
日本のスマートホーム市場を大きく変えたのは、行動力とやり切り力が...
2023.02.01
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超売り手市場から一転し買い手市場となったウィズコロナの今、採用のポイントは「量」ではなく「質」にシフトしています。不況期に採用投資が有効なのは、自社の未来を担っていく「優秀なコア人材」を獲得しやすいからに他なりません。この好機を逃さないために重要となる取り組みが“採用のオンライン化”です。中でもWeb面接のスキルを磨くことは不可欠です。
コロナ禍で非対面のWeb面接が一気に広がりました。導入した企業の人事担当者や面接官に聞いてみると、候補者の選考・見極めが難しいといった声が多く上がっています。確かにモニターを通しての面接では、候補者の表情や目線、緊張の度合いなどを読み取りづらくなります。対面面接よりも圧倒的にやりにくい、というのが面接官の本音でしょう。
しかし、実のところ対面面接の見極めの精度が高いわけでもないのです。連載3回目の本稿からは、いよいよWeb面接のノウハウを紹介していきます。今回は、まず対面とオンラインでのコミュニケーションの特性を掘り下げながら、Web面接における「選考」に関して徹底解説していきたいと思います。
そもそも対面とオンラインで、コミュニケーションはどう異なるのでしょうか。オンラインコミュニケーションの研究では、「非言語的手がかり」と「同期性」という2つの軸を用いてコミュニケーションの特性が整理されています。
非言語的手がかりとは、口調、服装、表情など、まさに言語以外の情報を指します。同期性はリアルタイム性とも表現できます。非言語的手がかりと同期性の2軸がともに高いのが、我々が慣れ親しんだ対面のコミュニケーションなのです。
Zoomなどのツールを使った画面越しのコミュニケーションは、同期性はともかく、どうしても非言語的手がかりが減少してしまいます。これによって円滑に会話するのが難しくなるのです。
オンラインコミュニケーションで、発言のタイミングが重なってしまうことがしばしばありますよね。あれは何故かというと、アイコンタクトという非言語的手がかりが減ることが影響しているからなのです。人は、実はアイコンタクトによって次は相手が話す番だと察しているのですが、モニター画面越しでは構造的に相手と目が合いません。カメラや画面を介している以上、アイコンタクトをすることは物理的に不可能です。
アイコンタクトができなくなる→発言がかち合ってしまう→会話のキャッチボールができにくくなる。オンラインコミュニケーションにストレスを感じてしまうのは、非言語的手がかりの減少が大きく関係しているのです。
一方で、オンラインコミュニケーションでは、言語的情報がむしろ伝わりやすくなります。例えば対面で打ち合わせした時よりも、メールのテキスト情報のほうが、情報の「伝達度」は大きいでしょう。記事として読むほうが内容を理解しやすい、という経験をした方も少なくないはずです。
ただし情報伝達に関しては、実際に伝わった「伝達度」だけでなく、自分の情報が相手に伝わったと感じる「伝達感」という感覚が存在します。そしてこの伝達感は非言語的手がかりが多いほう、つまり対面のほうが得られるのです。さらに厄介なのは、人の脳は伝達感を重視するようにできていること。情報の伝達ではオンラインが勝っていても、人の感じ方によって対面のほうに手ごたえを感じてしまうのです。
オンラインコミュニケーションでは、非言語的手がかりが減少することによって“相手に伝わっているのに伝わった感を得づらい”あるいは“相手からの情報を受け取れているのに理解できた感を得づらい”という現象が起こっているのです。
会話のキャッチボールがしづらかったり、情報の伝達感が低いことで相互理解しにくいと感じたり。非言語的手がかりが得づらいことが、面接官と学生の双方が感じるWeb面接のモヤモヤ感の正体なのです。
またWeb面接を受けた候補者は、対面の面接を受けた候補者に比べて評価が低くなるという研究結果があります。非言語的手がかりも含めて得られる情報が減ることで、確信を持って採用したいと思えないのかもしれません。まさに「Web面接では選考・見極めが難しい」と感じる人事の声を立証しているような結果です。
しかし、非言語的手がかりが得やすい対面面接のほうが見極めの精度が高いかというと、実はそうでもありません。対面面接だからこそ過剰に評価されやすい人というのがいたりします。例えば、話の内容は同じでも、明るく振る舞う場合とそうでない場合、“明るく振る舞う”という非言語的手がかりによって、評価されやすくなることがわかっています。なんとなく明るい感じの人だとか、いわゆる「キャラ採用」のようなものが対面面接では起こりやすい傾向があるのです。残念なことに、対面面接では非言語的手がかりによって無意識にバイアスが発生しがちなのです。
一方、Web面接では非言語的手がかりが減ることでバイアスが軽減され、候補者が話す言葉の中身にフォーカスできるようになります。現に、Web面接での評価は仕事のパフォーマンスや定着と正の相関があると言う研究結果もあります。Web面接で評価が高かった人ほど実際の仕事でもパフォーマンスが高い傾向や、定着する傾向があるということです。この研究は、“非言語的手がかりが減ることにより、見極めの精度が上がる”ということを示唆しています。
非言語的手がかりが足りないことで見極めが難しいと感じがちなWeb面接のほうが、バイアスに振り回されることなく、むしろ妥当な見極めができる。実は、アカデミックなコミュニケーション研究では、こうした理解のほうが主流なのです。
Web面接に関するアドバイスでは、候補者にできる限り熱意を伝えるために大きく動きましょうとか、非言語的手がかりを増やそうというものが多いように思います。それはそれで一理あるかもしれませんが、非言語的手がかりが少なくなることで、中身にフォーカスしやすくなるといった特性を活かすことに舵を切ったほうが良いと思います。
そういった意味からも、本連載では“面接の構造化”を推します。構造化面接とは、面接のやり方や質問内容、評価の基準などをあらかじめ設定するというものです。一言で言えば、採用面接をしっかりマニュアル化することです。
そもそも対面かオンラインかにかかわらず、構造化することで見極めの精度が高まると言われていました。しかし対面面接が主流だった頃は、この構造化面接の導入はあまり進みませんでした。非言語的手がかりも含め選考を進める対面面接で、あまりガチガチにマニュアル化されると、面接自体が盛り上がりません。先述のようにバイアスとなるリスクがあっても、その場のノリが面接官にとっては重要な判断材料なのです。他方で面接を受ける学生にとっても、硬い質問ばかりだと機械的に対応されたような気持ちになってしまいがちで、対面での構造化面接は候補者に良い印象を与えないという側面もあります。
Web面接では、会話のキャッチボールがしづらく、そもそも盛り上がりは期待できません。むしろきちんと構造化をしたほうが、候補者は自分の能力を伝えやすく、話をしっかり聞いてもらえたと感じるという研究結果もあります。
面接でのやりとりも、候補者の話の腰をおらず、質問したいことはメモなどをして覚えておき、相手が話し終えてから質問をする。言ってみれば「キャッチボール型」から「ターン型」への変更です。こうした進め方もマニュアルに組み込むことで、面接官と学生双方のコミュニケーション納得度が向上するはずです。
つまりWeb面接と構造化面接は極めて相性が良いのです。逆の言い方をすると、Web面接ではきちんと構造化しないと対面面接に劣ってしまうということです。
構造化面接とは、
の4つがポイントです。
まずは、求める人物像をしっかり特定するのが基本です。多くの企業が実践しているのは、優秀な社員(ハイパフォーマー)や幹部層にヒアリングを行い、それを整理して求める人物像を定めるといったものです。
質問の固定化では、質問の答えとして期待しているエピソードを具体的に特定します。例えば長い期間取り組んでいた活動において、自身の工夫や努力で困難を乗り越えた経験について教えてくださいなどと具体的にすると良いでしょう。
さらに質問に対して深掘りする場合は、どのような観点で深掘りするかも構造化していくべきです。候補者が何かエピソードを話す際には、「あった問題」「とった対策」「出た結果」の3点にフォーカスしてアピールすることが多いでしょう。これを踏まえると「問題の背景となる環境」「実行した対策以外に浮かんだアイデア」「自身の貢献度」などが、深掘りのポイントになってきます。
評価基準の特定は、評価の中点(5段階評価だとしたら3点)のレベル感を定めることから始めましょう。具体的な人物を当てはめながら設定するとぶれが少なくなります。求める人物像を特定する際にヒアリングしたハイパフォーマーをイメージしながら定めていくといいかもしれません。
本稿では、次のポイントを解説してきました。
また、構造化面接について、その概要をかいつまんでお伝えいたしました。
次回は、Web面接のカギを握る構造化面接についての詳細編です。構造化の進め方や重要なポイントを具体的に解説させていただきます。
以上
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