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2019 中小企業の株主総会 「開催後の実務」

日本情報マート

2019.06.12

 2019年の株主総会(この記事では「定時株主総会」を指します)のシーズンになりました。第1回は「事前の準備」第2回は「開催当日の運営」を紹介しましたが、この他にも、議事録の作成や登記手続、公告手続などさまざまな事後手続があります。これらの手続の中には、法令上、期限が定められているものもあります。

 そのため、株主総会が終わったからといって、安心することなく、忘れずに事後手続を済ませる必要があります。そこで、この記事では中小企業に多く見られる「非上場会社、大会社以外、非公開会社、取締役会・監査役設置会社(会計監査人非設置会社)」を例に、株主総会における後日の事務対応ポイントを紹介します。

1 議事録の作成

1)記載事項

 株主総会終了後の手続の中でまず着手すべきことは、議事録の作成です。株主総会を開催したときには、取締役が議事録を作成しなければなりません。議事録に記載すべき事項は、会社法施行規則に規定されており、主に次の通りです。

  • 株主総会の日時および場所
  • 株主総会の議事の経過の要領およびその結果
  • 監査役等による意見または発言があるときはそれらの内容の概要
  • 株主総会に出席した取締役等の氏名または名称
  • 議長がいるときは議長の氏名
  • 議事録の作成に係る職務を行った取締役(議事録作成者)の氏名

 法令上、議事録には出席した取締役や監査役の氏名または名称を記載すれば足り、出席した取締役や監査役の署名または記名押印は求められていません。

2)作成期限

 法令上、議事録の具体的な作成期限は特に定められていませんが、会社は遅滞なく議事録を作成する必要があります。一般的に、株主総会後1週間以内に作成されることが多いですが、遅くとも2週間以内に作成する運用にしておくべきです。これは、以降で解説するように登記事項(会社法第911条第3項)に変更があった場合には、原則として、2週間以内に変更登記の申請をしなければならないからです(会社法第915条第1項)。

3)書面決議の場合

 第2回の「開催当日の運営」で解説した通り、一定の場合には、株主総会の決議を省略することができます。株主総会の決議を省略することは、一般的に書面決議と呼ばれますが、このような場合であっても、株主総会の議事録を作成する必要があります。忘れずに作成するようにしましょう。

2 登記手続

 株主総会の決議により、株式会社の登記事項に変更が生じた場合、原則として、2週間以内に変更登記の申請を行わなければなりません。そして、株主総会の決議によって登記事項に変更が生じる場合、登記申請を行う際に、株主総会議事録を添付する必要があります。

 株主総会の決議との関係で登記手続が必要となる典型例は、取締役や監査役の改選の場合です。取締役や監査役の選任は株主総会の決議によるため、これらの役員の改選が行われた場合には、退任する取締役や監査役、重任または新たに就任する取締役や監査役についての登記が必要になります。

3 公告の実施方法

 会社は、株主総会の終了後、遅滞なく株主総会で承認を受けた計算書類を公告しなければなりません。法令上は、「遅滞なく」とされているのみで、期限は明記されていませんが、実務上は株主総会の翌日に公告することが多いです。

 なお、この記事で例に挙げている大会社以外の非公開会社の場合、公告すべき計算書類は貸借対照表になります。

 公告の実施方法は、法令上、「官報」「日刊新聞紙」「電子公告(インターネット上のホームページに掲載する方法)」のいずれかから選択するものとされており、定款に公告方法を定めることができます。定款に定めがない場合は官報で公告を行うことになります。

 公告の実施方法が官報または日刊新聞紙の場合、貸借対照表の要旨を掲載することで足ります。しかしながら、電子公告の場合、貸借対照表の全てを掲載する必要があります。また、電子公告では株主総会の終結の日後5年を経過する日まで掲載していなければならないなどの制約があります。

4 書面等の備え置き

 株主総会に関連する書面等の中には、一定期間、本店や支店に備え置かなければならないものがあり、書面によって株主や会社の債権者からの請求があれば、閲覧できるようにしなければなりません。

 備え置きが必要となる主な書面等は次の通りです。

主な備置書面等を示した画像です

5 株主総会に不備があった場合の対応

1)不備の種類と訴えの種類について

 中小企業においては、会社の経営支配権をめぐる紛争において、株主総会の決議の効力が争われることも珍しくありません。法令上、株主総会の決議の効力を争う方法として、「株主総会の決議取消しの訴え」「株主総会の決議無効確認の訴え」「株主総会の決議不存在確認の訴え」の3種類の訴えが定められています。

 これらの訴えによって、株主総会の手続や決議内容の不備を指摘されることが考えられます。

訴えの種類の内容を示した画像です

2)不備があった場合の対応方法について

 仮に、過去の株主総会に不備が見つかった場合、会社はどのような対応をしたらよいでしょうか。会社法では、会社が、どのような対応を取ればよいのかを定めていません。そのため、取るべき対応は決議の不備の内容によって判断する必要があります。

 例えば、取締役会決議で株主総会の招集を決議しなければならないにもかかわらず、代表取締役が独断で株主総会を招集してしまったことを想定し、次のような場合の対応を考えてみましょう。なお、以降で紹介する対応例はあくまでも執筆者の見解です。

1.株主全員が開催に同意して、株主全員出席のもとで株主総会が行われた場合

 代表取締役による招集手続に不備はありますが、株主全員が出席して決議を行っているため、招集手続の不備は治癒されると考えられます。そのため、このような場合でも、株主総会の決議は有効に成立するものと思われます。特段の対応は必要ないでしょう。

2.株主の一部が株主総会を欠席した場合

 招集手続に不備があるため、招集手続に法令違反があったものとして、決議取消しの訴えがなされる可能性があります。決議取消しの訴えは決議の日から3カ月以内に提訴しなければならないため、既に3カ月が経過しているのであれば、特段の対応は必要ないでしょう。一方、期間経過前であれば、当該株主から株主総会決議の効力を争わないことを書面で差し入れてもらうことや、再度招集を行い株主総会の追認の決議を行うことなどが考えられます。

6 終わりに

 以上の通り、株主総会が終わった後も、法令上、会社が行うべき手続は多くありますので、気を抜くことはできません。また、株主総会の決議が争われる可能性をよく理解し、事前準備から当日運営、事後手続を通して、適切に対応する必要があります。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年6月12日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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執筆:日本情報マート
監修:三浦法律事務所 弁護士 磯田翔
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