
回収原資を見つけ出す方法「財産開示制度」
2021.02.02
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2020年の株主総会(この記事では「定時株主総会」を指します)のシーズンになりました。今年は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、多くの株主が集う上場会社の株主総会においては、さまざまな対策が取られています。
この記事では中小企業に多く見られる「非上場会社、大会社以外、非公開会社、取締役会・監査役設置会社(会計監査人非設置会社)」を例に、株主総会における事前準備のポイントを紹介します。上場会社の株主総会のように新型コロナウイルスの影響を受けることは少ないと考えられますが、中小企業においても、会場においてアルコール消毒液の設置やマスクの配布等を検討することが考えられます。
なお、「大会社」とは、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社です。また、「非公開会社」とは、定款上、発行する株式の全部に譲渡制限を設けている株式会社です。
あわせて読む 中小企業の株主総会
まず最も関心の高い、新型コロナウイルスが株主総会に与える影響から説明いたします。
有価証券報告書の提出が必要となる上場会社においては、株主総会を延期することや、継続会と呼ばれる総会を開くことが議論されています。しかしながら、株主総会を延期した場合、改めて基準日を定める必要があり、スケジュールに大きな変更が生じます。そのため、株主数の少ない中小企業においては、あらかじめ株主と連絡を取って、書面決議によって株主総会を省略したり、株主の電話会議システムによる参加を検討したりすることが考えられます。
また、当初予定していた株主総会の会場が、緊急事態宣言によって使用できなくなったりすることも考えられます。このような場合、会場を変更したり、開始時間を変更したりすることも可能ですが、開催日までに株主に通知することが必要です。当然ながら、株主総会当日も、できる限り議事進行を短縮するなどして、感染リスクを抑えることが大切です。
新型コロナウイルスの影響によって、不測の事態が生じる可能性がありますので、何か困ったことがあった場合には、すぐに弁護士に相談することが大切です。
では、株主総会に関する基本を説明していきます。スケジュールや書面決議についても分かりやすく紹介していきます。
株主総会は、企業における重要事項の意思決定機関です。取締役や監査役などの役員の選任・解任ができるのみならず、役員の報酬などを決定することができます。
しかしながら、中小企業の中には、株主が親族や役員のみである企業や株主の数が少ない企業もあり、株主総会の必要性を感じる機会が乏しく、形式的に議事録を作成している会社も少なくありません。
このような場合、ひとたび株主間(親族間や役員間)の関係が悪化した場合には、経営権を巡って、争いが生じかねません。株主総会が適法に開催されていないことが争点になることもあり、株主総会決議の不存在や無効確認の訴え、決議取消しの訴えなど法的手続に巻き込まれる可能性もあります。
そこで、今回は、株主総会の開催準備について解説していきます。
株主総会当日の議事運営などは、以下の記事で紹介しているため、併せてご確認ください。
株主総会の開催日について、法令上、「○月○日に開催すべき」との定めはありません。それにもかかわらず、毎年6月下旬が、株主総会のいわゆる「集中日」となっているのはなぜでしょうか。
一般的に、企業は、株主総会において権利を行使することができる株主を定める基準日を設定しています。この基準は、企業の決算期に合わせて設定されることが多く見られますが、日本では、決算期を毎年3月末日に定めている企業が多く見られます。また、法令上、株主の権利行使は、基準日から3カ月以内に行使するものに限られています。
そのため、6月下旬に株主総会が重なるのです。
なお、かつてのいわゆる「総会屋」による株主総会の混乱、延長・長時間化に備えるため、6月の最終営業日が集中日になることはありません。
本年において、2020年3月31日を基準日とした場合、集中日は6月26日となります。
株主総会の招集通知の発送期限などの一部の手続は、法令上の定めに従い、基準日や株主総会開催日などを基に定められた期日に従って行わなければなりません。一般的な株主総会のスケジュール例は次の通りです(基準日を2020年3月31日としています)。
なお、株主総会には、書面決議と呼ばれ、株主総会の開催を省略する方法もあります。議決権を行使することができる株主全員が、株主総会の目的事項(報告事項および決議事項)について書面または電磁的方法で同意をした場合、その提案を可決する旨の株主総会決議があったものとみなし、また、株主総会への報告があったものとみなすことができます。
株主数が少なかったり、株主が親族・経営陣のみであったりする中小企業においては、このような書面決議の方法によることも多く見られます。
株主総会の開催場所は、会社の本店所在地に限られず、自由に決定することができます。ただし、開催場所が過去に開催した株主総会のいずれの場所とも著しく離れている場合は、あらかじめ招集通知に開催場所を変更した理由を記載します。
例えば、これまでは本店所在地で行っていたにもかかわらず、今年は創立10周年記念パーティーのため、隣県のホテルで開催するといった場合、「創立10周年の式典を行うため」、「会場確保の都合で」など変更の理由を招集通知に記載しておくべきです。
(注)「株主総会の場所が過去に開催した株主総会のいずれの場所とも著しく離れた場所」(会社法施行規則第63条第2号)に該当する場合には、その決定理由を招集通知に記載する必要があります。
また、株主が出席し難い場所があえて選択された場合には、招集手続が著しく不公正であるとして、総会決議の取消事由になる可能性があります。
取締役会設置会社の場合、取締役会が株主総会の招集を決定し、定款の定めまたは取締役会の決定に基づいて代表取締役が招集行為をすることになります。
この際、取締役会では、次に記載する主な事項を決定しなければなりません。
株主総会を開催する場合、原則として株主に招集通知を発送しなければなりません。招集通知にも、上記の事項を記載する必要があります。また、取締役会設置会社では、取締役会の承認を受けた計算書類および事業報告を招集通知に添付しなければなりません。
招集通知の発送期限は、会社が公開会社なのか非公開会社なのかなどによって異なります。この記事で例に挙げている非公開会社の場合、書面や電磁的方法による議決権行使を認めない限り、株主総会の日の1週間前に送付することで足ります。
図表2における「1週間」とは、招集通知の発送日と株主総会の日を含まず、中1週間(中7日)が必要であるため注意が必要です。
書面や電磁的方法による議決権行使を認めない場合で、かつ、議決権を行使できる株主全員の同意がある場合、招集通知の発送を省略することができます。株主数が少なかったり、株主が親族・経営陣のみであったりする中小企業においては、あらかじめ株主全員の同意を得て、招集通知の発送自体を省略してしまうことも見られます。
なお、連絡先が分からない、所在不明株主がいる場合は以下の記事で対応を紹介していますので、参考にしてください。
次回は、株主総会当日の議事運営について解説します。
以上
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年5月8日時点のものであり、将来変更される可能性があります。
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