
黒字事業を手放して”全振り(ぜんぶり)”してでも立ち上げた「高卒...
2023.04.10
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現在の新卒採用市場において、インターンシップは「活動の起点」になりました。本連載では、はじめてインターンシップに着手しようという中小企業の視点に立って、“超現実的かつ効果的な”インターンシップの導入ノウハウについて解説しています。
最終回となる本稿では、インターンシップの本質に立ち返って、中小企業が実施すべき“もっとも王道”といえるインターンシップについて、語ってみたいと思います。それは、「少数精鋭×長期インターンシップ」です。どちらかというと、まさに今本番を迎える23年卒採用というより、次の24年卒採用を視野に入れたインターンシップのノウハウとなりますが、長期インターンシップこそ、うまくハマれば中小企業の新卒採用において絶大な効果を発揮します。
急がば回れ。本来の就業体験プログラムに近い長期インターンシップを成功させ、新卒採用にまでつなげる具体的なポイントをご紹介しますので、ぜひご一読ください。
そもそも、新卒採用におけるグローバルスタンダードでは、新卒であっても即戦力を期待しています。つまり学歴だけでなく実務経験が重視されます。アメリカなんかだと、ほとんどの学生が長期インターンシップに参加して、職業経験を積んでから社会に出る=インターンシップを通して、企業側と学生の双方が気に入れば就職するというケースが多いのです。
言ってみれば、日本の新卒一括採用は“お見合い的なマッチング”で、グローバルで一般的な長期インターンからの採用は“恋愛的なマッチング”。後者のほうが、ミスマッチが少なくなりそうな気がしますよね。
しかし、長期にわたってインターンシップ生を受け入れることは、すごく負荷がかかるんじゃないのか? そう思われる方もいらっしゃるでしょう。確かに、そうなってしまうと「手間をかけずに成功させる超現実的インターンシップ」という本連載の主旨からも外れてしまいます。
ポイントは受け入れる学生の数です。中小企業においては、社員が学生の面倒を見る時間を取るのは大変ですし、たくさんの学生を長期間受け入れることは現実的ではありません。しかし少人数に絞ってインターンシップを実施すれば、その負荷はかなり軽減されるはずです。冒頭でもお伝えした「少数精鋭」。これが中小企業における長期インターンシップの前提となります。
まず重要になるのは、インターンシップ生の受け入れ方です。
新卒採用の担当者だけで長期インターンシップを成功させることはできません。企業側が学生を見極めるのと同様、学生側も企業を見極めています。一部の社員だけが関わるような状況では、学生がその企業に就職すべきかどうか判断ができないでしょう。できるだけ全社員を巻き込んでインターンシップを行う必要があります。
全員で受け入れる意識付けには副次的メリットもあります。全社員が長期インターンシップに関わることで、新卒採用を“ジブンごと”としてとらえることができるようになるからです。
既存社員が新卒の教育に積極的になれない、あるいはその時間が取りづらいことで、成長を支援できずに早期の退職につながる。中小企業にとって、新卒採用は採用してからの教育に課題があるケースも散見されるのが実情です。
長期インターンシップ実施時から全社員が関わることで、本採用後の教育がスムーズに行われるようになり、結果として、新卒採用の効果を高めることができます。
スムーズに長期インターンシップをはじめるためにも、学生と自社の間でインターン期間中に取り組む内容について共有シートを作成し、目標やステップ、スケジュールについてお互いに確認をしておくとよいでしょう。また下記のような形でオリエンテーションを実施しましょう。
●オリエンテーション実施のチェックポイント
もちろん採用のためのインターンシップなのですが、「採用のみ」を意識しすぎて長期インターンシップを行うことは、あまり推奨できません。
インターン生といえども、ある程度の仕事をこなしてもらわないと、長期で雇い続けることは大変な負担になります。そういった意味で、インターン生を「戦力」としてとらえるくらいの意識が重要となります。
そのカギを握るのが、業務の仕組み化です。業務を標準化し、誰でもできるようにしておけば、インターン生にやってもらえることが明確になります。これができていないと、戦力どころか、持て余してしまうような事態になりかねません。
ここにも、実は副次的メリットがあります。中小企業においては、業務が属人化していることから生産性が可視化できておらず、それが課題になっていることが多いからです。インターン生を受け入れるという目的があると、社員が自身の業務を開示することに協力的になります。
各自の業務が可視化される→業務の標準化や仕組み化が進む→生産性が改善する
こうした嬉しい循環が生まれます。来客があると家の中が片付く。あんな感じです。
インターン生には簡単な業務を中心にやってもらうことになりますが、単純業務ばかりでは自社に魅力を感じてもらうことが難しくなります。
とはいえ、面白いと思えるような重要な仕事を無条件に任せるわけにもいきません。社員が学生の面倒を見る時間をなかなか取れない中で、業務の任せ方は難しい問題です。だからこそ、インターン生が
興味のある仕事を少しずつ経験できるように、段階的にカリキュラムを作ること
が重要です。
STEP1)1日目~1週間
最初の1週間は、社内でインターン生が仕事をしやすい環境を作るための期間です。業界のこと、企業のこと(ビジョンや企業理念)、職場のこと(仕組み、ルールなど)を理解してもらいつつ、慣れてもらいましょう。「インターン生が来たのはいいけれど、何を任せたらいいんだろう」という状況は最悪です。そのためにも、かなり具体的に、いつ、何をやってもらうのかなどの予定を設定しましょう。
STEP2)2週目~1カ月
1カ月までは、企業や業界に対する理解を深めるなど「知識」の習得はもちろんですが、仕事に対する「マインド」面の習得を大事にして進めましょう。自分の強みを生かして企業に貢献していくという意識、主体的に仕事を進めていく感覚、新しい発想やアイデアを恐れることなく発信する積極性など、ビジネスの世界で重要となるスタンスをインストールしていきます。
STEP3)2カ月目~
2カ月目以降からは、徐々にスキルを求める仕事を任せていきます。そうすることで、インターン生も成長実感が得られ、仕事に対するモチベーションやコミットメントも上昇してきます。企画力、プレゼン力、論理的思考力などを磨くことにつながるよう、自分なりの視点や発想を形にしていくプロセスを経験してもらいましょう。
インターン生はインターンシップに慣れてくると、単純業務を疎かにしがちになります。基礎的な業務ほどきっちりこなすことの大切さを学んでもらうためにも、しっかりと単純業務に取り組み企業に貢献したインターン生だけが、重要業務を経験できるといった仕組みも効果的です。例えば、「日々の業務をポイント付けして、成果によってインターン生にポイントを付与し、一定のポイントがたまると商談の現場に同席できる」などの特典を与えます。
このように、インターン生が取り組みやすい単純業務を中心にしながら、自社への魅力も感じてもらえるような仕組みを作ることは、インターン生を戦力として活用しながら、面倒をみる側の負荷を軽減しつつ採用でも成果を出すことにつながる“一石二鳥の打ち手”なのです。
インターン生がモチベーションを保ちながら続けていけること、そしてポジティブなコンディションで修了すること。採用につなげていくためのインターンシップは、これが鉄則です。言うまでもなく、それが企業への好意度に直結するからです。
とはいえ、長期インターンシップの期間中、インターン生は必ずいくつかのハードルに直面することになるでしょう。目的や目標を見失う、現状に満足しきってしまう、主体性がなくなる、不完全燃焼で不満がたまる…などなど、ネガティブなコンディションに陥ることも少なくないはず。
こうした事態を防ぐのに有効なのが、日報です。日々の気付きや学びを言語化させることで、彼らが発している様々なシグナルをキャッチし、コンディションをモニタリングすることができます。
●日報の項目例
インターン修了時には、社内で「修了報告会」と「修了面談」を実施します。
報告会には、社長をはじめできるだけ多くの社員に参加してもらいましょう。お世話になった外部のお客様などをお呼びできたりすると理想的。インターン生にとっても企業にとっても、インターン期間が実りあるものになります。
修了面談は、修了報告会前後に実施します。経験したことを、改めて文字に落として実施報告書を書いてもらいます。それをもとに多様な視点でフィードバックをします。
この時、
「学生が、今回の経験を踏まえて何に挑戦をしていくのか」
「次の目標をどこに置くのか」
を一緒に考えていくのもアリです。学生の自社への好意度を測ることができ、また継続的なつながりも持ちやすくなります。
そしてなにより、修了報告書や発表資料は、次のインターン生にとっても重要な指標になると同時に、受け入れ企業にとっても企業に対する生の声を聞く重要な資料となります。
中小企業は、魅力的な企業であっても、大企業と比べて知名度が低いことで、新卒採用において苦戦しがちです。しかし長期インターンシップは、学生側から見ると社会に出る前に職業体験ができる制度であり、中小企業であってもそれほどハードルを感じることなく応募ができます。
その魅力を学生に知ってもらう機会として、長期インターンシップは極めて有効な取り組みなのです。ぜひ、インターンシップの王道に少数精鋭でチャレンジしてみてください。すべての中小企業がいい人材を獲得できるよう、ご健闘を祈ります。
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以上
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