
ベンチャーキャピタルの仕組みを分かりやすく解説
2019.02.01
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年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、小日向えりさん(株式会社ぴんぴんころりの代表取締役)です。
小日向(こひなた)さんが語ってくださったのは「第2のおかあさんを持つ」という、一般的な家事代行の先を行く新しい文化。人と人とが出会い、ちょっとした「おせっかい」が「ほっこり」した気持ちを育む……。今だからこそ、こうした人のつながりがますます大事になっていると感じます。小日向さんがやっておられる【東京かあさん】は、利用者にだけやさしいのではありません。もともとは、「高齢になっても、人が働き活躍できる場をつくりたい」という思いから始めているものです。働き手と利用者の両方を「ほっこり」させる小日向さんのサービスと思いをご紹介します。
1)小日向さんの実現したい社会、そして小日向さんはどのような方か?
「株式会社ぴんぴんころり」。2017年7月創業のこの会社名にも、小日向さんの思いがたくさん込められています。「高齢者が寝たきりや病気にならず、人生の幕引き直前までぴんぴん元気でいること」、つまり、一人でも多くの人が生涯現役でいる社会をつくる。これが小日向さんの掲げるビジョンです。
2020年から、この株式会社ぴんぴんころりの経営一本に絞っている小日向さん、奈良県のご出身で横浜国立大学卒。以前は歴史アイドルでした(2022年現在は、すでに引退されています)。15歳のころから芸能活動をされていて、歴史好きが高じて「歴史アイドル・歴ドル」として書籍を発表したり、テレビやラジオなどでご活躍されていました。
一方で、インターネット大好き、かつご親族に有名な起業家さんやご自身の起業家精神も以前からかなりお持ちだった小日向さん。2012年には一社目の会社を立ち上げ、歴ドルと起業家を両立。行動力があり、地道に努力される頑張り屋さんな面もある、そしてとても素直で「世の中を良くしたい」という純粋な心持ち。加えて大のおばあちゃん子!(これが「ぴんぴんころり」の創業につながっています。詳細後述)これからますます成長が期待される起業家の方です。
2)【東京かあさん】=「第2のおかあさん」とはどういうことか?
株式会社ぴんぴんころりのメーンサービス【東京かあさん】は、その名の通り、
「東京での『第2のおかあさん』を持つ」
がコンセプト。特に実家から離れて暮らしている人は、すぐにピンとくるネーミングではないでしょうか。よく、大家さんとか近所の定食屋のおかみさんとかが一人暮らしの学生さんに、「私のことを東京のおかあさんと思って、困ったことはなんでも相談してね!」と言うアレです。言ってもらったほうはとても心強いですし、何より嬉しくてグッときます。
【東京かあさん】は、家事代行やベビーシッターの枠を超えて、家事や育児のサポートをお願いしたり相談したりできるサブスク型のサービスです(月額平均は3万円くらい)。「おかあさんにちょっとヘルプをお願いする」「おかあさんが、ちょっとしたおせっかいでやってくれる」イメージのもので、小日向さんの言葉を借りれば【第2のおかあさんを持つという体験を提供している】サービス。難しいことはいっさい考える必要がありません。例えば、利用者は、LINEで「第2のおかあさん」に「いま仕事終わりました。保育園のお迎えと夕ご飯の準備をお願いします🙏」などを送ると、第2のおかあさんがやって来てくれて(事前のお顔合わせなどがあります)、家事や育児をサポートしてくれます。実に素晴らしいサービスです!
まさに「おかあさんヘルプ!」とお願いできるサービス。スマホ一つでやり取りできるこの簡単さ手軽さも、利用者と働き手(おかあさん)の両方にやさしいところ。「1分でわかる東京かあさん」動画はこちらです(出所:東京かあさんウェブサイトより)。
3)スタバ理論(仮)を家事代行にも当てはめてみる
とはいえ、小日向さんは、一般的な家事代行やベビーシッターを否定するわけではまったくありません。「大事なのはすみ分け、利用する人がサービス(家事代行など)に『何を期待するか』だと思うんです」と小日向さん。例として挙げてくださったのは「人はコーヒーを飲みに行くとき、どこを選ぶか」という話でした。とても分かりやすかったので、小日向さん流「家事代行に当てはめるスタバ理論(仮)」として、こちらにご紹介します。
「スタバに行きたい人はスタバに行くし、ドトールに行きたい人はドトールに行く。スタバを選ぶ人は店員さんとの交流などホスピタリティを期待しているのかもしれないですし、ドトールに行きたい人はドトールのコーヒーの香りや味に期待しているのかもしれません。そして、昭和の喫茶店の雰囲気が好きな人は、それを期待して昭和の喫茶店に行く。家事代行などのサービスも同じだと思います」
「例えば、とにかく家事をアウトソーシングしたいという方は、一般的な家事代行のサービスを活用するのがいいかもしれません。それだけではなく、『ほっこりしたぬくもり』を感じたい人、おかあさん世代の方々と交流したい人、知恵袋的に家事や子育ての色々を教えてほしい人とかには、【東京かあさん】で『第2のおかあさんを持つ』が合っているのではないかと思います」
高齢者支援をメーン事業と心に決めてブレない小日向さん。「高齢の方がいつまでも元気で働ける場、そういう社会をつくりたい」と語ります。きっかけとなったのは小日向さんご自身のおばあさんのことでした。
「もともと私はおばあちゃん子で、愛情をたっぷり注いでもらっています。祖母は30〜40代のころから何かしらのお仕事をしていて、そこからずっと働き者でした。70代になっても色々とお仕事をしていましたが80歳くらいになるとついにお仕事がなくなってしまいました。その後は家でずっとテレビを見ているという感じで、元気がなくなってしまったのです。心配していた矢先に怪我で入院してしまいました。そのころに、ハッと、『やはりお仕事をしていたことが、祖母の元気の源だったのではないか』と直感的に思ったのです」
こう語る小日向さん。おばあさんのことをきっかけに、高齢の方でもずっと元気でいられる何かをできないかと思っていた小日向さんは、あるベンチャー系イベントで、高齢者の知見を活かした就業支援の事例に出逢います。そして自分でも「高齢者の就業支援」をしたいと考えるようになり、シルバー人材センターのことを調べるなどしてその思いがどんどん膨らみ、ついには株式会社ぴんぴんころりの創業に至りました。やはり、ご自身が実感したおばあさんへの思いがあるので事業へのコミットの仕方が半端なく強い小日向さん。何より、「高齢になった方でもずっと元気でいられる何かをしたい」という考えを、考えるだけで終わらせず具体的に形にして会社を立ち上げ、そして今は会社で仲間も雇用している。この底力、根性、行動力、実現力。並々ならぬ内に秘めたパワーを感じます。
小日向さんが【東京かあさん】のサービスを具現化した裏側には、小日向さんご自身が「第2のおかあさん」に「おせっかい」をしてもらっているという話もあります。つまり、創業者自らが自分のサービスのユーザーでありファンでもある、実に理想的な形です。つい最近も掃除や洗濯をしてもらい、その後一緒にご飯を食べて映画を見に行ったそうです。本当に文字通り、「第2のおかあさん」ですね! なにしろ、小日向さんが引っ越しされるときも、「頼んでいないのに」第2のおかあさんが手伝いに来てくれて、荷解きしてくれたというのです。おかげで仮眠を取れたと感謝している小日向さん。この信頼関係、なかなかできることではないですね。【東京かあさん】の質の高さがうかがえるエピソードです。
小日向さんご自身がユーザーでもある【東京かあさん】には、言葉の定義一つひとつにも、小日向さんのこだわり、意志が感じられます。例えば、働き手(ワーカー)のことは「おかあさん」。一方、利用者(ユーザー)のことは「お子さん」。「おかあさん」や「お子さん」という呼び方については、「【東京かあさん】のファミリーの一員として親しみを込めて、そのように呼ばせていただいている」と小日向さん。その他も併せてまとめると、下記などがあります。小日向さんの実現したい世界観がよく分かります。
こうした世界観で実現しているので、「おかあさん」や「お子さん」からの働いてみての感想、サービスを利用してみての感想も、一般的な家事代行の感想とかなり違っています。下記にいくつかご紹介します。先に、「お子さん(ユーザー)の声」を、その後に「おかあさん(ワーカー)の声」を掲載します。グッとくる“声”ばかり、特に「おかあさん」のほうは、「高齢になっても活躍できる場」が実現できていることが本当によく分かります。必見です!(出所:小日向さんからご提供いただいた皆さまの声より)
【お子さん(ユーザー)からの声】
【おかあさん(ワーカー)からの声】
読んでいると、何かぬくもり、ほっこり。おせっかいが大事で、それがほっこりにつながっている。感動します。
ぴんぴんころり、そして【東京かあさん】のサービスは現在、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県といった関東地方で提供していますが、今後は全国展開もしていきたいと小日向さん。登録している「おかあさん」も、もうすぐ600名になるそうで、順調に伸びてきているようです。全国どの地域でも、「近所に第2のおかあさんを持つ」が実現できるようになれば、さらにニーズも増えるかもしれません。例えば、新しい土地に引っ越したばかりで近所に知り合いもいなくて子育てもあって、心細い……という人向けなど。そう考えると、「おかあさん」をどうやって集めるかが、ますます重要になってきます。例えば、生命保険会社や銀行、信用金庫、地元の大手企業の卒業生などが「おかあさん候補」になるかもしれません。
実際に、小日向さんの思い、やっておられることに共感して「一緒に何かできれば」と声をかけてくれる金融機関や大手企業などもあるようです。小日向さんご自身も「高齢者の健康ケア&保険料を抑えるという面で保険会社さんと連携などできるかも」と目を輝かせています。これからが楽しみです。
「今後、家事代行市場は6000億円規模、保育サービス市場は3兆3500億円規模と推計されます。それに対して、家事・育児サービスの市場では働き手不足が問題となっています。そうした中、ぴんぴんころり、東京かあさんはこれから増えていく働きたいシニアのために作った会社、サービスですので、こうした働き手不足を解決していけると思っています」
と将来に向けて自信をのぞかせる小日向さん。実際に高齢の方のうち約80%が「70歳以上まで働きたい」と回答しているそうで、【東京かあさん】はその場づくりとして大きな可能性があると感じます。小日向さんの語る、次の言葉が、何か今後の日本の明るい未来を予感させてくれます。
「『東京かあさんが生きがいだ』と言ってくださるおかあさんたちがどんどん増えています。『こんな私でもお役に立っていると思うと幸せです。東京かあさんに出会えて幸せです』『お子さんの日々の成長に関われてとても幸せです』『だんだん娘・孫のような存在になってしまいました』『今日は母の日ですね。我が家の東京かあさんになってくださって、ありがとうというメッセージをもらった』など、おかあさん方には、日々やりがいを持ってやっていただけているかなと思っています」
最後に、小日向さんの実現されたいことを改めてお聞きしてみたところ、次のように語ってくださいました。
「東京かあさんは、まだまだやりたいことの一つにすぎません。(高齢の方が)働いて収入を得て、その先はその収入を使って新しいことを学んだりとか、あと仲間と趣味を楽しんだり、高齢の方がずっと元気でいられることはどんどん手がけていけたらいいなと思っています」
「高齢の方がずっと元気でいられることはどんどん手がける」。2019年に、小日向さんご自身のお母さんも参加してクラウドファンディングで開催された平均年齢70歳の「めいど喫茶 ぴんころ」も、その一環なのだと思い至ります。改めて小日向さんのコミット力、アイデア、そして具現化する実行力、何より暖かいお人柄に感嘆しきりです。応援しています! ありがとうございます。
以上
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2022年4月22日時点のものであり、将来変更される可能性があります。
※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。
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