企業の成長を応援する情報メディア りそなCollaborare

Copyright (c) Resona Bank, Limited All Rights Reserved.

社長として成長する

会社をつぶす社長は「反省」しない~小宮一慶の社長コラム

日本情報マート

2018.08.16

 経営コンサルタントとして22年、多くの経営者と接してきました。一代で上場会社を築いた社長もいれば、会社をつぶしてしまった社長もいます。つぶすまでには至らないものの、衰退させた社長もいます。その違いは何なのでしょうか。

1 成長と倒産の分かれ道

 会社を発展させた社長も、つぶした社長も、総じて「明るく、前向き」で、社業には熱心でした。では、会社をつぶした社長が成功した社長と何が違うのかと言えば、会社をつぶした社長には「反省」がないと私は思っています。独善的とも言えます。

 うまくいっている時はそれでもいいでしょう。しかし、反省しないので、うまくいかなくなってもかじの取り方を変えられません。“行け行けどんどん”で、日々反省することがないのです。

 論語に、孔子の高弟の曾参(そうしん)の言葉として「吾(わ)れ日(ひ)に吾が身を三省(さんせい)す」(*)とあります。中国語の「三」にはたびたびという意味があるそうで、日々、何度もわが身を反省するというのが正しい生き方です。

 私は、セミナーなどで「うまくいった時でも、失敗した時でも反省することが大切」とお話しします。失敗した時に、どこがおかしかったのかを反省するのは当たり前ですが、成功した時にも反省が必要です。単に運が良かっただけということもあるからです。運は再現性がないのです。何が本当の成功要因だったのかを、外部環境と内部環境とに分けて分析する必要があるのです。

2 「うまくいった時には窓の外を見て、失敗した時には鏡を見る」

 私の愛読書の1つに「ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則」(日経BP社)があります。飛躍的に業績を伸ばした会社や経営者の特色を調べた本です。この中では、「会社を急成長させた経営者は、うまくいった時には窓の外を見て、失敗した時には鏡を見る」という趣旨の分析をしています。

 成功する経営者は、うまくいった時には「窓の外」を見て、その成功要因を他者に求めるというのです。確かに成功した人は、成功要因を「○○さんのおかげ」だとか、「運が良かった」と言うことが多いです。「自分のおかげ」などとは決して思っていないのです。一方、失敗した時には「鏡を見て」、自分のどこが足りなかったかを反省するということなのです。

 ところで、私に経営に関して多くのことを教えてくれた方がいます。この方は、一代で東証一部上場企業を築かれた方なのですが、ある時にこの方と2人で食事をしていて、私が、ここまで述べたように「反省が大切ですね」とお話しすると、「小宮さん、反省では足りない。自己否定が必要」とおっしゃったのに、驚いたことがあります。

 私は多くの会社を見てきましたから、一代で一部上場企業を作るのが、どれだけ大変なことかは容易に想像できます。それを成し遂げた方が、そのことを自慢するならともかく、「自己否定」とおっしゃったのにはとても驚きました。反省だけでは足りないというのです。

 少し成功した社長が、天下を取ったような気分になり、高級車を乗り回し、高級時計をしながら、自分に酔いしれているのとは大きく違います。このような社長は、往々にして企業経営が失敗する大きな要因である「公私混同」もしがちです。

3 反省するためには

 経営者に限らず、人生がうまくいくためには、反省する機会が必要です。私ごとで恐縮ですが、私は、寝る前に日記を書くようにしています。もう25年くらい続けています。私がお世話になっているあるテレビ番組のキャスターは、毎日夜に手帳を見直すとおっしゃっていました。それにより、その日を反省するのでしょう。

 さらに一歩進めば座禅や瞑想をするのも良いかもしれません。私の師匠は禅寺のお坊さんでしたが、よく座禅をされていました。

 松下幸之助さんは「自己観照」を薦めておられます。自分の心を客観的に観るということですが、自分の心を自分の身体から取り出して時々それを客観的に見つめてみることが大切だということです。

 いずれにしても、「反省する」ということを習慣化することが大切だと私は思っています。良い時にも悪い時にも反省できる人が成功するのです。そして、会社全体で取り組むべきは「PDCA(Plan、Do、Check、Action)」です。これは会社の「反省」です。決めたことをやりっぱなしにするのではなく、定期的にきちんとチェックし、次の行動を変えていくのです。しかし、それにはやはり、経営者が「反省」の習慣を持っていることがとても大切ですね。

【参考文献】
(*)「新装版 論語の活学」(安岡正篤、プレジデント社、2015年4月)
「ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則」(ジム・コリンズ(著)、山岡洋一(訳)、日経BP社、2001年12月)
「人生心得帖」(松下幸之助、PHP研究所、2001年5月)

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2018年8月16日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】 inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト http://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

執筆:経営コンサルタント 小宮一慶
株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役。社外取締役や監査役、顧問も務める。大阪府堺市生まれ、京都大学法学部卒業。東京銀行入行。米国ダートマス大学タック経営大学院に留学、MBA取得。岡本アソシエイツ、日本福祉サービス(現セントケア)を経て、1996年2月小宮コンサルタンツ創業。名古屋大学客員教授。講演、新聞・雑誌への執筆、テレビ出演などで活躍中。著書130冊超。「ビジネスマンに役立つ!「論語」最強の活用法」「みんながまだ気づいていない これから伸びる企業77」「経営者の教科書」「図解「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書」など。

RECOMMENDATION

オススメの記事