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【会計士が解説】経営者が知っておくべき「運転資金」の基礎

日本情報マート

2022.01.11

 「運転資金が不足すると会社が立ち行かなくなる」
 これは経営の常識ですが、運転資金が不足すると、どのような状態になるのでしょうか。また、運転資金が不足しそうな兆候は、どのようにすれば察知できるのでしょうか。
 この記事では、そんな運転資金に関する素朴な疑問に、現役の公認会計士がお答えします。

1 運転資金ってどんな資金ですか?

 「運転資金とは、入金と出金のタイミングのずれを埋める資金である」と考えていただければ大丈夫です。ですから、入金と出金のタイミングにずれがなく、利益が出ている会社であれば、「運転資金」は必要ありません。
 ただし、現実はそうはいかないでしょう。例えば、材料を買う際に仕入先にお金を払います。その後、物を作って売る、つまりお金をもらうまでには時間がかかり、その間にお金が足りなくなることがあります。ここを埋めるのが運転資金です。

2 運転資金を把握するために、チェックが必要な勘定科目は何ですか?

 ずばり「売掛金・買掛金・棚卸資産」です。これらは、貸借対照表において入金と出金のタイミングのずれを示しています。具体的には、

売掛金とは、売り上げたけれど、まだ入金がないもの
買掛金とは、費用は計上しているけど、まだ支払っていないもの
在庫とは、支出したけれど、まだ費用に落ちていないもの

です。

 一般的な運転資金は、

「売掛金+在庫-買掛金」といったように、売掛金と在庫の合計から買掛金を差し引いた金額

であることからも、この3つの勘定科目のチェックが大切です。

3 売掛金などについて、どのような動きに注意が必要ですか?

 まず売掛金と在庫の増加です。売掛金は入金がない売上なので、これが増えると悪影響が出ることはイメージしやすいでしょう。また、在庫は売らなければお金になりません。しかも、在庫の購入や製造のために既にお金を払っているので、資金はマイナスになっています。
 これに対して、買掛金は増加したほうが資金繰りは楽になります。例えば、翌月末払いという条件を、翌々月末払いにしてもらうと、1カ月間、資金が会社にたまります。しかも1カ月程度支払いを延ばすだけなら、通常、金利なども発生しません。このことから、支払いのタイミングを遅らせることは、外部から資金調達するよりも簡単にお金をためる方法になるのです。ただ、相手との関係もありますので、交渉は慎重に行いましょう。

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4 売掛金と在庫の動きを見る際のポイントはどこですか?

 売掛金や在庫に関しては、難しい言葉でいうと「回転期間分析」が必要です。
 売掛金の回転期間分析では、

1カ月分の売上高で売掛金を割って、「売掛金が売上の何カ月分残っているのか」

を把握します。

 在庫の回転期間分析では、

1カ月分の売上原価で在庫を割って、「在庫が売上原価の何カ月分残っているのか」

を把握します。売上原価を1カ月分という単位で出すのが難しければ、売上高の1カ月分で在庫を割る方法もあります。毎回売上高で在庫を割っていれば、異常値が出た場合に把握できます。
 毎月分析するのが難しい場合は、経営者や財務担当者が気になったときや、決算月などのタイミングで分析をしてみてください。

5 運転資金の目安はどう考えていればよいですか?

 業種や会社の規模などでも異なりますが、一般的に、

運転資金の目安は3~6カ月分

といわれています。
 注意していただきたいのは、売掛金と買掛金の決済のタイミングです。例えば、売掛金は翌月20日に入金され、買掛金は翌月末に支払う場合、入金が先なので、普通に運転資金を計算すれば大丈夫です。
 しかし、買掛金の支払いが売掛金の入金よりも先の場合は注意が必要です。一般的な運転資金の計算は「売掛金+在庫-買掛金」ですが、買掛金の支払いが先の場合、差し引ける買掛金がないので、「売掛金+在庫」の部分が丸々運転資金として必要になります。

6 運転資金を上手に回す上で知っておくべきポイントは何ですか?

 繰り返しになりますが、一つは売掛金の入金を早くし、買掛金の支払いを遅くすることです。
 もう一つは、経営者が「この金額を下回ったら注意しよう」という基準を持つことです。経営者は多忙で、財務に割ける時間は限られるので、確認するタイミングを決めるようにしましょう。例えば、経営が安定しているときは年次で確認、不安定なときは月次や週次で確認するようにします。

 次に運転資金には、

売上が上がるほど、運転資金も増加する

という特徴があります。「売上が上がっているときはお金がない」というイメージがある経営者は多いでしょう。会社の成長とともに出費がかさみ、入金はちょっと遅れてくるので、成長期ほど運転資金が苦しくなりがちです。
起業してから2〜3年で利益が出ても、「お金がないなぁ」というのが正直な経営者の感覚でしょう。そして5年目くらいに経営が安定してくると、資金繰りも楽になってくるというパターンが実際の会社にも多く見られます。

7 運転資金はどのように調達すればよいですか?

 まず金融機関から借りる方法があります。あるいは、役員やご家族から借りる方法もあり、これであれば利息がかからず、返済も柔軟にできそうなので楽です。また、調達ではありませんが、買掛金や未払金の支払いを少し遅らせて手元に資金を残す方法もあります。

8 最後に経営者向けにアドバイスをお願いします

 利益とお金の増減は一致しません。例えば、起業時に500万円(返済期間5年)を金融機関から借りたとします。売上が増えて利益が100万円出ても、借入金の返済として、5年間は毎年100万円+利子分の支払いが必要です。売上や利益だけしか見ていないと、「なぜ、利益が出ているのにお金が全然増えないのだ?」と感じるはずです。そういうときは、「経営が好調なので売掛金が増加している」「借入金の返済が進んでいる」という良い兆候を、貸借対照表やキャッシュフロー計算書で確認することが大切です。

 また、売上の増加だけを求めて甘い与信管理をすると、結果として売掛金が回収できずに焦げ付いてしまうこともあります。このような場合、

  • 知人にその会社の噂を聞いてみる
  • 日経テレコンなどで検索する
  • 企業信用調査のサービスを利用する
  • 小さな金額から取引を開始する
  • 前金にする

などでも、結果として資金繰りを楽にします。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2022年1月11日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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林 健太郎(はやし けんたろう)
税理士法人ベルダ、代表社員。2002年に公認会計士試験に合格したのち、監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)、辻・本郷税理士法人を経て、2011年に独立開業。税務顧問業務のほか、セミナー講師、書籍や雑誌の執筆、コンサルティングに活躍中。管理会計を活用したアドバイスを経営者に提供するとともに、大学院でも管理会計を教えている。「会計を使った経営への役立ち」を目指す。徳島県出身。一橋大学経済学部卒業。

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