現在の新卒採用市場において、「活動の起点」となったインターンシップ。本連載では、はじめてインターンシップに着手しようという中小企業の視点に立って、“超現実的かつ効果的な”インターンシップの導入ノウハウについて解説しています。

お金と手間を極力掛けないで実施できて、採用に結びつけることができる。そんなインターンシップを考えたときにお勧めしたいのが「1Day×Web」形式でのインターンシップ。Web形式だと場所を選ばず実施できるため、これまでリーチできなかった学生と接触ができます。また1Dayであれば実施の負荷も少なくて済みます。Web形式によるデメリットもありますが、選択する価値は多いにあるやり方です。
第4回の本稿では、「1Day×Web」のインターンシップについて、学生満足度を高め、かつ自社の魅力をアピールする秘訣をご紹介しましょう。

1 「1Day×Web」を成功させる3つのポイント

コロナ禍で、インターンシップをWebで実施するという波が一気に広がりました。今後、対面形式に戻す企業もあるでしょうが、Web形式の流れは拡大していくとの見方が大多数です。それは、企業がWebインターンシップのメリットを実感したからです。
Web形式であれば、遠方の学生を集めたり、自社の立地が不便な場所にあったりしても、参加する学生を募りやすい。これは企業にとって大きなメリットです。移動が発生しないため、学生からしても手軽に参加できることで母集団形成が期待できます。ただし従来の対面形式に比べると、会社の雰囲気や社風などが伝わりにくく、結果的に志望度が上がりにくい。こうした弱点があるのは否めません。学生に仕事の面白さや経験を伝え、なおかつ自社の魅力や働きやすさをアピールできないと、「手間だけが掛かった……」ということにもなりかねません。
しかし、この弱点をいろいろな工夫で補うことができれば、母集団を集めやすいWeb形式のメリットを享受しつつ、志望度も高めることができます。

「1Day×Web」形式でのインターンシップを成功させるには、3つのポイントがあります。

  • 1Dayに適したプログラム設計
  • オンラインの弱点を補強する対応
  • 少しでもリアルに職場を感じてもらう工夫

2 1Dayに適したプログラム設計

まずは、実施時間をイメージしながら、ざっくりとカリキュラムを設計することから着手してください。一口に1Dayと言っても、たっぷり8時間くらい掛けるのか、サクッと2時間くらいで終わらせるのかで、その内容は大きく変わってきます。
お勧めは4時間くらいのカリキュラム設計です。学生からしてもそんなに負荷にはならず、ある程度しっかりした内容を入れ込めます。また、うまくやれば1日で2回転実施することができます。
重要な視点は、フィードバックや座談会といったパートをおろそかにしないこと。学生に何をやってもらうかというワークのパートに目が行きがちですが、学生の満足度を高めるには、彼らのプレゼンテーションに対するフィードバックが極めて重要です。そして座談会によるコミュニケーションが自社の魅力をアピールする魔法の時間になり得ます。

「1Day×Web」形式でのインターンシップのプログラムの流れを示した画像です

(出所:執筆者提供)

インターンシップカリキュラムの概要ができたら、“あんこ”に当たるワークのプログラム内容を設計します。学生から人気があって満足度を高めやすいのは、やはり仕事の疑似体験ワークです。次を参考にしながら、職種によって実施内容を考案してみてください。

1)営業職の疑似体験ワーク

営業ロールプレイングは、社員がお客様役を担い、学生が営業職役として商談等の疑似体験をするものです。顧客へのヒアリングや提案を通じて営業の面白さを知ってもらう、また提案の過程を通じて自社商品やサービスを深く知ってもらうことができます。

2)企画職の疑似体験ワーク

企画職の疑似体験では、新規事業の立案やマーケティング施策を企画するプログラムが主流です。自社の商品やサービスに対して、サービス向上を目的とした企画書を作成します。「企画」や「新規事業」というキーワードに反応しやすい学生が多いこと、運営が簡単、グループワークの様子を見ながら学生の評価ができるといった理由で、多くの企業で取り入れられています。

3)エンジニア職の疑似体験ワーク

IT系企業のインターンでは、エンジニア体験が主流となっています。学生のほとんどはプログラミングの実務経験がないため、顧客の課題をヒアリングして、要件設計するまでの上流工程を体験するものが大半です。PC等を準備する必要がありませんので、運営が比較的容易であることも、上流工程の体験が主流となる要因です。

3 Web形式のデメリットをきちんと把握

オンラインの特性を理解した上で、インターンシップの設計につなげていくのも重要です。弱点を補うためには、特にデメリットについてきちんと把握する必要があります。

1)対面より細かな設計が求められる

通信環境のトラブルや学生の持っているPCのスペックによっては進行がスムーズにいかないこともあるでしょう。オンラインだと「場の雰囲気」等でプログラムを調整したり、融通を効かせたりすることが困難。対面と同様の進行で進めようとすると、学生の満足度が下がってしまうことも考えられます。

2)学生の人物像がつかみにくい

Web形式の場合、対面と比べると学生の人物像がつかみにくい傾向があります。モニター越しにやり取りをする環境では雑談の機会が設けにくく、同じテーブルを囲んで食事をすることもできません。意図的に雑談の時間をつくる工夫や、表情や声色などから相手の人物像をつかみ取ったりする技術が担当者に求められます。

3)学生の集中力が続きにくい

人間の体は、同じ姿勢でPCを見続けると非常に疲れ、集中力が続きにくい傾向があります。例えば、対面では60分に1回の休憩ですが、オンラインでは40分に1回ぐらいが妥当です。同様に進行方法を変えたり、グループワークを実施したり、発表してもらったりといった場面転換を10~20分に1回程度入れることもポイントです。

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4 弱点を補強する配慮とは

先ほど紹介したデメリットを想定し、あらかじめ対策を練っていくこと。これが、そのまま弱点を補う工夫となります。

1)参加者の通信環境への配慮

通信環境が悪いと、会議中の通話がぶつ切りになってしまったり、資料のダウンロードに差が出たりする事態が考えられます。待たされる学生側にはイライラが募りますし、通信環境が悪く相手を待たせることになってしまう学生側は焦ります。
例えば必要な資料があれば、あらかじめダウンロードをしてもらう、必要なツールやPCのスペックを周知する、フリーWi-Fiの禁止などの注意点も必要であれば伝えておきましょう。全員の通信環境をある程度統一することが重要です。

2)参加方法の事前説明

必要なツールがあればダウンロードしてもらうことをはじめ、何分前の集合か、どんな服装が望ましいかなども伝えておきます。加えて、質問する方法やリアクションボタンの使用の是非、マイクはミュートで参加するかどうかなど、進行中に発生するであろう、やり取りについても伝えておきたいところです。事前に詳しく説明しておくことで、当日の混乱が少なくなります。

3)プログラムを詰め込み過ぎない

オンライン環境では、どうしてもコミュニケーションのタイムラグ等が生じるため、対面と同じボリュームで設計すると時間をオーバーしてしまいがちです。感覚としては、プログラムのボリュームは対面実施の7割程度にするくらいが好ましいでしょう。時間内に終わらなかったり、尻切れトンボになったりする状況は参加者の満足度を下げてしまいます。
また、Web会議に1日つなぎっぱなしになることは、相当な疲労を感じます。適度に休憩を入れたり、個人ワークの時間(PCの画面を見ない)をつくったり、お昼は各自で取る形にして接続を切ってもらったりといった配慮をします。1Dayインターンの間、ずっとPCの画面を見ることにはならないように注意しましょう。

5 リアルに職場を感じさせる工夫で心をつかむ

自社の魅力をアピールするためには、職場の臨場感や雰囲気を学生に感じ取ってもらいたいものです。少しでもリアルに職場を体感してもらうために、次のような工夫を施してみてはいかがでしょうか。

1)職場見学ムービー

職場の臨場感や雰囲気を学生に感じ取ってもらうのに有効なのが「職場見学ムービー」です。現場で働く社員の様子や社内会議の様子を撮影したり、インタビューなどの映像を流したり、学生目線に立ったムービーを制作するとよいでしょう。現場の生の声や社員同士のやり取りを通じて、学生に職場の雰囲気をイメージしてもらえます。

2)複数のプログラムを用意

インターンシップのプログラムは、複数あると学生の満足度アップにつながりやすいといわれます。例えば、1回のインターンシップで営業と企画、両方の業務を体験できると、学生の興味も引きやすくなります。映像を見ながら手元のPCで実際に仕事をしてもらうような疑似体験と組み合わせても、よりリアルに職場を感じられるでしょう。

3)座談会の実施

職場や社員を写真で紹介したり、社員との座談会を設けたりして、「職場の雰囲気」を感じられる場を設けることは極めて重要です。学生にとってはインターンシップで分からなかったことを質問するなど、より会社のことを理解してもらえる機会となるはずです。自社に興味を持った学生の心をつなぎ留めて、クロージングへ導きましょう。

6 まとめ

「1Day×Web」形式でのインターンシップについて、できるだけ具体的なやり方をご紹介してきました。再三お伝えしてきましたが、オンラインのメリットは、学生が参加するハードルが下がり母集団形成が期待できることです。一方で、対面に比べて社風などが伝わりづらいといった懸念もあります。それでも、一定の会社理解や仕事理解はさせることができると割り切ることができれば、極めて有効な形式です。
オンライン環境を制限と捉えるのではなく、オンラインの強みを生かしたプログラムを設計すること。これがメリットを享受しながら、学生の満足度を高め、結果的に志望度を上げることにつながっていきます。ぜひチャレンジしてみてください!

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年11月25日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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執筆:平賀 充記(ひらが あつのり)
株式会社ツナググループ・ホールディングス エグゼクティブフェロー 兼 ツナグ働き方研究所所長。1988年(株)リクルートフロムエー(現リクルートジョブズ)に入社。「FromA」「タウンワーク」「はたらいく」などリクルートの主要求人媒体の全国統括編集長。2012年(株)リクルートジョブズ・メディアプロデュース統括部門担当執行役員に就任。2014年ツナグ・ソリューションズ取締役に就任。2015年ツナグ働き方研究所を設立、所長に就任、いまに至る。
著書に『非正規って言うな!』(クロスメディアマーケティング)、『神採用メソッド』(かんき出版)、『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』(アスコム)がある。

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