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2023.01.11
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日本情報マート
2020.05.22
セールス・イネーブルメントとは、「営業成果を出し続ける営業パーソンを育成する仕組み」のことで、「営業の成果起点の人材育成」という考え方です。前編の「営業が抱える課題の解決にセールス・イネーブルメントがどう役立つのか」に続き、今回の後編では「実際にセールス・イネーブルメントの仕組みをどのように整備し、動かしていくのか」を山下貴宏氏に解説していただきます。
山下貴宏
株式会社R-Square & Company 代表取締役社長/共同創業者
著書「セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方」(かんき出版)
前編では、「営業目標設定の重要性」「顧客視点での営業プロセスの標準化」について述べてきました。では、具体的に営業育成に向けたイネーブルメントプログラムとはどういうものかを見てみましょう。
1)セールス・イネーブルメントの柱
そもそも「人が何かができるようになるステップ」とはどのようなものでしょうか。
大きく3つのステップを理解しておく必要があります。
イネーブルメントは、この成果までのステップに即してプログラムを整備します。
そして、全体の進捗管理は「システム」を使って可視化します。
例えば、トレーニングは以下のようなプログラム体系です。
2)体系化された実践的なコンテンツはどう作るか?
トレーニングは、以下のようなサイクルを回しながら、自社オリジナルの物を提供します。外部トレーニングを活用してももちろん問題ありませんが、下記のサイクルで作成したコンテンツ(プレゼンのトレーニングプログラムなど)が自社に最もフィットして実践的です。
3)社長や特定のマネージャーに依存せず、育成プログラムを社内循環させる
イネーブルメントプログラムは、ハイパフォーマーのノウハウを体系化して営業組織に循環させます。いわば、社内のベストプラクティスを営業全体で共有し、実践するモデルです。これを、システムを活用しながらPDCAサイクルを回していきます。
特定の社長のノウハウやマネージャーに依存すると、そこからスケール(拡張)しません。イネーブルメントのサイクルが回ると、ベストプラクティスが共有されるだけでなく、育成と成果の効果検証ができるようになっていきます。
また、イネーブルメントチームのメンバーは、必ずしも営業経験者とは限りません。またその必要もありません。それでも、現場の営業に価値が出せます。それはなぜか? 営業は多くの場合、他チームの営業がどのような活動をしているかが見えていません。具体的な営業ノウハウを知る機会も限られます。イネーブルメントチームは営業組織を横断し、知見を体系化して提供します。「他の営業チームが見えていない、売るための実践ノウハウを体系的に整理して提供できるところ」にイネーブルメントチームの価値があります。
1)特に重要なのは最初の2つ
イネーブルメントを構築するために5つのステップがあります。
イネーブルメントは、「成果起点の育成」とお伝えしてきましたが、その視点から最初の2つのステップが特に重要です。ここで、取り組みが軌道に乗るかどうかがみえてきます。
最初のステップは、営業データの収集と整備です。端的にいうと、SFAの活用です。
営業パーソンごとの「達成率」「パイプライン件数と金額」「平均商談日数」「平均受注件数と金額」などが見えている必要があります。これらの指標をもとに育成テーマを設定していきます。データドリブンです。以下の3つを実践するだけで組織の営業活動が変わります。
2)営業役員のイニシアチブ
セールスイネーブルメントは、テーマは育成ですが、管轄は営業に本来あるべき取り組みです。進め方としてのお勧めは、年度の営業役員の「重点取り組み事項」の1つとして盛り込むことです。
育成に取り組む必要のない営業組織というのに出会ったことはありません。育成は継続的に取り組むべき重要テーマの企業が多いはずです。
プログラムの成果を継続しオーナーシップを示していくためにも、営業役員のイニシアチブにすることをお勧めします。
そして、イネーブルメント担当者をアサイン(任命)しましょう。イネーブルメントの取り組みは本格化すると相当な業務量になります。片手間でできる業務ではありません。「いい取り組みだから、今の業務に加えてよろしく」で兼任を続けると、どこかで立ち行かなくなります。ある程度形になってきたら、専門組織化をお勧めします。
イネーブルメントチームをどのように整備していくか。
ここでは、「組織配置」と「イネーブルメントチームのメンバーのスキル要件」という観点から整理します。
1)イネーブルメントチームの組織配置
イネーブルメントチームの配置オプションは大きく3つあります。実際は、上図のオプション1とオプション2が現実的です。欧米の企業では6~7割がオプション1を選択しています。理由は簡単で、イネーブルメントチームは営業を支援する組織であるため、営業の配下に置かれます。
企画部門など営業直下以外で置かれる場合は、営業以外の顧客Facing部門も支援対象とするような場合です。SEやカスタマーサポートなどが含まれます。営業の配下にあると指揮命令系統の性質からコミュニケーションコストが高くなる。この場合は組織横断で支援した方が効率的であるため、企画部門に集約されるケースが多いです。
2)イネーブルメントチームのメンバーのスキル要件
イネーブルメント組織は、組織横断的な動きが求められます。育成スキル/マインドはもとより、マネジメント視点、ステークホルダーとの折衝能力など求められるスキルが多岐にわたります。私(山下氏)の過去の経験や他社事例を見ると、以下のようなスキル要件が求められます。
3)イネーブルメントメンバーを社内輩出する仕組み
イネーブルメントメンバーを確保することは実は難しいです。営業も理解し、育成も理解し、マネジメントもわかる、という人材はほとんどいません。例えば、先進企業は以下のようなローテーションサイクルを回して、自社ベストマッチしたイネーブルメント人材の育成を始めています。参考にするとよいでしょう。
前後編にわたって、近年注目を集めているセールス・イネーブルメントについてみてきました。
旧来の育成と混乱してしまう方が多いですが、最後にイネーブルメントである取り組みと、そうではない取り組みをまとめて終わりにしたいと思います。
端的にまとめると以下のようになります。育成が一過性で終わることはありません。継続して育成の精度を上げていく1つのアプローチとして、ぜひ、イネーブルメントに取り組んでいただきたいと思います。
●前編はこちら
以上
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年5月22日時点のものであり、将来変更される可能性があります。
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