年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、株式会社グッドマネジメント総合研究所(GM総研)の代表取締役 IT参謀である加藤利彦さんです。

●会社HP
https://www.gmsouken.co.jp/

“働き方改革元年”とはいうものの、中小企業には専門家がおらず、導入に踏み切ったIT関連のシステムが本当に必要なのかを正しく判断することができません。それに、そもそも価格が適正なのかも分からないといった問題を抱えています。

大企業でも、情報システム歴が長いベテランの存在が、かえって生産性を低下させてしまうことがあるようです。ベテランは知識こそ豊富ですが、現場からは離れているため、現場が本当に求めているシステムを選定することが難しいようなのです。

こうしたITにまつわる課題の解決に尽力し、本質的な業務改革を目指しているのがGM総研の加藤さんです。

1 いきなり怒ってしまった10年前

今回、インタビューをしている中で、加藤さんは「10年前、(杉浦さんに)社内見学会に来てもらったとき、『なんで挨拶もなにもないの? どうなっているの?』と杉浦さんから怒られました」と言われ、懐かしい出来事を思い出しました。当時、加藤さんは株式会社EC studio(現:Chatwork株式会社)の常務取締役で人事部門を管掌していました。私が初めて加藤さんと出会ったのは、この社内見学会の出来事から遡ること数年前、加藤さんがまだ20代半ばの頃だったと記憶しています。

そのとき私が怒った理由は、常識の違いからでした。当時の加藤さんの会社には、電話も、FAXも、コピー機も、資料関係のファイルもありませんでした。当然、名刺に電話番号が書かれておらず、「会社としてあり得ない」と感じる状態でした。今でこそ多くの会社でペーパーレスが進みつつありますが、10年前、あそこまでなにもない状態は、その頃私が勤務していた会社とはかけ離れていて、まさに働き方の【常識】が違っていたのです。

この点が腹落ちしないまま、半日ほど社内見学会に参加しましたが、やはり驚きの連続でした。私の常識では、訪問時には挨拶するのが当たり前です。しかし、ドアを開けて『こんにちは!』と入室しても、誰からも返事がなく、顔をこちらに向けることもなく、社員は皆、パソコンに向かっているだけでした。『なんだ!』と、思わず怒ってしまいました。

当時のその会社は、加藤さんを含め、創業メンバー全員がいきなり起業して参集していました。その頃のメンバーにとって、過去から脈々と続いている企業形態の常識は【非常識】と映っていたようです。そして、「不必要なことはやらない」と決め、ここからコミュニケーションの新しい在り方にたどり着きました。常識を変えることには勇気がいりますが、当時のメンバーは、企業の在り方や、運営についての経験値が低かったため、逆にダイナミックな改革ができたのかもしれません。

2 IT活用の大切さを広めるためにリアルの世界へ

我々から見ると【非常識】な世界で働いていた加藤さん。当時、加藤さんの本業は、ITツールの販売やシステムの導入支援を、インターネット上で行うことでした。現在はかなり普及してきたGoogle社のG Suiteの、日本最初の販売パートナーにもなっています。

先ほど紹介した「10年前の社内見学会」で、私はITツールの必要性を感じました。ちょうど加藤さんも講演などの活動が活発化していました。【リアル】な活動を通じてさまざまな気付きやニーズを得る中で、加藤さんは新しい道に進むことを決めたのです。

子会社を設立すると同時に円満に独立し、GM総研の前身となるチャットワークアカデミーを設立しました。加藤さんは、クライアント企業に実際に赴いて【リアル】に触れつつ、ITツールの導入支援、活用コンサルティング、講演、ITツールの開発を主たる事業として活動していくことになります。

3 IT参謀計画を考え始めたワケ

実際に加藤さんがIT活用コンサルティングで対応してこられた企業から、お客様の評価や声を集めてみました。

1)広告代理店の声:100人規模

これまで、社員に伝わっていると思っていたことが実は伝わっていないことが分かりました。優れたメンバーが集まっているのに、ベクトルが合っていないために効率が悪く、意思疎通も図れず、トラブルの連続でした。

ITを上手に使って、社内に情報発信することで自分たちの進むべき道を整理することができました。社員などからのフィードバックを反映していくうちに、組織全体のまとまりが明らかに強くなりました。そこから大きくスケールし、大幅な増収を達成しています。

リアルは確かに必要です。しかし、それに固執せず、IT活用による利便性の享受も重要であると感じます。

2)複数店舗ある美容院の声:7店舗

教育カリキュラムをオンライン化できたことで、1人当たり約200時間かかっていた教育・研修を、約60時間に短縮することができました。教育・研修に必要だった交通・宿泊費を大幅に削減できました。「スタッフが自分で勉強してくれる、しかも成長スピードが速い!」という、好循環が生まれています。リアルな教育は、デジタルでは伝えられない難しいことを重点に教えるものと位置付け、リアルとデジタルを使い分けています。

今までの当たり前(常識)が、非常識となった事例といえます。場所、移動コスト(時間と交通費)を圧縮できるのもIT化の恩恵と感じます。

3)ロジスティックの声:1600人規模

日本各地に倉庫があるため、幹部の交通・宿泊費だけで年間3000万円のコストがかかっていました。そこで、テレビ会議やチャットなど、ITでコミュニケーションを上手に取ることで現場に行く回数が半減し、年間1500万円のコストダウンに成功しました。そして何より嬉しかったのは、家族が待つ家に頻繁に帰れるようになったことです。

社長、事業責任者、SVの方々が全国を飛び回ることも多いですね。これから到来する5Gの世界観では、さらに移動が激変する可能性を感じます。

4)経営コンサルの声:100人規模

紙の資料が多く、管理が非常に大変でした。Googleの機能を使うことで、紙をテキストデータ化し、クラウドで管理するようになりました。管理が楽で、検索すればすぐ見つかるようになったのです。一般的に、物を探す時間は年間160時間あるそうです。100人なら1万6000時間となります。これが半減し、それを人件費で換算したら、すごい効果になります。また、紙を使うことがほとんどなくなったので、コピー・インク代も年間500万円ほど削減できています。

社員同士で『あのペーパーってどこにあるの? ないなら印刷して!』という会話が本当に無駄に感じます。見えないコストとしては、これだけ都心の家賃高騰の中、なにも生まない書類専用のロッカー。私の懇意な会社でもクラウドシフトを行い、事務所の有効面積が30%以上空きスペースが増え、事務所移転を考えなくて済むようになりました。

このような事例が増えていくにつれて、加藤さんは、IT活用コンサルティングを自身の会社の限られたリソースだけで展開し、ノウハウを自社だけのものとしていることに疑問を感じるようになりました。「これでは国内にある数多くの企業のお役立ちにはつながっていないのでは? ここ数年でITの壁をブレイクスルーしておかないと、次代に残すべき企業までが消失してしまうのではないか」と。

そこで加藤さんは、自分が行ってきた業務【IT参謀】をどうすれば広められるかということを、ここ数年考え始めました。そして、この記事冒頭の課題感(中小企業と大企業の人財不足)解消に動くことを、今年(2019年)になり、意思決定したそうです。加藤さんが注力しておられる、そのIT参謀を増やすプロジェクトのサイトはこちらです。

●IT参謀
https://www.gmsouken.co.jp/sanbou/

4 実際にIT参謀へチャレンジされた方々の声も

加藤さんが定義する【IT参謀】について、もう少し詳しく紹介します。ここでは、非公開の同社プロジェクトサイトからの抜粋をご紹介します。もちろん、加藤さんの了承を得ています。

IT参謀のプロジェクトサイトの画像です

●加藤さんのブログからの引用

・IT参謀の概要:IT・クラウドと言っても、カテゴリーが広すぎるため基本的には、ITコミュニケーションとIT実務に絞っています。1日に400個のWEBサービスが生まれていると言われています。それらを追いかけるのではなく(不可能…)、オールマイティを目指さず、効果が出せるツールを絞って徹底活用できる様にサポートしていく流れになります。

業務とは、大きく2つしか無いと考えています。それは、コミュニケーションと実務です。コミュニケーションは、報告・連絡・相談・指示・会議。実務は、作業・企画・集計・設計・分析などです。その2つをスムーズに効率化するには多様なツールを使わずに、極力1つずつのツールにします。推奨しているのは、ChatworkとG suiteです。ほとんどの場合、既に多様なツールに翻弄されています。電話、FAX、付箋、メール、メッセンジャー、◯◯管理システム、◯◯管理ツール、日報ほにゃらら…見ないといけないものが多いのは大変です。それだけで無駄な時間が発生します。G suiteでもコミュニケーションは出来ますが人の脳の中で、コミュニケーションと実務を分け、ツールも、コミュニケーションと実務を分けることでコミュニケーションはChatworkを見て実務はG suiteを見るという風土を作れば脳が混乱せず、スムーズに業務を回すことができます。実際に、コミュニケーションと実務が混在するオールマイティな業務システムサービスではどこに何の情報があるのか分からない。

検索してもコミュニケーションの事と実務の事が混在して表示され混乱するし、結局探す時間が長いという不満をよく聞きます。コミュニケーションと実務の情報をクラウド化することで探すという行為を検索するという行為に変えられます。それだけで探す時間を半分以下にできます。さらに、コミュニケーションツールと実務ツールを分けることでコミュニケーションと実務の混在による混乱が無くなりさらに探す時間を短縮できます。それだけでも大きな効果を得ることが出来ます。

このように大きな概要としてはコミュニケーションと実務のクラウド化をツールを絞って実現することが基本的な進め方になります。そしてそのサポートをする人のことをIT参謀と呼んでいます。

このサポートの人財が世の中に広がることで、生産性向上が具現化していくと感じます。また働き方改革の横にセット化されている、副業・兼業の世界観もこのIT参謀が担えるように感じます。

実際にこのプロジェクトに参画された【参謀】の皆さんの声も以下に。

・OA機器販売事業

☆申し込んだ理由、経緯

OA機器の販売とITサポートの仕事は相乗効果がありそうなので、ITサポートの仕事をやってみたかったがどう事業を進めて良いのか迷っているうちに事業を立ち上げられないままになっていた。そこでIT参謀の存在を知り、サポートいただくことで事業立ち上げが加速した。

☆実際にどう習得できたか

会員サイトでITサポート事業の準備、立ち上げ方、考え方、運用を学びながら不明な点や、疑問点、悩みなどはメッセージでサポートを受けながら事業の立ち上げを進めた。2ヶ月ほどで運用まで軌道に乗せることができ、収益化しています。今後は社内から、ITサポート事業のメンバーを増やすフェーズに入っています。

☆お客さんの集め方

異業種交流会の運営をしており、交流会のメンバー及び紹介から毎月IT活用の勉強会を開催し沢山の方に参加頂いています。そちらでITサポートのベネフィットを実感いただくことを起点にご契約を頂いています。

☆どれぐらいの期間でどれぐらいのお客さんができたか

2月のIT活用勉強会の初開催でいきなり2社契約をいただきました。その後は各回数社の皆さんからご相談をいただき、既存のお客様からの依頼も含め2ヶ月で10社のご契約を頂いています。

☆お客さんから言ってもらえて嬉しかったこと

◯◯をしてみたいが、どう進めればいいのか…というところの解決きっかけになりました! と言って頂きます。またITに関して情報提供したことを実践頂き役に立ちました! と言って頂くことに喜びを感じます。

IT参謀のプロジェクトサイトの画像2枚目です

5 IT参謀の未来へ

このようにIT参謀が増え、1万人となったときには、日本の企業が本物の生産性向上につながっていくものと感じます。私からも某インフラ系大企業にIT参謀プロジェクトをご紹介し、同社社員の参謀化が静かに始まろうとしています。

IT参謀の皆さんがコミュニティー化、プラットフォーム化していくことで、プロジェクト単位のシゴト感が広まります。それによって多様な働き方、ひいては生き方にまで良い影響となっていくことを願います。

最後に加藤さんに、「いつもなぜ黒っぽい服装なんですか?」と尋ねてみたところ、『自分自身は黒子(くろこ)であると認識しています。クライアント企業が引き立つイキイキした活動になるためにも私は黒子に徹する』とすてきな回答をいただきました!

杉浦氏・加藤氏の画像の画像です

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年5月9日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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提供
執筆:杉浦佳浩 (すぎうら・よしひろ) 代表世話人株式会社代表
三洋証券株式会社入社(昭和62年)。鹿児島支店にて勤務。地元中小企業、個人富裕層の開拓を実施。 日経平均最高値の2カ月前に退職。次に日本一給与が高いと噂の某電機メーカーに転職。埼玉県浦和(当時)にて、大手自動車メーカー、菓子メーカー、 部品メーカー等の主力工場を担当。 退職時は、職場全員から胴上げ。そして、某保険会社に二十数年勤務後、平成26年末に退社。在社中は、営業職、マネジメント職を経験して、リテール営業推進、若手人財育成を中心に担当していた。 社外の活動も活発に行っていた。平成27年1月1日、代表世話人株式会社を設立。
同社代表取締役に就任。世話人業をスタート。年間1000人以上の経営者と出会い、縁をつなげている。

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