
今よりコミュニケーション力がアップする「ビジネス言い換え」文例集
2022.09.12
Copyright (c) Resona Bank, Limited All Rights Reserved.
ビジネスは常に、意思決定(目標を達成するために必要な行動を選択すること)の連続です。ただ、この意思決定が勘や経験だけに基づくものだったり、単なる前例踏襲だったりすると、周囲から「なぜ、その選択をしたの?」と尋ねられたときに論理的な説明ができません。そこで紹介したいのが、「樹形図(決定木)」を作って考え得る行動の選択肢を洗い出し、最良のものを選び出すフレームワーク「ディシジョンツリー」です。
ディシジョンツリー(Decision Tree)とは、「決定木」や「決定木分析」と訳されるもので、
何かの意思決定をする際、考え得る選択肢の中から最良のものを選び出すフレームワーク
です。決定木と呼ばれる理由は、木の形をした「樹形図(決定木)」を作って、欲しい答え(目標変数)にたどり着くための条件(説明変数)を見つけるから
です。
ディシジョンツリーを使うことで、勘や経験だけでなく、定量的な分析に基づいた判断がしやすくなります。この記事では、ディシジョンツリーにおいて必要な知識とその作り方、そして書き込みシートを紹介します。
分類木とは、
顧客の購買データなどを、年齢や年収などで区分しながら作成する樹形図
です。例えば、図表1では、ECサイトで商品Aという高額商品を購入した顧客データから見込み客を選定しています。
図表1では、「年齢40代以上、年収600万円以上」の人が最も有力な見込み客となっています。分類木には、
早めに出てくる分岐ほど力が強くなる(重要度が高い)
という特徴があります。例えば、年代で別々の広告手法を模索しているなら「年齢」、地域なら「居住地」などが分岐の条件になります。
回帰木とは、
取り得る行動を「結果の数値」「発生する確率」に応じて分岐させ、各分岐の期待値(結果の数値×発生する確率)を算出するための樹形図
です。例えば、図表2では、見込み客に商品をPRするために、Web広告を「出す」「出さない」を判断するのに回帰木を使っています。ここでは、
としています。
なお、樹形図の「□」「○」「◁」の意味は次の通りです。
□(意思決定ノード、決定ノード):自分で分岐を選べる(意思決定によって決まる) ○(確率ノード、イベントノード):自分で分岐を選べない(確率によって決まる) ◁(終点ノード):これ以上は行動を起こさないので、分岐しない(終点である)
図表2は、おおまかなイメージを示したものなので、収益や確率の具体的な数値を記載していません(Web広告を出さない場合については、収益は「100%」の確率で「0円」となります)。次章でもう少し詳しく説明します。
ここまでの流れを確認しましょう。
あなたは商品Aを販売するに当たり、「分類木」を使ったディシジョンツリーで、見込み客を選定しました。見込み客は、40代以上の年収600万円以上の層でした(図表1を参照)。
次に、「回帰木」を使ったディシジョンツリーで、この層に商品Aを効果的にPRする方法としてWeb広告を検討しました。Web広告費は100万円で、Web広告が「好調」なら収益は300万円、「不調」なら収益は30万円と想定しています。そのディシジョンツリーは図表3の通りです。なお、あなたはWeb広告が好調となる確率を20%と推定しています。
図表3の場合、ディシジョンツリーの作成手順とポイントは次の通りです。
1.「決定」の分岐を示す
意思決定の可能性の分岐です。図表3では、Web広告を「出す」「出さない」の2分岐になります。
2.「結果」の分岐を示す
意思決定によって生じる「結果」の可能性であり、その確率は作成者が決めます。図表3では、Web広告を「出す」場合、その「好調」「不調」の2分岐になります。
3.全ての分岐を終点まで洗い出す
「結果」の分岐の先でさらに行動を起こす場合、「決定」の分岐(成功した場合どうするのか、失敗した場合どうするのかなど)を付け足します。何も行動を起こさない場合、そこが分岐の終点となります。図表3では、Web広告を「出す」場合の結果(2分岐)と、「出さない」場合の結果(分岐なし)が終点です。最後に、終点ごとに収益を書き込みます。
図表3は、Web広告を出すか否かのみを決定するディシジョンツリーですが、実際のビジネスの意思決定はもっと複雑です。例えば、Web広告を検討する際に、リサーチ会社に「広告調査」(ターゲットにリーチしやすい広告媒体やデザインなど)を依頼するか否かも検討するといった具合です。
この広告調査を組み入れて、Web広告を「出す」「出さない」を判断したディシジョンツリーは図表4の通りです。なお、広告調査を「実施しない」場合の分岐は図表3と同じなので、ここでは一旦置いておきます。
図表4の場合、ディシジョンツリーの作成手順とポイントは次の通りです。
1.「決定」の分岐を示す
図表4では、広告調査を「実施する」「実施しない」の2分岐になります。
2.「結果」の分岐を示す
広告調査を「実施する」「実施しない」の分岐の先に、「結果」の分岐を付け足し、発生する結果とその確率を書き込みます。
3.全ての分岐を終点まで洗い出す
「結果」の分岐にWeb広告を「出す」「出さない」という「決定」の分岐を付け足します。図表4では、この意思決定が終点となります。最後に、終点ごとに収益を書き込みます。
そして、図表3(広告調査を実施しない場合の分岐)と図表4(広告調査を実施する場合の分岐)を組み合わせた完成形が図表5であり、A~Gの7つの終点ができています。
樹形図が完成したら期待値を計算します。手順とポイントは次の通りです。
4.終点での期待値を計算する
期待値は、(結果の数値)×(発生する確率)で求められます。上から順に、広告調査を実施する分岐(終点A~D)では、
となります。 次に、広告調査を実施しない分岐(終点E~G)では、
となります。
5.不要な選択肢を刈り取る
次に、不要な選択肢を刈り取ります。不要な選択肢とは、簡単に言うと「論理的におかしい選択肢」のことです。図表6のように「☓(バツ)」を付けます。
図表6の場合、
という選択肢が刈り取りの対象です。選択肢を刈るときに大事なのが、
です。ディシジョンツリーはあくまで数値で結果を得るものなので、感覚を交えた判断は結果を出した後に行います。また、「何を刈り取ったのか」を見返したり、「なぜ刈り取ったのか」を社内で話し合ったりすることがあるので、×印を付けるなどにとどめ、後から確認できるようにします。
6.初めの選択肢ごとの期待値を集計する
最後に、初めの選択肢ごとの期待値を求めます。
ここでいう初めの選択肢とは、
の3つです。具体的には、図表7の緑枠で囲った部分(α群、β群、γ群)ごとの期待値を出します。また、
「結果」の分岐の先では、関わってくる数値全てに割合が影響する
という点に注意が必要です。例えば、20%で分岐している先でかかる費用が100万円なら、期待値から引くべき費用は20万円(100万円×20%)です。
以上を踏まえると、α群、β群、γ群それぞれの期待値は次のようになります。なお、広告調査の費用は20万円とします。
この場合、最も期待値が高いのはα群です。従って、今回は、
広告調査を「実施」し、「好調」となる場合、Web広告を「出す」
という選択を取ることとなります。
また、今回は広告調査を実施する前の段階でディシジョンツリーを作成していますが、実際に広告調査を行った場合には、その結果を踏まえて数字(収益や確率)を修正し、再度ディシジョンツリーを作り直すと、より精度の高いものになります。
過学習になる、つまり分岐が増え過ぎるとディシジョンツリーの良さを潰してしまうことになります。理想としては、図表8のように、
縦に見て4分岐前後が最適
とされます。
もしも分岐が多くなるようであれば、図表3と図表4で実践したように、小さなディシジョンツリーを別々に作って見比べて判断するとよいでしょう。
ディシジョンツリーの結果が出たものの、「この結果は本当に妥当なのか?」と違和感を覚えることがあります。期待値の計算結果と勘や経験、どちらが正しいのかを考える前に、
参考となるデータ、設定した数値、想定され得る選択肢の数などの条件が足りているか
を確認してみましょう。また、
「結果」の発生する確率や予測した収益などの見積もりに違和感はないか
も確かめてみましょう。数字を設定するのは作成者自身なので絶対の正解はありませんが、社内の他の人にも意見を聞いてみて納得が得られない場合、数字の見直しが必要かもしれません。
最後に、実際にディシジョンツリーで意思決定を行うための書き込みシートを紹介します。プリントアウトしてお使いください。図表9は、1~3つの意思決定で悩んでいるときにお使いいただけます。
図表10は、2段階の意思決定が発生するときにお使いいただけます。
以上
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2022年12月8日時点のものであり、将来変更される可能性があります。
※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。
【電子メールでのお問い合わせ先】 inquiry01@jim.jp
(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト http://www.jim.jp/company/をご覧ください)
RECOMMENDATION
今よりコミュニケーション力がアップする「ビジネス言い換え」文例集
2022.09.12
中小企業も狙われる「標的型攻撃」の脅威
2017.09.04
【文例付き】上から目線にならない催促メールのマナー
2021.01.13
内部不正が発生する原因とは? 事例と対策方法について解説
2019.03.27
部下を正しく動かす上司のコミュニケーション術
2017.09.04