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第25回 プロノイア・グループ株式会社 代表取締役 ピョートル・フェリクス・グジバチ氏/森若幸次郎(John Kojiro Moriwaka)氏によるイノベーションフィロソフィー

日本情報マート

2022.02.25

かつてナポレオン・ヒルは、偉大な多くの成功者たちにインタビューすることで、成功哲学を築き、世の中に広められました。私Johnも、経営者やイノベーター支援者などとの対談を通じて、ビジョンや戦略、成功だけではなく、失敗から再チャレンジに挑んだマインドを聞き出し、「イノベーション哲学」を体系化し、皆さまのお役に立ちたいと思います。

第25回に登場していただきましたのは、モルガン・スタンレーやGoogleで人材開発/組織開発/リーダーシップマネージメントに従事し、『ニューエリート グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち』『0秒リーダーシップ 「これからの世界」で圧倒的な成果を上げる仕事術』など多数の著書を出されている、ピョートル・フェリクス・グジバチ(Piotr Feliks Grzywacz)氏です。現在は、未来創造企業のプロノイア・グループ株式会社 代表取締役社長、起業家教育事業の株式会社TimeLeap 取締役を務め、日本でイノベーションの種を蒔き続けているピョートル氏が語る「イノベーションの哲学」とは?(以下インタビューでは「ピョートル」)。

1 「限られたリソースの中で、最大限に価値を発揮できる方法は何か、発揮できる場所はどこか。常にそれを考えて選択するのが、僕の人生の哲学です」(ピョートル)

John

お忙しいところをお時間いただき、本当に愛りがとう(愛+ありがとう)ございます! ピョートルさんに、いろいろとお話をお聞きできることを楽しみにしていました。

ピョートル

こちらこそ、ありがとうございます。

ジョンさんは奥さんと一緒に仕事をされているとお伺いしましたが、日本だと、こういうご夫婦は珍しいのではないかと驚きました。
僕はすごくドライで、人間関係はお互いの求めるものと役割が明確な、契約のような関係でありたいと思っています。
これは、仕事も家族も同様で、僕が組織や人との関わりを考える上で、ベースになっている考え方です。

John

確かに、役割が明確な方がお互いに何を求められているのか、何を求めてもいいのかが分かり易いですよね。私はたまたま、両親が一緒に会社を経営している環境で育ちましたから、他の方々より仕事と家族の線引きが曖昧なのかもしれません。

ピョートルさんは役割が明確な関係がお好きとのことですが、その点についてもう少し詳しく教えていただけますか?

ピョートル

日本にいると、雇用関係が非常に不明確だと感じます。

例えば、大手企業でも、雇用契約、就業規則、ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)、ゴール設定、評価というのはそれぞれ明確になっているべきなのに、それらが不明確であり、社員が自分自身にマッチした企業なのかミスマッチな企業なのかが曖昧なまま20年間も仕事をしている……。そんなケースも見られます。

これは組織というものの考え方、組織が示す価値と個人が示す価値、自分には何ができて、何を大切にしているのか……という話に繋がるし、今日のテーマである「イノベーション」を考える上でも重要なポイントではないでしょうか。

John

まさに、私が今日ピョートルさんにお聞きしたかったのは、「人は何を大切にして、働くこと・生きることの意思決定をすべきか」ということなのです。

まず、ピョートルさんご自身についてもっと聞かせてください。
なぜ日本で活動をされるという決断をしたのでしょうか? そこには、どのような意思決定のプロセスがあったのですか?

ピョートル

僕の仕事のテーマは「人に気づきをもたらしたい」ということ。これは、僕の著書「パラダイムシフト」や「ニューエリート」にも共通するテーマです。

そして今の仕事で、僕の持っているリソースを活用して、最大限価値を発揮できる場所は、日本だと確信しているのです。
それが、日本で活動を続ける理由です。

実を言うと、シリコンバレーで働くという選択肢もあったのですが、僕はそのオファーを断りました。

僕が日本で構築した実績、持っているリソースは、シリコンバレーでは他の人も経験し、持っているものだと思います。しかし、日本では同じような経験をしている人、リソースを持っている人はほとんどいません。

であれば、シリコンバレーよりも、日本で最大限にリソースを活かした方が、人生で大きなレガシーを残せると考えました。

日本は、社会問題も経済問題も山ほど抱えてはいるものの、いまだに世界で3位の経済力を誇る国です。もしかしたら、もうすぐ4位や5位には落ちてしまうかもしれないけど、200近い国の中でTOP5に入っているのです。

世界に影響を与えるような企業の多くも、東京に本社を構えています。名古屋や大阪へ行っても、企業はたくさんある。

こうしたさまざまな要素を踏まえて、日本で活躍すればより合理的な結果が生まれると考えているのです。

John

ピョートルさんご自身の価値を最大化できる場所はどこかという視点で日本を選ばれたというわけですね。素晴らしいご決断だと思います。

このように大事な意思決定をする場面に出会った時に、どのようなことを大切にされていらっしゃいますか?

ピョートル

意思決定する際に、常に念頭に置いていることは3つあります。

1つ目は「限定合理性」。
これは、「人間は合理的であるが、その合理性は限定されている」という行動経済学のコンセプトです。

人間には、それぞれのインテリジェンス、IQ・EQ、脳のCPUがあります。また、育った環境、インプットされた認知バイアス、情報の量なども人によって異なり、合理性を限定する要素は個人によるものが大きいのです。

そして僕は、いかにその限定合理性を認識するかというのが、意思決定の結果につながると考えています。

2つ目は、リソースは限られている、ということです。
当然ながら人生は有限です。人はいつか死にます。
90年生きるとしたら、人生は約2000万秒。
長いように思える人生も、1、2、3……と1秒ごとに残りの時間は減っているのです。

こうした自分の限られたリソースである時間やお金、体やエネルギーをどう優先順位をつけて使っていくのかは、個々の考え方によって異なります。

今日のこのインタビューも、「僕は超忙しいし、インタビューの時間はありません」と断ることもできたでしょう。でも、時間がないから新しいオファーを引き受けないという選択を僕はしません。
自分にしかできない、自己実現につながること。自分の才能やポテンシャルを最大限発揮できるようなことに時間を使いたいと考えているからです。

そして、そういった自分にとって大切なものに時間というリソースを割けるよう、考えなくてよいもの・意思決定しなくてよいものというのを予め決めてあります。例えば、洋服。仕事の時、僕は黒いシャツしか着ないと決めている。
ブランディングにもなるし、削減された時間をより有効に使えます。

3つ目に、自分のリソースやポテンシャルを最大限発揮できる「場所」の見極め。
例えば、僕は背が低いので、世界最高のバスケットボール選手にはなれません。
でも、今の仕事でパフォーマンスを発揮しています。

自分の合理性や考え方は限定的なものであると理解した上で、限られたリソースを合理的に使い、最大限に価値を発揮できる方法・場所を考える。
それが僕の意思決定方法であり、人生の哲学です。

John

人生の1秒1秒を大切にし、自分にしかできない仕事に精を出す。気持ちの上でそう思うだけでなく、実際にどうすればそれを実現できるのかを計算し、日々実行されている。ピョートルさんの成功の秘訣を垣間見ることができました。

私は常々、「マインドが変われば、行動も変わる」とお伝えしています。ピョートルさんはご自身の価値観をしっかり確立されていらっしゃるので、それが行動にまで反映されているのだと感じます。
どんなに良い考えを持っていても、行動に落とし込めるかどうか、そこで差が出てくると思います。私の周囲の成功者を見ると、人一倍粘り強く、自分で決めたことは最後まで何があってもやり通す方々が多いです。

2 「自分は何者なのか。今自分はどんな状況に置かれていて、どんな強みがあり、どんな選択肢があるのか。その選択肢の中からいかに合理的なものを選び、選んだ先でしっかりと自分の責任を果たすのか。こうしたことを認識するのがとても大事です」(ピョートル)

John

ここからは、現在の成功までの道のり、ご自身の人生哲学の背景についてもお聞かせいただけますか。

過去の著書を拝見したところ、ピョートルさんはポーランドにある50名くらいの小さな村のご出身だそうですね。
当時の思い出や、今の人生哲学に繋がっていることをお聞かせください。

ピョートル

おっしゃる通り、僕が住んでいたのはとても小さな村でした。
山の中にあり、自由度が高い環境で、子どもたちは森の中で自分たちの好きなように遊んでいました。

自由な環境ではあるものの、村の大人たちは「あの子は、あの家の子だな」と子どもたちの顔を覚えているので、間違ったことをすれば誰かが正しい方向へと導いてくれました。お腹が空いたら隣の家であってもご飯を食べさせてくれたり、互いに助け合ったりするような文化もありました。
そんな環境下で、自然や人との接し方・関わり方を学べたと思います。

家業は畜産農家で、僕は5〜6歳の頃から家の仕事を手伝っていました。動物と接する中で学んだことも今の自分に大きく影響しています。

例えば、体重が500キロある牛がいるとします。この牛を、手綱を引いてあそこの丘まで連れて行ってください、と言われたら、あなたならどうしますか?

John

うーん、牛と仲良くなる……でしょうか。

ピョートル

そう、牛と信頼関係を築くのが1番の近道なのです。

無理に引っ張ったり押したりしては、牛は逃げてしまう。逃げてしまえば、当然ながら家族みんなに迷惑をかける。
牛に逃げられずに、自分の責務を果たすためには、まず牛に敵ではないことを理解してもらい、一緒に歩くしかありません。

そして、牛と人との間で役割分担をすることも、良い関係を築く上で重要です。

牛が僕たちに牛乳をくれる代わりに、僕たちは餌や屋根を用意し、牛の快適な生活を保証する、という分担です。
牛は強い動物ですから、本当は逃げようと思えば逃げられるのですよ。僕たちは、牛に逃げられないために、居心地の良い環境を作る必要がありました。

これは、人間同士の関係性にも置き換えられます。
人間同士でも、相手に合わせ寄り添い、お互いに役割分担をして、それぞれが責務を果たせば、信頼が生まれ、有意義な関係性を整えることができます。

John

ピョートルさんと牛のお話は、経営者と社員、上司と部下の関係にも通じますね。一方的にトップダウンで物事を進める時代ではなくなっていますし、無理矢理に動かそうとしても動かないのは、人間も同じ気がします。
役割分担をし、互いに有意義な関係を目指すというのは、組織づくりをする上でも重要なポイントですね。

ピョートル

もう1つ、今の僕の価値観に影響を与えた出来事として、母国のポーランドが共産主義から資本主義へと体制変換をしたことをよく話します。
これは、世界はプロセスだ、ということを学べた出来事だからです。

社会主義国家の頃、人々は国の社会保障により生活をしていましたが、資本主義へと体制が変わり、人は自分の力で生きていくことが求められるようになりました。
しかし、僕の村には、兄たちも含め、高校すら行っていない人がほとんどだったのです。

お金もなく、リソースもない中、資本主義社会で生きていくために僕にできることは、学ぶことだけでした。

日本の皆さんはあまり実感が湧かないかもしれませんが、世界というのは、このように変化するものなのです。人も国も、自然のように変わっていく。

日本ではいまだに、良い大学に入って、良い企業に入って、家を持ち、子どもを育てて……という人生観があるけど、僕に言わせれば、これはフィクションだ。

経済の変化や政治の仕組みの変化により、ある日突然、弱者になってしまう可能性もあるのですから。
今世界で大きな影響力を持っている企業ですら、倒産してしまう可能性はあります。

John

私は、どのような状況に置かれたとしても、自ら新しい道を切り開こうと決意した人であれば、いずれ必ず成功すると考えています。
「あの人は環境に恵まれていたから〇〇が出来たのだ」「私は〇〇がないから出来ない」といった考えを持っていては、自分の可能性を引き出せません。確かに環境の影響は大きいでしょうが、人間の持つ意志の力の方が人生に対する影響力は勝ると思います。

ですから、ピョートルさんが環境に左右されず、学ぶことで飛躍を遂げてこられたこと、多くの人々に影響を与える存在としてご活躍されていることを尊敬しています。

日本も若年層を中心に、過去の成功モデルを追従するだけではいけない、国や組織を頼っているだけでは将来どうなるか分からないという危機感を持つ人々が増加していると感じています。

そのような若者たちには、1人ひとりが自分にとっての正解や幸せを追い求めてほしいということ、人の言うことを鵜呑みにしないこと、心の軸を持つことが重要であると伝えています。

You are CEO in your life. 何があっても自分で自分の人生を創り上げる。そう腹を括った方が、より創造性豊かでハッピーな人生になるはずです。

ピョートル

僕もメディアの言うことを率直に100%信じるということはありません。
先日、元新聞記者の方とお話しをする機会があり、その方は「新聞は事実を報じている」と仰っていましたが、記者も人間です。

先ほどの限定合理性の話と繋がりますが、記者にも自分の育った環境、バイアスがありますので、悪意はなくとも必ず偏るのです。
同じ事実についての記事を書こうとしても、50年前のポーランドで生まれ育った人間と、日本で育った人間とでは、全く異なる記事に仕上がります。

必要なのは、自分の置かれている状況を、自分の持っている全てのリソースを使って、できる限り合理的に把握すること、そして合理的に動くことです。

自分は何者なのか。今自分はどんな状況に置かれていて、どんな強みがあり、どんな選択肢があるのか。その選択肢の中からいかに合理的なものを選び、選んだ先でしっかりと自分の責任を果たすのか。
こうしたことを認識するのがとても大事です。

非常におもしろいことですが、合理的な見方・合理的な動き方をしていくと、不思議と必ず、一見普通ではないような、創造的な方法が見つかるのです。

例えば、泊まる場所を探したいけれど、旅行サイトやアプリでいくら探しても見つからない、という状況があるとします。

じゃあどうするか。
個人が持っている部屋を、個人に貸せばいい。

どうすれば個人同士をよりスピーディに結びつけられるか。
スマホのアプリを使えばいい。
こうしてAirbnbのようなサービスが生まれていくのです。

本当に良い結果を生み出すためには、このように常識を打ち破るしかありません。

僕は子どもながらに、自然や社会の変化の中で、こうした思考方法を身につけることができました。

3 「自分の人生をどう生きるか、新しい価値をどう生み出すかという話には、教科書なんてないのですよ。」(ピョートル)

John

ピョートルさんの育った環境のお話にもありましたが、子どもの頃に自然と触れ合って育った子というのは、とても創造性豊かに育ちますよね。
大人になって、その創造性を活かして成功する方も多いと感じます。

ピョートルさんは株式会社TimeLeapの取締役として、未来を担う子どもたちの育成に力を入れていらっしゃいますが、教育に関してどのような考えをお持ちですか?

ピョートル

やはり、「五感で学ぶ」というのは必要不可欠ですね。
これは、大人も子どもも同じです。

TimeLeapは、仁禮 彩香さんと一緒に立ち上げた会社ですが、彼女が通っていたのは湘南インターナショナルスクールという学校で、海岸で遊びながら学ぶようなところだったそうです。僕も森で生まれ育ったタイプなので、五感を使って学んできたという点は共通しています。

僕は、今でも自然に触れることが大好き。
東京の街は自然が少ないけれど、比較的暖かい気候なので、1年を通して何かしら花が咲いたりしていますよね。
だからつい、咲いている花を見ると香りを嗅ぎに行ってしまうし、触りたくなる。
会社のスタッフと一緒に歩いていると「あと5分で移動しなきゃいけないのに、何をしているのですか!」とよく怒られるのですけど(笑)。

でも、僕にとってはビジネスの会話と、道に咲いている花の香りを嗅ぐことは、どちらが大切かと言われても選べないほどにどちらも大切なのです。

自然からのインプットがなければ今の僕はないし、今のようなアウトプットは出せていないでしょう。
五感を使い、総合的に探求できる環境に身を置くことは大切なことなのです。

そして「教育」に対する考え方というご質問ですが、実は、僕は「教育」「エデュケーション」という言葉が大嫌い。
なぜかと言うと、「教育」は決まった型があって、その型に当てはまる人をつくるためのプロセスだと思うから。

もちろん、教育が必要な面はあります。飛行機のパイロットにはしっかりと操縦法を学んでいただかなくては、飛行機は墜落してしまいますから(笑)。
そういった資格を取るために必要なプロセスは別です。

しかし、自分の人生をどう生きるか、新しい価値をどう生み出すかという話には、教科書なんてないのですよ。

ビジネスモデル・キャンバスというフレームワークのような、便利なツールはありますが、そのツール自体はアウトプット=成果ではない。
新たに生み出されるものが成果です。

そのためには、自分の無意識に働きかけるスキルというのが大事になってきます。

自己認識というのは、必ずしも言語化すればいいというものではないと考えています。「私はこういう性格で、これを大切にしています」と言葉に出したところで、それは「本当か?」と。
言語化できなくても、自分がいかに感じているかということ、それを認識することが非常に重要なのです。

John

おっしゃる通りですね。言語化できることばかりが正しいわけではありません。「なぜかわからないけど気になる」という感覚は大切に拾っていく方がいいと思います。私の経験では、自分の直感を信じた時は、いつも良い方向に進んでいます。

例えば、3年前に突然ルクセンブルクが気になって仕方がなくなりました。そこで、現地で開催されたアクセラレーターに参加することにしたのですが、その時にルクセンブルク投資事務所の方々とご縁をいただきました。

それから、毎年ルクセンブルクとベルギーの両大使館主催で行われるガラパーティーにご招待していただいたり、このイノベーションの哲学の第16回にエクゼクティブ・ディレクタターの松野百合子氏にインタビューさせていただいたりしました。つい先日も、松野さんには、私がディレクターを務める日本人をグローバル人財にすることを目標としてオンラインレッスンを提供しているGlobal Communication Gym(GCG)でも講師を務めていただきました。

GCGでは、カナダ人の講師からカナダと日本の英語教育の違いについて、海外からの視点で教えていただいたこともあるのですが、ピョートルさんは日本の教育制度についてはどう思われますか?

ピョートル

日本だけの問題ではありませんが、現在の教育制度には思うところがありますね。小学校・中学校・高校・大学……というステップは、時間がかかりすぎている。

これまでTimeLeapでさまざまな試みをしてきましたが、10歳くらいの子は、大人と同程度のアウトプットが出せるのです。

もちろん、まだ多感な時期ですし、1人で生きられるわけではないので、大人の保護は必要ですが、彼らは1人の人間としてアウトプットを出せます。
子どもたちが持っている集合知や知恵、エネルギーをいかに早く社会に還元するかというのは、今後の社会で重要なポイントだと思います。

例えば、TimeLeapから生まれた「Atelier minon」というプロジェクトがあります。これは、みのんちゃんという今年11歳になる女の子が立ち上げたオンラインビジネスです。

彼女は海が好きで、「きれいな海を未来に残したい」という想いから、シーグラスなどの海洋ゴミを活用したアクセサリーを販売し、収益を海の環境保全にあてるという仕組みを考えました。

お母さんを巻き込んで一緒にアクセサリーを作り、クラウドファンディングで資金を集め、実際にオンラインショップを立ち上げています。

あまりに早すぎる成長でメディアの注目を集めたり、子どもタレントになったりすることには賛成できませんが、子どもたちが自分の意思の元、より早く実業家になれるような仕組みが今の教育制度の中にあっても良いはずです。

John

すばらしい事例ですね!

私たち大人は、子どもたちの可能性を信じて、どんどんチャレンジして経験を積むようにサポートしてあげたいですね。10歳だからこのくらいしかできない、これができれば十分だ、というのは大人の思い込みかもしれません。

私も人を喜ばせて対価をもらう、人の困りごとを解決する、そういうことが楽しいと気づいたのは3歳の時です。母の料理が美味しかったので、お弁当にしたらどうだろうかと考えたのがきっかけでした。

社会の役に立ちたいと思っている子どもは案外多いと思います。彼らが、幼少期から自由にアウトプットを出せる環境をつくることで、起業家精神の身についた若者に育っていくのだと思います。

4 「イノベーティブな組織になるためには、『パーパスは何なのか』という共通意識を持つことが必要不可欠です。」(ピョートル)

John

ピョートルさんも私も子どもたちに無限の可能性を感じていると思います。しかし、その一方で、日本は少子高齢化が続いています。こちらに関しては、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

ピョートル

少子高齢化というテーマについては、「それほど問題ではないのでは」という考え方もあります。
人口をより減らして、生活水準を上げていくという考え方もある。

少子高齢化の問題点は、経済がシュリンクするという点ですよね。
残念ながら、いまだにこの世界は、大きな国同士がパワーを取り合うような仕組みになっていて、国のGDP、経済のサイズというのは世界の中での影響力に直結しています。

でも、経済力というのは、人生における幸せや、SDGs・環境への配慮、暮らしやすさといったものとは、実はあまり関係がなかったりしませんか。
合理性を考えれば、人口を減らして1人あたりの生産性を高め、生活水準の向上をはかるという方向もあると思います。

日本は生活水準が高いと思われていますが、例えば、東京で働き始めたばかりの20代などはあまり生活水準が高いとは思えません。

小さな部屋に住み、コロナによる変化はあるものの、基本的には毎日電車に乗って会社へ行き、残業せざるをえない。
自己認識はそれほど高くなく、本当にやりたいことを見つけられない。
趣味は消費で、かっこいい腕時計を買うために頑張る……。

日本でこのような生活をしている若者は少なくないと思いますが、これは生活水準が高いとは言えない、と僕は思うのです。

もっと自然と共に生き、家族やコミュニティを大切にする生き方を考え、実現できれば、少子高齢化が進んだとしても、それほど問題ないのではないかと考えています。

そういった意味で、北欧のノルウェーやスウェーデンなどは、日本よりずっと人口が少ない国ですが、生活水準は非常に高いです。
自然と共に生き、競争よりもコラボレーションを重視する文化があります。

もちろん、日本は政治経済の問題として、少子高齢化を解決しなくてはいけないというのはわかりますが、「人類」のレベルで言えば、地球の人口が増え過ぎている状態です。

私たちがより考えるべきは、「国」としてどうあるべきかではないでしょうか。
どんな歴史を持ち、どんな未来を目指していくのか。

例えば、民族・人種といった分け方は正しいのか。
国は、経済的に強くならなければならないのか。
国民に流動性があってはいけないのか。
僕のように、母国を離れて生きる場所を選んでも良いのではないか。

こうした問いについて、みんなで考えるべきだと思います。

すぐに簡単な答えが出ないと思うが、本質的な問いを持ち続けて議論することによってよりよい答えが生まれるはずです。

John

非常に興味深いお話です。確かに、合理的に考えれば、必ずしも経済的な強さは必要でないのかもしれませんね。

しかし、生活水準を高めるためには、生産性の向上が必要というお話もありました。

日本はこれから各企業・各組織がもっとイノベーティブになっていかなくてはならないと思います。顧客のニーズはどんどん変化しており、それにスピード感と柔軟な発想を持って対応していけるかどうかで、これからも人々から求められる企業でいられるかどうかが変わってくると思います。
ピョートルさんは、Googleで組織改革にも携わられたと伺っていますので、ぜひイノベーティブな組織をつくる上でのヒントをいただけると嬉しいです。

ピョートル

イノベーティブな組織になるためには、「パーパスは何なのか」という共通意識を持つことが必要不可欠です。

新聞社を例に考えてみましょう。
「私たちは新聞社だから、新聞をつくる」、これはパーパスではありません。

例えばパーパスを「地域の人たちが適切な生き方をできるように、情報を提供していくこと」としてみましょう。
パーパスを持つことで意識は変わり、「それなら、方法は新聞じゃなくてもいいよね」となり、組織は全く違う動きをし始めます。

パーパスがしっかりわかっていれば、従業員がしっかりと自分の意思で動けるようになるのです。
Googleのプロジェクト・アリストテレス(注)のチームづくりには、僕は納得しかなくて、パーパスがあるからこそ「インパクトを与える」という感覚を持てる。
インパクトは自分たちにとっても意味があるもので、それにより得ることができる価値があると理解しているのです。

(注)「効果的なチームを可能とする条件は何か」という問いを見つけ出すことを目的としたプロジェクト。
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/introduction/

そして次に大切なのは、価値が生み出せるような仕組みが、組織の中でつくられているかどうか。

チームの役割と個人の役割、目標設定、何を期待しているのかが明確になっているか。そして、相互に責任を持ち、信頼関係が築けているか、というのがポイントとなります。

例えば、バスケットボールの試合で、僕がJohnさんにボールをパスし、Johnさんがそのボールを落としてしまったとします。

この時に、「ボールを取れなかったJohnさんが悪い!」「いや、ピョートルさんの投げ方が悪い!」などというやりとりが、プロのスポーツ選手の間で起こるでしょうか? ありえませんよね。
それなのに、企業ではそういったことがよく起こります(笑)。

お互いの結果に責任を持って動くことで、そうした事態はなくすことができますし、信頼が生まれ、心理的安全性も確保されます。

パーパスを持つことに加え、そんな組織としての土台ができていることが、イノベーティブな集団となるために必要な要素です。

John

組織づくりの根本に関わる、すばらしい教えですね。来年度へ向けて、新たな組織づくりに取り組む人々も多い時期だと思いますので、ピョートルさんのお話が非常に役に立つと思います。

まだまだお話をお伺いしたいのですが、次で最後の質問です。
ピョートルさんにとっての「イノベーションの哲学」を教えてください。

ピョートル

僕のイノベーションの哲学は、「本質を問い続けること(Keep asking)」です。
解決しようとしている問題の根本は何なのか、本質を掴むことができなくては、イノベーションは起こりません。

「教育とは?」「仕事とは?」「恋愛とは?」「家族とは?」
本質的な問いを見つけ、自分の頭の中に持ち続けることが大事です。
そして、そんな本質的な問いを自分の中に持ち続け、増やしていくことですね。

また、僕は「知っていること」よりも「知らないこと」を美徳としています。
いつも新しい状況に身を置き、「これはおもしろいな」と感じる心を大切にしています。どんなに悪い状況にあっても、です。
そうした姿勢で物事に取り組めば、どこかで答えが出るはずですから。

ただし、答えは短期的なものである、ということも同時に認識しておく必要があります。
僕にとって、問いというのは常に普遍的なものですが、答えというのは一時的なもの、と考えているのです。

例えば、「幸せとは?」という問いは変わらないものですが、答えはその時の、その人の状況や気持ちによって変わりますよね。

「こんな家に住めば幸せ」「こんな人と結婚すれば幸せ」「こんな仕事に就けば幸せ」……。我々はいまだにそうした考えに囚われてしまうことがありますが、「幸せとは?」という普遍的な問いに対して、普遍の答えというのはないのです。

できるだけ問いは保ち、答えは保たない。正解は1つではないと知る。
それが僕の考える、イノベーションの哲学です。

John

まさにイノベーションの哲学ですね!
本日は、すばらしいお話を愛りがとうございました!

ピョートルさんのイノベーションの哲学を示した画像です

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2022年2月25日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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●ピョートル・フェリクス・グジバチ / Piotr Feliks Grzywacz
プロノイア・グループ株式会社 代表取締役  株式会社TimeLeap 取締役
連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者。モルガン・スタンレーを経て、Googleで人材開発、組織改革、リーダーシップマネジメントに従事。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。ベストセラー『NEW ELITE』他、『パラダイムシフト 新しい世界をつくる本質的な問いを議論しよう』『PLAY WORK』など著書多数。新著に『世界最高のコーチ』。ポーランド出身。

<プロノイア・グループ株式会社>
ギリシア語で「先読みする」「先見」という意味をもつ「プロノイア」を社名に掲げるプロノイア・グループは「誰もが自己実現できる社会」をつくる未来創造企業です。心理的安全性をベースに「遊ぶように働く(PLAY WORK)」「前例を創る(IMPLEMENT FIRST)」「予期せぬ価値を生み出す(OFFER UNEXPEXTED)」をコアバリューとして持ち、経営戦略・組織開発・人材育成を始めとする「人に焦点を置いた」チェンジマネジメントをパートナーの皆様と共に推進しています。

●森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka
イノベーションプロバイダー、ファミリービジネス二代目経営者、起業家、講演家、コラムニスト
山口県下関市生まれ。19歳から7年半単身オーストラリア在住後、医療・福祉・介護イノベーションを目指す株式会社モリワカの専務取締役に就任。その後、ハーバードビジネススクールにてリーダーシップとイノベーションを学び、卒業生資格取得。約6年間シリコンバレーと日本を行き来し、株式会社シリコンバレーベンチャーズを創業。スタートアップ、中小企業、大企業、アクセラレーター、ベンチャーキャピタル、CVCの支援を行う。シリコンバレーやNEXTシリコンバレー(イスラエル、インド、フランス等)をはじめとする海外のエコシステムのキープレイヤーとのパートナーシップや英語での高い交渉力に定評がある。講演(「世界のスタートアップエコシステムから学ぶグローバルオープンイノベーション」等)、イノベーター育成研修、スタートアップイベント運営、ピッチ指導等、実績多数。

株式会社シリコンバレーベンチャーズ代表取締役社長兼CEO
株式会社モリワカ専務取締役兼CIO
情報経営イノベーション専門職大学 客員教授
MIB Myanmar Institute of Business 客員教授
Startup GRIND Fukuoka ディレクター
著書「ハーバードのエリートは、なぜプレッシャーに強いのか?」

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