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会社の価値を高める

競争優位の戦略「ポジショニングとブランディング」

日本情報マート

2019.05.08

 今回からは、起業後の停滞から脱するための取り組みを解説します。それには、自分たちの存在意義、つまりミッションを再確認することが、停滞から脱するための第一歩となります。その上で、自社のポジショニングを考え、ブランド力を高めていくことになります。

1 ミッションを確認し自社の存在意義を高める

1)ミッションの重要性

 ミッションは多義的に使われるキーワードですが、ここでは「企業が果たすべき社会的使命」と定義します。さらにいえば、「企業が存在する理由」であり、「企業が目指す理想のゴール」でもあります。

 「中小企業がミッションを掲げるなんて大げさだ」と思う人がいるかもしれませんが、それは違うでしょう。むしろ競合に埋もれないためにも、中小企業こそミッションを明確にし、「自社は○○の役に立っている」と宣言すべきです。

 ミッションは、「世界を変える」など大それたものでなくてもよく、狭い地域や社会の困り事を解決する内容でも問題ありません。大切なのは、経営者だけではなく、組織全体がミッションをきちんと認識することです。

2)ミッションを再確認する

 ミッションを再確認するために、次の質問に答えてみてください。

1.社会(または地域・市場)が求めていることは何ですか?

 人や企業が困っていること、求めていることを具体的に考えます。求めていることの切り口には次のようなものがあります。

  • 安心・安全(不安なく過ごしたい)
  • 便利さ(効率化・時間短縮)
  • 豊かさ(満足感・快適)
  • パーソナライズ化(人と違う特別感)
  • 楽しさ(笑い・ゲーム感覚)
  • 不自由さ(ハンディキャップ)

2.上記の1.に対してあなたの企業が提供できる解決方法は何ですか?

 自社の商品・サービスを提供されたお客様が得られる価値のことです。

3.実現したい理想の社会はどのようなものですか?

 自社の商品・サービスを通じて実現したい理想の社会の姿のことです。

 あなた(自社)が、この3つの質問に明確に答えられたのなら、問題はないでしょう。一方、答えが曖昧だったり、ぶれていたりするようなら、改めてミッションを決める必要があります。

3)ミッションは対外的にアピールすることが重要

 ミッションは、組織に浸透させることはもちろんのこと、会社案内や名刺、ホームページなどにも掲載します。ミッションを対外的にアピールすることは、自信と覚悟を示すことになり、認知度や信用度が高まります。

 ミッションをアピールすることで、社会や市場が自社のことを「○○の会社だ」と認知してくれるようになれば、企業の収益アップに寄与するでしょう。当然、対外的にミッションを掲げている以上、その内容を大きく逸脱するような活動はしてはいけません。経営者も従業員も、ミッションを意識しながら活動することが求められます。

2 ポジショニングを追求して優位に戦う

1)市場における存在位置を明確化

 ミッションを明確にした上で、自社のポジショニングを検討します。ポジショニングとは、市場における自社の存在位置を明確にすることです。「ポジショニングマップ」などのフレームワークを使うと分かりやすいでしょう。

 よほど目新しいビジネスでない限り、競合は存在します。駅前に立地する居酒屋であれば、その周辺にある多くの飲食店やファストフード店までもが競合関係になり得ます。お客様に自社を選んでいただくためには、競合する企業の商品・サービスと比較して、「価値がある」と判断してもらわなければなりません。

 しかし、他の競合先と同じ市場で、類似する商品・サービスを提供していると、真っ向勝負になり、非常に不安定な経営状態になってしまいます。それを避けるためには、ポジショニングを徹底的に追求して、自社の立ち位置を明確にしなければなりません。

2)ポジショニングの例

 ここで、ポジショニングの例を紹介しましょう。エステサロンを経営しているAさんは、3年前に東京都内に開業して1人で営業していますが、固定客を多数確保して安定した収益を上げています。

 エステサロンは、痩身やフェイシャルなどさまざまな業態があり、全国展開している大手もたくさんあるので、競争がとても激しいビジネスです。

 そのような中で、Aさんの店舗の特徴は、エステ機器や手を使った施術をするだけではなく、その場で体幹トレーニングなどの運動をしてもらうことで、健康的に痩せるためのサービスを提供していることです。Aさんは、スポーツインストラクターの経験があり、そこで培ったフィジカルトレーニングの技術を生かしているのです。

 こうした工夫で、価格競争が激化している中にあっても、客単価が約1万円と高単価を確保しています。Aさんの店舗のポジショニングを表すと次のようになります。

店舗のポジショニングを示した画像です

 この2つのポジショニングマップは、「お客様の年齢と価格設定」と「お客様の志向と業態」という軸を用いています。Aさんの店舗が、競合が少ないポジションを狙っていることは一目瞭然です。

 まず、「お客様の年齢と価格設定」を軸にした場合、大手エステサロンとの競合状態が分析できます。ポジショニングマップから、大手エステサロンとの競合を避け、中年層をターゲットにして中価格の設定にしていることが分かります。

 次に、「お客様の志向と業態」を軸にした場合、大手エステサロンの他、他業態(リラクゼーションサロン、整体)との競合状態が分析できます。ポジショニングマップから、リラックスする施術ではなく、効果(痩せる・美しくなるなど)を目的とした施術で、「美と健康を両立させたい」という層をターゲットにしていることが分かります。

3)ポジショニングの切り口

 競合先は誰かを考え、どのような切り口で差別化を図れば競合が少ないポジションを確保できるかを検討します。ポジショニングマップの軸(切り口)は、業種業態でさまざまなものが考えられますが、例えば次のようなものがあります。

  • 価格
  • 商品・サービスの特性
  • 顧客層
  • 地域
  • 顧客の志向
  • 販売・流通方法

 また、ポジショニングを考える際に重要なのは、「他社がやっていないこと(あるいは、他社がやっているが自社に明確な競争優位性があること)」です。商品やサービスの独自性や魅力を高めることが一つの方法ですが、それ以外でも「エリア限定」「年代を絞る」「商品を限定する」などの方法が考えられます。ポジショニングを追求すると、次のような効果が期待できます。

  • 価格競争に巻き込まれない
  • 収益が安定する
  • 事業継続の確率が高くなる

 ポジショニングは一定ではありません。環境や顧客ニーズの変化に応じて、タイムリーに考え直す必要があります。停滞している企業は、ポジショニングが不明確であったり、市場に合っていなかったりすることがあります。自社のポジショニングを徹底的に追求してみましょう。

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3 ブランディングで価値を高める

1)中小企業こそブランディングが必要

 ミッションとポジショニングが明確になったら、ブランディングによって「ブランド力」を高めます。ブランド力は、かつては大企業特有のものと捉えがちでしたが、今ではスタートアップでも積極的に広報を行う時代です。

 ブランドとは、牧場主が自分の家畜に焼き印を押すことで、他の人の家畜と区別していたことに由来する言葉という説があります。現在では区別するだけではなく、「価値あるもの」としての認知度という意味で使われています。中小企業も、自社の存立基盤を明確にして商品・サービスを際立たせることで、ブランド力が高まるのです。

 ブランディングの効果の一つは、見込み客や周囲から認知してもらえることです。「あの企業は○○で有名だ」「○○を買うならあの店」というように、商品・サービスを購入する場面で思い起こしてもらう存在になれば、「指名買い」が起こり、リピーターも増加します。

2)ブランディングの効果的方法

 効果的にブランディングするための方法はさまざまありますが、次のようなものがお勧めです。

1.ニッチでもナンバーワンになる

 限られた分野でいいのでナンバーワンになることです。例えば「看板の効果的な付け方なら日本一です」など、他の企業が言っていない文言を使うなどして、話題性を提供すると効果があります。

●ニッチビジネスで成功するために必要な視点とマインド
https://resonacollaborare.com/value/18091301/

2.継続的な情報発信

 ホームページやブログ、SNSなどで継続的に情報発信することが有効です。ポイントとしては、「宣伝になりすぎないようにする」ことです。役に立つ情報や面白い動画など、見る人が興味を持ってくれる内容がベストです。その中でさりげなく「うちは○○でナンバーワン」といった情報を盛り込むといいでしょう。

●本当に必要? コーポレートサイト制作のすゝめ
https://resonacollaborare.com/value/18112701/

3.紹介してもらえる仕組みづくり

 自分(自社)で「うちは頑張っています」と主張しても、簡単には信用してもらえません。他の人から「あの企業はすごいよ!」と紹介してもらえると、信用が高まります。紹介をしてもらうためには、人脈を大切にすることです。

 人脈はさまざまですが、既存のお客様や関係者、従業員との付き合いを大切にすることが第一です。また、受注があれば迅速丁寧に対応することで、満足度が高まり、いい口コミ効果が期待できます。

●人付き合いが苦手な社長でも人脈は構築できる
https://resonacollaborare.com/leadership/17090401/

●せっかく構築した人脈。長く維持するには?
https://resonacollaborare.com/leadership/17090402/

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年5月8日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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執筆:上野光夫
株式会社MMコンサルティング 代表取締役・中小企業診断士
1962年鹿児島市生まれ。九州大学を卒業後、日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)に26年間勤務し、主に中小企業への融資審査の業務に携わる。3万社以上の中小企業への融資を担当した。融資総額は約2,000億円。
2011年4月にコンサルタントとして独立。起業支援、資金調達サポートを行うほか、研修、講演、執筆など幅広く活動している。
リクルート社『アントレ』などメディア登場実績多数。
著書に
 『起業は1冊のノートから始めなさい』(ダイヤモンド社)
 『「儲かる社長」と「ダメ社長」の習慣』(明日香出版社)
 『事業計画書は1枚にまとめなさい』(ダイヤモンド社)
などがある。

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