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第7回 株式会社エニタイムズ(Anytimes Inc.) 代表取締役 角田千佳氏/森若幸次郎(John KojiroMoriwaka)氏によるイノベーションフィロソフィー

日本情報マート

2019.11.27

かつてナポレオン・ヒルは、偉大な多くの成功者たちにインタビューすることで、成功哲学を築き、世の中に広められました。私Johnも、経営者やイノベーター支援者などとの対談を通じて、ビジョンや戦略、成功だけではなく、失敗から再チャレンジに挑んだマインドを聞き出し、「イノベーション哲学」を体系化し、皆さまのお役に立ちたいと思います。

第7回に登場していただきましたのは、「新しいご近所お手伝いコミュニティ」であるANYTIMES(エニタイムズ)を展開しておられる株式会社エニタイムズの代表取締役、角田千佳氏(以下インタビューでは「角田」)です。

1 「弊社のCtoCのアプリに、『場所の概念』を加えた新しい事業ができるのではないかということで、まずは美容系のスキルに絞った『シェアサロン』の事業を始めることになりました」(角田)

John

早いもので、この対談企画も第7回です。毎回、素晴らしい方をお迎えしておりますが、今回は、株式会社エニタイムズの角田さんにお越しいただきました!

角田さん、本日はお忙しいところ、本当に愛りがとう(愛+ありがとう)ございます! 楽しみにしておりました!

角田さんは現在、イタリアと日本の2拠点を中心に生活されているんですか?

角田

2年ほど前にイタリアの方と結婚し、イタリアと日本の2拠点生活をしています。夫は場所や時間にとらわれない多岐にわたる仕事をしております。私自身も、今後さらに、固定観念や社会の枠にとらわれない働き方をしたいと思っています。これは、まさにエニタイムズという事業で実現しようとしていることでもあります。

John

角田さんはユニークなキャリアをお持ちですね。慶應大学を卒業された後、野村証券、サイバーエージェントを経て、エニタイムズを起業されました。 今、仕事の面で新しくチャレンジしていることはありますか?

角田

はい。あります。少しご説明させていただきますね。

エニタイムズというサービスは、CtoCで、対面のスキルのシェアリングエコノミーサービスなのですが、やはり課題があります。例えば、知らない人とアプリで出会い、家の掃除を頼んだり子供を預けたり、それからペットを預けたりするのは、結構ハードルが高いですよね。そうした課題がある中で、ポイントになるのは「信頼」と「場所」ではないかと考えています。日本人は「場所」に信頼を置く国民性があり、場所があることで安心につながり、その場所の雰囲気にもかなり影響されます。

であれば、弊社のCtoCのアプリに、「場所の概念」を加えた新しい事業ができるのではないかということで、まずは美容系のスキルに絞った「シェアサロン」の事業を始めることになりました。

John

サロンでは、どのようなターゲットにサービスを提供されるのですか?

角田

お客さま側のターゲットは、特に働いている女性です。カテゴリーとしては、ネイルやまつ毛エクステ、ヘアカット、整体の他、ヨガやバレエなどです。そうしたさまざまな美容系のカテゴリーのサービスが、1つの大きなスペースにギュッと集まっているサロンです。「髪切りたいなぁ」「ネイルしたいなぁ」という人からしてみると、1つの場で全てのサービスを一度に受けられるのです。

例えば、私はバレエが好きで、多いときは週5日レッスンに行きます(笑)。そうしたときに、1つの場所で、バレエのレッスンやネイルの施術、ヘアカット、まつ毛エクステなどを受けることができて、しかも仕事の執務スペースもありますので、仕事もできます。こうした場所は、やはり便利ですよね。

また、施術者(プロ)側、にフォーカスしているのも特徴です。美容関連の仕事をしている方は、低賃金・長時間労働だったりするケースも多いと思います。そして、独立しようとしてもなかなかハードルが高く、人気の青山エリアなどに出店しようとすれば、かなりの家賃です。最初のうちは借入も難しいです。そうなると、独立を諦め、結局はどこかの店舗に所属して、低賃金で、長時間労働せざるを得ないという状況が、一部にはあるようです。

今回のサロンは、そういった美容関連のプロの方々が、費用を抑えて独立(初期にかかる費用は0)して、自分らしい仕事を実現/挑戦できる場所、そして、コミュニティにもなります。さまざまなカテゴリーがありますので、例えばネイリストさんが、「このヨガの先生いいよ」とお客さまに教えてあげたりというように、お互いにお客さまを紹介し合うこともできます。1つのカテゴリーの方々のみが集まっていると競合してしまいますが、さまざまなカテゴリーがあるからこそ、実現できることだと考えています。

●複合型シェアサロン「Qnoir」が青山にオープン(10/1リリース)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000048919.html

2 「私は『こういう父みたいな働き方ができたらいいな』と思っていました。もしかしたら、そういう意味では、気付かないうちに影響を受けていたかもしれません」(角田)

John

角田さんは、子供のころから起業を目指されていたのでしょうか?

角田

全くそうではありません。起業することを考えるようになったのは、実は、起業する1カ月前のことでした。

John

そうだったのですね。お父さまはどのような仕事をされているのでしょうか?

角田

父は30歳くらいのころに仲間と起業して、今もその仕事を続けています。スポーツ関係です。トレーニング機器や設備などの輸入販売の仕事です。

John

やはりお父さまが起業されていましたか! 私がこれまでお会いした起業家の方々も、ご家族に起業家の方が多く、交渉や経営の仕方、人脈の築き方などをDNAとして受け継いでいるようでした。

ご両親は、角田さんが起業されたことに対してどのような反応でしたか?

角田

父は結構苦労したようで、私が起業したことに対して、最初はかなり心配していました。

John

お父さまは、東京で起業されたのですか?

角田

東京です。かなり大変だったという話は、後になって聞きました。私からしてみると、父はずっとスポーツが好きで、自分の好きなことを仕事にしていて、とても楽しそうに働いているというふうに見えていました。仕事だけでなく、休日には必ず家族で旅行に出かけたり、長期間の旅行に行ったりもしていました。私はそうした父の姿を見て、自由に働いていて、しかも自分の好きなことを仕事にしていて、本当に「いいな」と思って育ったのです。

私も弟もスポーツをやっていましたので、いろいろな相談にも乗ってくれましたし。そうしたこともあって、私は「こういう父みたいな働き方ができたらいいな」と思っていました。もしかしたら、そういう意味では、気付かないうちに影響を受けていたかもしれません。

John

素晴らしいことですね。お父さまはきっと喜んでくださいますね!

角田

ありがとうございます。そういうことを、父にはあまり言っていないですけど(笑)。

John

お母さまはどのような方ですか?

角田

母は数学科出身で、もともとプログラマーでした。とある銀行のATMのプログラミングのチームの一員でした。ただ、まだ企業で働いていた父の転勤に合わせて、すぐに結婚退職したと聞いています。

母は、やはり仕事をしたいという思いがあったのか、私が小学生になったころに、数学の教員免許もあるので、近所の子供や私たちの友人から勉強を教えてほしいという声がかかりました。それで家で学習塾を開いたのです。ほぼボランティアに近い、地域の学習塾です。

John

なるほど。もしかすると、家事代行など「自分の持っているスキルをシェアする」という発想は、子供のころに見たお母さまの持っている能力が誰かの役に立っている姿が潜在意識にあったのかもしれませんね。お母さまは今、角田さんの頑張っている姿を見て、どのようにおっしゃっていますか?

角田

父よりも母と仕事の話をよくします。いちエニタイムズの依頼者ユーザーとしても頻繁に使ってくれて、母世代の目線からのフィードバックをくれたり、常に、「何か私に協力できることがないか」と楽しみながら協力してくれています。創業当初は、弊社のパンフレットをご近所の方に配ったりして、手伝ってくれてもいましたね。

John

素晴らしいお話ですね。

3 「(小学生のころに)誰かの役に立つような仕事ができたらいいなと思いました」(角田)

John

角田さんは国連の国際公務員になりたかったそうですが、それはなぜでしょうか。

角田

きっかけは小学生のころで、本やニュースを通じてそうした職業があることを知りました。当時、国連難民高等弁務官をされていて、難民の支援などをされていた緒方貞子さんに感銘を受けたのです。緒方さんは世界でご活躍されていて、難民の支援をされているのを知って興味を持ちました。緒方さんはとても強い方で、そして現場主義の方です。国連というある意味で官僚的な組織の中で、それを壊し、それこそイノベーションを起こしました。自分の信念に従った意思決定をしたり、実際にとても危険な内戦をしている地域に足を運んで直接現地の人たちと話をしたり、そうした緒方さんの行動力にも感銘を受けました。 (緒方貞子さんは2019年10月22日にお亡くなりになりました。ご冥福を心よりお祈りいたします)

John

そうしたことを小学生のときに知って、角田さんはどのように思われたのですか?

角田

まず、歴史の授業などで確かに戦争について勉強していて、もう終わったものだと思っていましたが、まだ今この時間にも戦争が続いているところがあるということが衝撃でした。人類はこれだけ何度もさまざまな戦争をして、反省をして、平和が大切だと言っていますが、それでもいまだにどこかで戦争が起きている。そのことに、ショックを受けました。

そして、日本では今は戦争がありませんが、自分と同じ日本人女性が内戦などの現地に行って難民支援をしているということも衝撃だったのです。内戦や紛争をすぐに終わらせることはできないかもしれませんが、そこで、被害に遭った難民の支援をしているということに感銘を受けました。そうした誰かの役に立つような仕事ができたらいいなと思いました。

John

それは小学校何年生のころですか?

角田

小学校4年生か5年生ぐらいです。

John

かなりしっかりと自分の考えを持っている小学生だったのですね。

4 「やはり私にとってはチャレンジしないことがリスクで、せっかくやりたいと思ったことやアイデアがあるのであれば、それをやらなかった後悔のほうが大きいだろうと思っていました」(角田)

John

角田さんは起業されて、何年目ですか?

角田

今年(2019年)の5月で7年目です。

John

もう7年も経つのですね。素晴らしいです! 起業するに当たって、不安はありませんでしたか?

角田

むしろ、始めないほうが不安でした。要は、「何がリスクか」ということではないでしょうか。これはいろいろな方も言っていますが、やはり私にとってはチャレンジしないことがリスクで、せっかくやりたいと思ったことやアイデアがあるのであれば、それをやらなかった後悔のほうが大きいだろうと思っていました。

John

そうですよね。多くの人は「リスク」と言いますが、何をリスクと言っているのでしょうね?

角田

分からないですよね。例えば、よく、「大企業、一部上場企業の正社員になることが、リスクが少ない」という声を聞きますが、もしその大企業に何かあったときには、自分自身の力だけではどうにもできないですよね。むしろ、私はそのほうが怖いです。自分自身でどうにもできないことが怖いと感じます。

それに加えて、自分自身にスキルがないと、それはリスクだと思いましたので、起業しました。

John

どのようなタイミングで起業されたのでしょうか? CtoCという言葉は、そのときからありました?

角田

いえ、全くありませんでした。それどころか、スタートアップという言葉さえ知らなかったぐらいです。「こういう仕組みがあったら便利なのではないか」と思い、それで(エニタイムズというサービスを)つくりたいと思ったのです。

大学を卒業して、就職し、一人暮らしを始めたころ、私は地域のつながりの希薄化というのを感じていました。同時に、働き方に関する疑問も感じていました。大学生のときに思い描いていたのと、大学卒業後に大企業で働いたときの働き方と、大きくギャップがあったのです。

John

どのようなギャップがあったのでしょうか?

角田

自分がいた会社に限ったことではなく、世の中の社会人を見ると、仕事に本当に苦しんでいる人があまりにも多かったのです。もちろん人によるとは思いますが、「仕事に対してネガティブな感情を持っている人がたくさんいる」というのが目につきました。

John

どのようなことに対してネガティブなのでしょうか?

角田

会社そのものに対してもそうですし、自分の上司や同僚に対して、とてもフラストレーションを溜めていました。仕事が終わってお酒を飲みに行くと、周囲の人たちが話している内容が耳に入ってきますよね。そういうときに、仕事や職場の文句、悪口を話している人がすごく多かったのです。

それがとてもショックでした。社会人全般的にそういう人が多いように感じたのです。学生時代はそうしたことに全く気付いていませんでした。私は特に、父を見ていましたので、そこで初めて「父は他の社会人の方と結構違う」と思ったのです。働き方も、父は他の方と違うというのに気付きました。それほどまでに文句や悪口を言うのであれば、それを会社や上司に伝えたり、仕事を変えることはできないのか?と思いました。

John

よく分かります。私も、例えばお店で接客してくださる方の表情などを見たときに「仕事が楽しくないのだな」と感じることがあります。一体、なぜなのだろうかと。

角田

働き方に加えて、接客の仕事の内容自体にも問題があるのかもしれませんね。

John

仕事が楽しくなさそうな人たちを見ると、寂しく感じます。角田さんも同じではないでしょうか。

角田

そうです。驚きました。本当に悲しくなりましたし、「どうして自分で自分を苦しめているのだろうか?」というふうに思いました。

誰にも「転職してはいけない」とは言われていませんし、しかも転職先がないわけでもない。転職先はあると思います。ですので、それほど不満があって苦しいのなら、転職してもいいのではないでしょうか。しかし、皆、それをしない。一体、何に皆はそれほど縛られているのだろうと思いました。(縛っているのは)考え方や固定観念、社会の枠なのかもしれません。学生時代には見えていなかった社会の枠や知らなかった社会のルールのようなものを知りました。例えば、「転職をするのはネガティブだ」「上司が間違えていると思っても指摘できない」といったことです。

John

皆が何かストッパーを掛けられているのが、怖いですよね。そこで、角田さんは違和感を覚えてサイバーエージェントの子会社の立ち上げ期に加わったわけですね。どのような職種だったのでしょうか?

角田

PRです。どちらかというとWeb PRですが、当時Web PRは確立されていませんでしたので、手探りでその子会社をつくった社長がいたのです。その方は学生時代にインターンでお世話になった方です。ほぼPRの経験のないメンバーでしたので、私も入って驚きました(笑)。野村証券という大企業の場合、正攻法みたいなものが決まっていて、自分が取り組む範囲も詳細に決まっていたのですが、Web PRの仕事は、内容が確立されていなかったこともあり、さまざまなことをやらせてもらうことができました。

John

エンジニアはいたのですか?

角田

一人もいませんでした。PRの経験がある人もいませんので、手探りでつくっていくので、一人ひとりが個人事業主のような感じでした。私としては、ゼロから1をつくる仕事をしたかったので、とてもやりがいがありました。しかも、皆、楽しんでゼロから1をつくっていました。社長も含めて、まだ正社員が3、4人だったのですが、一人ひとりが独立していました。当時は、社長が33歳くらいで、若い会社でしたね。

角田氏と森若氏の対談の画像です

5 「『変化をしに行く』という思いの上で、事業に取り組む決断をしたのです」(角田)

John

それで、そのPR会社はどこまで成長したのでしょうか?

角田

現在の具体的な数字は存じ上げないのですが、恐らく(社員が)30人ぐらいに増えて、とてもうまく行っているみたいですね。

John

そこで何を一番学びましたか?

角田

やはり、「自由な発想」というのをとても学んだと思います。ゼロから1をつくるのには、自由な発想が必要じゃないですか。ただ、そのときに、逆に「自由って何だろう」ということにもぶつかりました。何か枠があってその中で考えるのであれば、それまでも経験がありました。しかも、細かいルールに従って決められた仕事のみをすることを3年間トレーニングされていましたので、(枠がなくなると)どこからどこまでを考えていいか分からない。何をしていいか分からない。そうした状態になってしまったのです。

しかし、私はもともと、自由に考えたいタイプでしたので、割とそこは柔軟に順応することができました。それで、自由に考えることができるようになったのです。それでも自由な発想というのは難しいですよね。PR自体も初めてで、しかも世の中にもWeb PRの事例もほとんどなかった時代でした。

また、私は多くの失敗を重ねましたが、それを経験にしてまたチャレンジできる、そういった会社でした。とても感謝しております。

John

何をPRしていたのでしょうか?

角田

一般家庭に並ぶ食品からファッション、化粧品、レストラン、車など、ありとあらゆる分野の商品がありました。プレスリリースやメディアプロモートだけでなく、今でいうインフルエンサーマーケティングも行っていました。そして、当時は飛び込み営業もプランニングも、制作も、もうとにかく考えつくことは全部やりました。

John

角田さんは、当時、どのように飛び込み営業をされたのですか?

角田

私は広告代理店の担当でした。一度仕事が始まって、良い結果を出していくと、入館カードをいただけるようになりますので、まずは机を1つずつ回って。本当に飛び込み営業ですよね。「こんにちは」「お仕事中、失礼します」と言って回りました(笑)。もちろん、「忙しいので」と言われることがほとんどでしたが、資料を見せながらPRをしていきました。

John

「この資料で飛び込み営業をしてうまくいった!」というような事例などはありますか?

角田

資料はあまり関係なかったかもしれません。正直、広告代理店の方が、PR1年目の私よりもPRに詳しいこと、経験豊富なことが多かったのです。ですので、逆に、教えていただくことも多くありました。

ただ、そのPR会社でしかできないことも幾つかありました。ですから、逆にその点を相談していただいて、そこから学んで、そのニーズに合わせてプランや資料をつくったりしていました。ヒアリングさせていただいて、それに合わせたものをつくっていくことのほうが多かったですね。それが後々のエニタイムズという会社の名前にもつながっていくことになります。

John

どういうふうにつながっていったのでしょうか?

角田

エニタイムズの会社の名前は、進化論のダーウィンの言葉からきています。「最も強い者が生き残るのではなく、 最も賢い者が生き延びるのでもない。 唯一生き残るのは、変化できる者である」という言葉があると思うのですが、その通りで、やはり変化は大事だと思います。

大学から野村証券へ、野村証券からサイバーエージェントへと、それぞれ大きな変化がありましたし、サイバーエージェントで自由にやらせてもらう中でも、かなり自分自身が変化していかなければ、生きていけないのだと分かりました。そうした経験から、変化というものの重要性を、身をもって学んだのです。

起業して自分でやっていくのであれば、世の中の流れはとても速いですし、特にインターネットの流れは速いものです。とにかく、そうした速い流れに合わせて変化していくことが大事です。今回始めることになったシェアサロンの事業も、「変化をしに行く」という思いの上で、事業に取り組む決断をしたのです。

John

角田さん、素晴らしいですね!! 

スタートアップブームが来る前に起業された角田さんですが、大学時代は法学部でしたよね。私も文系なのですが、自分自身がエンジニアになったり、プログラミング言語が分かったり、マシーンを直せないと良い経営者にはなれないのではないかと、昔は不安でした。角田さんの中で、そのような不安はありましたか?

角田

恥ずかしながら、それ以前のところでした。もしかしたら、今ですと、自分がエンジニアでなければスタートアップを経営するのは難しいのかな、と思うのかもしれませんが、そういうことさえも知らなかったのです。しかも、エンジニアを採用しなければならないということも分かっていませんでした。難しいウェブサイトじゃないですし、大丈夫かなと思っていたのです。事業計画書だけは立派にできていましたので。

実は私、サイバーエージェント出身と言いながら、エンジニアという職種の方と話したことさえもなかったですし、お会いしたこともありませんでした。当時は、エンジニアとデザイナーがどこからどこまでの仕事をするのかさえ、分かっていませんでした。例えば、デザイナーにしても、当時は紙のデザイナーもウェブのデザイナーも同じデザイナーだと思っていました。ですので、最初のウェブサイトのデザインを紙のデザイナーにお願いしてしまったり。そのデザインを、プログラマーに見せたら、「これはできない」と言われました(笑)。それくらい、本当に何も分かっていない状態でした。

また、初めてウェブサイトをつくらなければならない、どれくらいの金額でつくれるのか聞きに行こうということで、「システム開発会社」と検索して、上位に出てきた東京にある企業数社に聞くといった感じでした(笑)。大体いつも、グーグル検索さんに助けられていますね。

そうして見つけた企業に訪問して見積もり依頼をすると、「このサイトは1年はかかる」と。思っていた以上に時間がかかる上に、金額も想定をはるかに超えた回答でした。

さらに、そもそも打ち合わせで使われている言葉も分からないことだらけでした。そのとき一緒に起業した友人がいるのですが、その友人も金融出身で全く経験がなかったので、2人とも、毎日新しい言葉を学んでいくという状況でした。プログラミングの言語があることもそこで初めて知りました。

グーグル検索で、「ワイヤーフレーム」を調べたことも覚えています。打ち合わせのときに、「ワイヤーフレームください」と言われて、「ワイヤーフレーム」という言葉も知らなかったので、調べたのです。それも一番上に出てきたサービスが「無料でワイヤーフレームがつくれる」と書いてありましたので、そのサービスでワイヤーフレームをつくりました。そのときのワイヤーフレームが今でも残っており、現在のサービスの根幹となっています。

6 「この何もない、しかも、資金もショートしそうな会社に、なぜこのvaluationがつくのか、その根拠となるロジックも分からなく、少々困惑しました」(角田)

John

起業されて、システム会社を選ぶときは、どうされたのでしょうか?

角田

結局、システム会社さんには頼みませんでした。そもそも自分たちがクラウドソーシングのようなサービスをやろうとしていたので、クラウドソーシングやフリーランスの方に頼もうと決めました。そして、1人のフリーランスの方に頼むことに決めました。その方は、紹介の紹介の紹介のような感じで、もう一人の共同創業者が、見つけてきてくれました。ここで最初の大失敗、サイトが完成しないということが起こります。

John

予定通りに進まないと、資金繰りが……と思いますよね。調達しなければ、と。一体、どうされたのですか。

角田

エニタイムズというサービスをつくるのにも時間はかかりますので、実は、もう一つ、同時に会社を立ち上げていて、PR関係などの仕事をたまに受けたりしていました。その他にも、地域活性化、商店街の活性化に興味がありましたので、その関係の取り組みもしていました。私の実家は久我山なのですが、久我山の商店街をもっと盛り上げるようなサービスができないかと思い、アプリをつくり始めたりもしていました。結果的に、その後、良いアプリができたのですが、最初の資金調達のタイミングでそれは全部リリース前に閉じることになりました。

エニタイムズのウェブサイトの最初のリリース時は、プレスリリースだけ出していました。プレスリリースを書いて、さまざまなメディアに送り、ビジネスモデルが面白いと興味を持ってくださったメディアから取材の話をいただいたりしていました。

John

当時からプレスリリースに「シェアリングエコノミー」と書かれていたのですか?

角田

書いていません。そのときは、「生活密着型クラウドソーシングサービス」と言っていました。なぜかといいますと、そのとき、シェアリングエコノミーと検索しても何も出てこなかったのです。誰も分からないという状態でした。そこで、一番近かった言葉がクラウドソーシングだったのです。ですので、「生活密着型クラウドソーシングサービス」ということであれば、見てくれるのではないかと思いました。

John

ちょうどクラウドワークスやフリーなどがリリースされていて、分かる人は分かるという状況でしたよね。

角田

そうですね。そう思ってプレスリリースを出して、それであればメディアも興味を持ってくれるかと思っていました。そうしたら、ある1社が興味を持ってくださったのです。それで、取材記事を出していただきました。

John

なるほど。PR会社の経験が生きているお話ですね。

角田

リリースを出すかどうかはかなり迷いました。ウェブサイトに改良の余地がありましたので、この状態で出していいのかと(笑)。それで、実はリリースはしているのに友人にはあまり話さない、というような感じでした(笑)。恥ずかしかったのです。

John

そうだったのですか。資金調達は、そのときが初めてですよね? どのような経緯でしたか?

角田

最初は、弊社にお問い合わせをいただきました。

valuationの具体的な数字も書いてありましたので、驚きました。その「中途半端な状態」でウェブサイトをリリースしたのが2013年の10月で、投資の話をいただいたのが12月でしたので、とにかく驚きました。この何もない、しかも、資金もショートしそうな会社に、なぜこのvaluationがつくのか、その根拠となるロジックも分からなく、少々困惑しました。

John

いろいろと分からない状態で、決断を行わなければならなかったのですね。どのようにして、値付けが合っているのかを確認したのですか? 心の中では不安でも、「分からない」とは言えませんよね。

角田

分からなかったのでグーグルで調べました(笑)。分かる友人も知り合いも、当時は周りに全くいなかったのです。私も、そもそもスタートアップとは、というようなところから勉強を初めました。

そしてどう考えてもこのvaluationでは、今、少し生き延びたとしても、厳しいと考えました。しかも、不安定なウェブサイトの状況ですし。会社としても、共同創業者の役員がアメリカに引っ越して会社員をしている状態で、それを「何をしているのですか?」と指摘されているような状態で(笑)。

それで「3カ月待ってください」という話をして、その3カ月で一気にウェブサイトを改善して、valuationをあげて資金調達をしようと考えたのです。3カ月経った段階で、もう一度交渉させてくださいませんかという話をさせてもらいました。

John

ウェブサイトを改修するエンジニアはどのように確保したのでしょうか?

角田

クラウドソーシングのとあるサービスを使って探しました。

John

支払いはどうされたのですか?

角田

エニタイムズの資本金がまだギリギリ残っていましたので、そこから支払いはできました。なので、本当にショートする直前で、3カ月だけと決めていました。

John

そして、プロダクトがよくなり、3カ月後に調達も無事に行えたのですね。

角田

はい。できました。

そのベンチャーキャピタルさんには、とてもお世話になっています。今もそのベンチャーキャピタルさんのオフィスの隣にあるラウンジを利用させてもらったり、どんな状況下でも常にご支援いただいています。

7 「うまくいっているときは同じ考え方の人が多いほうが売上は伸びやすいのかもしれませんが、逆に、何かあったときは、多様な考え方があったほうが乗り越えられると思います」(角田)

John

最初は角田さんが、お一人で事業をされていたのですか?

角田

今は社員がいますが、最初はクラウドソーシングや、フリーランスのエンジニアの方の力を借りながらでした。

その後、最初の資金調達をしたころに、1人目の社員が入社しました。また、私の義妹がちょうどその時期に、働き方についていろいろと思うところもあり、サービスにもとても共感してくれて、入社してくれたのです。

John

義妹さんもエンジニアですか?

角田

エンジニアではなく、それ以外の広報、営業、カスタマーサポート、経理、人事など全ての業務を一緒に立ち上げてくれました。

John

今も会社にいらっしゃいますか?

角田

はい。今は育休に入っていまして、もうすぐ復帰する予定です。広報から、営業から、ライティングから、全部ゼロからの立ち上げです。その後、人事、経理などもやってもらう必要が出てきたので、一通りやってもらっています。本当にとても助かっています。

John

いつごろ、最初のエンジニアを採用されたのでしょうか?

角田

最初の資金調達の2年後ぐらいですね。それまでは全部アウトソーシングなどでした。その業務委託をお願いしていた人の中から、正社員としてオファーしたいと思う人が出てきたのです。それで、正社員になってもらいました。そのエンジニアは、今も在職しています。

John

今、外国人の社員の方は、何人ぐらいですか?

角田

外国人メンバーは現在4名いて、中国や、カナダ、フィリピン出身です。

John

素晴らしいですね。どのようにして、外国の方がジョインするようなスタートアップになったのでしょうか?

角田

もともと知り合いだったケースや、紹介などで、加わってもらったというケースもあります。

John

なぜ外国人エンジニアの方が必要なのでしょうか?

角田

外国人ということを意識していたわけではありません。たまたまです。必要としている条件に合う人を採用していったら、外国人メンバーの方が結果的に多くなっていました。

John

「日本人だ、外国人だ」というふうに見ていないのですね。それは素晴らしいことですね。

角田

そうですね。国籍も性別なども関係なく、さまざまな方が入社してくれています。

John

社内の言語は何語ですか?

角田

人や内容によって変わります。日本語の場合も、英語の場合もあります。

John

ビザの発行も手伝ったりしたのでしょうか?

角田

手伝ってあげた人もいれば、もともと持っている人もいましたし、両方ありました。

John

ビザの発行を手伝うということは、一緒にずっとやっていこうという覚悟があるからで、その覚悟を決めるのはすごいことですよね。なぜそこまで思えるのでしょうか? 世の中には、社員が100人いても200人いても外国人を1人も雇っていない企業も多いと思います。

角田

私はもともと、国籍や性別などを気にしません。むしろ、いろいろな考え方やバックグラウンドなどを持っている人がいればいるほど、良い状態だと感じます。

また、うまくいっているときは同じ考え方の人が多いほうが売上は伸びやすいのかもしれませんが、逆に、何かあったときは、多様な考え方があったほうが乗り越えられると思います。

John

素晴らしいですね! 私も講演では、「Diversity of ideas」が大切だと伝えています。

角田

1つのことに集中して同じ環境にいると、良い部分もあるのですが、知らず知らずのうちに、視野がどんどん狭くなってしまうこともあります。実はすぐそばに答えがあるのに、それが見えなくてとても残念な結果になってしまうということもあります。しかし、そういうときに、違う見方を持って視野を広げてくれるメンバーがいてくれるのは、本当に大切なことだと思っています。

弊社ではシステム開発・運用を行っていますので、その資産をつくる人というのはとても大切で、弊社のメンバーはほとんどがエンジニアです。そこに投資をしていくべきだと思っています。

森若氏の対談の画像です

8 「エニタイムズの利用がきっかけになって、実は起業することになったという人も出てきており、そういう“プチ起業”のお手伝いができるといいなと思っています」(角田)

John

エニタイムズのサービスは、誰がお客さまで、誰を幸せにしているサービスなのか、詳しく教えていただけますか?

角田

大きく2パターンあります。1つ目は日常のちょっとした用事を依頼したい人です。もう1つは、空き時間を使って仕事をしたいという人。この2パターンの人がいます。例えば、独立したいと思っても、1人でフリーランスとして働くというのはハードルが高い。副業したいと思っても、どうすればいいのか分からない。そうした人たちでも、エニタイムズのサービスであれば、気軽にチャレンジすることができます。エニタイムズの利用がきっかけになって、実は起業することになったという人も出てきており、そういう“プチ起業”のお手伝いができるといいなと思っています。

John

なるほど。ユーザーの声から何が分かりますか?

角田

本当にさまざまな属性のユーザーさんに使っていただいていますが、副業で使われる方が最近増えてきています。副業としての使い方が、とてもいいと言っていただいています。

John

フィードバックはどのような形で届くのですか?

角田

お問い合わせメールに感想を送ってくださる方もいますし、後は、不定期でユーザーインタビューもしています。その他に、私自身がヘビーユーザーの1人なのです。利用する際は自分の名前を隠して使っていまして、いろいろなユーザーさんとマッチングさせてもらっています。そうすると、生の声がとても聞けるのです。エニタイムズの中の人としてではなく、1ユーザーとして、「このサービスってどうなんですかね」と聞くと、かなり素直に答えてくださいます。

John

いい声もありますが、耳が痛い声もありますよね。心が折れそうになったりしないですか?

角田

そうですね。特に最初のころは、耳が痛い声のほうが圧倒的に多く、特に毎回ウェブサイトが使いにくいと言われていまして……。

John

どのような点が使いにくかったのですか?

角田

根本的すぎる部分なのですが、ウェブサイトが動かないですとか、初めはそうした内容が多かったですね。それに加えて、「どうやってマッチングしたらいいのか分からない」「仕組みがよく分からない」といった声もいただきました。しかし、「コンセプトは好きなので使っている」という声も多く、どうやってこのコンセプトと仕組みをウェブサイトやアプリを通して分かりやすく伝え、実現できるのか、ということを日々考えて改善につなげております。

John

そうだったのですか。そのような声も大切ですね。料金設定はどのような仕組みですか?

角田

ユーザーのマッチングについては、基本的に、2者間で値付けをします。例えば、仕事をしたい人が「3000円で家の掃除をします。交通費込です」というチケットを出していたら、それに対して、依頼者が購入申請をします。そこで、「3000円だと高い」と感じたら、交渉することができます。そうして料金を変更して、マッチングすることができます。

John

チップはないのでしょうか?

角田

チップのような機能を付けたいと思っているのですが、まだ実装はできていません。以前より、「サンキューチップ」という名称まで考えています。

John

アメリカもそうですが、レストランやバーで提供されるような値段が決まっていないサービスがありますよね。提供側が本気でやってくれたら、こちらも後から、きちんと払うじゃないですか。そう考えると、日本にもチップ制があればいいと思います。個性豊かなおもてなしやサービスを提供してくれる人には、チップを渡せるサンキューボタンがあればいいですよね。390円でも、1000円でもいいのですが、お金を手軽に送ることができて、さらにUberのように5段階評価ができれば、もっと多くの人が、マニュアル化されたサービスではなく、ユニークなサービスを提供するようになると思います。

角田

ありがとうございます。そうですよね。今後検討させていただきます。エニタイムズの評価機能は、3段階に加えて、コメントをするようになっていて、必ずその評価をしないと、完了できない仕組みになっています。先ほどお話ししたサンキューチップの機能はまだありませんが、ユーザー同士で工夫して、チップのようなやり取りをされることもあるようです。

例えば、「今回はありがとうございました。今回、たくさんサービスもしてくださいましたので1000円追加でお支払いさせていただきます」というような形で、エニタイムズを通して追加で指名リクエストをしてお支払いをされたりしております。他にも、これが結構多いのですが、お金ではなくて、お菓子を渡しているケースなどがあるようです。チャットの内容などを拝見していると、「お菓子のプレゼント、ありがとうございました」というようなやり取りをされているのを見かけます。

John

ヘビーユーザーが多いサービスは何でしょうか?

角田

掃除です。7割ほどを占めています。最初のころに、いろいろなカテゴリーの中でも家事代行に絞っていたので、現在でも掃除のサービスを利用される方が多くいらっしゃいます。しかも、掃除をお願いされる方はリピートされるので、週に1回来てくださいというように定期的に利用される方も多いです。

John

料金はどのくらいで、どのような方が掃除に行くのですか?

角田

大体2時間で、交通費込みで4000円~5000円ほどですね。掃除に行く方は、50代~60代の女性で、専業主婦だった方が多いです。

John

今、ユーザーは5万人以上いらっしゃいますよね? その方々はどのようなきっかけでサービスを知ったのでしょうか? 

角田

今、6万3000人くらいです。弊社の場合、まだ広告は打っていません。そうすると、口コミか、メディアを見てのどちらかの方法で知っていただくケースが多いです。メディアを見てという場合ですと、圧倒的にテレビをご覧になってという方が多いです。特に、50代~60代の方がテレビを見てというパターンが多く、「テレビを見て登録しました」というヘビーユーザーの方もいらっしゃいます。

エニタイムズが始まって間もないころに登録されたユーザーの中には、以前、家事代行会社で働いていて、フリーでやりたいと思ったので登録したという方もいました。プロフィールにも書いていらっしゃることがあります。

9 「これまでにも、『サービスを絞る』という話は何度も出てきましたが、結局なぜ絞らずに広げてやっているかというと、私たちは、スキルを循環させたいからなのです」(角田)

John

掃除に次いで、どのようなサービスが人気なのですか?

角田

その次は、料理です。

John

美味しい、あるいは口に合わない、というようなこともあるのでしょうか?

角田

あります。そのため、料理は、掃除に比べると利用される方は少ないです。ただ、同じ料理でも、作り置きしてほしいというニーズもあれば、料理を教えてくださいというニーズもあります。教えてくださいというニーズの場合は、口に合わないというふうにはなりにくいですよね。

その他には、家具の組み立てのご依頼が多いです。家具の組み立ては、意外と大変じゃないですか。かといって(家具店の)組み立てサービスを利用すると、結構値段が高いです。もう少しお手ごろな値段で家具の組み立てをお願いしたいと考えるユーザーさんからのニーズがあります。

John

例えば、不動産屋さんに家を探しに行くのって結構手間が掛かると思いますが、代行サービスとして、「家探し」などもありますか?

角田

そういえば、そういうマッチングをされているケースもあったと思います。ただ、かなりレアなケースですね。

他によくあるニーズとしては、英会話も多いです。語学レッスン系は結構多く、私もイタリア語レッスンをエニタイムズでマッチングして、月に3回ぐらいやっています。

John

向こうは驚くのではないですか(笑)。「社長が来た!」と言われるときもありますか?

角田

たまにあります(笑)。一度、偶然知り合いの投資家の方とマッチングしたことがありました。カフェで事業企画の相談をしたいといったご依頼でした。

John

そういうマッチングもできるのですか? エニタイムズは素晴らしいですね!

角田

ありがとうございます。

今、課題になっているのが、新規ユーザーさんがチケットをつくっても、まだ評価がないのでマッチングしいにくいということです。ですので、新規の方の場合は、サービスを利用したい側から「こういうことしてくれませんか?」というリクエストが上がってくる機能があるので、そこに対して応募してもらうといいかなと思っています。その流れですと、新規の方でもマッチングができて、それで評価を貯めて、もともと出しているサービスチケットにも購入申請が入ってくるようになると思います。

John

そこまでできるのですね。全てのC to Cの完全なプラットフォームを目指しているということでしょうか?

角田

そうなりたいですし、そうしたいのですが、まだ課題はあります。今お話したような細かい課題がたくさんあるのと、アプリでマッチングして、実際に人と会うというのは、まだまだ抵抗感があると思います。

John

確かに、まだネットでの出会いに抵抗感がある人もいるでしょうね。

角田

個人の本人確認は、今、任意で行っていますが、その精度を高める取り組みなども考えられると思います。現状は、本人確認書を提出していただいて、それをこちらで確認して、プロフィールと内容が合致していれば本人確認マークを表示しています。しかし、リスクを最大限減らす取り組みは、もっと必要なのではないかと思っています。

John

規制の関係で運転代行は難しいと思いますが、まるでサービス数の多いUberのようですね。

角田

ありがとうございます。ただ、そのために難しいことも多いです。通常は1つに集中するのだと思いますので。

John

サービスを絞らない理由は何でしょうか。現在、何種類くらいのサービスがありますか?

角田

80種類以上あるという状態です。これまでにも、「サービスを絞る」という話は何度も出てきましたが、結局なぜ絞らずに広げてやっているかというと、私たちは、スキルを循環させたいからなのです。

このサービスは、依頼者になることもあれば、仕事を提供する側になることもあります。地域の中でスキルを循環させて、自分が得意なことは提供者側になり、苦手なことは依頼者側になる。ということを実現したいのです。そうすると、さまざまなサービスがマッチングしないと、循環が生まれません。例えば、家事代行に絞っていたら、依頼者側か提供側かの、どちらかにしかならないですよね。しかし、カテゴリーを広げれば、両方になることができて循環が起きるので、地域の中の助け合いに役立つと考えたからです。

John

1回使った後に、エニタイムズ上でやり取りをせずに、ユーザー同士で直接やり取りをする可能性もありますよね。それに対してはどう思われますか?

角田

基本的には、安心安全のため、直接契約を禁止しています。しかし極論を言えば、私たちは、弱い緩やかなつながりをエニタイムズを通じてつくろうと思っていますので、もしエニタイムズの中で信頼関係が生まれて、そこから派生して、強いつながりができれば、むしろそれはそれで私たちの本望です。

もちろん、それだけではビジネス的には問題があります。しかし、例えば、家事代行を頼んだ方に、その後に英語のレッスンを頼むわけではないですよね。英語のレッスンを頼みたいときは、またエニタイムズに戻ってきて、英語の先生を探すというふうになると思います。

John

とても大きな考えですね! 海外のコンペティターといいますか、参考になるC to Cのサービスはありますか?

角田

TaskRabbitなどが近いと思います。ただ少し違うのは、TaskRabbitは、仕事する側のユーザーを全員バックグラウンドチェックやスクリーニングをしている部分です。しかしさまざまな対面サービスのC to Cという形のビジネスなので、そこが近いかなと思います。

10 「今後は、さらに『信頼』をどのように蓄積していくのかという課題について考えていきたいと思います」(角田)

John

これからエニタイムズを、どのように成長させて、どこまでを目指しているのでしょうか?

角田

エニタイムズというサービスは軸であり、それは変わりません。ただし、これだけではなかなか時間もかかっていますし、障壁も高いので、その解決策の仮説の1つとして、今回シェアサロンの事業も始めました。シェアサロンという場所を通じて信頼を培っていきます。今後は、さらに「信頼」をどのように蓄積していくのかという課題について考えていきたいと思います。

John

グループをターゲットにしてはどうでしょうか。グループや友人と使ってもらうなど。

角田

実は今もあります。アカウントは1つですが、友人同士で2人で行くというようなことも、女性の方で結構いらっしゃいます。

John

2人であれば、訪問するときも不安がなくなりますね。2、3回繰り返したら慣れていただけるでしょうね。

エニタイムズのシステム手数料は15%ということですが、それはどのように決めたのでしょうか?

角田

類似サービスの相場は20%程度でした。ただ、現在の子育てや家事代行系になってくると30%以上というサービスも多いです。サービス開始当時はUberなどもまだほとんど認知されていない時期でしたので、クラウドソーシング系のサービスも参考にさせていただきました。そうすると大体15%~30%の間に設定されているところが多かったので、参考にさせていただきました。

John

多言語対応はされていますか?

角田

そうですね、英語はもう対応していて、スマホを英語の設定にしている方は、英語で表示されます。ただ、投稿されている内容に関しては自動翻訳をしていませんので、日本語が多くなります。やはり、日本語が分かる方でないと、現状マッチングは難しいと思います。

John

では、英語ができる日本人や、日本に住んでいる外国人が英語で登録していれば、海外から来た人も活用できるわけですね。

角田

そうですね。たまにそうしたマッチングもありますが、まだ少ないです。

11 「変わることと、『愚公移山』という2つは、矛盾するようでいて、しかし、私は両方とも大切だと思います」(角田)

John

最後の質問になります。人々を幸せにするためにさまざまなスキルを共有していき、世の中にイノベーションを起こしたいという思いで、角田さんはこれまでに新しいチャレンジをたくさんしてきたと思います。角田さんにとっての自分が一番大切にしているイノベーションの哲学とはどのようなことですか?

角田

難しい質問ですが、やはり「変化する」ということが自分の中で、とても大事だと思っています。ただ、この変化することと同時に、一見矛盾するように聞こえるかもしれませんが、もう1つ大切にしていることがあります。それは「愚公移山」(ぐこういざん)です。この言葉は、会社を立ち上げるときに、自分の中で、掲げました。時代に合わせて変化していくことも大事なのと同時に、信念をブラさないということも大事です。何事も、成し遂げようとしたときに、簡単に成し遂げられるものでもないと思っています。

John

「愚公移山」は、大きなことでも根気よく努力し続ければ必ず成功するという意味ですね。難しい言葉ですが、この言葉はどういう経緯で知ったのですか?

角田

共同創業をした親友から、創業時に聞きました。その友人のお母さまが、家に「愚公移山」という書を飾っていたようなのです。そのお母さまも実は起業家です。それで、彼は子供のころから「愚公移山」を言われ続けていたという話を聞きまして、心に響きました。

サイバーエージェント時代、私はゼロから1をつくるということをほんの少しかじっただけですが、それでもとても時間がかかりました。さらに起業時は、自分でビジョンを携えて本当のゼロからスタートしていくということですし、しかもやろうとしていることは世の中に前例がないことでした。シェアリングエコノミーという言葉もないぐらいでしたので、さらに時間はかかるだろうと。

しかし、信念を貫きたいと思っています。やろうとしていることが間違っている、違うと気づいたら変わるべきですが、そうではない限り、一歩ずつ地道に積み重ねていくことが重要だと思っています。変わることと、「愚公移山」という2つは、矛盾するようでいて、しかし、私は両方とも大切だと思います。

John

本当のchallengeってadjustmentですからね。進化し続けながら、チャレンジし続けながら、自分たちも変わりながら、時代と共に一緒に成長していくことが大事です。そうでなければ、ただ努力していても成功しないですし、誰のためにもなりません。本当のシェアリングエコノミーを、ぜひ提供してください!

今日は、スタートアップの経営者の方にヒントになるお話がたくさんあり、とても勉強になりました!

素晴らしいお話をたくさんお聞かせいただき、本当に愛りがとうございます!

角田氏のイノベーション哲学を示した画像です

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年11月27日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】 inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト http://www.jim.jp/company/をご覧ください)

●角田千佳(つのだ ちか)/株式会社エニタイムズ(Anytimes Inc.) 代表取締役
慶應義塾大学法学部卒。
野村証券、サイバーエージェントを経て2013年(株)エニタイムズを創業。個人間のスキルシェアサービス「ANYTIMES」を開発、運営。ANYTIMESは、地域の人々の暮らしをサポートし、新しい働き方を創出するプラットフォーム。
2019年10月には、複合型シェアサロン「Qnoir」を青山にオープン。

●森若幸次郎(もりわか こうじろう)/John Kojiro Moriwaka シリコンバレーと日本をつなぐイノベーションプロバイダー兼イノベーションフィロソファー、講演家。
オーストラリアで7年半の単身留学を経て、2010年8月家業である株式会社モリワカの専務取締役に就任。2014年4月イノベーション事業部を設立し、CIOに就任後、病院と大学との連携で医療機器開発を開始。
2015年11月株式会社シリコンバレーベンチャーズを創業し、代表取締役兼CEOに就任。国内外のスタートアップ、中小、大企業向けに経営アドバイス、学術研究都市にオープンイノベーションのアドバイス、大学や高専にてアントレプレナーシップ教育、シリコンバレーの現地ツアーなどサポートを行う。
シリコンバレーにてスタートアップワールドカップのアンバサダー、全米1位のライフサイエンスに投資をするエンジェル投資協会のメンバー、アルケミストアクセラレーターのメンターも務める。
2018年3月シリコンバレーにてStartupFire Inc.を設立し、CEOに就任。シリコンバレー、日本各地で「#StartupFire」というスタートアップを支援し、イノベーションを起こす目的のイベントを運営。
2019年1月和光市にて、Angel Acceleratorを設立し、起業を目指す大学生、スタートアップCEO、大企業のオープンイノベーション事業部の受講生向けに、アントレプレナーシップ教育を開始。
2019年1月東京にて、GoogleがスポンサーであるStartup Grind TokyoのCo-chapter directorに就任。Startup Grindは、シリコンバレー発のイベントで、世界120カ国、350都市、100万人の起業家をつないでいる。東京では渋谷PnPで Startup GRIND TOKYOのFireside Chatを毎月開催。
2019年1月シリコンバレーにて、YuzuVision Inc.を設立し、CEOに就任し、5月ルクセンブルクにて当スタートアップがアクセラレーターブートキャンプに採択され受講。
ハーバードビジネススクールPLD(リーダーシップ開発プログラム)修了、スタンフォード大学経営大学院にてM&A、シリコンバレーのBlackbox(アクセラレーター)受講、スタンフォード大学の夜間やハス・ビジネススクール(UCバークレー)でベンチャーキャピタル、Yコンビネーターでエンジェル投資を学ぶ。
コラムニストとして、りそコラに「イノベーションフォレスト」を毎月寄稿している。

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