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すぐ折れる!失敗したくない!ちょっと線が細すぎませんか問題/今どきの若手社員のトリセツ~上司や先輩に贈るストレスマネジメントの処方箋 Vol.9

日本情報マート

2023.01.04

 近年、職場の上司や先輩(いわゆるオトナ世代)は、若手社員の言動を理解できないイライラ、腑に落ちないモヤモヤを抱えつつも、指導の際は「パワハラ」と感じさせないように、気遣いや遠慮が求められるようになりました。
 そもそもオトナ世代が若手にストレスを感じる原因は、オトナの考えと、若手の行動とのすれ違いによるものがほとんどです。しかし、若手に対して「けしからん!」と怒ったり、「理解できない!」と嘆いたりしていたことを、冷静に分析するだけでスッキリすることもあります。

 本連載は、拙著「イライラ・モヤモヤする 今どきの若手社員のトリセツ」を一部抜粋し再構成してお届けします。

  • オトナ世代が違和感をもつ若手社員の言動を具体的にピックアップ
  • ギャップやストレスの正体を分析
  • 円滑なコミュニケーションや適切な指導法を考察

という3ステップで、指導の妨げとなるストレス解消のヒントを探っていきます。

1 絶対に出社しないとヤバい

 ある新入社員が大型連休にメキシコに旅行に行った時のこと。なんと帰りの飛行機が欠航になったのです。翌日は休日明けで、絶対に出社しないとヤバい……。どうしよう……。焦ったあげく、運航している他の航空会社で、80万円もするファーストクラスのチケットを買って帰国したのです。そして翌日、普通に出社しました。

 見上げたプロ根性とも取れますが、航空会社の欠航という不測の事態でもあるわけで、80万円の自己負担という金額を考えると、会社に相談することはできなかったものかとも思います。案の定、会社の上司は「連絡してくれたら、1日遅れて帰ってきていいよ、って言ったのに」との反応を示したとのこと。ま、そりゃそうでしょう。

 相手を尊重し、その期待を裏切らないようにするというのは、決して悪いことではありません。しかし、絶えず人の顔色をうかがい、相手をがっかりさせないために、無理してデキるキャラを演じてしまうのが、今どきの若者。なぜ、そこまで無理をしてキャラを演じてしまうのか。それは、人から認められたいという承認欲求、意識高くないといけないという思い込みが強すぎるからです。

2 なんで、そんな簡単に折れるわけ?

オトナのイライラ・モヤモヤ
 すごく頑張っている若手をリーダーポジションに抜擢した。ところが、その1カ月くらい後から、休みがちになり、のちに休職することになってしまった。仕事のストレスがかかりすぎたのかもしれないが、「ありがとうございます! 頑張ります!」と、あのキラキラした力強い返事は、何だったんだ?

若者のホンネ
 もちろん抜擢は嬉しかったし、当初は頑張ろうと思っていました。自信もあったんですが……。ポジションが上がったことで、うまくいかない仕事が増えて。こんなキャラだったのかなぁ、と自分でも情けなくなってきて……。ちょっと背伸びしてしまっていたのかもしれません。

 承認欲求が満たされていない→本来のキャラを見せられない→理想のキャラを演じる→できないと言えない→無理しすぎてストレスが溜まって自爆。
 こうした悪循環にハマってしまった典型的な事例です。

 「理想の自分」と「現実の自分」のギャップを目の当たりにする。これはこれで大変です。「仕事ができるキャラ」を演じたいのに期待に応えられないと、「イケてない素のキャラ」を直視することになってしまうわけですから。
 この若手社員は、まさにこのケース。職場での彼は「仕事ができる」キャラを演じたかったのです。ポジションが変われば、うまくいかないことが増えるのは当たり前なのですが、「現実のできない自分」を他の人にさらけ出すことができずモヤモヤし続け、結果的に病んでしまいました。

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3 キャラの幽体離脱現象

 ここで改めて“キャラを演じる”ことについて考察してみましょう。
 その昔、芸能人運動会の徒競走で優勝した木村拓哉さんが、感極まって「だてにキムタクやってんじゃねーよ!」と叫んだことがありました。「いやいや、アナタがキムタクですよ。なんなら木村拓哉、本名じゃないですか?」とテレビに向かってツッコミを入れそうになったくらいです。
 これって、キムタク本人が、ファンが持つイメージとしての「理想のキムタク」を強く意識している証拠です。今どきの若者の感覚も、この「役を演じる芸能人」のような感覚に似ています。
 SNSでいくつものアカウントを使い分ける若者は、自分自身のキャラを変えたり装ったりすることに長けています。「キャラの幽体離脱現象」とでもいうのか、「本来の自分のキャラ」と「ありたい自分のキャラ」を分離して運用することが、習慣化しているのです。

 しかし、キャラを演じながらでも、リーダーポジションにチャレンジしようとするだけ、まだ好感が持てます。リーダー抜擢をポジティブに受け止めない若者もいますから。

4 ちょっとくらい失敗したっていいじゃん

オトナのイライラ・モヤモヤ
 若いうちに、もっと失敗しておけばよかったと思う。失敗からの学び。これこそが自分の成長の礎になってきた。失敗の原因を究明し、得られた知見を活かし、新しい挑戦につなげていく。それなのに、今の若手は失敗を怖がりすぎだ。むしろ、どんどん失敗してほしいんだけどなぁ……。

若者のホンネ
 やってみて失敗しないと分からない。まずはやってみろ! いやいや、前もって失敗するって分かってて、なんでやらないといけないんですか。それってイジメじゃないですか。目に見えている失敗なら、前もって説明してくれたほうが、よほど合理的だと思いますけど。

 「ファーストペンギン」という言葉をご存じでしょうか。集団で行動するペンギンの群れの中から、天敵がいるかもしれない海へ、魚を求めて最初に飛びこむ一羽のペンギンのことです。その「勇敢なペンギン」のように、リスクを恐れず初めてのことに挑戦するベンチャー精神の持ち主を、米国では敬意を込めて「ファーストペンギン」と呼びます。
 失敗してもいい、挑戦を恐れないでほしい。オトナは、若者にこういう姿勢を求めがちです。しかし失敗したくない若者は、簡単に挑戦なんてできません。

5 ナンバーワンよりオンリーワン

 このギャップの背景にある大きな原因は、若者の育ってきた環境にあります。昔と比べて、明らかに子どもをめぐる環境が、全体的に「親切」になっていますよね。「温室育ち」という言葉もあるように、最近の学校教育は、子どもたちをとにかく尊重します。自主性や個性を肯定的に伸ばす教育方針。ナンバーワンよりオンリーワン。あからさまな競争が少ない分、痛みに弱い。失敗したり、怒られたり、恥をかいたりすることに対して、驚くほどに耐性が低いのです。

 前述したように、若者は絶えず人の顔色をうかがっています。常に誰かに見られているリスクを念頭に置いて行動している中で、「意識高い系に見られたくてキャラを演じる派」ではない「現実の自分」は、チャレンジして失敗したら元も子もないと考えます。
 失敗を避けたいがゆえ、自ら積極性を発揮することにブレーキをかけてしまっているのです。

6 イライラ・モヤモヤ解消法

 結局のところ、キャラを演じるのも失敗を極度に恐れるのも、若者の承認欲求が原因。承認欲求に振り回されないためには、率直に自己開示し合える相手を持つことです。自分を率直にさらけ出しても大丈夫な環境、それは「心理的安全性」の提供に他なりません。

 そもそも職場には「無知と思われる不安」「無能と思われる不安」「邪魔しているのではという不安」「ネガティブだと思われる不安」といった4つの不安が渦巻いているといわれます。人は無能だと思われたくないから、キャラを演じてしまいますし、失敗を恐れるのです。
 「心理的安全性」とは、これらの不安が払拭された状態が保たれていることです。そのためには、上司が部下の挑戦を適度にサポートするスタンスを示すことが、極めて重要です。新入社員が上司に期待することを調べたある調査によると、その1位は「的確な指示を出してくれること」でした。失敗してもいいから挑戦せよ。こんなふうに丸投げするのではなく、少し具体的な指示や情報をインプットしながら、挑戦する気持ちを高めていくことを望んでいるのです。

 天然モノのファーストペンギンがいないなら、ファーストペンギンを養殖するしかありません。そしてチャレンジしたペンギンが、実力以上のキャラを盛らなくてすむように、要所要所で手を差し伸べることが大切です。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2023年1月4日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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執筆:平賀 充記(ひらが あつのり)
株式会社ツナググループ・ホールディングス エグゼクティブフェロー 兼 ツナグ働き方研究所所長。1988年(株)リクルートフロムエー(現リクルートジョブズ)に入社。「FromA」「タウンワーク」「はたらいく」などリクルートの主要求人媒体の全国統括編集長。2012年(株)リクルートジョブズ・メディアプロデュース統括部門担当執行役員に就任。2014年ツナグ・ソリューションズ取締役に就任。2015年ツナグ働き方研究所を設立、所長に就任、いまに至る。
著書に『非正規って言うな!』(クロスメディアマーケティング)、『神採用メソッド』(かんき出版)、『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』(アスコム)がある。

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