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2019 中小企業の株主総会「株主総会にまつわるQ&A」

日本情報マート

2019.06.24

 2019年の株主総会(この記事では「定時株主総会」を指します)のシーズンになりました。取締役を含め株主総会の運営を担う人は、法令に基づきスムーズに進行したいものです。

 これまで3回にわたって、中小企業の株主総会に関する基本的な実務について解説してきました。今回は、いわば応用編です。経営陣と対立する株主が株主提案権の行使や動議を行ってきたシーンを想定し、株主総会において問題となり得る事項について、Q&A方式で解説していきます。

 なお、この記事で解説するのは、主に法的な意義や手続などについてです。経営陣と対立する株主が「社長の解任動議を請求してきた」ような場合、社長をはじめ経営陣としては、手続などよりも、「どのような姿勢で対応すればよいのか」「株主との対立を解消する手立てはないのか」といったことのほうが気になるかもしれません。しかし、そうした対応を速やかに実践するためにも、法的な意義や基本的な手続を押さえておくことが大切です。皆様にとって、本記事が、株主総会トラブルに対応するための一助となれば幸いです。

 また、株主総会に関する一般的な事前準備、当日の議事運営および後日の事務対応については、以下の記事で紹介していますので、併せてご確認ください。

●2019 中小企業の株主総会「事前の準備は何をすべき?」
https://resonacollaborare.com/compliance/18042501/

●2019 中小企業の株主総会 「開催当日の運営」
https://resonacollaborare.com/compliance/18042502/

●2019 中小企業の株主総会 「開催後の実務」
https://resonacollaborare.com/compliance/18042503/

 

1 社長が株主招集できない。誰なら招集できるのか?

●シーン1

当社は、今年で創立10周年となります。創立記念も兼ねて、隣県の温泉ホテルでパーティー会場を貸し切り、株主総会を開催したいと考えています(Q1)。

ところが、このようなお祝いの場にもかかわらず、当社の代表取締役A社長と対立する株主Xから、「代表取締役A社長を取締役から解任する」ことを株主総会の目的とするよう求める書面が届きました(Q2)。

思わぬ事態に動揺したA社長は、株主総会の招集を決定するための取締役会に向かう途中、交通事故にあってしまい、意識不明の状態で入院してしまいました。そこで、当社の取締役B副社長が、A社長に代わって取締役会を開催し、株主総会の招集を決定しました(Q3)。

しかしながら、慣れない招集手続に戸惑うB副社長。6月27日に株主総会を開催するので、本来は6月19日までに招集通知を発送しなければならないところを、6月20日に発送してしまいました(Q4、Q5)。

当社が無事に株主総会を終えるにはどうしたらよいのかを、Q&A形式でまとめています。なお、当社は中小企業に多く見られる「非上場会社、大会社以外、非公開会社、取締役会・監査役設置会社(会計監査人非設置会社)」です。

Q1.

当社は、これまで本社で株主総会を開催していましたが、今年に限って異なる場所で開催することは可能でしょうか。

A1.

株主総会の開催場所は、定款で特別の定めをしていない限り、取締役会で定めることができます。ただし、「過去に開催した株主総会のいずれの場所とも著しく離れた場所であるとき」には、その理由を招集通知に記載する必要があります。

「著しく離れた場所」とは、株主が株主総会に出席するために相当な時間を要し、出席が困難となるような場所を指します。例えば、これまで東京の本社で開催していたにもかかわらず、大阪で株主総会を開催しようとした場合、「著しく離れた場所」に該当する可能性があります。今回の場合であれば、本社から隣県のホテルまでの距離や交通手段などから、比較的短時間で移動することができるようであれば、「著しく離れた場所」には該当しない可能性もあります。

もっとも、「著しく離れた場所」といえなくても、開催場所を変更した場合には、株主への注意を喚起するためにも、「創立10周年の式典を行うため」「会場確保の都合で」など変更の理由を招集通知に記載しておくべきです。

Q2.

株主から届いた「代表取締役A社長を取締役から解任する」ことを株主総会の目的とすることを求める書面に対して、どのように対応したらよいでしょうか。

A2.

株主は、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求する権利を有しており、このような権利を株主提案権と呼びます。

この記事で対象としている非公開会社では、総株主の議決権の100分の1以上または300個以上の議決権を有する株主は、株主総会の8週間前までに、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求できます。

会社は、適法になされた株主提案を無視することはできず、株主総会の議題に追加する必要がある他、議題の中身である議案について、「議案の要領」を招集通知に記載する必要があります。

Q3.

当社の代表取締役が入院しており、株主総会の招集を行うことができません。新たに代表取締役を選定しないと、株主総会の招集ができないのでしょうか。

A3.

取締役会設置会社では、取締役会において株主総会の招集の決議がなされ、招集権者が株主総会の招集通知を発送します。法令上、「株主総会は、取締役が招集する」とされており、代表取締役が招集するとは明記されていません。

一般的には、定款において「代表取締役」や「社長」が招集権者と定められていることが多く、これらの者に事故などが起きた場合に、定款や取締役会であらかじめ定められた順序により、他の取締役が招集権者となります。

従って、新たに代表取締役を選定しなくても、あらかじめ定められた他の取締役が、取締役会決議に基づき株主総会を招集することができます。

Q4.

株主総会の招集通知を送付する期限を過ぎてしまった場合、招集手続に法令違反があったものとして、株主総会の決議が取り消されてしまうのでしょうか。

A4.

この記事で対象としている非公開会社では、法令上、株主総会の1週間前までに(中7日)、株主に対して招集通知を発送しなければなりません。招集通知を送付する期限を過ぎてしまったとしても、議決権を行使することができる株主全員の合意がある場合には、招集通知期間を短縮することが可能です。

従って、期限の徒過に気付いた場合には、速やかに株主から招集通知期間を短縮する旨の同意を取得し、再度招集通知を送付する必要があります。

また、招集通知期間が不足する場合でも、株主全員が開催に同意して出席した場合には、株主総会の決議が有効とされる場合があります。

Q5.

株主総会の招集手続を省略できる場合はあるでしょうか。

A5.

議決権を行使することができる株主全員の同意がある場合、株主総会の招集手続を省略することができます。

しかしながら、書面や電磁的記録によって、議決権を行使することを認める場合、招集手続を省略することができませんので注意が必要です。

2 株主から「議長交代」を求められた!

●シーン2

株主総会の招集通知の期限は過ぎてしまいましたが、無事、株主全員に対して招集通知が到達し、全員が開催に同意して株主総会に出席しました。

しかしながら、当社の代表取締役A社長は入院したままであり、株主総会に出席することができません。やむを得ず、B副社長は、A社長に代わって株主総会の議長を務め、株主総会を開催しようとしました(Q6)。

そうしたところ、株主Xが、突如として、「B副社長は株主総会の議長として不適切である。議長を交代されたい」と提案しました(Q7)。

その後、事業報告や計算書類の報告などを行いましたが(Q8)、決議事項の審議を始めたところ、株主Xが、「代表取締役A社長の報酬を減額する」ことを提案するなどしたため(Q7)、株主総会をスムーズに終えることはできませんでした。

Q6.

代表取締役A社長が入院しているため、株主総会に出席できません。議長はどうしたらよいでしょうか。

A6.

株主総会の議長の資格について、法令上の定めはありませんが、一般的には定款において、「代表取締役」や「社長」が議長と定められていることが多いです。

このような場合に「代表取締役」または「社長」に事故などが起きた場合、定款や取締役会であらかじめ定められた順序により、他の取締役が議長となります。一般的には、「副社長」が代わりの議長とされていることが多く、今回の場合でも、取締役B副社長が議長となります。

Q7.

株主Xからの「議長交代」や「A社長の報酬の減額」に関する提案に対して、当社はどのように対応したらよいでしょうか。

A7.

株主総会当日における提案は、「動議」と呼ばれ、主に、株主総会の議事進行に関わる手続的動議と議案の内容に対する修正動議の2種類があります。

手続的動議の中には、議長の議事運営を促すにすぎないものもあり、必ずしも、議場に諮る必要がないものもあります。もっとも、議長の不信任動議や延期・続行の動議などは、議事進行するための先決事項として直ちに採決を行わなければなりません。

他方で、役員報酬の減額や会社が提案した候補者以外の者を取締役に選任することを求める動議など、議案の修正動議については、動議が適法である限り、原則として、議場に諮らなければなりません。

Q8.

B副社長は、計算書類の報告を行っていますが、B副社長の議事進行に問題はあるでしょうか。

A8.

この記事で対象としている非公開会社では、原則として株主総会で計算書類の承認を受けなければなりません。そのため、単に計算書類の報告をするだけでは足りず、決議事項として承認を受ける必要があります

なお、誤って、計算書類に関して、決議事項ではなく報告事項として招集通知に記載されている中小企業がまれに見られますので、ご注意ください。

3 来年は株主総会の開催を省略したい。できるのか?

●シーン3

なんとか株主総会を終えることができたB副社長ですが、「株主は親族ばかりだし、来年の株主総会は決議を省略しようか」と考えつつ(Q9)、過ごしていたところ、うっかり、取締役改選の登記手続を申請し忘れてしまいました(Q10)。

また、株主Xから、株主総会議事録や計算書類の謄写を求める請求が来てしまい、B副社長はてんやわんやです(Q11)。

早くA社長の体調が回復し、退院することを望むばかりです。

Q9.

株主は親族だけのため、来年は株主総会の開催を省略したいと考えていますが、どのような手続をしたらよいでしょうか。

A9.

議決権を行使することができる株主全員が、株主総会の議題について書面または電磁的記録で同意した場合、株主総会の決議がなされたものとみなされます。そして、株主総会の目的である議題全てについて、書面または電磁的記録により可決された場合には、当該株主総会は終結したものとみなされ、株主総会の開催自体を省略することができます。このような株主総会の決議は、一般的に、書面決議と呼ばれています。

もっとも、この場合であっても、忘れずに株主総会の議事録を作成しましょう。

Q10.

取締役の改選に関する登記手続の申請を忘れてしまいました。何か罰則があるでしょうか。

A10.

取締役の氏名は登記事項であり、取締役の氏名に変更があった場合には、株主総会終了後2週間以内に変更登記の申請手続を行う必要があります。

会社法では、変更登記の申請手続を失念した場合の定めとして、100万円以下の過料に処せられる可能性があります。手続を忘れてしまった場合には、速やかに申請手続を行うようにしましょう。

Q11.

株主から、株主総会議事録や計算書類の閲覧請求が来ました。当社は、これらの請求に応じなければならないのでしょうか。

A11.

株主や債権者は、会社の営業時間内は、いつでも、株主総会議事録の閲覧・謄写を求めることができます。また、計算書類についても、会社の営業時間内は、いつでも閲覧や謄本・抄本の交付を求めることができます。

法令上、このような閲覧・謄写請求を制約する定めはないため、会社は、請求に正当な理由がない場合を除き、原則として、これらの請求に応じなければなりません。

4 終わりに

 この記事で例に挙げたようなトラブル続きの株主総会はなかなか起こり得ないかもしれません。しかしながら、いざ、このような事態になったときに慌てることがないように、来年の株主総会からしっかりと準備しておきましょう。また、何か困ったことがあったときには、すぐに弁護士に相談できるようにしておくことも大切です。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年6月24日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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執筆:三浦法律事務所 弁護士 磯田翔
https://www.miura-partners.com/lawyers/00024/

<経歴>
2014年 慶應義塾大学法学部法律学科卒業
2015年 司法試験合格(司法修習第69期)
2016年 弁護士登録(東京弁護士会)。
     三宅・今井・池田法律事務所(~2018年)
2019年 三浦法律事務所(~現在)

<取扱分野・案件等>
株主総会、取締役会をはじめとするコーポレートガバナンス関連業務、コンプライアンスその他の企業法務一般のほか、倒産・事業再生、人事労務、商事紛争を中心として、業種・分野を問わず、幅広くクライアントのニーズに応じたリーガルサービスの提供を手掛けている。

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