んでいるのかが簡単に浮き彫りになります。やるべきことがはっきりとしますし、対策も立てやすくなります。その結果、利益が出やすく、お金が残りやすい体質に改善されていきます。

■まとめ(借入の入金などを度外視した正味の事業の動き)の表の画像です

4 まとめ

 「キャッシュ・フロー計算書」は、過去のお金の増減バランスを表すものであり、どの会社に投資をしようかという判断材料として役立ちます。つまり「キャッシュ・フロー計算書」は投資家向けの情報であり、経営者向けの情報ではないということがはっきりと理解できました。
 そして、「資金繰り表」は、「〇月〇日にいくらお金が足りなくなるのか?」「〇月〇日にいくらお金が余っているのか?」という日々のお金の「入り」「出」「残り」の見込み予測(お金の流れの予測)を表すものであり、先々の経営判断の材料として役立ちます。「資金繰り表」の数字は紛れもなく経営者のための情報ということも理解できました。

 2019年の水害、さらに追い打ちを掛けた2019年10月の消費税増税、そして、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大などにより経済は大打撃を受けています。先行きの見通しが立ちにくいときほど、今、経営者が本当にやるべきことは何か?を「資金繰り表」が教えてくれます。この機会にぜひ「資金繰り表」としっかり向き合っていただきたいと思います。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年2月9日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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執筆:株式会社神田どんぶり勘定事務所 税理士 神田知宜
新発田高校卒業、関西大学卒業。1969年生まれ、新潟県出身、千葉市在住。
中小企業の資金繰りの悩みをゼロにする専門家。
「どんぶり大福帳®」導入コンサルティング、セミナー講師、執筆を業とする。
大学卒業後、大阪の税理士事務所に勤務。顧問先の社長から「もっと気の利いたアドバイスはできないのか? 全く何の役にも立たないな」と怒鳴られ続けノイローゼに。税理士業界にいる限り、社長との「心の溝」は埋まらないと感じ、税理士会を退会し、税理士業界を一度離れる。
上場会社の経理責任者となるがリーマン・ショックの影響をもろに受け上場廃止に。想像を絶する極限ギリギリの資金繰りを経験し、会社が生き延びるためには決算書や会計の専門知識は何の役にも立たないと絶望。
そのときに、お金の本当の姿を見えるようにしておかないといけないと痛感し、独自の資金繰り予測の体系化に成功。本の出版を機に独立し、神田式・資金繰り予測ツール「どんぶり大福帳®」の導入コンサルティングを展開。
「お金の使い方が変わり残高が3カ月で130%に増えた」「人件費300万円のコストダウンに成功」「返済額が50%OFFになり3000万円の特別な借入枠を設定できた」など、全国から喜びの声が届くようになり、「どんぶり大福帳®」導入実績は500社を超える。
 ●株式会社神田どんぶり勘定事務所
 ●YouTubeチャンネル「どんぶり勘定事務所」
 ●神田知宜税理士事務所

【著書】
「世界一シンプルでわかりやすい決算書と会社数字の読み方」(日本実業出版社)
「お金が残る「どんぶり勘定」のススメ~会社のお金は通帳だけでやりくりしなさい」(あさ出版)
「面白いほどわかる!!会計とファイナンスの教科書」共著(洋泉社)

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