
第11回 心をわしづかむプレゼンをするための5つのポイントとは?...
2019.09.19
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うまく機能する組織、成員が幸せになる組織とはどのようなものか。この難問の答えを、まったく正反対の立場にある『論語』と『韓非子』を読み解きながら、守屋淳が導き出していくシリーズです。
『韓非子』は、組織を一つにまとめるために法や権力を武器とし、さらに成果をあげる組織を作るために信賞必罰や、刑名参同などの仕組みを作ったということを前回まで述べました。
これらは、考え抜かれた素晴らしい手法の数々なのですが、一つ大きな問題を抱え込むことにもなりました。それが「権力闘争」を呼び込んでしまうことなのです。
「刑罰」と「恩賞」は、それを握った方が権力を持ち得るわけですから、弱いはずの臣下でも、もしそれを握れたなら、虎の爪と牙を持った犬のように力関係を逆転できるわけです。そうなると、君主はいかにそれを手離さないかに腐心し、臣下はいかにうまくそれを掠(かす)め取るかを考えるという、キツネと狸の化かし合いのような事態が始まります……。
では、臣下の方はいったいどうやって権力を掠め取ろうとするのか。
こうやってお気に入りとなったらどうするのか。よくあるのはこんな手です。
会社でたとえるなら、オーナーや社長のお気に入りとなって交際費などをたっぷり使えるようにしてもらった役員が、社内接待で自分の派閥を広げ、オーナーや社長の追い落としを謀るといった形とそっくり同じになります。
さらに、次のような口車で権力の源泉を奪い取ってしまうという方法もあります。
筆者もサラリーマンを10年やっていたので経験がありますが、査定のときに部下に悪い結果を伝えるのは誰しも嫌なものです。そうした心理をついて、刑罰の権限を取り上げてしまう形になるわけです。
では、こうした動きに君主はどう対抗していけばよいのか。話はどんどんときな臭くなっていきます……
もちろん家臣や部下のなかにも、権力奪取を狙う腹黒い人物もいれば、本当にこちらに忠誠を尽くそうとする人物もいるわけです。ただしそれは、表の態度や言葉だけではわかりません。そこで『韓非子』はこう指摘します。
後者は『貞観政要』という、日本でもよく帝王学のテキストとして使われる古典からの引用ですが、つまり部下たちの発言を突き合わせて真実を見抜けと言っているわけです。お気に入りの発言ばかり信じていると、そのお気に入りが実は腹の黒い人物だった場合、やがては権力を奪われてしまうよというわけです。会社の社内抗争でも、「まさか、目をかけていたお前に裏切られるとは」といったセリフを吐いて追い落とされる権力者は少なくなかったりします。
では、部下の発言を突き合わせればうまく部下たちの本性が見抜けるかといえば、これだけではダメなのです。なぜなら、すべての側近たちが口裏を合わせて、君主を欺いてくることも考えられるからです。ではどうするか。
一、部下の言い分をお互いに照合して事実を確かめること 二、法を犯した者は必ず罰して威信を確立すること 三、功績を立てた者には必ず賞を与えて、やる気を起こさせること 四、部下の言葉に注意し、発言に責任を持たせること 五、わざと疑わしい命令を出し、思いもよらぬことを尋ねてみること 六、知っているのに知らないふりをして尋ねてみること 七、白を黒と言い、ないことをあったことにして相手を試してみること
ここで見るべきは、五以下の条。部下にさまざまな揺さぶりをかけて、本当のことを言っているのか、何が本当のことなのかを見抜いていけ、というわけです。権力闘争というのは、いったん始まると、本当に泥沼になっていくんですね……
しかも、話はここで終わりません。たとえ部下の本性を見抜けたとしても、次のような問題が起こる可能性があるからです。
一、権限を部下に貸し与えること 二、部下が外部の力を借りること 三、部下が誰かを陥れるためトップを騙そうとすること 四、部下が利害の対立につけこむこと 五、内部に勢力争いが起こること 六、敵の謀略や干渉に乗せられること
注目すべきは二の指摘。権力の源泉は、組織内部で調達できなければ、外部から調達することも可能になるのです。会社でいえば、社内抗争に敗れた一派が、外部のファンドの力を借りて、会社の乗っ取りを謀るような構図でしょう。
結局、「人が信用できない」という前提でよい組織を作ろうとするのは、どうしてもどこかに無理が生じざるを得ないのです。さらに、こうした『韓非子』流の統治法は、もう一つの大きなマイナス面を持っていました。それは現代にも通じる難問であり、古代においては秦王朝を崩壊させる原因にもなっていったのです。(続)
以上
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