年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、庄司 啓太郎さん(株式会社スタディスト取締役COO)です。

新型コロナウイルス感染症の影響下、テレワーク!オンライン!とweb会議、クラウドツール導入に重い腰の大企業も、システム導入と距離感のあった中小企業もようやく当たり前化しだしました。しかし、このようなコミュニケーションツールをインフラ化しただけで、企業活動は大丈夫? そうお感じになっている経営者さんも多いと思います。その疑問、課題にお答えできるリリースが先日ありました。
それが、【スタディスト、テレワーク環境でも新入社員研修を効率化 ~集合研修からオンライン研修に切り替え、習熟度を上げつつ研修時間を4分の1に圧縮~】です。こちらがそのリリースです。

今回は、テレワーク環境下、完全オンライン化は難しいと思われがちな【社員研修】において、【習熟度向上】と【研修時間の圧縮】というこの両立し難いテーマを、同時に実現したスタディスト社の考え方~実践方法までをお伝えして参ります。

インタビューも終始笑顔で楽しく。右上が庄司さん

1 人材育成効率を向上させ、育成期間を短縮できる その理論、最適化モデルについて

1)スタディスト社 庄司取締役について

2010年3月に設立したスタディスト社、現在11期目がスタートしましたと庄司さん。同社創業メンバーであり、私とは6年ほどのお付き合いです。マニュアル(標準作業手順書:後ほど詳しく解説します)のクラウド化を提唱し、そのツールとしてTeachme Bizを2013年に展開し始めて7年。当初は、マニュアルのクラウド化に懐疑的だった世の中、マニュアルの存在意義は仕事の再現性を担保するためにとても重要という認識がありつつ、しかしながらそのイメージは、知りたいことがある時、書庫に行って、分厚い重い紙の束から、必要な部分を見つけ出す、それが当たり前の時代が長かった。【その場所に行かないと知ることが出来ない→非効率→場所の制約】、【知りたい部分、知りたいマニュアルを探し出す、誰かに聞く→管理→人の制約】、【いつ更新した?どれが最新?→不明確な更新→時間の制約】、この紙文化により知らず知らずに慣らされてきた【効率化を妨げる制約】を解消するためにもクラウド化したスタディスト社、現在は数千社を超えるユーザーから支持されています。現在は約100名の組織となっていらっしゃいます、私が出会った頃、まだ5~6名でした。。。感慨深いです。

2)ツールだけでは、効果は限定的なのです

web会議テレワークが常態化してきて、それはそれでインフラが整ってきたこと、歓迎すべきです。しかし、効果は限定的と庄司さんは話します。それは、テレワーク型に形式が変わっただけであり、会議の数や時間が従来と変わっていなければ、抜本的な業務変更となっているわけではない。業務プロセス・作業手順を見直す機会にしないと効果は限定的。まさにこの【業務プロセスの見直し】が骨格となります。

ツールだけでは、効果は限定的であることを説明した画像です

この見直しで【質】にフォーカスが移るとき、マニュアルの意味合いが大きくなるということだと思います。

3)人材育成効率を向上させ、育成期間を短縮できる その理論的背景について

ある経営者さんと打ち合わせの際、ご自身のお子さんに話題が及びました、『学校が始まってすぐに休校となっている子供が、与えられた教科書を1カ月で1年分終わったんですよ。好きな教科ってそんなものですね。』と話されていました。これって【予習】を自宅でやっていたことになります。学校の教室で授業を全員一緒に受けてインプットする前に、教材を事前に手にして目を通す、予習をインプットに。学校で今まで行っていたこと、サイクルを【反転】させた方が、知識定着率、スピードも向上するということなのだそうです。昨今You Tube動画を見て見様見真似で、自分でやってみたらうまく行った!ってことを耳にしますが。動画でインプット、実践してアウトプット、反転学習の方が結果も出やすい。この反転学習をスタディスト社では研修に活かしているそうです。

予習→実践のサイクルによる知識定着率向上を説明した画像です

反転学習の効果が実証されつつあるそうで、庄司さんから説明のあった資料には

  • 学習スピードが倍になった
  • 理解度確認では3倍程度の効果
  • 確認テストの合格率が大幅に上昇

このように良いことずくめという結果がでています。

反転学習の効果を説明した画像です

この反転学習の話をお聞きして、私自身のサラリーマン時代、集合研修で関東方面の研修所に集められ、ほとんどが眠い、眠い、研修を数日受けていたことを思い出しました。研修報告には、意義があった、ためになった、明日からの業務に活かしたいと書いていましたが、知っているレベル→すぐに忘れるレベルであったと思います。
ほとんどの企業研修が、知らないことを【知っている】レベルにすることで終わっていることが多い、【できる】【考えるとできる】そのレベルに達していない
スタディスト社では、【できる】が当たり前化しているので、無意識(考えなくても)に、自分でルールを決める、仕事を定義できるという、実践できる、そこから教えられる、改善できるレベルへと自然になっていると庄司さんは話します。

知ることを目的にしない。実践のための育成について説明した画像です

4)できるレベルをぐんぐん引き上げるための最適化とは?

前述の反転学習の理論を活かしながら、スタディスト社のTeachme Bizで全ての研修プログラムが完成できるか? そうではありません。スタディスト社における研修プログラムの【内容】と【手段】の最適化については以下のとおりです。すごく分かりやすいと感じました。

伝えたいことと伝達手段の最適化を説明した画像です

  • 経営理念や基本ポリシー、規則やルール、基本原理については講義、レクチャーの動画を製作準備し、受講者側が視聴する。その後にオンラインミーティングによる対話をして理解レベルを確認する。
  • 業務の手順、実技や実践能力についてはビジュアル型の手順書(Teachme Biz)で予習(インプット)し、実物により確認しながら実践していく(アウトプット)

5)業務の標準化(マニュアル化できる)割合はどのくらい?と思いますか

今までの集合研修において、ハイレベルかつ給与の高い人が準備や研修にはりつき、ものすごい時間を費やしており、それでもなかなか伝わらない、実践できないことで人材育成に苦慮している企業も実際多いと思います。前述で、【理論】と【伝えたいこと】、【伝達手段】について庄司さんに教えていただきました。最後に業務の標準化は業務割合のどの程度できるのか?業務のタイプは何タイプ?についても伺いました。

業務の3タイプを説明した画像です

いろんな業種があり、多様な業務がありますが、A:感覚型、B:選択型、C:単純型、この3つに分類されます。この業務の中でA、B、Cの割合ってどの程度ですか?と質問され、私から5:2:3ぐらいですか?と回答しましたら、全業種の平均でAが13%、BとCで87%を占めているとのこと。

業務のしくみ化を説明した画像です

この87%をしくみ化すべきであると庄司さんは話します。
スタディスト社では、現状社内で共有されているマニュアル(手順書)が4,200を超えているそうです。
【できる】が当たり前化するのも納得です。

2 スタディスト社のオンライン研修を構築した現場の声を聞きました

1)ビジネスイネーブルメント部長の坂野さんへのインタビュー

ビジネスイネーブルメント部長の坂野さんの画像です

【上記の写真が坂野さん】同社のリリースを今一度。
いくつかこの研修プログラム構築にあたって質問させていただきました。

・この研修プログラムを構築されるにあたって、注意した点、難しかった点をお教え下さい。

正直に言うと、Teachme Bizを使っての研修運営は従来から実施していたため、オフラインからオンラインへの切替はかなりスムーズに出来たと思います。ただ、運営の全てをオンラインで、というのは初だったので、オフライン時は設けていなかった終礼等の定期的なオンライン接続によるコミュニケーションは心掛けました。 反転学習を意識して、スムーズに自習ができるように教材を整備し、オンラインでの接続はアウトプットの場(プレゼン、ワーク、ディスカッション等)や、理解度チェックの場にして、習得が不十分な部分はそこでフォローするような形で運営していたので、教える・伝えるにかかる負荷はオフラインの時よりさらに少なくなったと思います。
また、Boot Camp(新人研修)に求められるのは【即戦力化】であり、オンライン、オフラインにかかわらず、「研修で学んだことをいかに現場で実践し、成果につなげてもらうか」ということを最重視して、研修構築しています。会社が求めるスピード感がとても早いので、そのスピードで戦力になってもらえるように研修すること。それが構築する上で注意している点です。

・研修を終えて、参加の方々から印象的な感想、予想外の反応はありましたでしょうか。

何をいつまでにどうすればよいのか明確で、とても初めてオンライン対応をしたとは思えないといわれました。

スタディスト社の実際の研修(トレーニング画面)の画像です

【スタディスト社の実際の研修(トレーニング画面)】

これ(Teachme Bizのトレーニング機能)はいろんな会社のお役に立てますね!とサービスの可能性を実体験として感じているとの話もありました。立ち上がり(各種検定合格までの期間)も通常より1/4へと短くなったことは嬉しい効果でした。

・その他 このトレーニング機能について特長的なこと、研修全般でのご感想についてお聞かせください。

環境の激変で教える内容も大きく変更しなくてはならない状況の中、教材となるSOP(下記に説明資料を添付しています)やコース内容をすぐに更新できるのは本当に楽でありがたかったです。オフラインだと、SOPを教材にしつつもついOJT的に教えていたこともありましたが、オンラインになると自習のための体制整備を優先するので結果、より反転学習も進み、効果的な研修を実施することが出来ました。 新人研修担当としては、急遽オンラインで運営となった時Teachme Bizがなかったらと思うとぞっとします。

SOPを説明した画像です

Teachme Bizのトレーニング機能の良さは学んで欲しいものを一覧化出来て、その出し入れがリアルタイムで行え、かつ、進捗確認もリアルタイムで出来ることなのでオンラインで寄り添いやすさ満点です!

と自社プロダクトの特長をしっかりお話しくださいました。

2)庄司さんからメッセージ

「業務手順の伝達」は、あらゆる企業の中で脈々と行われています。そしてその方法は、直接口頭で教える、マンツーマンで実践して見せる、研修を開催する、メモを渡す、紙のマニュアルにまとめる、動画に残す等々、多岐にわたっています。
今、企業のワークスタイルも大きな転換期を迎えています。Web会議システムやチャットツールの急激な普及が象徴的ですが、それらはこれまでの会話や会議を遠隔で行っていることと変わりありません。
遠隔にならざるを得ない状況だからこそ、企業の骨格とも言える「業務プロセス」をいかに可視化して共有することができるかが、企業の競争力を左右すると考えています。
企業や業務のあり方が大きく変わる中、当社としても少しでも皆様のお役に立てればと思います。

と語ってくださいました。

庄司さんは、2017年に【結果が出る仕事の「仕組み化」】という本を出版されています。まさに今の世の中を先取りされていたと感じ入ります。
後戻りは許されない、仕事環境の変化。この機会に、【業務プロセス】を見直し、新たな時代に適合する【手順書】への変更をオススメするものです。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年5月12日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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提供
執筆:杉浦佳浩(すぎうら・よしひろ)代表世話人株式会社代表
三洋証券株式会社入社(昭和62年)。鹿児島支店にて勤務。地元中小企業、個人富裕層の開拓を実施。日経平均最高値の2カ月前に退職。次に日本一給与が高いと噂の某電機メーカーに転職。埼玉県浦和(当時)にて、大手自動車メーカー、菓子メーカー、部品メーカー等の主力工場を担当。退職時は、職場全員から胴上げ。そして、某保険会社に二十数年勤務後、平成26年末に退社。在社中は、営業職、マネジメント職を経験して、リテール営業推進、若手人財育成を中心に担当していた。社外の活動も活発に行っていた。平成27年1月1日、代表世話人株式会社を設立。
同社代表取締役に就任。世話人業をスタート。年間1000人以上の経営者と出会い、縁をつなげている。

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