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2019 中小企業の株主総会 「開催当日の運営」

日本情報マート

2019.05.17

 2019年の株主総会(この記事では「定時株主総会」を指します)のシーズンになりました。中小企業に多く見られる「非上場会社、大会社以外、非公開会社、取締役会・監査役設置会社(会計監査人非設置会社)」を例に、知っておきたい株主総会運営の基礎を事前準備、当日運営、事後処理、Q&Aの4回に分けて紹介していきます。

 今回ご紹介するのは、株主総会当日の運営についてです。一目で分かる「議事進行のフロー例」や「決議の種類と概要」、採決に当たっての留意点などをまとめています。前回ご紹介した『2019 中小企業の株主総会「事前の準備は何をすべき?」』と併せてご確認いただくことで、株主総会の準備が進めやすくなります。

1 株主総会当日に懸念すべき事項

 株主総会当日は、突然、株主から予想外の提案や質問がなされるなど、思わぬ出来事が生じることがあります。多くの中小企業では問題は生じないものと思いますが、『2019 中小企業の株主総会「事前の準備は何をすべき?」』で解説した通り、経営権を巡った争いが生じた場合、一部の取締役が株主の立場で、株主総会での発言を求め、株主総会を混乱させる可能性も考えられるところです。

 こうした事態が生じた場合に、混乱の中で、うっかり説明が不足したり、慌てて審議を打ち切ったりしてしまうと、決議が取り消されてしまう可能性も否定できません

 このような問題を生じさせないためには、総会当日の運営において、十分に取締役・監査役の説明義務を尽くし、かつ、株主の発言を聞いた上で決議を行うことが大切です。

2 議事運営の準備

1)議事進行の確認

 株主総会の事前準備に当たって、まず、議事進行のフローを理解しておくことが重要です。

 特に初めての株主総会や混乱が予想される株主総会においては、事前に、議事進行手順などを整理した「株主総会のシナリオ」を作成することもあります。一般的な議事進行のフロー例は次の通りです。

開会宣言など、議事進行のシナリオについて紹介した画像です。

 株主総会の運営方式には、一括上程方式と個別上程方式があります。図表1は一括上程方式です。

 法令上、いずれの運営方式を採用するかは決められていません。しかしながら、一括上程方式であれば、議長が全ての報告や説明を行った後、株主からの質疑応答や採決の時間を設けるためシンプルです。

  • 一括上程方式:株主総会における監査報告などの報告を行い、議案を全て上程した後に質疑応答を行って採決する方式
  • 個別上程方式:議案ごとに上程、質疑応答、採決を行う方式

2)想定問答集とは

 当日、株主から予想外の質問がなされることがあります。取締役・監査役には株主に対する説明義務があるため、株主からの質問を遮ったり、無視したりすることはできません。そこで、株主総会の開催に当たっては、事前に予想される質問と質問に対する回答を準備しておくことが必要です。

 また、想定問答集を作成することは、社内の問題点を洗い出す良い機会となります。ただし、あり得ないような質問のために想定問答集を作成するのではなく、メリハリを持って作成することが大切です。

3)リハーサルの要否

 株主総会の成否は、議長がうまく議場の秩序を維持することができるか、株主からの質問や発言、暴言などに対して、的確な対応をすることができるかにかかっています。

 そのため、初めての株主総会や混乱が予想される株主総会においては、シナリオの作成とともに、本番さながらのリハーサルを行っておくことも考えられます。

3 議長の議事運営権について

1)議長の確認

 株主総会の議事運営を行う議長については、通常、会社の定款で定められています。一般的には、代表取締役(社長)が議長としている場合が多いです。

2)出席株主数等の報告・決議要件の確認

 株主総会では、出席した株主の数や保有する議決権の数を集計して報告します。これにより、株主総会で議案を審議するのに必要な定足数を満たしているかを確認します。

 なお、株主総会の決議には、普通決議、特別決議および特殊決議があります。それぞれの決議に必要な定足数、決議要件、主な決議事項は図表2の通りです。

普通決議の場合など、決議の種類別に定足数、決議要件、主な決議事項について紹介した画像です。

3)問題株主への対応

 議長には、株主総会の秩序を維持する権限があります。万が一、株主が暴れたり、不規則な発言を繰り返したりするなど議事を妨害する場合には、注意・警告を行うことができます。

 それでも、株主が議事の妨害を続ける場合には、議長は退場を命じることもできます。

4)動議への対応

 株主総会では、出席した株主から動議が提出される可能性があります。動議とは、株主総会の目的である事項および総会の運営などに関し、株主総会の決議を求める旨の意思表示をいいます。動議には、主に議事運営に関する手続的動議と議案の修正動議があります。

 動議の中には議場に諮る必要があるものもあります。そのような動議を無視して審議を進めてしまうと、株主総会決議の取消事由になりかねませんので注意が必要です。動議に関する詳細は、シリーズ第4回のQ&Aで解説する予定です。

4 株主総会の議案と採決に当たっての留意点

1)事業報告の報告および計算書類の承認

 定時株主総会では、事業報告の報告および計算書類の承認決議が必須です。事業報告は、取締役が報告をしなければなりません。なお、この記事で対象としている取締役会・監査役設置会社の場合、事業報告および計算書類は取締役会による承認も必要です。

2)取締役・監査役の選任

 取締役・監査役の選任には、株主総会の決議が必要です。法令上、取締役の任期は原則2年、監査役の任期は原則4年です。そのため、取締役や監査役の任期満了時には、必ず取締役・監査役選任(再任を含みます)の決議を行う必要があります。

 ただし、この記事で対象とする非公開会社の場合、取締役・監査役ともに、定款に定めることで任期を最長10年に延長することができます。このような場合は、延長した任期の満了時の株主総会において、選任・再任の決議を行う必要があります。

3)取締役の報酬

 取締役の報酬は、次の事項を定款に定めるか、定款で定めないときには株主総会の決議が必要です。

  • 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
  • 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法(業績連動型報酬等のように事前に額を確定できないものが該当)
  • 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容(現物支給やストックオプション等が該当)

 取締役の報酬を柔軟に決定するため、一般的には定款で定めるのではなく、株主総会で決議されることが多いです。また、取締役会・監査役設置会社の場合、全取締役の報酬総額を「取締役の報酬額を年額○○○万円以内とする」などとして株主総会で決議し、各取締役の報酬額は取締役会で決定するケースが多いです。

 株主総会での決議は、一度決議をした範囲内で報酬額を決定している限り、毎年行う必要はありません。一方、株主総会で決議した全取締役の報酬年額の上限を超えて報酬を支払う場合には、改めて株主総会での決議が必要になります。

 なお、監査役の報酬についても、定款ではなく株主総会で決議し、具体的な金額は監査役の協議に委ねることが多いです。

4)取締役・監査役の説明義務

 取締役・監査役は、株主から株主総会の目的事項(報告事項・決議事項)について説明を求められたときには、必要な説明をしなければなりません。ただし、一定の場合には説明を拒絶することができます。

 取締役・監査役が説明を拒絶できる場合として、例えば、次の場合が挙げられます。

  • 質問が株主総会の目的事項に関しない場合
  • 説明をするために調査が必要である場合
  • 同一の事項について繰り返し説明を求められた場合

5)その他の議案

 その他によくある議案として、剰余金の配当や処分、役員の退職慰労金に関する議案などが決議されることもあります。

6)採決

 議案の説明や質疑応答が終了した後、各議案の採決を行います。法令上、採決の具体的な方法は定められておらず、決議の賛否が明らかになれば、必ずしも賛否の数を具体的に確定しなくてもよいとされています。

 一般的には、議長の合理的な裁量の範囲で、異議の有無の確認したり、挙手、拍手、記名投票などの方法で賛否を判定したりして、採決が行われています。

5 決議の省略

 中小企業では、株主総会の開催を省略し、書面決議とすることも多いと思います。

 法令上、議決権を行使することができる株主全員が、株主総会の目的事項(報告事項および決議事項)について書面または電磁的記録で同意をした場合、可決する旨の株主総会決議があったものとみなすことができます。この場合、株主総会の開催を省略することが認められていますが、株主総会の議事録は作成する必要があります

6 終わりに

 以上の通り、円滑に株主総会の議事を進行するためには、事前準備が不可欠となります。中小企業においては、特に混乱や問題が生じないことも多いと思いますが、いつ、株主総会の決議の効力が争いとなるか分かりません。そのため、万が一の場合に備えて、適法かつ適正な議事進行に慣れておく必要があります。

 次回は、株主総会が終了した後の事後処理について解説します。株主総会終了後も、さまざまな事務手続きがありますので、よくご確認ください

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以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年5月17日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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執筆:日本情報マート
監修:三浦法律事務所 弁護士 磯田翔
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