
第9回 iU 情報経営イノベーション専門職大学 設立準備室室長 ...
2020.02.07
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うまく機能する組織、成員が幸せになる組織とはどのようなものか。この難問の答えを、まったく正反対の立場にある『論語』と『韓非子』を読み解きながら、守屋淳が導き出していくシリーズです。
法やルールを守らせるためには「権力」が必要であると『韓非子』では指摘していると、前回記しました。
では、そもそも「権力」とは何でしょう。案外わかったような、わからないような言葉なのですが、面白いことに、兵法書の『孫子』にその定義をズバリ記したような一節があります。
つまり、こちらは相手を自由にコントロールできるが、相手の意のままにはならずに済む。この状態が、「権力」を握った状態になるわけです。
ちなみに『孫子』の場合、これは「権力」の要件を描いたものではなく、「主導権」の要件を述べたところなのです。つまり、平時における「権力」と、戦時における「主導権」とはかなり似た概念なのです。
では、どうやって相手を意のままにコントロールするのか。『孫子』にはこんな手段が記されています。
「利」と「害」――これはアメと鞭、エサと毒と言い換えてもいいでしょう――を二本の操縦かんのようにして操れ、というのです。では「権力」を駆使するための「利」と「害」とは何か。歴史的にいえば、次の要因があげられます。
他にも「依存関係(言うこと聞かないと依存させないよ)」「情報格差(言うこと聞かないと教えてあげないよ)」など、さまざまなパターンがありますが、こういった要因を源泉にして、相手をコントロールするのが「権力」の実相なのです。
こうした「権力」行使の端的な実例に、民主党が政権をとったときに唱えた「政治家主導」があります。そのとき、官僚たちを操縦する手法としていわれていたのが、次の内容でした。
「金の流れと人事を握れ」
まさしく「財力」と「人事権」という権力の源泉を握ってコントロールしよう、という話だったわけです。
こうした「権力」を駆使して、
「法やルールを守らない者は厳罰に処す・殺す」
という形を作ることが、まず『韓非子』にとって組織をまとめる大前提としてありました。
こうした「権力」や、それをもとにした「権力関係」は、濃淡はありますが、さまざまな組織や人間関係で見られるものです。卑近な話でいいますと、こんな例があります。
昔よく、
「戦後、家庭におけるお父さんの権威が甚だしく低下した」
といわれていました。今では当たり前過ぎて話題にもあがらなくなった感もありますが、ではなぜそうなったのか。ユニークな理由として、「給料が銀行振り込みになったから」という説があります。
もちろん、どこまで本気かわからないような内容ですが、「権力」の源泉の問題を考える限り、これはあながち間違いとは言い切れない面があります。
もし給料が手渡しであるならば、月に一回お父さんたちは、
「自分が『財力』という力の源泉を握っている」
と、自分の権力を家族に示すことができるわけです。
ところが銀行振り込みになると、そんな機会はなくなります。そうなると、専業主婦の妻も子供も「お金は勝手に口座に振り込まれるもの」と考えるようになってもおかしくありません。実際、世の妻のなかには、自分の夫のことを「ATM」と揶揄(やゆ)して呼んでいる人もいたりするわけです……。
さらにもう一つ、ビジネスでこんな例があります。
筆者が中国で大成功をおさめたビジネスマンに取材したとき、こんなビジネスの成功のコツを聞いたことがありました。
「どんなビジネスでも、相手から信用されたいと思ったら、まずこちらが信用してかかるのが大前提。こちらが信用もしていないのに、相手から信用されようなんて虫のいい話は通用しません。 だから、まずビジネスのパートナーに対しては信用してかかるのですが、しかし同時に、裏切られたときの保険をかけておかないと商売は始まりません。 ある人と商売を始めようと思ったら、その人の知り合いで、その人を抑えられる人間を探しておくわけです。例えば、ある地区の消防署長と仲良くなって一緒に商売を始めようと思ったら、さらに偉い消防署長と知り合っておきます。その上で、その人を抑えることの保証をとってから商売を始めるわけです。 信用はするけれども、保険はかけておく、この二枚腰が中国のビジネスでは絶対に必要になるのです」
権力関係をいかに見抜き、それをうまく使って保険をかけておくことが重要かというわけです。さらに、こうした手法は――ちょっと違った切り口になりますが――企業間提携においても使われることがあります。ドラッカーにこんな指摘があるのです。
《「最後に、意見の不一致をいかに解決するかについて、事前に合意しておかなければならない。」 企業間提携においては、トップ・ダウンの指示は機能しない。最善の方法は、紛争が起こる前に、提携の当事者双方が知っており、尊敬しており、かつその裁定が最終のものとして受け入れられるような調停者を決めておくことである》『未来企業―生き残る組織の条件』ピーター・F・ドラッカー 上田惇生、田代正美、佐々木実智男訳 ダイヤモンド社
権力や権威を背景とした関係をいかに見抜き、また、いかに利用するかが人や組織の生き残りには欠かせないわけです。
ただし、厳しい罰によって、組織が一つになったとしても、それでは単にまとまっただけ。「成果をあげる組織」にはなりません。この状態に、「成果を出せる仕組み」をさらに組み込んでいく必要があります。
その鍵となるのが「信賞必罰」として知られる手法でした。
簡単にいいますと、
以上
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