オンライン融資サービスが進化しています。
りそな銀行のオンライン完結型ビジネスローン「Speed on!(スピードオン)」は、2021年11月より、アルトアの「会計データ与信モデル」との連携をスタートしました。
これにより、りそな銀行に口座がなくても弥生会計ユーザーであればお申し込みいただけるなど、「Speed on!」がバージョンアップしました(借り入れには、別途、審査が行われます)。

この2社の連携で、「オンライン融資がどのように変わるのか」「会計データ与信モデルの開発秘話」「経営者にとってのオンライン融資の魅力と可能性」などをインタビューしました。ぜひオンライン融資が実現する世界をご活用ください(インタビューは2021年12月27日時点)。



※話し手:アルトア(以下「アルトア」)

※話し手:りそな銀行(以下「りそな銀行」)

※聞き手:りそなCollaborare事務局(以下「事務局」)

1 「会計データ与信モデル」を分かりやすく説明すると?

事務局

2021年11月から、りそな銀行ビジネスローン「Speed on!」とアルトアの会計データの連携がスタートしています。
まず、りそなCollaborare読者に向けて、この「会計データ与信モデル」の概要や特徴についてご紹介をお願いいたします。

アルトア

話を分かりやすくするために、従来の融資と比較してお伝えします。

従来、金融機関が融資の審査をする場合、決算書を元に、お客さまの事業評価を行います。
アルトアの開発した「会計データ与信モデル」では、決算書ではなく、会計データをAIが分析して、お客さまの日々の事業活動を360度、連続的な動きとして評価していくというのが特徴です。

決算書は、お客さまの事業活動を1年単位でサマライズしたものだと言えます。一方、会計データは、日々お客さま自身が作成される、あるいは税理士の先生が記帳代行されるデータで、日々のお客さまの事業活動が、「どういった取引先なのか」「いくらの売上が、いつ発生したのか」などの形で記録されます。

決算書と会計データのそれぞれの特徴を「評価」という面で見ると、決算書では、決算書が締まった後の12カ月というのは評価として変わりませんが、会計データでは常にお客さまの事業の動きが反映されるので、基本的には毎月評価が更新されます。

つまり、「会計データ与信モデル」では、足元のお客さまの事業実態が、ある程度の即時性を持って反映されますので、業況が良くなったという場合にはダイレクトに評価に結び付くことになります。

事務局

ご説明ありがとうございます。

少し意地悪な質問かもしれませんが、経営者の中には、「むしろ決算書で評価してもらいたい」「足元の状況は見られたくない」「会計データでは評価されたくない」という経営者もいるのではないでしょうか?

アルトア

ご指摘の通り、会計データをご開示いただくというのは、お客さまのビジネスの実情をすべてさらけ出していただくようなものです。「会計データ与信モデル」を開発した当初は、お客さまから抵抗感を持たれるのではないかと、我々としても気になっていました。

しかし、結果的にはそうではありませんでした。
アルトアが「会計データ与信モデル」を使ってオンライン融資サービスを提供したところ、2017年の12月から約3年間で1300件のご成約をいただくことが出来ました。成約いただいたお客さまにおいては、抵抗感よりもむしろ時間がかからない、時間を選ばない点で、満足度が高いというお声を多くいただいておりました。

確かに、オンライン融資を利用されていないお客さまからすると、(会計データを明らかにすることは)気になるかもしれません。ただ、今後もオンライン融資の認知度は高まっていくと思いますし、一度ご利用いただくと「なんとなく抱かれている不安」よりも便利さに価値を感じていただけるかと思います。

実際に、コロナ前は、オンライン融資の申込数も一定の割合で増えていました。抵抗感や不安は、解消されてきているなという感覚は持っています。ただし、コロナ下では公的融資が主流となっていますので、今後の状況を注視したいところです。

事務局

そうなのですね。
今のお話をお聞きしていると、いろいろと資料を準備したり、審査に時間がかかったりする従来の融資に比べて、「会計データ与信モデル」のスピード感や利便性にメリットを感じているお客さまが多く、その結果が満足度につながっているのかもしれないと思いました。

2 融資商品の「使い勝手がよくなった」りそな銀行との連携

アルトア

お客さまにオンライン融資の利便性を知っていただくというのは、まさに、これからも取り組みを進めていくべき課題だと思っています。

この度、ご提携いただいたりそなビジネスローン「Speed on!」は、会計ソフト「弥生会計」のユーザーがターゲットです。この弥生会計のユーザーには、売上が平均1億円以下で従業員も4〜5名といった規模の小さな企業さまも多くいらっしゃいます。そうした企業さまは人手が限られるので、夜間のお申し込みができる、金融機関を訪問する必要がないといった、オンライン融資の利便性に価値をダイレクトに感じていただけます。

一方、もう少し規模が大きく、日ごろから金融機関と密にお付き合いをされているお客さまの場合、利便性が高いという理由だけで、オンライン融資を利用するかというと、そうではないと考えています。

例えば、昨年まで扱っていた弊社のオンライン融資では、(融資の際の)金利が2.8%~14.8%で上限金額が300万円、期間は1年。この内容では、スピード感や利便性があったとしても、銀行の一般的な事業性融資の条件と乖離が大きく、なかなかご利用いただけなかった印象です。しかし今回、りそなビジネスローン「Speed on!」は、まさに銀行ブランドであり、金利は1~9%、上限金額が1000万円、期間も3年となりましたので、お客さまとしてはご利用いただきやすい商品になっていると思います。

従来の利便性だけで訴求するという段階から、さらに商品性でも訴求できるようになっていますので、よりお客さまの満足度が高まるのではないかと感じています。

事務局

利便性に加え商品の訴求力が高まった、つまり、より魅力的な商品になったというのは、経営者の皆さまから見ればうれしいお話ですね。

3 「会計データ与信モデル」の開発で大変だったのは……

事務局

そもそも、なぜこのような与信モデルを開発されたのでしょうか? どのような想いが込められているのか、開発秘話なども併せてお聞きしたいです。

アルトア

まず、想いについては、アルトアの母体である弥生とつながります。会計データというのは、これまでお客さまの事業成果を表す物差しでしかありませんでした。お客さまの事業がしっかり表現されたデータであるにもかかわらず、そのサマリーのみが金融機関を含む取引先への説明に使用されてきました。

弥生/アルトアとしては、せっかくお客さま、あるいは会計士・税理士の皆さまが手間をかけて作成されたデータがあるなら、そのデータを、「しっかりと利活用したい」と考えました。

お客さまが会計データを金融機関にご提供し、融資が受けられるようになるのであれば、お客さまと金融機関、双方の効率化につながります。

また、新たな資料作成や来店による説明が不要で、時間や場所にとらわれずデジタルで完結する手続きであれば、「すぐに融資を必要としていないが、自社の資金調達力を確認しておきたい」というときにもお役立ていただけます。
「融資をもっと軽やかに」。これが、アルトアの目指す世界です。

次に開発秘話に関して言うと、思った以上に大変なことがあった、という印象です。
米国ではじまったオンライン融資ですが、日本においては、残念ながら2000年から2010年代にかけて信用スコアリングの普及に失敗したという歴史があります。アルトアが事業を開始した2017年においては、決算書が会計データに代わったからと言って、「本当に与信モデルとして機能するのか?」といった懐疑的な見方もありました。

そうした逆風の中、アルトアとしては、自社融資を通じて検証を重ね、「会計データ与信モデル」の有効性を証明する他、手立てがありませんでした。

そのため、小体のベンチャー企業でありながら、与信モデルの構築と融資システム開発を同時に進め、貸金業を営み、マーケティングを考えながら、与信モデルの精度を改善する……その過程は思った以上に大変でした。

現在では、融資の事業自体は移管しましたので、アルトアは与信モデルを作る金融工学系のチームと、システムエンジニアだけで構成されています。活動がよりシンプルになったので、アルトアとしては活動しやすくなりました。

事務局

なるほど、リソース配分は、確かに大変ですね。

アルトア

はい。債権回収という一つの業務をとっても専門知識が必要で、社員個人個人のノウハウに依存して、成り立っておりました。

事務局

大変だったという意味では、「信用スコアリング」についても試行錯誤があったのではないかと想像しています。アルトアとしては事業者金融的な貸金業よりは銀行に機能提供できるような存在となることが目的となる中、ユーザーのペルソナ選定なども難しかったのではと思います。

現在に至るまでの間で、信用スコアリングの方針に変化などはあったのでしょうか?

アルトア

ペルソナについては、資金需要顕在層と潜在層を想定しておりました。事業者金融的なアプローチで言えば、顕在層のお客さまへの訴求が優先されるわけですが、銀行のお客さまは、常に資金需要があるわけではなく、資金需要が出た時に、如何に思い起こしていただけるか、が勝負になるわけです。
弊社は、ノンバンクではありましたが、銀行のお客さまを意識していました。

信用スコアリングは、2回ほど大きな改定を実施しています。
当初は、弥生会計ユーザーのビッグデータを元に、実運用ではなく、仮モデルとして構築しました。そのモデルを実運用の中で当てはめて、「審査モデルとして機能するのか」ということを検証してきたわけです。

そのため、最初は、あえてデフォルト(債務不履行)を出さなければいけないといいますか、現在では否決域に入るお客さまであっても、可決域をあえて広くとって融資をしたという経緯もありました。
融資を回収できず事故になってしまうと、アルトアの損失になるのですが、適正なモデルにするためにそうした手法で磨いていったというのが、正直なところです。

しかし、現在では、状況は違っています。りそな銀行と提携し、金融機関としての目線でご意見をいただいています。厳しいご意見も含めて受け止めて、良いサービスにしていこうと取り組んでいるところです。

4 「りそな銀行×アルトア」の意義とオンライン融資業界にもたらす可能性

事務局

りそな銀行との間では、どのような意見交換があるのでしょうか?

アルトア

アルトアとしてはディフェンシブに、より事故を起こしたくないという目線でモデルを組んでいます。それに対して、オンライン融資を前向きに推進されているりそな銀行は、導入いただいたばかりということもあり、「このお客さまは取り上げられるのではないだろうか」といった適正な閾(しきい)値について、ご意見をいただくことがあります。

アルトアとしてはその閾値が適切なのかどうかについてデータを検証して、しっかりと提示していかなくてはいけませんし、より適切な閾値が見つかれば、それをりそな銀行へご説明していかなくてはいけない、という状態です。

事務局

面白いですね。りそな銀行のほうがアグレッシブな面もあるということですか?

アルトア

真摯にお客様と向き合われるお立場上、そういった面もあるかと思います。

事務局

今お聞きしたようなやり取りは、りそな銀行とアルトアのタッグでなければ難しいのかもしれません。すばらしいですね。

アルトア

ありがとうございます。
従来はどうしても、(自分たちの)グループの中で閉じていました。よくも悪くも、グループ内の知見に寄っていましたが、今はりそな銀行の目線でご意見をいただけるので、私たちとしては非常に貴重な機会をいただけていると思っています。

事務局

世の中には、他にもオンライン融資に取り組まれている企業がありますが、今お聞きした、りそな銀行とのやり取りは、他にはないこのサービスの強みではないでしょうか。

この流れで、りそな銀行の担当者にもお聞きしたいと思います。アルトアの与信モデルを使うことや、弥生会計のユーザー以外にもお客さまの裾野を広げることにはどういった狙いがあるのでしょうか?

りそな銀行

従来の融資は、もともとりそな銀行とお取引があるお客さまに対して、店頭もしくは営業担当者がお客さまの元にお邪魔して、行っていました。
もちろん、営業担当者が新規開拓をするというケースもあります。

また、りそな銀行が提供するオンライン融資「Speed on!」についても、スタート当初はすでにお取引のあるお客さまをターゲットにしていたといえます。

それに対して、今回のアルトアとの取り組みでは、これまで全くお取引がなかったお客さまでも、審査の受付ができるようになっています。また、夜間でもお申し込みができます。こうした利便性や時間的な価値は今後ますます高まっていくと考えていますので、それに対応したラインナップを揃えていくというのは、新しい取り組みとして進めていきたいと思っています。

幸いなことに、りそな銀行はアルトアと提携させていただく第一号の金融機関となりました。りそな銀行としては、アルトアのモデルを使わせてもらうという立場ではありますが、「どういう風に審査の基準を設定するか」に関わる閾値などの設定は、我々からも意見や提案を投げかけさせていただいています。もちろんアルトアからもご意見をいただき、これからのためにデータを積み上げていっているところです。

事務局

ありがとうございます。
まさに今おっしゃっていた、審査基準の設定などは、試行錯誤しながらデータを積み重ねている過程であり、業界的にも注目されていますよね。

りそな銀行と提携したことで、アルトアには他の金融機関さまからお問い合わせや反響があったのではないでしょうか?

アルトア

そうですね、反響はいただいています。

ご意見や反響としては、オンライン融資自体への関心に加えて、「会計データを通じてお客さまとつながる」「お客さまの信用が伝わる」といった世界観に対する関心をいただいているように感じています。

現状の融資審査の基準は決算書ですが、会計データであれば、よりお客さまの実像に迫れるものと考えている金融機関も増えています。

また、今回の取り組みによって、会計データでつながることにより、小規模な企業さまであっても、りそな銀行としっかりと取引をできるようになりました。この点が、他の金融機関にとっても興味深い話なのだと思います。

事務局

アルトアとりそな銀行とで、新しいオンライン融資というのを先駆けて作ろうとしているというのは、すばらしいことですね。

5 オンライン融資が実現する理想の世界

これまでのお話からもうかがえるところではありますが、これから「会計データ与信モデル」を活用して実現したい理想の世界はどのようなものですか?

アルトア

繰り返しになりますが、会計データを提出するということは、お客さまがご自身の事業活動のすべてを開示し、お伝えいただくことだと思っています。

それだけ貴重なデータなので、お客さまが開示してくださったことに見合う融資条件で、お取引を受けていただきたい。これは、アルトアだけでは実現できなかったことです。今回、りそな銀行と提携し、アルトアの「会計データ与信モデル」を活用いただくことで、理想に近づけたと思っています。

今後については、弥生会計以外の会計ベンダーの皆さま、および全国の会計事務所さまと協業し、より多くのお客さまにご利用いただけるような世界を作りたいと考えています。

また、りそな銀行をはじめとする、さまざまな金融機関とお客さまが、会計データでつながる世界を実現していきたいです。

事務局

それは夢のある世界ですね、ありがとうございます!

続いて、りそな銀行の担当者にも、お聞きします。具体的に、どのようなシーンで経営者の皆さまに「Speed on!」を使っていただきたいと考えていますか?

りそな銀行

今回、アルトアの「会計データ与信モデル」を使わせていただくことで、「Speed on!」の使いやすさや、りそな銀行との距離の近さを感じてもらえたらいいなと思っています。

従来、融資を受けるとなると、やはりある程度の時間と準備が必要でしたし、店頭に行く必要がありました。それに対して、今回のアルトアとの取り組みで、お客さまの心理的・物理的ハードルが少し下がったのではないでしょうか。「ウェブ上で申し込み自体が完結する」「すでにある会計データを使えばよい」といった点で、より申し込みがしやすくなったと思います。

融資の上限も1000万円となっています。過去にお取引のなかったお客さまにとっても、りそな銀行とのお取引を考えていただく一つのきっかけや選択肢になるのではないでしょうか。

事務局

ありがとうございます。経営者の皆さまには、ぜひ「Speed on!」のご活用をご検討していただければうれしいですね。

アルトアから、経営者の皆さまに対してお伝えしたいメッセージをお願いします。

アルトア

中小企業の経営においては、売上金回収の遅れなど、不測の事態が起こり得ると思っています。
普段しっかりお付き合いをしている金融機関さまの融資とは別に、オンライン融資を選択肢として持っておくことで、安定した経営が実現できます。

より多くの経営者の皆さまに、りそな銀行の「Speed on!」をぜひ一度お試しいただきたいです。
「融資なのに(手続きが)これだけでいいの?」という驚きの体験とともに、データを通じて、りそな銀行に御社の信用が瞬時に伝わる金融の新たな可能性を感じていただけるものと思います。

事務局

ありがとうございます!
最後になりますが、現在、アルトアが今後の課題と感じていることはありますか?

アルトア

審査の基準自体は継続的にブラッシュアップしていく必要があります。

また、弥生だけではなく、その他の会計ソフトベンダーさまとの提携も、スピードとデータの質を保って進めていきたいと思っています。
会計ソフトウェアによって、会計のデータというのは若干違っていたりしますので、我々のシステムで適切に読み込んでいかなくては、というのもあります。

事務局

ありがとうございます!
本日は、色々と詳しいお話に加え、オンライン融資が今後広がっていく可能性も見せていただいた気がします。こうしたオンライン融資の仕組みが、経営者の皆さまにとって、少しでもお役に立てれば幸いです!

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以上

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